脳と心理ビミョー

イヌの大脳の神経細胞は、ネコの約2倍だった。でも「イヌの方が賢い」とは言い切れない理由

イヌの大脳の神経細胞は、ネコの約2倍だった。でも「イヌの方が賢い」とは言い切れない理由

読む前に予想してみよう!

ヒグマの大脳皮質はネコの約10倍の重さだが、神経細胞の数はネコとほぼ同じだった

研究カード(どんな研究?)
対象
食肉目8種(イヌ・ネコ・ライオンなど)
規模
各種1〜2個体
研究の種類
脳細胞の計数研究
確かさ
★★☆☆☆
3秒でわかる

イヌの大脳皮質の神経細胞は約4〜6億個、ネコは約2.5億個。ただし調べたのはイヌ2頭・ネコ1匹で、賢さの比べ方も単純じゃない。

ひとことで言うとイヌの脳の細胞はネコの約2倍。でも、どっちが賢いかは別の話!

もくじ
  1. 脳を「スープ」にして数える
  2. 結果:イヌはネコの約2倍
  3. なぜクマは「脳が大きいのに少ない」?
  4. でも「イヌの方が賢い」とは言い切れない
  5. まとめ

イヌ派か、ネコ派か。永遠のテーマです。

そんな論争に、ちょっと変わった角度から"データ"を持ち込んだ研究があります。イヌやネコの脳の神経細胞を、実際に数えたのです。

01脳を「スープ」にして数える

神経細胞は、脳全体で何億〜何百億個もあります。1個ずつ数えるのは無理そうですが、ブラジル出身の神経科学者エルクラーノ=ウーゼル(Herculano-Houzel)さんは、うまい方法を考えました。

脳を溶かして細胞の核だけが浮かぶ均一な"スープ"にし、その一部に含まれる核を数えて、全体の数を計算するのです。神経細胞の核だけを染める目印を使えば、神経細胞とそれ以外の細胞も区別できます。

02結果:イヌはネコの約2倍

  • ネコ:約2億5,000万個
  • イヌ:小型の雑種が約4億3,000万個、ゴールデンレトリバーが約6億3,000万個
  • アライグマ:ネコとほぼ同じ大きさの大脳なのに、平均約4億4,000万個(イヌ並み)
  • ライオン:約5億5,000万個。大脳はイヌの約2倍なのに、神経細胞はイヌと同じくらい
  • ヒグマ:大脳はネコの約10倍なのに、約2億5,000万個でネコとほぼ同じ!

調べた中で、神経細胞がいちばん多かった個体は、なんとゴールデンレトリバーでした。

脳(瓶)の大きさと、神経細胞(光の粒)の数は比例しない
脳(瓶)の大きさと、神経細胞(光の粒)の数は比例しない

03なぜクマは「脳が大きいのに少ない」?

研究チームは、体の大きな肉食動物ほど、狩りにエネルギーがかかり、食事も不安定になりやすいことに注目しました。神経細胞はたくさんのエネルギーを使う"ぜいたく品"。体を大きくすることと、大脳の神経細胞を増やすことは、トレードオフ(両立しにくい関係)にあるのかもしれない、と考えています。

04でも「イヌの方が賢い」とは言い切れない

ここで大事などんでん返し。

  • 調べたのはイヌ2頭、ネコ1匹だけ。品種や個体差を考えると、数字はかなりざっくりしたものです
  • 神経細胞が多いと情報処理の"能力の上限"が高い可能性はありますが、それがそのまま「賢さ」とは限りません
  • イヌは人と協力するのが得意、ネコは単独で狩りをするのが得意。種によって得意な課題が違うので、同じテストで比べるのは難しいのです

05まとめ

脳の神経細胞を数えてみたら、イヌはネコの約2倍。そして脳が大きいクマが、ネコ並みという意外な結果も出ました。

ただし「だからイヌの方が賢い」と言うには、データも、賢さの物差しもまだ足りません。イヌ派もネコ派も、ケンカはほどほどに。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerNeurons are too many to count one by one, so a Brazilian neuroscientist developed a clever method. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Neurons are too many to count one by one, so a Brazilian neuroscientist developed a clever method. The brain is dissolved into a uniform "soup," and the nuclei in a small sample are counted to estimate the total. In 2017, this method was used on eight carnivores, including dogs, cats, lions and brown bears. A cat's cerebral cortex had about 250 million neurons, while dogs had between about 430 and 630 million.

But a brown bear, whose cortex is about ten times larger than a cat's, had about the same number of neurons as the cat. The researchers suggest that large hunters may not have enough energy to support many neurons. However, only two dogs and one cat were examined.

120 words ・ CEFR B1

和訳を見る

神経細胞は1個ずつ数えるには多すぎるため、ブラジル出身の神経科学者が巧妙な方法を考え出しました。脳を均一な「スープ」に溶かし、少量のサンプルに含まれる核を数えて全体の数を推定するのです。2017年、この方法がイヌ、ネコ、ライオン、ヒグマなど8種の肉食動物に使われました。ネコの大脳皮質には約2億5,000万個の神経細胞がありましたが、イヌでは約4億3,000万〜6億3,000万個でした。

ところが、大脳皮質がネコの約10倍もあるヒグマは、ネコとほぼ同じ数の神経細胞しか持っていませんでした。研究者たちは、大型の狩りをする動物は多くの神経細胞を支えるだけのエネルギーがないのかもしれないと考えています。ただし、調べたのはイヌ2頭とネコ1匹だけでした。

4択リーディングクイズ

Q1. How were the neurons counted?

Q2. What was surprising about the brown bear?

Q3. Why does the writer mention that only two dogs and one cat were examined?

重要単語

  • carnivoreB2
    名詞肉食動物(食肉目の動物)Lions and bears are large carnivores. carn-(肉)+-vore(食べる)。herbivore(草食動物)、omnivore(雑食動物)とセットで。
  • neuronB2
    名詞神経細胞The dog's cortex had more neurons than the cat's. nerve cell と同じ。数えるときは billion(10億)と million(100万)の換算に注意。
  • trade-offC1
    名詞あちらを立てればこちらが立たない関係There is a trade-off between body size and brain power. a trade-off between A and B の形で使う。動詞句 trade off A against B も。
  • domesticB1
    形容詞家畜化された、家庭のDomestic cats still hunt small animals. 「国内の」の意味も(domestic flights「国内線」)。動詞 domesticate「飼いならす」。
  • cognitiveC1
    形容詞認知のDogs show strong cognitive skills with people. cognition(認知)の形容詞。cognitive science「認知科学」は長文の定番テーマ。
  • estimateB1
    動詞推定する、見積もるScientists estimated the total number of neurons. 名詞も同形(発音は語末が /-mət/)。It is estimated that ~「~と推定されている」。

動画でもっと知る

イヌとネコ、脳の神経細胞が多いのは? 大脳皮質の神経細胞を数えたら、イヌは約4〜6億個、ネコは約2.5億個。さらに、ネコの約10倍の大脳を持つヒグマでもネコ並みだった。ただし調べたのはイヌ2頭とネコ1匹だけらしい。

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出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Jardim-Messeder et al. (2017) Dogs have the most neurons, though not the largest brain: trade-off between body mass and number of neurons in the cerebral cortex of large carnivoran species, Frontiers in Neuroanatomydoi.org
  2. Herculano-Houzel & Lent (2005) Isotropic fractionator: a simple, rapid method for the quantification of total cell and neuron numbers in the brain, Journal of Neurosciencedoi.org
  3. Herculano-Houzel (2009) The human brain in numbers: a linearly scaled-up primate brain, Frontiers in Human Neurosciencedoi.org