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前置詞は「丸暗記」より「イメージ」? 認知言語学の教え方を実験で確かめた

前置詞は「丸暗記」より「イメージ」? 認知言語学の教え方を実験で確かめた

読む前に予想してみよう!

前置詞の比喩的な意味(on time、in trouble など)は、すべてバラバラに丸暗記するしかない

研究カード(どんな研究?)
対象
中国語・広東語を話す英語学習者など
規模
64人・81人の実験ほか
研究の種類
実験研究(追試あり)・レビュー
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

前置詞の「核となるイメージ」から意味の広がりを教える方法は、正誤を伝えるだけの指導より効果的だった実験がある。ただ効果が小さい研究もあり、万能ではない。

ひとことで言うとon、in、atは「絵」でつかむと、意味のつながりが見えてくる!

もくじ
  1. 前置詞の意味は「イメージの家族」
  2. 「図」で教えたら翻訳テストで差が出た
  3. でも「万能の魔法」ではない
  4. まとめ

on time、on fire、on the phone、on sale。英語の前置詞って、どうしてこんなに意味がバラバラなのでしょう?

「onは『上』」と習ったのに、時間にも電話にもセールにも使われる。結局、熟語ごとに丸暗記するしかない……と思っていませんか?

認知言語学という分野では、こうした意味はバラバラではなく、1つの核となるイメージから広がっていると考えます。この考え方で教えると本当に効くのか。実験で確かめた研究があります。

01前置詞の意味は「イメージの家族」

認知言語学では、たとえば on の核を「何かに接している・支えられている」というイメージでとらえます。

机の上の本(接触)→壁の絵(上でなくても接していればon)→電話で話す(回線につながっている)→ on duty(勤務中=任務に「接している」状態)……と、空間の意味が比喩で広がっていく、という説明です。

時間の表現もそうです。at 7:00(時刻という「点」)、on Monday(カレンダーの上の1日という「面」)、in April(月という「入れ物」の中)と考えると、使い分けの見通しが少し良くなります。

タイラーとエヴァンスは2003年、英語の前置詞の意味の広がりを、こうした「空間の場面」から体系的に説明する本を出しました。ベルギーのボアズらは1998年、この考え方を英語の授業に生かすことを提案しています。

ボアズらが注目したのは、学習者がつまずきやすい比喩的な意味を、空間の意味から予測して説明できる点でした。

前置詞の意味は、1つの幹から枝分かれした「家族」
前置詞の意味は、1つの幹から枝分かれした「家族」

02「図」で教えたら翻訳テストで差が出た

さらに2024年には、中国語を話す学習者81人でほぼ同じ実験をやり直した追試が報告されました。結果は元の研究とおおむね一致し、図による指導の優位が時間がたったあとのテストでも続いていたといいます。

心理学では追試で効果が消えることも多い中、これは心強い結果です。

03でも「万能の魔法」ではない

一方で、ボアズは2013年のレビューで、認知言語学に基づく語彙指導の研究について、小規模なものが多く、効果も小さいものがあり、他の要因と切り分けにくい研究もあると率直に指摘しています。

それでも、全体としては無視できない証拠がそろいつつある、というのが彼のまとめでした。

04まとめ

「前置詞はバラバラだから丸暗記」は、半分ウソ。多くの意味は1つのイメージから広がった家族で、そのつながりを知ると理解しやすくなることを示唆する実験もあります。

ただし、イメージは入り口。たくさんの例文に触れて使うことと組み合わせてこそ、本当に使える前置詞になります。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerWhy does "on" appear in "on the desk," "on the phone" and "on sale"? 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Why does "on" appear in "on the desk," "on the phone" and "on sale"? Cognitive linguistics suggests that these meanings are not random. Each preposition has a core spatial image, and other meanings extend from it through metaphor. For "on," the core is contact or support, so a picture can be "on" a wall, and a person can be "on" the phone line.

In a 2018 study, 64 Cantonese-speaking learners practiced prepositions on a computer. Those who received feedback with image diagrams did better on a translation test than those who were only told whether they were right or wrong, although there was no difference on a fill-in-the-blank test. A 2024 replication with 81 learners found similar results, and the advantage lasted on a delayed test.

126 words ・ CEFR B1

和訳を見る

なぜ on は「on the desk」「on the phone」「on sale」に出てくるのでしょうか。認知言語学は、これらの意味はでたらめではないと考えます。それぞれの前置詞には中心となる空間のイメージがあり、ほかの意味は比喩によってそこから広がっていくのです。on の場合、中心は「接触」や「支え」なので、絵は壁に on で掛かることができ、人は電話回線に on でつながることができます。

2018年の研究で、広東語を話す学習者64人がコンピューターで前置詞を練習しました。イメージ図付きのフィードバックを受けた学習者は、正誤だけを知らされた学習者よりも翻訳テストで成績がよくなりましたが、穴埋めテストでは差がありませんでした。81人の学習者を対象にした2024年の追試でも同様の結果が得られ、その優位は遅延テストでも続いていました。

4択リーディングクイズ

Q1. According to cognitive linguistics, how do prepositions get their many meanings?

Q2. On which test was there no difference between the groups in 2018?

Q3. Why is the 2024 study important?

重要単語

  • prepositionB1
    名詞前置詞"On" is one of the most common prepositions. pre-(前に)+position(置く)=名詞の前に置く語。入試の語法問題の頻出ジャンル。
  • polysemousC2
    形容詞多義的なMany English prepositions are polysemous. poly-(多くの)+sem(意味)。名詞 polysemy「多義性」。前置詞・基本動詞は特に多義。
  • schemaC1
    名詞図式・枠組み(スキーマ)A simple schema can show the core meaning of "over." 複数形 schemas / schemata。読解研究では「背景知識の枠組み」の意味でも使う。
  • metaphorB2
    名詞比喩・隠喩"In trouble" uses a container metaphor. meta-(越えて)+phor(運ぶ)。認知言語学では「時間はお金」のように日常語の多くが比喩でできていると考える。
  • spatialC1
    形容詞空間のSpatial meanings often extend to time. space の形容詞。at(点)・on(面)・in(容器)の空間イメージが時間表現(at 7, on Monday, in April)にも広がる。
  • core meaningB2
    名詞(句)中心となる意味(コア)Learn the core meaning first, then the extensions. core は「芯」。多義語はコアから理解すると覚える量が減る、というのが認知的アプローチの考え方。
  • elaborationC1
    名詞精緻化(情報を関連づけて深く処理すること)Elaboration makes new words easier to remember. elaborate「詳しく述べる・入念な」の名詞形。記憶研究で「意味づけて覚えると残る」理由として使われる。

動画でもっと知る

前置詞を「図」で教えたグループは、正誤だけを伝えたグループより翻訳テストの成績が良く、追試でも同じ傾向が出たらしい。on = 上、だけじゃない世界が見えてくる。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Boers & Demecheleer (1998) A cognitive semantic approach to teaching prepositions. ELT Journaldoi.org
  2. Tyler & Evans (2003) The Semantics of English Prepositions. Cambridge University Pressdoi.org
  3. Wong, Zhao & MacWhinney (2018) A cognitive linguistics application for second language pedagogy: The English preposition tutor. Language Learningdoi.org
  4. Wong & Prange (2024) A Bayesian approach to (re)examining learning effects of cognitive linguistics-inspired instruction. Studies in Second Language Acquisitiondoi.org
  5. Boers (2013) Cognitive Linguistic approaches to teaching vocabulary: Assessment and integration. Language Teachingdoi.org