語学・英語学習ビミョー

「子どもは大人より早く外国語を覚える」はウソだった? 最初は大人が速い、でも…

「子どもは大人より早く外国語を覚える」はウソだった? 最初は大人が速い、でも…

読む前に予想してみよう!

外国語を学び始めて最初の数か月は、小さな子どもの方が大人より速く上達する

研究カード(どんな研究?)
対象
移住した子ども・大人の学習者
規模
数十人〜約67万人規模の縦断・横断研究
研究の種類
縦断研究・横断研究・レビュー
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

同じ期間で比べると、最初の数か月は大人や10代の方が子どもより速く伸びる。一方、長い年月で見ると、幼いころに始めた人の方が最終的に高いレベルに届きやすい。

ひとことで言うと大人はスタートダッシュが得意、子どもはゴールの高さが得意!

もくじ
  1. オランダに引っ越した英語話者を追跡すると
  2. 子どもの強みは「最終到達度」
  3. 教室で学ぶなら「年上スタート」が有利なことも
  4. まとめ

「子どもは外国語をスポンジのように吸収する」「大人になってからじゃ遅い」。英語教育の話になると、決まって出てくるフレーズです。

でも、ちょっと待ってください。研究者は昔から、「速さ」と「最終的なゴール」を分けて考えるべきだと指摘してきました。

そうして分けてみると、意外な事実が見えてきます。スタートダッシュは、むしろ大人の方が速いのです。

01オランダに引っ越した英語話者を追跡すると

「小さい子ほど速い」という予想とは、真逆の結果でした。

翌1979年には、クラッシェンらが当時の研究をまとめ、次の3つの一般的な傾向を示しています。

  • 同じ期間・同じ量の接触なら、大人は子どもより最初の段階で速く進む
  • 年上の子どもは、年下の子どもより速く進む
  • ただし、子どものうちに自然な環境で学び始めた人の方が、最終的には高いレベルに届きやすい

02子どもの強みは「最終到達度」

では、子どもの強みはどこにあるのでしょう。それが、何年もかけた先の「最終到達度」です。

スウェーデンのアブラハムソンとヒルテンスタムは2009年、スペイン語を母語としてスウェーデン語に「ネイティブ並み」と自負する195人を調べました。

ネイティブの審査員に聞かせると、12歳より前に始めた人の多くはネイティブだと判断されたのに、12歳以降に始めた人でそう判断されたのはごく一部。さらに、ネイティブと判断された人を細かい言語テストにかけると、遅く始めた人は誰もネイティブの範囲に入らなかったといいます。

約67万人のオンライン文法テストを分析した2018年の研究(ハーツホーンら)でも、ネイティブ並みの文法に届くには10歳ごろまでに始める必要がありそうだとされる一方、文法を学ぶ力そのものは10代後半まで高く保たれると推定されています。

大人は「スタートダッシュ型」、子どもは「長距離型」
大人は「スタートダッシュ型」、子どもは「長距離型」

03教室で学ぶなら「年上スタート」が有利なことも

さらに、スペインのムニョスは、授業で学ぶ時間が限られた環境では、早く始めた子が必ずしも有利にならないことを示しています(2008年)。

子どもの強みが出るのは、何千時間もの言語に浸かる環境があってこそ。教室での限られた時間では、理解力や勉強法を使いこなせる年上の学習者の方が効率よく伸びることがあるのです。

04まとめ

「子どもは大人より早く外国語を覚える」は、半分ウソ。最初の数か月なら、大人や10代の方が速いことが多いのです。

子どもの本当の強みは、長い時間をかけた先の「ゴールの高さ」。大人には大人の、子どもには子どもの勝ち方があります。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn a 1978 study, English speakers who had moved to the Netherlands were tested three times over a year. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

In a 1978 study, English speakers who had moved to the Netherlands were tested three times over a year. Adults and 12- to 15-year-olds improved fastest in the first months, while three- to five-year-olds scored lowest on every test.

So are adults better language learners than children? Not exactly. Researchers say we should separate the speed of learning from the final level reached. A 1979 review found that adults and older children progress faster at first.

But people who start as children in a natural setting usually reach a higher final level. A Swedish study looked at 195 people who considered themselves native-like. Most of those who started before age 12 were judged as native speakers. Very few of the later starters were.

123 words ・ CEFR B1

和訳を見る

1978年の研究で、オランダに引っ越した英語話者が1年間に3回テストを受けました。最初の数か月で最も速く伸びたのは大人と12〜15歳で、3〜5歳はどのテストでも最も低い点でした。

では、大人のほうが子どもより言語学習が得意なのでしょうか。そうとも言い切れません。研究者たちは、学習の速さと最終的に到達するレベルを分けて考えるべきだと言います。1979年のレビューによると、大人や年上の子どもは最初は速く進みます。

しかし、自然な環境で子どものうちに始めた人のほうが、たいてい最終的に高いレベルに達するのです。スウェーデンの研究は、自分はネイティブ並みだと考える195人を調べました。12歳より前に始めた人の多くはネイティブだと判断されました。それより後に始めた人で、そう判断されたのはごくわずかでした。

4択リーディングクイズ

Q1. What should we separate, according to researchers?

Q2. In the Swedish study, who was usually judged as native speakers?

Q3. What can we infer from the passage?

重要単語

  • rateB1
    名詞速さ・ペース・割合The rate of learning was faster in adults. at a rate of ~「~の割合で」。SLAでは rate(速さ)と ultimate attainment(最終到達度)を区別するのが基本。
  • ultimate attainmentC1
    名詞(句)最終到達度Ultimate attainment is higher for early starters. ultimate「究極の・最終的な」、attain「達成する」。年齢と習得の研究の中心概念。
  • critical periodC1
    名詞(句)臨界期The critical period idea is still debated. ある能力を身につけやすい限られた時期。言語ではどこまで「臨界」かが今も議論中。sensitive period(敏感期)とも。
  • immersionC1
    名詞(言語環境への)没入Immersion gives you thousands of hours of input. 子どもの「最終到達度の高さ」は、大量のインプットに浸かる環境があってこそ発揮されやすい。
  • native-likeB2
    形容詞ネイティブのようなFew late learners become fully native-like. -like は「~のような」を作る接尾辞(childlike, businesslike)。研究では判定基準しだいで結論が変わる。
  • absorbB2
    動詞吸収するChildren absorb new words from songs. be absorbed in ~「~に夢中になる」も頻出。ab-(離れて)+sorb(吸う)。
  • outpaceC1
    動詞~より速く進む・~を上回るAdults often outpace children at first. out-+動詞で「~をしのぐ」(outperform, outnumber, outlive)。入試長文で便利な型。

動画でもっと知る

4コマでわかる

「子どもは大人より早く外国語を覚える」はウソだった? 最初は大人が速い、でも…の4コマ漫画
オランダに引っ越した英語話者を調べたら、最初の数か月でオランダ語が一番伸びたのは12〜15歳と大人。3〜5歳はどのテストでも一番低かったらしい。「子どもの方が早い」は、半分だけホントだった。

押すと「マジかリスト」に保存されます

出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Krashen, Long & Scarcella (1979) Age, rate and eventual attainment in second language acquisition. TESOL Quarterlydoi.org
  2. Snow & Hoefnagel-Höhle (1978) The critical period for language acquisition: Evidence from second language learning. Child Developmentdoi.org
  3. Muñoz (2008) Symmetries and asymmetries of age effects in naturalistic and instructed L2 learning. Applied Linguisticsdoi.org
  4. Abrahamsson & Hyltenstam (2009) Age of onset and nativelikeness in a second language: Listener perception versus linguistic scrutiny. Language Learningdoi.org
  5. Hartshorne, Tenenbaum & Pinker (2018) A critical period for second language acquisition: Evidence from 2/3 million English speakers. Cognitiondoi.org