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脳と心理ホント

緊張したら自分を「名前」で呼べ。ミシガン大の実験でわかった冷静になる話し方

緊張したら自分を「名前」で呼べ。ミシガン大の実験でわかった冷静になる話し方

読む前に予想してみよう!

人は自分の悩みより、他人の悩みに対してのほうが賢い判断ができる傾向がある

研究カード(どんな研究?)
対象
大学生・成人
規模
1研究あたり数十〜数百人
研究の種類
実験研究(脳波・fMRIを含む)
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

心の中で「私は」ではなく「〇〇は大丈夫」と自分の名前で語りかけると、スピーチ後の嫌な気分が小さくなり、スピーチの評価も上がった。

ひとことで言うと自分を名前で呼ぶと、友だちを応援するみたいに冷静になれる!

もくじ
  1. 「私」を「名前」に変えただけで嫌な気分が軽くなった
  2. 名前で呼ぶと、自分を少し離れた所から見られる
  3. 名前で呼ぶ方法は、脳に大きな負担をかけずに効いた
  4. 人は他人のことのほうが賢く考えられる。それを使う
  5. まとめ

友だちが「明日の発表、緊張でやばい」と言ってきたら、あなたはきっと落ち着いてアドバイスできますよね。「大丈夫、練習したじゃん」。

ところが自分のことになると、とたんに頭が真っ白。この「他人には冷静、自分にはパニック」のギャップを逆手にとる、とても簡単なワザがあります。

心の中で、自分のことを「私」ではなく「名前」で呼ぶ。たったこれだけです。

01「私」を「名前」に変えただけで嫌な気分が軽くなった

話す内容を変えたわけではありません。「落ち着け」を「〇〇、落ち着け」に変えただけ。主語を変えただけなのに、気持ちの整い方が違ったのです。

02名前で呼ぶと、自分を少し離れた所から見られる

なぜ効くのか。研究者たちはこれを自己距離化(セルフ・ディスタンシング)で説明しています。

自己距離化とは、自分のことを、少し離れた所から見るように考えること。「私」と言っている間は、自分の目の前の不安で頭がいっぱいです。名前で呼ぶと、友だちのことを考えるときのように、一歩引いて自分を見られるのです。

名前で呼ぶと、少し離れた所から自分を見られる
名前で呼ぶと、少し離れた所から自分を見られる

03名前で呼ぶ方法は、脳に大きな負担をかけずに効いた

「でも、気持ちを抑えるのってエネルギーがいるのでは?」――そこも調べられています。

調べたのは、米ミシガン州立大のモーザーと、ミシガン大のクロスらのチームです(Scientific Reports, 2017)。研究は2つありました。

1つめは脳波の研究です。つらい画像を見ながら、自分の名前で考えてもらいました。すると、感情の反応を表す脳波の成分が、1秒もたたないうちに小さくなりました。

2つめはfMRI(脳の血流の変化から活動を見る装置)の研究です。嫌な思い出を、名前で振り返ってもらいました。このとき、意志の力で頑張って感情を抑えるときに働く脳の領域は、余計に働いていませんでした。

つまり、歯を食いしばって我慢しなくてもよいのかもしれません。視点を切り替えるだけで、自然とブレーキがかかる可能性があるのです。

04人は他人のことのほうが賢く考えられる。それを使う

古代イスラエルの王ソロモンは、知恵で有名です。他人の相談には見事な判断を下したのに、自分の人生では判断を誤ることが多かったと伝えられています。

「他人のことなら賢いのに、自分のことだとダメ」。このズレを調べたのが、心理学者グロスマンとクロスです(Psychological Science, 2014)。2人はこれを「ソロモンのパラドックス」と名づけました。テーマは、恋人や夫婦の問題です。

結果、人は自分のことより、他人のことのほうが賢く考えられると分かりました。ここでいう「賢く」とは、いろいろな立場から考えたり、自分の知識の限界を認めたりできることです。この傾向は、若い人でも高齢者でも同じでした。そして、自分の悩みでも三人称の視点で考えてもらうと、その差が消えたのです。

05まとめ

緊張や不安のど真ん中にいるときこそ、自分から少し距離をとってみる。主語を「私」から「名前」に変えるだけで、友だちを励ますときのように、落ち着いて自分を見られるかもしれません。

次の発表の直前、心の中でそっと呼びかけてみてください。「〇〇、いつもどおりで大丈夫」。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerWhen a friend is nervous, we can often give calm advice, but our own worries are much harder to handle. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

When a friend is nervous, we can often give calm advice, but our own worries are much harder to handle. Psychologist Ethan Kross and his team at the University of Michigan asked participants to prepare a public speech in just five minutes. After the preparation, one group thought about themselves using "I," while another group used their own name or "you." The second group felt less shame and spent less time worrying about their performance afterwards.

In addition, people who judged the speeches rated them as better. The researchers explain this with an idea called self-distancing. When you use your name, you can see yourself from a little distance, just as you do when you think about a friend.

119 words ・ CEFR B1

和訳を見る

友だちが緊張しているとき、私たちは落ち着いたアドバイスをできることが多いのに、自分自身の悩みとなるとずっと扱いにくくなります。ミシガン大学の心理学者イーサン・クロスと研究チームは、参加者にわずか5分の準備で人前のスピーチをするよう求めました。準備の後、あるグループは「私」を使って自分のことを考え、別のグループは自分の名前や「あなた」を使いました。後者のグループは恥ずかしさが小さく、終わった後に自分の出来をくよくよ考える時間も短くなりました。

さらに、スピーチを評価した人たちは、そちらのスピーチのほうを高く評価しました。研究者たちはこれを「自己距離化」という考え方で説明しています。自分の名前を使うと、友だちのことを考えるときと同じように、少し離れた所から自分を見ることができるのです。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the main idea of the passage?

Q2. Which statement is true about the group that used their name or "you"?

Q3. What does the comparison with "a friend" in the last sentence suggest?

重要単語

  • self-talkB1
    名詞自分への語りかけPositive self-talk can help before a test. self-(自分)+talk。positive / negative self-talk の形でよく使われる。
  • self-distancingC1
    名詞自己距離化Self-distancing lets you see your problem like an outsider. distance(距離をとる)の動名詞。心理学の専門語で、keep one's distance「距離を保つ」と関連づけて覚える。
  • anxietyB2
    名詞不安Many students feel anxiety before giving a speech. 形容詞は anxious。be anxious about ~「~を心配する」と be anxious to do「~したがる」の区別は入試頻出。
  • perspectiveB2
    名詞視点、ものの見方Try to see the situation from a different perspective. per-(通して)+spect(見る)。from a ~ perspective / put things in perspective が定番。
  • wise reasoningC1
    名詞(句)賢明な推論Wise reasoning means considering many viewpoints. reason(推論する)の名詞形 reasoning。複数の視点を考え、自分の知識の限界を認める考え方を指す。
  • ruminationC1
    名詞反すう(同じことをくよくよ考え続けること)Rumination after a mistake can make you feel worse. 元は牛などが食べ物を「反すうする」意味。動詞 ruminate on ~「~をくよくよ考える」。

動画でもっと知る

緊張したときは心の中で「私なら大丈夫」じゃなくて「〇〇なら大丈夫」と自分の名前で話しかけるといいらしい。ミシガン大の実験で、スピーチ後の嫌な気分が小さくなって評価まで上がったとか。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Kross et al. (2014) Self-talk as a regulatory mechanism: how you do it matters, Journal of Personality and Social Psychologydoi.org
  2. Moser et al. (2017) Third-person self-talk facilitates emotion regulation without engaging cognitive control: converging evidence from ERP and fMRI, Scientific Reportsdoi.org
  3. Grossmann & Kross (2014) Exploring Solomon's paradox: self-distancing eliminates the self-other asymmetry in wise reasoning about close relationships in younger and older adults, Psychological Sciencedoi.org
  4. Kross & Ayduk (2017) Self-distancing: theory, research, and current directions, Advances in Experimental Social Psychologydoi.org