デジャヴは「予知」じゃなかった。脳の"記憶チェック機能"が見せる不思議な錯覚

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デジャヴを経験したことがある人は、少数派だ
過去の調査をまとめると、およそ6割の人が経験したことがあると見積もられている。
- 対象
- 一般の人・大学生・てんかん患者
- 規模
- 調査のレビュー+数十〜百人規模のVR実験
- 研究の種類
- レビュー・実験研究
- 確かさ
- ★★★☆☆
「前にも見た気がする」デジャヴ。予知や前世ではなく、見覚え感(親近感)が記憶の中身と食い違ったときに起きる錯覚だと考えられている。
ひとことで言うとデジャヴは未来予知じゃなくて、脳の「見たことある!」という感覚のカン違い!
初めて来たはずの駅のホーム。なのに「あれ、この場面、前にも見たことある…」。
この奇妙な感覚デジャヴ(フランス語で「すでに見た」)は、昔から予知夢や前世の記憶と結びつけて語られてきました。でも記憶の研究者たちは、実験室でこの現象を「作り出す」ことに挑戦しました。そこから見えてきたのは、もっと現実的で、でもやっぱり不思議な脳の姿でした。
0110人に6人ほどが経験している
まず、デジャヴは珍しい体験ではありません。
米サザンメソジスト大の心理学者アラン・ブラウンは、100年以上にわたる調査をまとめました(Psychological Bulletin, 2003)。このまとめでは、およそ6割の人がデジャヴを経験したことがあると見積もられています。年齢別に見ると、若い人ほど多く、年齢とともに減っていく傾向があります。疲れやストレスがあるときに起きやすく、学歴や所得の高い人、旅行をよくする人に多いという報告もあります。ただし多くは「思い出して答える」アンケートによるもので、正確な割合は調査によってばらつきます。
つまりデジャヴは、「脳が衰えると起こる」ものではありません。傾向としては、むしろ逆です。
02「見たことある」感じと、具体的な記憶がかみ合わない
私たちが何かを思い出すとき、脳では2種類の働きが動いています。
- 親近感:「なんか見たことある」と感じること
- 想起:「いつ、どこで見たか」という中身を具体的に思い出す
デジャヴは、「見たことある」という感覚だけが強く起きて、「いつ、どこで」が思い出せないときに起こる、という説が有力です。知っている気がするのに、元の記憶が何も出てこない。そのチグハグさが、あの不気味な感覚を生むと考えられています。
似た配置に脳が「見たことある」と反応したのに、元の部屋の記憶は思い出せない。これがデジャヴの正体の一つと考えられています。

03「次に何が起きるか分かる気がする」の正体
デジャヴの最中に「この後どうなるか分かる!」と感じる人もいます。これこそ予知説の根拠になりがちな部分です。
クリアリーらはこれも実験しました(Psychological Science, 2018)。VRの中の道を進み、次の曲がり角で右か左かを当てさせたのです。すると、デジャヴを感じたときは、「次が分かる気がする」という感覚が強くなりました。ところが、実際に正しく当てる確率は偶然と変わらなかったのです。予知の「感覚」はあっても、予知の「能力」はなかった、ということになります。
04脳の病気と関係あるの?
側頭葉てんかんという病気の人の一部は、発作の前ぶれとしてデジャヴのような感覚を体験することがあります。フランスの研究チームは、手術前の検査で脳に電極を入れた患者さん24人で、脳を弱い電気で刺激しました(Neurology, 2004)。すると、側頭葉の内側にある嗅内皮質という部分を刺激したときに、デジャヴが起きやすかったのです。側頭葉(耳の奥あたりにある脳の部分)は記憶に関わる場所です。その側頭葉がデジャヴにも関わっているというヒントになりました。
ただし、たまに起こるデジャヴは健康な人にごく普通にある体験です。
05まとめ
デジャヴは未来からのメッセージではなく、脳の「見覚えチェック」が一瞬ずれたときに起きる錯覚だと考えられています。
一部の研究者は、デジャヴは脳が記憶を点検しているしるしではないか、とも考えています(まだ仮説の段階です)。「見覚えがある」という感覚と、「でも初めてのはず」という事実の食い違いに、脳が自分で気づいているというのです。次にデジャヴが来たら、「お、今わたしの脳が自己点検してるな」と思ってみてください。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerDéjà vu means "already seen" in French.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Have you ever felt, "I have seen this place before," in a new place? This feeling is called déjà vu. About six in ten people have had it.
Some people think it shows the future, but scientists do not agree. They think the brain feels that something is familiar, but it cannot find the old memory. Déjà vu may be a small mistake in the brain's memory check.
68 words ・ CEFR A2
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初めての場所で「ここは前にも見たことがある」と感じたことはありますか。この感覚はデジャヴと呼ばれます。約10人に6人が経験したことがあります。
それが未来を示していると考える人もいますが、科学者たちは同意しません。脳は何かに見覚えがあると感じているのに、古い記憶を見つけられないのだと考えています。デジャヴは、脳の記憶チェックの小さなまちがいなのかもしれません。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
デジャヴとは何か、そしてなぜ起きるのかを説明しているので A。
Q2. About how many people have had déjà vu?
About six in ten people have had it とあるので D。
Q3. In this passage, "familiar" means ...
familiar は「見覚えのある、よく知っている」。正解は B。
Déjà vu means "already seen" in French. It is the strange feeling that a new situation has happened before. A review of many surveys estimated that about 60 percent of people have had this feeling, and it happens more often to younger people.
Scientists think it is a kind of memory illusion. Our memory uses two different processes. One is a feeling of familiarity. The other is the recall of details, such as when and where something happened.
Déjà vu may occur when the feeling of familiarity is strong but recall fails. In virtual reality experiments, people were more likely to feel déjà vu when a new room had the same furniture layout as a room they had seen earlier but could not remember.
124 words ・ CEFR B1
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デジャヴはフランス語で「すでに見た」という意味です。新しい状況なのに、以前にも起きたことがあるという奇妙な感覚のことです。多くの調査をまとめたレビューでは、約60パーセントの人がこの感覚を経験したことがあると見積もられ、若い人ほど多く起こります。
科学者たちは、これを記憶の錯覚の一種だと考えています。私たちの記憶は、2つの異なる働きを使っています。一つは、見覚えがあるという感覚です。もう一つは、いつ・どこで起きたかといった詳細を思い出すことです。
デジャヴは、見覚えの感覚は強いのに、思い出すことに失敗したときに起こるのかもしれません。バーチャルリアリティの実験では、新しい部屋の家具の配置が、以前に見たのに思い出せない部屋と同じだったとき、人々はデジャヴを感じやすくなりました。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main idea of the passage?
Scientists think it is a kind of memory illusion. とあり、記憶の2つの働きのズレで説明しているので C。
Q2. When were people more likely to feel déjà vu in the experiments?
the same furniture layout as a room they had seen earlier but could not remember とあるので B。C は「思い出せない」と矛盾。
Q3. Which statement about déjà vu is true according to the passage?
it happens more often to younger people とあるので D。約60パーセントが経験するので A は誤り。
About 60 percent of people have had déjà vu, the eerie sense that a new moment has been lived before, according to a 2003 review of more than a century of surveys. It is more common in the young and in people who are tired or stressed. Such figures depend on how survey questions are worded. It has long been linked to premonitions or past lives, but memory researchers see it differently.
A leading theory separates familiarity, the vague sense of having met something before, from recollection of specific details. Déjà vu may happen when familiarity fires strongly but recollection fails. In a 2012 virtual reality study, participants were more likely to report déjà vu when a new scene had the same spatial layout as an earlier one they could not recall.
In a 2018 follow-up, during déjà vu, participants felt more confident that they could predict the next turn on a virtual path, but their accuracy stayed at chance. Researchers disagree on whether lab-made déjà vu is the same as the everyday kind. In epilepsy patients, stimulating the medial temporal lobe, a memory region, can trigger déjà vu.
189 words ・ CEFR B2
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100年以上にわたる調査をまとめた2003年のレビューによると、約60パーセントの人がデジャヴ、つまり新しい瞬間をすでに経験したことがあるという不気味な感覚を経験しています。若い人や、疲れていたりストレスがあったりする人に多く起こります。ただし、こうした数字は調査の質問の言い回しによって変わります。デジャヴは長い間、予感や前世と結びつけられてきましたが、記憶の研究者たちは別の見方をしています。
有力な理論は、何かに前に出会ったことがあるというぼんやりした感覚である「親近感」と、具体的な詳細の「想起」とを分けて考えます。デジャヴは、親近感が強く働いているのに想起が失敗したときに起こるのかもしれません。2012年のバーチャルリアリティ研究では、新しい場面が、思い出せない以前の場面と同じ空間配置を持っているとき、参加者はデジャヴを報告しやすくなりました。
2018年の続編の研究では、デジャヴを感じているときには、仮想の道で次の曲がり角を予測できるという参加者の自信が高まっていましたが、正答率は偶然のレベルのままでした。実験室で起こしたデジャヴが日常のデジャヴと同じものかどうかについては、研究者の意見が分かれています。てんかん患者では、記憶に関わる領域である内側側頭葉を刺激すると、デジャヴが起こることがあります。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main purpose of the passage?
予感や前世ではなく、記憶の仕組み(親近感と想起のズレ)でデジャヴを説明しているので A。
Q2. What did the 2018 study find?
during déjà vu, participants felt more confident ..., but their accuracy stayed at chance とあるので C。
Q3. Which point does the author present as still uncertain?
Researchers disagree on whether lab-made déjà vu is the same as the everyday kind とあるので B。
重要単語
- familiarityB2名詞親近感、見覚えA strong sense of familiarity can be misleading.
familiar(見覚えのある)の名詞形。be familiar with ~「~をよく知っている」は入試の超定番。 - recallB2動詞思い出すShe could not recall where she had seen him.
re(再び)+call(呼ぶ)。名詞では製品の「回収(リコール)」の意味もある。 - premonitionC1名詞予感Some people feel a premonition during déjà vu.
pre(前もって)+monition(警告)。have a premonition of ~「~の予感がする」。 - configurationC1名詞配置、構成The configuration of the furniture felt familiar.
パソコンの「設定(config)」もこの語。figure(形)が語源に含まれる。 - temporal lobe epilepsyC1名詞(句)側頭葉てんかんSome people with temporal lobe epilepsy report déjà vu before a seizure.
epilepsy は「てんかん」。seizure(発作)とセットで医学系の英文に出る。 - illusionB2名詞錯覚、幻想Déjà vu seems to be a memory illusion.
optical illusion「目の錯覚」。allusion(言及)とつづりが似ているので注意。
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「この景色、前にも見た…」というデジャヴ、予知能力じゃなくて脳の「見覚えアラーム」の誤作動らしい。しかも若い人ほど多く、年とともに減っていくんだとか。
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出典・参考文献(4件)タップで表示
- Brown (2003) A review of the déjà vu experience, Psychological Bulletindoi.org
- Cleary et al. (2012) Familiarity from the configuration of objects in 3-dimensional space and its relation to déjà vu: a virtual reality investigation, Consciousness and Cognitiondoi.org
- Cleary & Claxton (2018) Déjà vu: an illusion of prediction, Psychological Sciencedoi.org
- Bartolomei et al. (2004) Cortical stimulation study of the role of rhinal cortex in déjà vu and reminiscence of memories, Neurologydoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。













