脳が大きい人ほど頭がいい? 1.3万人を調べたら"関係はあるけど、ほんの少し"だった

読む前に予想してみよう!
ゾウの脳は人の約3倍の重さがあるので、大脳皮質の神経細胞も人より多い
アフリカゾウの大脳皮質の神経細胞は約56億個で、人(約160億個)の3分の1ほど。神経細胞の97.5%は小脳にあった。
- 対象
- 成人
- 規模
- 13,608人(ほかメタ分析8,000人超)
- 研究の種類
- 事前登録の大規模観察研究・メタ分析
- 確かさ
- ★★★★☆
脳の大きさと知能テストの点には弱い関係がある。でも差の説明力は数%ほど。ゾウの脳は人の3倍大きいのに、大脳皮質の神経細胞は3分の1だった。
ひとことで言うと脳の大きさで頭の良さはほとんど決まらない。大事なのは中身!
「頭が大きい人は賢い」——昔からよく言われる話です。19世紀には、頭の骨の大きさを測って知能を語ろうとした学者もいました。
では、MRIで脳の大きさを正確に測れる今、答えはどうなっているのでしょうか?
01メタ分析:関係は「ある」。でも盛られていた
さらにこの研究は、「強い関係が出た研究ほど発表されやすく、弱い結果はお蔵入りしやすい」という出版バイアスの跡も見つけました。つまり、これまでの文献は関係を実際より強く見せていた可能性があるのです。
021万3,000人で確かめたら……r=0.19
2019年には、イギリスの大規模データ「UKバイオバンク」を使った研究が発表されました。
- 参加者は13,608人。それまでの研究を全部合わせたより約7割多い規模
- 分析計画を事前に登録し、結果を見てから方法を変える「後出し」を防いだ
- 性別・年齢・身長・経済状況などの影響を調整
結果、脳の大きさと「流動性知能(初めての問題を解く力)」の相関はr=0.19。関係は確かにありましたが、かなり弱いものでした。

03脳が大きいのに……ゾウとアインシュタイン
「大きさ=賢さ」ではないことは、動物を見るとよくわかります。
アフリカゾウの脳は人の約3倍の重さ。神経細胞の数も約2,570億個で、人(約860億個)の3倍です。ところが、その97.5%は小脳にありました。考えることに深く関わる大脳皮質の神経細胞は約56億個で、人の大脳皮質(約160億個)の3分の1しかなかったのです。
ちなみに、天才物理学者アインシュタインの脳の重さは、記録によれば約1,230グラム。成人男性の平均よりやや軽めで、特別大きくはありませんでした。
04まとめ
脳の大きさと頭の良さには、ほんの少しだけ関係がある。でも、それで説明できるのは数%にすぎません。
人の脳がすごいのは、大きさよりも大脳皮質にたくさんの神経細胞をぎっしり詰め込んでいることかもしれない——そう考えると、自分の頭の中が、ちょっと誇らしく思えてきませんか?
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIt has long been said that people with large heads are clever.
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Do people with bigger brains have higher intelligence? Scientists checked the brains of about 13,600 people in Britain. Bigger brains were linked to slightly higher test scores, but the link was very weak. An elephant's brain is about three times heavier than ours.
But its cerebral cortex, the thinking part, has only about one third as many nerve cells as ours. So brain size is not the most important thing.
70 words ・ CEFR A2
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脳が大きい人ほど知能が高いのでしょうか。科学者たちは、イギリスの約13,600人の脳を調べました。脳が大きいことはテストの点がわずかに高いことと結びついていましたが、そのつながりはとても弱いものでした。ゾウの脳は私たちの脳の約3倍の重さがあります。
しかし、考える部分である大脳皮質の神経細胞は、私たちの約3分の1しかありません。つまり、脳の大きさはいちばん大切なことではないのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
脳の大きさと知能の関係が全体のテーマなので D。
Q2. How many people did the scientists study?
checked the brains of about 13,600 people とあるので B。
Q3. In this passage, "slightly" means ...
slightly は「わずかに」。直後に the link was very weak とあることからも A。
It has long been said that people with large heads are clever. Modern MRI allows scientists to measure brain size accurately. In 2015, an analysis of 88 studies with more than 8,000 people found a correlation of 0.24 between brain volume and IQ. It also found signs that studies with strong results were more likely to be published.
A larger study in 2019 used data from 13,608 people in Britain, and its plan was registered in advance. The correlation was only 0.19, a real but weak link. Animals show the same point. An African elephant's brain is about three times heavier than a human brain, but its cerebral cortex has only about a third as many neurons as ours.
119 words ・ CEFR B1
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頭の大きい人は賢いと昔から言われてきました。現代のMRIを使えば、科学者は脳の大きさを正確に測ることができます。2015年、8,000人以上を含む88本の研究を分析したところ、脳の体積とIQの間には0.24の相関が見つかりました。また、強い結果が出た研究ほど発表されやすいという兆候も見つかりました。
2019年のより大規模な研究では、イギリスの13,608人のデータが使われ、その計画は事前に登録されていました。相関はわずか0.19で、本物ではあるものの弱い関係でした。動物を見ても同じことが言えます。アフリカゾウの脳は人間の脳の約3倍の重さがありますが、その大脳皮質の神経細胞は私たちの約3分の1しかありません。
4択リーディングクイズ
Q1. What was the correlation found in the 2019 study?
The correlation was only 0.19 とあるので A。0.24 は2015年の分析の数値。
Q2. What did the 2015 analysis suggest about published studies?
studies with strong results were more likely to be published とあるので C。いわゆる出版バイアス。
Q3. Why does the writer mention the elephant?
ゾウの脳は3倍重いのに大脳皮質の神経細胞は3分の1。「大きさ=賢さではない」例として出しているので D。
Bigger brains have been linked to greater intelligence since at least the nineteenth century, when scholars measured skulls. MRI now allows precise measurement, and the answer is more modest than many assume. A 2015 meta-analysis of 88 studies covering over 8,000 people reported a correlation of 0.24 between brain volume and IQ, meaning size accounts for only about 6 percent of the variation. It also detected publication bias, suggesting earlier literature had exaggerated the link.
A 2019 study of 13,608 adults from the UK Biobank was preregistered, preventing researchers from adjusting methods after seeing the data, and controlled for factors such as sex, age, height and economic status. The correlation with fluid intelligence was just 0.19: genuine, yet far too weak to predict an individual's ability. Comparative data reinforce the point.
An African elephant's brain weighs about three times as much as ours and holds roughly 257 billion neurons, yet 97.5 percent of them are in the cerebellum; its cerebral cortex contains about 5.6 billion, a third of the human figure of 16 billion. Even Einstein's brain, at about 1,230 grams, was no heavier than average. Neuron number and connectivity may matter far more than sheer size.
197 words ・ CEFR B2
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脳が大きいほど知能が高いと考えられてきたのは、少なくとも頭蓋骨を測っていた19世紀の学者の時代からです。現在はMRIで精密な測定ができますが、その答えは多くの人が思うより控えめです。8,000人以上を対象とした88本の研究による2015年のメタ分析では、脳の体積とIQの相関は0.24で、大きさで説明できるのは個人差の約6%にすぎないことが報告されました。この分析では出版バイアスも検出され、それまでの文献が関係を誇張していたことが示唆されました。
UKバイオバンクの成人13,608人を対象とした2019年の研究は事前登録されていたため、研究者がデータを見てから方法を調整することが防がれ、性別・年齢・身長・経済状況などの要因も調整されました。流動性知能との相関はわずか0.19で、本物ではあるものの、個人の能力を予測するにはあまりにも弱いものでした。種の比較もこの点を裏づけます。アフリカゾウの脳は私たちの約3倍の重さで、約2,570億個の神経細胞を持ちますが、その97.5%は小脳にあります。
大脳皮質には約56億個しかなく、人間の160億個の3分の1です。アインシュタインの脳でさえ約1,230グラムで、重さは平均より重いわけではありませんでした。単なる大きさよりも、神経細胞の数やつながり方のほうがはるかに重要なのかもしれません。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the author's main conclusion?
関係は本物だが弱く、神経細胞の数やつながり方のほうが重要かもしれない、というのが結論なので C。B は「全く関係なし」なので言い過ぎ。
Q2. Why was the 2019 study more trustworthy than many earlier ones?
13,608人と大規模で、事前登録され、性別・年齢などを調整していると書かれているので B。
Q3. What does the elephant example show?
ゾウは総数こそ多いが97.5%は小脳にあり、大脳皮質は人の3分の1。大きな脳でも皮質の神経細胞は少ないことを示すので D。
重要単語
- correlationB2名詞相関A weak correlation does not mean a strong cause.
correlation between A and B「AとBの相関」。Correlation does not imply causation.(相関は因果を意味しない)は必修フレーズ。 - volumeB1名詞体積、容量Brain volume was measured with MRI.
「音量」「(本の)巻」の意味も。多義語として入試で狙われやすい。 - intelligenceB1名詞知能Intelligence is hard to measure with one test.
「(諜報)情報」の意味もある(CIA=Central Intelligence Agency)。fluid intelligence「流動性知能」。 - cerebral cortexC1名詞(句)大脳皮質The cerebral cortex is involved in thinking.
cortex は「樹皮・外皮」の意のラテン語。脳の表面を覆う層。 - preregisteredC1形容詞事前登録されたA preregistered study states its plan in advance.
pre-(前に)+register(登録する)。後出しの解析を防ぎ、研究の信頼性を高める仕組み。 - cerebellumC1名詞小脳The cerebellum helps us keep our balance.
ラテン語で「小さな脳」。cerebrum(大脳)と対で覚える。 - publication biasC1名詞(句)出版バイアスPublication bias can make an effect look stronger than it is.
目立つ結果ほど論文になりやすい偏り。メタ分析の文脈で頻出。
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脳が大きい人ほど頭がいい? イギリスの約1.3万人を調べたら関係はあったけど、相関は0.19。知能の個人差のうち脳の大きさで説明できるのは数%ほど。ちなみにゾウの脳は人の約3倍なのに、大脳皮質の神経細胞は人の3分の1らしい。
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- Pietschnig et al. (2015) Meta-analysis of associations between human brain volume and intelligence differences: How strong are they and what do they mean?, Neuroscience & Biobehavioral Reviewsdoi.org
- Nave et al. (2019) Are bigger brains smarter? Evidence from a large-scale preregistered study, Psychological Sciencedoi.org
- Azevedo et al. (2009) Equal numbers of neuronal and nonneuronal cells make the human brain an isometrically scaled-up primate brain, Journal of Comparative Neurologydoi.org
- Herculano-Houzel et al. (2014) The elephant brain in numbers, Frontiers in Neuroanatomydoi.org
- Witelson, Kigar & Harvey (1999) The exceptional brain of Albert Einstein, The Lancetdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。












