「ネコは高い所から落ちても平気」は危険な誤解。"高いほど無事"説には統計のワナがあった

読む前に予想してみよう!
ネコは高い所から落ちても、けがをしないことが多い
足から着地できても、胸のけがや骨折が多い。落下事故は動物病院でよく見られる。
- 対象
- 高所から落ちて動物病院に来たネコ
- 規模
- 132匹+119匹
- 研究の種類
- 症例の後ろ向き調査
- 確かさ
- ★★☆☆☆
ネコは空中で体をひねって足から着地できる。でも高所から落ちたネコの多くは胸や足をけがしていた。「高いほど無事」説には統計のワナもある。
ひとことで言うとネコは着地の天才。でも落ちたらけがをする。窓に注意!
「ネコは高い所から落ちても、くるっと回って着地するから大丈夫」
ネコを飼っている人なら、一度は聞いたことがあるでしょう。たしかにネコは、背中から落としても空中で体をひねり、見事に足から着地します。
でも、「だから平気」は大間違い。動物病院の記録を見ると、高い所から落ちたネコの多くはけがをしています。そして有名な「高い階から落ちたほうが無事」という説には、意外な統計のワナが隠れていました。
01空中で回れるのは物理のワザ
ネコが空中で体をひねる動きは「立ち直り反射」と呼ばれます。不思議なのは、空中では押したり蹴ったりする足場がないのに、向きを変えられることです。
1969年、米国スタンフォード大学のケインとシェアは、この動きを力学で説明しました。ネコは体の前半分と後ろ半分を別々にひねることで、全体としては回転の勢いをゼロのまま保ちつつ、向きだけを変えているのです。物理のルールを破っているわけではなく、体の柔らかさを使った見事なワザでした。
02でも、落ちたネコの9割が胸をけがしていた
着地はできても、地面にぶつかる衝撃は消えません。足から落ちてもあごを打ったり、胸に強い力がかかったりして、けがをするのです。
03「7階より上だと無事」説のワナ
この研究が有名になった理由は、もう一つあります。論文のデータでは、7階より高い所から落ちたネコのほうが、けがが少なめに見えたのです。生物学者ジャレド・ダイアモンドも1988年に『Nature』の解説記事でこの結果を取り上げました。
説明として考えられたのは、こんな仮説です。
- ネコは数階分落ちると、それ以上は速くならない「終端速度」に達する
- 加速が止まると、ネコは体の力を抜いて手足を広げ、ムササビのように空気抵抗を増やす

ところが、ここに大きな落とし穴があります。この研究に入っているのは、動物病院に運ばれてきたネコだけなのです。
高い所から落ちて亡くなったネコは、病院に運ばれないことが多いはずです。そうなると、高層階から落ちたネコのうち「病院に来た」のは、たまたま軽傷ですんだネコに偏ってしまいます。これは「生存者バイアス」と呼ばれる統計のワナです。
実際、クロアチア・ザグレブ大学のヴヌクらが119匹を調べた2004年の研究では、7階以上からの落下は、むしろ重いけがや胸のけがと関連していました。
04なぜ「平気」と思われてきたのか
- 空中で回って着地する姿が、あまりに鮮やかで印象に残る
- 低い所からのジャンプなら、本当に平気なことが多い
- 「ネコに九生あり」のような言い伝えが、"不死身"のイメージを強めた
低い所なら上手に着地できる、という本当の部分が、「高い所も平気」に広がってしまったのでしょう。
05まとめ
- ネコは空中で体をひねって足から着地できる(物理のワザ)
- でも高所から落ちたネコの多くは、胸のけがや骨折をしていた
- 「高いほど無事」説は、病院に来なかったネコを数えていない可能性がある
判定は「ビミョー」。ネコの着地は本物の才能ですが、才能があることと、けがをしないことは別。窓とベランダの対策をしてあげましょう。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerCats have an amazing skill called the righting reflex.
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Cats can turn their bodies in the air and land on their feet. Because of this, many people think cats are safe when they fall from high places.
But this is not true. In a study of 132 cats that fell from buildings in New York, about 90 percent hurt their chests. Many also hurt their faces or broke their legs. Please keep your windows and balconies safe for cats.
70 words ・ CEFR A2
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ネコは空中で体を回して、足から着地することができます。そのため、多くの人はネコが高い所から落ちても安全だと思っています。
しかし、それは本当ではありません。ニューヨークで建物から落ちたネコ132匹を調べた研究では、約9割が胸をけがしていました。顔をけがしたり、足の骨を折ったりしたネコも多くいました。窓やベランダをネコにとって安全にしてあげてください。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
「ネコは高い所から落ちても安全」という考えが本当ではないと説明しているので C。
Q2. How many cats were in the New York study?
In a study of 132 cats that fell from buildings in New York とあるので B。90は胸をけがした割合(%)。
Q3. In this passage, "land on their feet" means the cats ...
land は「着地する」。足から地面に降りる、という意味なので A。
Cats have an amazing skill called the righting reflex. When they fall, they twist the front and back halves of their bodies separately, so they can turn over in the air and land on their feet.
However, landing well does not mean landing safely. In 1987, a New York animal hospital reported 132 cats that had fallen from high buildings. About 90 percent had chest injuries, and 39 percent had broken legs. The data also seemed to show that cats falling from above the seventh floor were hurt less. But this may be a trick of statistics. Cats that died after very high falls may not have been taken to the hospital at all.
114 words ・ CEFR B1
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ネコには「立ち直り反射」と呼ばれる驚くべき能力があります。落ちるとき、ネコは体の前半分と後ろ半分を別々にひねるので、空中で体をひっくり返して足から着地できるのです。
しかし、上手に着地できることは、安全に着地できることを意味しません。1987年、ニューヨークの動物病院が、高い建物から落ちたネコ132匹について報告しました。約9割が胸にけがをしており、39%が足を骨折していました。データからは、7階より上から落ちたネコのほうがけがが少ないようにも見えました。しかし、これは統計のワナかもしれません。とても高い所から落ちて死んだネコは、そもそも病院に運ばれなかった可能性があります。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main point of the passage?
landing well does not mean landing safely が要点で、多くのネコがけがをしていたので A。
Q2. What percentage of the cats had chest injuries?
About 90 percent had chest injuries とあるので D。39%は足の骨折。
Q3. Why might the data show fewer injuries in cats that fell from higher floors?
最終文で、高い所から落ちて死んだネコは病院に運ばれず数えられていない可能性を示しているので B。
Drop a cat upside down and it quickly twists around and lands on its feet. In 1969, two Stanford researchers worked out the physics behind this righting reflex. By twisting the front and rear halves of its body separately, the cat changes its orientation while its total rotation stays at zero. The skill is impressive, but it does not make falls safe.
A 1987 report on 132 cats treated in New York for "high-rise syndrome" found chest injuries in 90 percent (bruised lungs in 68 percent of those) and broken legs in 39 percent. Oddly, cats that fell from above the seventh floor seemed to have fewer injuries than those from lower floors. One explanation was that, after reaching terminal velocity, cats relax and spread their legs like a flying squirrel.
But every cat in the study had been brought to a veterinary hospital. Cats killed by very high falls were probably never taken there, so the high-floor group may have been made up mostly of lucky survivors. This is a classic case of survivorship bias. When a 2004 Croatian study looked at 119 cats, falls from the seventh floor or higher went with more severe injuries, including chest injuries.
200 words ・ CEFR B2
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ネコを逆さまにして落とすと、すばやく体をひねり、足から着地します。1969年、スタンフォード大学の2人の研究者が、この「立ち直り反射」の物理を解き明かしました。体の前半分と後ろ半分を別々にひねることで、ネコは全体の回転をゼロに保ったまま向きを変えるのです。見事な能力ですが、それで落下が安全になるわけではありません。
ニューヨークで「高所落下症候群」の治療を受けたネコ132匹についての1987年の報告では、9割に胸のけが(そのうち68%に肺の打撲)、39%に足の骨折が見られました。奇妙なことに、7階より上から落ちたネコのほうが、低い階から落ちたネコよりもけがが少ないように見えました。終端速度に達するとネコは体の力を抜き、ムササビのように足を広げるのだ、という説明も出されました。
しかし、この研究のネコはすべて動物病院に運ばれてきたネコでした。非常に高い所から落ちて死んだネコはおそらく病院に運ばれなかったので、高層階のグループはほとんどが運よく生き残ったネコだったのかもしれません。これは「生存者バイアス」の典型例です。119匹を調べた2004年のクロアチアの研究では、7階以上からの落下は、胸のけがを含むより重いけがと結びついていました。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
立ち直り反射の仕組みを紹介した後、落下データとその偏り(生存者バイアス)を論じているので C。
Q2. What did the 2004 study of 119 cats find?
falls from the seventh floor or higher went with more severe injuries とあるので D。
Q3. Why does the author call the high-floor result a case of "survivorship bias"?
Cats killed by very high falls were probably never taken there とあり、死んだネコがデータから抜けていた可能性を指すので A。
重要単語
- reflexB2名詞反射Cats have a righting reflex.
考える前に体が動く反応。righting reflex は「立ち直り反射」。形容詞 reflexive。 - fractureC1名詞骨折The cat had a fracture in its back leg.
broken bone の硬い言い方。動詞としても使える(fracture a leg)。 - terminal velocityC1名詞(句)終端速度A falling cat reaches terminal velocity after several floors.
空気抵抗と重力がつり合い、それ以上速くならない速度。terminal は「終わりの」。 - biasB2名詞偏りThe data may contain a serious bias.
survivorship bias(生存者バイアス)、gender bias など。be biased toward ~「~に偏っている」。 - injuryB1名詞けがChest injuries were the most common.
動詞 injure(けがをさせる)。be injured in an accident「事故でけがをする」。 - orientationC1名詞向き、方向The cat changed its orientation in the air.
orient(東)が語源で「方角を合わせる」。新入生の「オリエンテーション」も同じ語。
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「ネコは高い所から落ちても平気」説。マンションから落ちたネコ132匹の記録では、9割が胸にけがをしていたらしい。「7階より上の方が無事」という有名な話には、"病院に来なかったネコ"という統計のワナがあった。
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出典・参考文献(4件)タップで表示
- Whitney & Mehlhaff (1987) High-rise syndrome in cats, Journal of the American Veterinary Medical Associationpubmed.ncbi.nlm.nih.gov
- Vnuk et al. (2004) Feline high-rise syndrome: 119 cases (1998–2001), Journal of Feline Medicine and Surgerydoi.org
- Kane & Scher (1969) A dynamical explanation of the falling cat phenomenon, International Journal of Solids and Structuresdoi.org
- Diamond (1988) Why cats have nine lives, Naturedoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。










