語学・英語学習ホント

【再評価】地味なディクテーションが、リスニングの"穴"を見つける有力な練習だった

【再評価】地味なディクテーションが、リスニングの"穴"を見つける有力な練習だった

読む前に予想してみよう!

ディクテーションは、リスニングの点数アップにはほとんど役立たない古い練習だ

研究カード(どんな研究?)
対象
英語を外国語・第二言語として学ぶ人
規模
13の介入研究
研究の種類
メタ分析(音の解読訓練)
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

聞いた英語を書き取るディクテーションは、音から単語を切り出す力を鍛える。こうした「音の解読」訓練は、研究をまとめると聞き取りに中程度の効果があった。

ひとことで言うと書き取りをすると、自分が聞きのがしている音がまる見えになる!

もくじ
  1. 「わかる単語なのに聞き取れない」の正体
  2. 研究をまとめると「中くらいの効果」
  3. ディクテーションのいちばんの価値は「診断」
  4. まとめ

聞いた英語を、一語一語ノートに書き取るディクテーション。学校で一度はやったことがあるかもしれません。

地味で時間がかかり、「もっと楽しい勉強法があるのでは?」と思われがちな練習です。会話中心の授業が主流になってからは、時代遅れ扱いされることもありました。

ところが近年、リスニング研究の世界でディクテーションが再評価されています。理由は、多くの学習者がつまずいている「音の解読」を、ピンポイントで鍛えられるからです。

01「わかる単語なのに聞き取れない」の正体

リスニングには、大きく2つの処理があります。

  • 上からの処理:話題や背景知識から内容を予測する
  • 下からの処理:音を聞き分け、音の流れから単語を切り出す

英語の授業では、内容理解の問題を解く「上から」の練習が多くなりがちです。でも学習者の多くは、知っている単語なのに、つながった音になると聞き取れないという「下から」の段階でつまずいています。

ディクテーションは、この「下から」の処理を、ごまかしなく練習できる方法です。

02研究をまとめると「中くらいの効果」

個別の研究も見てみましょう。

イランの語学学校で初級の成人学習者を比べた研究では、通常の授業に加えて学期中に11回のディクテーションを行ったグループが、行わなかったグループよりリスニングの伸びが大きかったと報告されています。

中国の大学では、スマホのメッセージアプリ(WeChat)で8〜10人のグループを作り、毎日ディクテーションに取り組む仕組みを作ったところ、参加したクラスのリスニングの伸びが、一人で同じ練習をした比較クラスより大きくなりました。

書き取ると、聞き落としている「足跡」が見えてくる
書き取ると、聞き落としている「足跡」が見えてくる

03ディクテーションのいちばんの価値は「診断」

ディクテーションのよいところは、自分の弱点が目に見えることです。

答え合わせをすると、書けなかった部分にはパターンがあります。

  • 知らない単語だった(語彙の問題)
  • 知っている単語なのに、音がつながって聞こえなかった(音の変化の問題)
  • the・a・to などの短い語が抜けた(弱く読まれる語の問題)
  • 文法的にありえない語を書いた(文法の問題)

どこで落としているかがわかれば、次にやるべき練習が決まります。ただ何となく聞き流すより、ずっと効率的です。

04まとめ

ディクテーションは、派手さはないけれど、自分の耳の「穴」を正確に見つけてくれる練習です。

リスニングの点数が伸び悩んでいるなら、問題集を解く前に、1分の音声を書き取ってみてください。聞こえていなかった"何か"が、きっと見つかります。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerDictation means writing down exactly what you hear. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Dictation means writing down exactly what you hear. It looks old-fashioned, but researchers are looking at it again. Listening involves two kinds of processing. One is predicting meaning from what you already know.

The other is recognizing sounds and picking out words from continuous speech. Many learners have trouble with the second kind. They know a word on paper but cannot catch it when it is linked to other words in fast speech.

In 2021, researchers in Hong Kong analyzed 13 studies on this kind of training, mainly dictation and pronunciation practice, and found a moderate positive effect on listening. Dictation also works as a diagnostic tool. When you check your answers, you can see whether you missed an unknown word, linked sounds, a short weak word, or grammar.

129 words ・ CEFR B1

和訳を見る

ディクテーションとは、聞いたとおりに正確に書き取ることです。古くさく見えますが、研究者たちはあらためてそれに注目しています。リスニングには2種類の処理が関わっています。1つは、すでに知っていることから意味を予測する処理です。

もう1つは、音を認識して、切れ目のない話し言葉から単語を切り出す処理です。多くの学習者は2つ目の処理でつまずいています。紙の上では知っている単語なのに、速い話し言葉でほかの単語とつながると聞き取れないのです。

2021年、香港の研究者たちはこの種の訓練(主にディクテーションと発音練習)に関する13の研究を分析し、リスニングに中程度のプラスの効果を見出しました。ディクテーションは診断ツールとしても役立ちます。答え合わせをすると、聞きのがしたのが知らない単語なのか、つながった音なのか、短く弱い語なのか、それとも文法なのかがわかるのです。

4択リーディングクイズ

Q1. Which kind of listening processing do many learners struggle with?

Q2. What did the 2021 analysis find?

Q3. Why does the writer call dictation a "diagnostic tool"?

重要単語

  • dictationB2
    名詞ディクテーション・書き取りWe did a short dictation at the start of class. dictate「口述する・命令する」の名詞形。dictator(独裁者)も同語源で「言葉で命じる人」。
  • decodingC1
    名詞解読(音の流れを単語として認識すること)Decoding fast speech is hard for beginners. de-(解く)+code(暗号)。リスニングでは「音→単語」の変換。読みでは「文字→音」の変換を指す。
  • bottom-up processingC1
    名詞(句)ボトムアップ処理(音・語など小さい単位からの処理)Dictation trains bottom-up processing. top-down processing(知識・文脈から予測する処理)と対。リスニング指導論の基本用語。
  • transcriptB2
    名詞スクリプト・文字起こしCheck your answers with the transcript. trans-(移す)+script(書く)。動詞 transcribe「書き起こす」。英語学習では script とも言う。
  • weak formC1
    名詞(句)弱形(to, of, and などが弱く短く発音される形)"And" often becomes a weak form like "n". 機能語は文中で弱く読まれるので聞き落としやすい。rock 'n' roll の 'n' が典型例。
  • diagnosticC1
    形容詞診断の・診断に役立つA diagnostic test shows your weak points. diagnose「診断する」の形容詞。dia-(通して)+gnosis(知る)。医療以外にも学習の文脈で使う。
  • connected speechC1
    名詞(句)連続した話し言葉(音がつながる・消える自然な発話)Words change their sounds in connected speech. linking(連結)・elision(脱落)・assimilation(同化)などの音変化をまとめた概念。

動画でもっと知る

昔ながらの「ディクテーション(書き取り)」、実は研究の評価は悪くない。音を正確に聞き取る訓練を調べた研究をまとめると、聞き取りの力に中くらいの効果。しかも“自分がどこで聞き落としているか”が一発でわかる。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Kiany & Shiramiry (2002) The effect of frequent dictation on the listening comprehension ability of elementary EFL learners, TESL Canada Journaldoi.org
  2. Jia & Hew (2021) Toward a set of design principles for decoding training: A systematic review of studies of English as a foreign/second language listening education, Educational Research Reviewdoi.org
  3. Jia & Hew (2019) Supporting lower-level processes in EFL listening: the effect on learners' listening proficiency of a dictation program supported by a mobile instant messaging app, Computer Assisted Language Learningdoi.org
  4. Siegel & Siegel (2015) Getting to the bottom of L2 listening instruction: Making a case for bottom-up activities, Studies in Second Language Learning and Teachingdoi.org