語学・英語学習ホント

「え、もう一回言って?」が英語を伸ばす。会話の"聞き返し"の力を示したインタラクション仮説

「え、もう一回言って?」が英語を伸ばす。会話の"聞き返し"の力を示したインタラクション仮説

読む前に予想してみよう!

英語の説明を理解するには、あらかじめ文を簡単にしてもらうより、わからない所を聞き返せるほうが効果的だった

研究カード(どんな研究?)
対象
英語などの学習者
規模
16〜34人の実験+会話タスク研究のメタ分析
研究の種類
実験研究+メタ分析
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

会話で聞き返したり確認したりする「意味のやりとり」が、理解を助け、文法の発達も後押しする。実験では、やりとりに"参加した人"ほど伸びていた。

ひとことで言うとわからない時に聞き返すのは、はずかしくない。英語が伸びる近道!

もくじ
  1. ネイティブは無意識に「会話の形」を変えていた
  2. 実験:「やさしい文」より「聞き返せる会話」
  3. 理解だけでなく「文法」も伸びる
  4. まとめ

英会話で相手の言葉が聞き取れなかったとき、ついわかったふりをしてうなずいていませんか。

実はそれ、すごくもったいないことかもしれません。

アメリカの応用言語学者マイケル・ロングは、会話の中で「え、何て?」「〜ってこと?」と聞き返したり確認したりするやりとりこそが、言語習得を進める大事な仕組みだと考えました。これがインタラクション仮説です。

01ネイティブは無意識に「会話の形」を変えていた

ロングは1983年、英語のネイティブ同士の会話と、ネイティブと学習者の会話を比べました。

すると、学習者と話すとき、ネイティブは単に文を簡単にするだけではなく、会話のやりとり自体を変えていたのです。

  • 確認:「You mean the red one?(赤いほうってこと?)」
  • 聞き返し:「Sorry, what?(え、何?)」
  • 理解の確認:「Do you understand?(わかった?)」

こうした「意味のやりとり(意味の交渉)」によって、学習者にとって理解できるインプットが生まれる、というのがロングの考えです。

02実験:「やさしい文」より「聞き返せる会話」

「これのこと?」「いや、こっち」。すり合わせながら、意味の絵が完成していく
「これのこと?」「いや、こっち」。すり合わせながら、意味の絵が完成していく

03理解だけでなく「文法」も伸びる

では、やりとりは理解を助けるだけなのでしょうか。

研究者マッキーは1999年、英語学習者34人に、会話を通じて課題を解いてもらう実験をしました。対象は英語の疑問文の作り方です。

すると、やりとりに積極的に参加したグループは疑問文の発達段階が進んだのに対し、同じやりとりを横で見ていただけのグループはあまり伸びませんでした。聞き役ではなく、当事者になることが大事だったのです。

自分で聞き返し、言い直し、また伝え直す。そのやりとりの中で、学習者は自分の英語と相手の英語のズレに気づいていくと考えられています。

さらに、会話タスクの効果を調べた研究をまとめたメタ分析では、やりとりのある課題が文法や語彙の習得にプラスの効果を持ち、その効果はしばらくたったテストでも見られたと報告されています。

04まとめ

聞き返すのは「英語ができない証拠」ではなく、英語が身につくプロセスそのものでした。

次に英語でわからないことがあったら、うなずく代わりに、勇気を出して「Sorry?」。その一言が、あなたの英語を一段上に引き上げてくれます。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn 1983, the American applied linguist Michael Long compared conversations between native speakers with… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

In 1983, the American applied linguist Michael Long compared conversations between native speakers with conversations between native speakers and learners. He found that native speakers did not just simplify their sentences. They also changed the conversation itself, using confirmation checks such as 'You mean the red one?' and clarification requests such as 'Sorry, what?'.

Long argued that this negotiation of meaning makes input understandable. In 1987, Pica and colleagues tested 16 learners. Those who could freely ask questions while listening to instructions understood more than those who heard simplified instructions. The repetition and rephrasing that happened during the conversation seemed to help them most.

104 words ・ CEFR B1

和訳を見る

1983年、アメリカの応用言語学者マイケル・ロングは、ネイティブスピーカーどうしの会話と、ネイティブスピーカーと学習者の会話を比べました。彼は、ネイティブスピーカーが単に文を簡単にするだけではないことを発見しました。「赤いほうってこと?」のような確認や、「え、何?」

のような聞き返しを使って、会話そのものも変えていたのです。ロングは、この意味のやりとりがインプットを理解できるものにすると主張しました。1987年、ピカらは16人の学習者を調べました。指示を聞きながら自由に質問できた人は、簡単にした指示を聞いた人よりもよく理解しました。会話の中で起こった繰り返しや言い換えが、最も役立ったようです。

4択リーディングクイズ

Q1. What did Long find about native speakers talking with learners?

Q2. In the 1987 study, what seemed to help understanding most?

Q3. What advice would Long most likely give to learners?

重要単語

  • negotiation of meaningC1
    名詞(句)意味のやりとり・すり合わせNegotiation of meaning happens when we ask "What do you mean?" negotiation は「交渉」。意味をめぐって「交渉」するイメージ。第二言語習得の重要語。
  • clarification requestC1
    名詞(句)明確化の要求(聞き返し)"Sorry, could you say that again?" is a clarification request. clarify(はっきりさせる)の名詞 clarification。clear と同語源。
  • confirmation checkC1
    名詞(句)確認(〜ってこと?)"You mean next Monday?" is a confirmation check. confirm(確認する)の名詞形。confirmation email「確認メール」など日常でも使う。
  • interlocutorC1
    名詞対話の相手A patient interlocutor makes speaking easier. inter(間で)+locut(話す)。eloquent(雄弁な)と同語源。難関大の長文で見かける。
  • rephraseB2
    動詞言い換えるCould you rephrase that in simpler words? paraphrase とほぼ同義。入試の言い換え問題の考え方そのもの。
  • active participationB2
    名詞(句)積極的な参加Active participation helped them learn faster. participate in ~「~に参加する」。take part in ~ と言い換え可能。
  • simplifyB2
    動詞簡単にするThe teacher simplified the instructions. simple+-ify(~にする)。名詞 simplification。oversimplify(単純化しすぎる)も頻出。

動画でもっと知る

英会話で「Sorry?」と聞き返すのは恥じゃないらしい。言語学者ロングは、この“意味のやりとり”が習得を進めると提唱。実験でも、やさしく書き直した説明より、聞き返しながら聞いた説明のほうがよく理解できた。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Long (1983) Native speaker/non-native speaker conversation and the negotiation of comprehensible input, Applied Linguisticsdoi.org
  2. Pica, Young & Doughty (1987) The Impact of Interaction on Comprehension, TESOL Quarterlydoi.org
  3. Mackey (1999) Input, Interaction, and Second Language Development, Studies in Second Language Acquisitiondoi.org
  4. Keck et al. (2006) Investigating the empirical link between task-based interaction and acquisition: A meta-analysis, In Synthesizing Research on Language Learning and Teachingdoi.org