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「th」は後回しでいい? 日本人の発音、本当に直すべき音は“機能負担量”で決まっていた

「th」は後回しでいい? 日本人の発音、本当に直すべき音は“機能負担量”で決まっていた

読む前に予想してみよう!

発音の間違いはどれも、相手の理解に同じくらい悪い影響を与える

研究カード(どんな研究?)
対象
日本人英語学習者
規模
40人×2実験
研究の種類
発話の評価・相関研究
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

発音の間違いには通じにくさに響くものと響かないものがある。日本人学習者では v→b や l→r が理解度を下げ、th の影響は小さかった。

ひとことで言うと発音の間違いにも「大事な順番」がある。th より v と b の区別が先!

もくじ
  1. 「機能負担量」ってなに?
  2. カナダの研究:「重い間違い」は理解を大きく下げる
  3. 日本人学習者で確かめると……
  4. どんでん返し:「th はどうでもいい」ではない
  5. まとめ

英語の発音練習といえば、まず「th」。舌を歯にはさんで「スィンク」ではなく「think」……。日本人なら一度は鏡の前で練習したことがあるはずです。

でも、発音の研究者たちは「すべての間違いが同じように重いわけではない」と考えています。カギは「機能負担量(functional load)」という考え方でした。

01「機能負担量」ってなに?

機能負担量とは、ざっくり言えば「その2つの音を区別しないと、どれだけ多くの単語がごちゃまぜになるか」です。

例えば英語の l と r。light/right、glass/grass、collect/correct……区別しないと困る単語のペアが大量にあります。v と b も very/berry、vote/boat、vest/best など多数。

一方、th と s の区別だけで意味が変わるペア(think/sink など)は、それに比べると少なめです。さらに会話では文脈がほとんどを補ってくれます。

02カナダの研究:「重い間違い」は理解を大きく下げる

03日本人学習者で確かめると……

この考え方が日本人にも当てはまるのかを調べたのが、鈴木田と斎藤の研究(2019年オンライン公開)です。

つまり、日本人が限られた時間で発音を直すなら、th より先に v/b と l/r、というのが研究からの示唆です。

発音練習にも「優先順位」の付箋を
発音練習にも「優先順位」の付箋を

04どんでん返し:「th はどうでもいい」ではない

ただし、この結果を「th は直さなくていい」と読むのは早とちりです。

まず、研究で測っていたのは「理解のしやすさ」であって、「ネイティブっぽさ」ではありません。th の間違いは、なまりの印象には影響することがあります。

また、英国の言語学者ジェンキンスは、非ネイティブ同士の英語の会話を分析し、th を別の音で代用しても通じにくさにはあまりつながらない一方、子音の区別や強く読む位置などは大事だとする「リンガ・フランカ・コア」を提案しました(2002年)。ただしこれは会話データの観察にもとづく提案で、実験による検証はまだ途中です。

カンとモランの研究(2014年)は、口頭試験の評価に発音のどの特徴がどれだけ関わるかを調べました。ただ、評価は発音以外の要素にも左右されます。「機能負担量だけ見れば十分」というわけではないのです。

05まとめ

発音の間違いには「重い間違い」と「軽い間違い」がありました。限られた時間で通じやすさを上げたいなら、別の単語になってしまう音の区別から手をつけるのが近道です。

今日は鏡の前で「very」と「berry」を3回ずつ。上の歯が唇に当たっているか、チェックしてみましょう。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerJapanese learners often spend hours on the "th" sound. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Japanese learners often spend hours on the "th" sound. Research suggests that time might be better spent elsewhere. The key idea is called "functional load." It means how many words would become confused if two sounds were not kept apart.

Pairs such as l and r or v and b separate many words, like "light" and "right" or "vote" and "boat." Fewer words depend only on the difference between "th" and s. In a 2019 study, English speakers judged how easy it was to understand 40 Japanese learners.

Only errors in high-load pairs, such as v becoming b, lowered the scores. The result was repeated with a second group of 40 learners. So if your practice time is short, work on pairs like v and b first.

127 words ・ CEFR B1

和訳を見る

日本人学習者は「th」の音に何時間も費やしがちです。研究によると、その時間はほかに使ったほうがよいかもしれません。カギとなる考え方は「機能負担量」と呼ばれます。2つの音を区別しなかった場合に、どれだけ多くの単語が紛らわしくなるか、ということです。

lとr、vとbのような組は、「light」と「right」、「vote」と「boat」のように、非常に多くの単語を区別しています。「th」とsの違いだけに頼っている単語はそれより少ないのです。2019年の研究では、英語話者が日本人学習者40人の話の理解しやすさを評価しました。

評価を下げていたのは、vがbになるような、負担量の大きい組の間違いだけでした。この結果は、別の40人の学習者のグループでもくり返されました。ですから、練習時間が短いなら、vとbのような組から先に取り組みましょう。

4択リーディングクイズ

Q1. What does "functional load" refer to in the passage?

Q2. What did the 2019 study find?

Q3. Which of the following would the writer most likely recommend?

重要単語

  • functional loadC1
    名詞(句)機能負担量(その音の区別が担う仕事の多さ)The l/r contrast has a high functional load in English. 音声学・発音指導の用語。high / low functional load で「負担量が大きい/小さい」。区別できる最小対の多さで決まる。
  • comprehensibilityC1
    名詞理解のしやすさClear stress improves comprehensibility. comprehend(理解する)+ -ible + -ity。SLA では「聞き手がどれだけ楽に理解できるか」の主観評価を指し、accentedness(なまりの強さ)とは別物。
  • substitutionB2
    名詞置き換えUsing /b/ for /v/ is a common substitution. 動詞 substitute A for B「B の代わりに A を使う」は前置詞の向きに注意。入試頻出。
  • minimal pairC1
    名詞(句)ミニマルペア(1音だけ違う単語の組)"Very" and "berry" are a minimal pair. light/right、vote/boat など。音の区別を練習する定番の教材。機能負担量はミニマルペアの数をもとに考える。
  • priorityB1
    名詞優先順位Make the v/b contrast your first priority. prior(前の)から。top priority「最優先事項」、prioritize「優先順位をつける」もセットで。
  • contrastB2
    名詞(音の)対立、対比The contrast between l and r is hard for Japanese speakers. 名詞は CONtrast、動詞は conTRAST と強勢が移る。音声学では「意味を区別する音の違い」を指す。
日本人の英語発音、苦労して「th」を練習するより、「v」と「b」を区別するほうが通じやすさに効くらしい。間違えると別の単語になってしまう音ほど重要という「機能負担量」の考え方。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Munro & Derwing (2006) The functional load principle in ESL pronunciation instruction: An exploratory study. Systemdoi.org
  2. Suzukida & Saito (2019) Which segmental features matter for successful L2 comprehensibility? Revisiting and generalizing the pedagogical value of the functional load principle. Language Teaching Researchdoi.org
  3. Kang & Moran (2014) Functional loads of pronunciation features in nonnative speakers' oral assessment. TESOL Quarterlydoi.org
  4. Jenkins (2002) A sociolinguistically based, empirically researched pronunciation syllabus for English as an International Language. Applied Linguisticsdoi.org