脳と心理ウソ

デジャヴは「予知」じゃなかった。脳の"記憶チェック機能"が見せる不思議な錯覚

デジャヴは「予知」じゃなかった。脳の"記憶チェック機能"が見せる不思議な錯覚

読む前に予想してみよう!

デジャヴを経験したことがある人は、少数派だ

研究カード(どんな研究?)
対象
一般の人・大学生・てんかん患者
規模
調査のレビュー+数十〜百人規模のVR実験
研究の種類
レビュー・実験研究
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

「前にも見た気がする」デジャヴ。予知や前世ではなく、見覚え感(親近感)が記憶の中身と食い違ったときに起きる錯覚だと考えられている。

ひとことで言うとデジャヴは未来予知じゃなくて、脳の「見たことある」ランプの点きまちがい!

もくじ
  1. 10人に6人が経験している
  2. カギは「見覚えランプ」と「中身の検索」のズレ
  3. 「次に何が起きるか分かる気がする」の正体
  4. 脳の病気と関係あるの?
  5. まとめ

初めて来たはずの駅のホーム。なのに「あれ、この場面、前にも見たことある…」。

この奇妙な感覚デジャヴ(フランス語で「すでに見た」)は、昔から予知夢や前世の記憶と結びつけて語られてきました。でも、記憶の研究者たちが実験室でこの現象を「作り出す」ことに挑戦した結果、見えてきたのはもっと地に足のついた、でもやっぱり不思議な脳の姿でした。

0110人に6人が経験している

まず、デジャヴは珍しい体験ではありません。

米サザンメソジスト大の心理学者アラン・ブラウンが100年以上分の調査をまとめたレビューでは、およそ6割の人がデジャヴを経験したことがあると見積もられました(Psychological Bulletin, 2003)。そして興味深いことに、若い人ほど多く、年齢とともに減っていく傾向があります。疲れやストレスがあるときに起きやすく、学歴や所得の高い人、旅行をよくする人に多いという報告も。ただし多くは「思い出して答える」アンケートによるもので、正確な割合は調査によってばらつきます。

「脳が衰えると起こる」のではなく、むしろ逆なのが面白いところです。

02カギは「見覚えランプ」と「中身の検索」のズレ

私たちが何かを思い出すとき、脳では2種類の働きが動いています。

  • 親近感:「なんか見たことある」というランプが点く感覚
  • 想起:「いつ、どこで見たか」という中身を具体的に思い出す

デジャヴは、親近感のランプだけが強く点いて、中身の検索が空振りしたときに起こる、という説が有力です。ランプは「知ってる!」と叫んでいるのに、引き出しを探しても何も出てこない。そのチグハグさが、あの不気味な感覚を生むと考えられています。

つまり、似た「レイアウト」に脳が反応してランプを点けたのに、元ネタの記憶は引き出せない。それがデジャヴの正体の一つ、というわけです。

中身が違っても「配置」が似ていると、脳は見覚えランプを点けてしまう
中身が違っても「配置」が似ていると、脳は見覚えランプを点けてしまう

03「次に何が起きるか分かる気がする」の正体

デジャヴの最中に「この後どうなるか分かる!」と感じる人もいます。これこそ予知説の根拠になりがちな部分です。

クリアリーらはこれも実験しました(Psychological Science, 2018)。VRの中の道を進み、次の曲がり角で右か左かを当てさせたのです。結果は、デジャヴを感じたときほど参加者は「次が分かる気がする」と強く感じたけれど、実際に正しく当てる確率は偶然と変わらなかったのです。予知の「感覚」はあっても、予知の「能力」はなかった、ということになります。

04脳の病気と関係あるの?

側頭葉てんかんという病気の一部の人は、発作の前ぶれとしてデジャヴのような感覚を体験することがあります。フランスの研究チームが、手術前の検査で脳に電極を入れた患者さんの脳を弱い電気で刺激したところ、側頭葉の内側にある嗅内皮質などの部分を刺激したときにデジャヴが起きやすかったと報告しています(Neurology, 2004)。記憶に関わる側頭葉(耳の奥あたりにある脳の部分)が、デジャヴにも関わっているヒントになりました。

ただし、たまに起こるデジャヴは健康な人にごく普通にある体験です。

05まとめ

デジャヴは、未来からのメッセージではなく、脳の「見覚えチェック機能」が一瞬だけ空回りした瞬間でした。

一部の研究者は、デジャヴは「見覚えがある」という感覚と「でも初めてのはず」という事実の食い違いに、脳が自分で気づいている「健全なエラーチェック」の表れではないか、とも考えています(まだ仮説の段階です)。次にデジャヴが来たら、「お、今わたしの脳が自己点検してるな」と思ってみてください。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerDéjà vu means "already seen" in French. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Déjà vu means "already seen" in French. It is the strange feeling that a new situation has happened before. A review of many surveys estimated that about 60 percent of people have had this feeling, and it happens more often to younger people.

Scientists think it is a kind of memory illusion. Our memory uses two different processes. One is a feeling of familiarity. The other is the recall of details, such as when and where something happened.

Déjà vu may occur when the feeling of familiarity is strong but recall fails. In virtual reality experiments, people were more likely to feel déjà vu when a new room had the same furniture layout as a room they had seen earlier but could not remember.

124 words ・ CEFR B1

和訳を見る

デジャヴはフランス語で「すでに見た」という意味です。新しい状況なのに、以前にも起きたことがあるという奇妙な感覚のことです。多くの調査をまとめたレビューでは、約60パーセントの人がこの感覚を経験したことがあると見積もられ、若い人ほど多く起こります。

科学者たちは、これを記憶の錯覚の一種だと考えています。私たちの記憶は、2つの異なる働きを使っています。一つは、見覚えがあるという感覚です。もう一つは、いつ・どこで起きたかといった詳細を思い出すことです。

デジャヴは、見覚えの感覚は強いのに、思い出すことに失敗したときに起こるのかもしれません。バーチャルリアリティの実験では、新しい部屋の家具の配置が、以前に見たのに思い出せない部屋と同じだったとき、人々はデジャヴを感じやすくなりました。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the main idea of the passage?

Q2. When were people more likely to feel déjà vu in the experiments?

Q3. Which statement about déjà vu is true according to the passage?

重要単語

  • familiarityB2
    名詞親近感、見覚えA strong sense of familiarity can be misleading. familiar(見覚えのある)の名詞形。be familiar with ~「~をよく知っている」は入試の超定番。
  • recallB2
    動詞思い出すShe could not recall where she had seen him. re(再び)+call(呼ぶ)。名詞では製品の「回収(リコール)」の意味もある。
  • premonitionC1
    名詞予感Some people feel a premonition during déjà vu. pre(前もって)+monition(警告)。have a premonition of ~「~の予感がする」。
  • configurationC1
    名詞配置、構成The configuration of the furniture felt familiar. パソコンの「設定(config)」もこの語。figure(形)が語源に含まれる。
  • temporal lobe epilepsyC1
    名詞(句)側頭葉てんかんSome people with temporal lobe epilepsy report déjà vu before a seizure. epilepsy は「てんかん」。seizure(発作)とセットで医学系の英文に出る。
  • illusionB2
    名詞錯覚、幻想Déjà vu seems to be a memory illusion. optical illusion「目の錯覚」。allusion(言及)とつづりが似ているので注意。

動画でもっと知る

「この景色、前にも見た…」というデジャヴ、予知能力じゃなくて脳の「見覚えアラーム」の誤作動らしい。しかも若い人ほど多く、年とともに減っていくんだとか。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Brown (2003) A review of the déjà vu experience, Psychological Bulletindoi.org
  2. Cleary et al. (2012) Familiarity from the configuration of objects in 3-dimensional space and its relation to déjà vu: a virtual reality investigation, Consciousness and Cognitiondoi.org
  3. Cleary & Claxton (2018) Déjà vu: an illusion of prediction, Psychological Sciencedoi.org
  4. Bartolomei et al. (2004) Cortical stimulation study of the role of rhinal cortex in déjà vu and reminiscence of memories, Neurologydoi.org