野球選手はなぜガムを噛む?「ガムで集中力アップ」を研究で確かめたら"ビミョー"だった

読む前に予想してみよう!
ガムを噛みながら勉強すると、記憶力が大きく上がることが確実に分かっている
記憶への効果は研究によってバラバラで、再現されないことも多い。
- 対象
- 健康な成人
- 規模
- 研究ごとに人数は異なる
- 研究の種類
- 実験研究・介入研究(結果が不一致)
- 確かさ
- ★★☆☆☆
ガムを噛むと目が覚めた感じや注意力が上がるという研究はある。ただし効果は小さく、記憶力アップは再現されないことも多い。過大評価は禁物。
ひとことで言うとガムで「目がさめる」効果はありそう。でも頭がよくなるわけじゃない!
野球の中継を見ていると、ベンチや打席でガムを噛んでいる選手をよく見かけます。テスト前に「ガムを噛むと集中できる」と聞いたことがある人もいるかもしれません。
噛むだけで頭が冴えるなら、こんなに手軽な方法はありません。実際、このテーマは意外とたくさん研究されてきました。ところがその結果は、「効く」と「効かない」が入り乱れる、なかなかのカオス状態だったのです。
01「記憶力が上がった!」から始まった
この研究は大きな話題になりました。ところがその後、別の研究チームが似た実験を行うと、同じ効果が出ないケースが相次ぎます。
たとえばドイツ・レーゲンスブルク大のトゥハらは、同じ人に「噛まない」「噛むまねだけ」「味のないガム」「ミント味のガム」の4条件を順番に試してもらいました(Appetite, 2004)。結果、記憶力の向上は見られず、注意力は「長く保つ力」だけ上がった一方、「とっさの反応」や「切り替え」はむしろ悪くなっていました。記憶への効果は、研究によって「出た」「出なかった」がバラバラだったのです。
02効果は「最初の20分」だけ?
そんな中、効果が出たり出なかったりする理由のヒントになる研究が現れました。
米セントローレンス大の研究チームは、ガムを噛むタイミングを変えて実験しました(Appetite, 2011)。すると、テストの直前に5分ほどガムを噛んだときは、いくつかの課題で成績が上がったのに、テスト中ずっと噛み続けたときは、効果が見られなかったのです。しかも、成績アップは最初の15〜20分ほどで消え、すべての種類の課題で上がったわけでもありませんでした。
研究者たちは、噛むことで一時的に覚醒度(目が覚めている度合い)が上がり、それがしばらく続くのでは、と考えました。逆に、テスト中も噛み続けると、「噛むこと」自体に注意の一部が取られてしまうのかもしれません。

03「目が覚める」効果はありそう
記憶への効果はビミョーでしたが、比較的よく報告されているのが「目が覚めた感じ」や注意力への効果です。
英国カーディフ大の研究者たちが行った4つの研究(実験2件、仕事中の介入研究2件。BioMed Research International, 2015)では、ガムを噛むと覚醒度(シャキッとした感じ)が高くなる、仕事中に噛むと覚醒度の低下がやわらぐ、といった結果が報告されています。
なぜ噛むと目が覚めるのか。噛む動作で脳への血流が増える、あごの筋肉からの刺激が脳を活性化する、などの説がありますが、まだはっきりとは分かっていません。
つまり「ガムを噛めば頭が良くなる」は言いすぎ。期待できそうなのは、あくまで眠気覚ましや、退屈な作業での集中キープくらい。しかも効果は小さめで、個人差もあります。
04まとめ
「ガムで集中力アップ」は、完全なウソではないけれど、魔法でもない、という“ビミョー”な答えでした。
試合中の野球選手がガムを噛むのも、集中力のためというより、リラックスや緊張ほぐしの「ルーティン」として役立っているのかもしれません。あなたにとってガムは、勉強の味方になりそうですか?
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerBaseball players often chew gum, and some students believe it helps them concentrate.
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原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Many baseball players chew gum during games. Some students say gum helps them study. Is it true? Many scientists have tested this. Chewing gum may help people feel more awake and keep their attention during long, boring work.
But the effect is small. In one study, it lasted only about 15 to 20 minutes. Gum does not make you smarter, and it may not help your memory.
67 words ・ CEFR A2
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多くの野球選手は試合中にガムを噛みます。ガムが勉強に役立つと言う生徒もいます。それは本当でしょうか。多くの科学者がこれを調べてきました。ガムを噛むと、目が覚めた感じがして、長く退屈な作業で注意を保ちやすくなるかもしれません。
でも、その効果は小さいのです。ある研究では、効果は約15〜20分しか続きませんでした。ガムで頭が良くなるわけではなく、記憶力の助けにもならないかもしれません。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
Is it true? と問いかけ、ガムで集中力が上がるかを調べた研究を紹介しているので D。
Q2. How long did the effect last in one study?
it lasted only about 15 to 20 minutes とあるので B。
Q3. In this passage, "awake" means ...
awake は「目が覚めている」。feel more awake で「よりシャキッとする」なので C。
Baseball players often chew gum, and some students believe it helps them concentrate. Researchers have tested this idea many times, but the results are mixed. In 2002, a British study reported that people who chewed gum remembered words better.
However, later studies often failed to find the same effect on memory. In a German study, gum helped people keep their attention for a long time, but it made quick reactions worse. An American study found that chewing gum for about five minutes before a test improved some scores, but the benefit disappeared after 15 to 20 minutes. Chewing throughout the test did not help. Gum may wake us up a little, but it is not a magic study tool.
119 words ・ CEFR B1
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野球選手はよくガムを噛みますし、ガムが集中の助けになると信じている生徒もいます。研究者たちはこの考えを何度も検証してきましたが、結果はまちまちです。2002年、イギリスのある研究は、ガムを噛んだ人のほうが単語をよく覚えていたと報告しました。
しかし、その後の研究では、記憶に対する同じ効果が見つからないことがよくありました。ドイツの研究では、ガムは長い時間注意を保つ助けにはなりましたが、とっさの反応は悪くなりました。アメリカの研究では、テストの前に5分ほどガムを噛むといくつかの成績が上がりましたが、その効果は15〜20分後には消えました。テスト中ずっと噛み続けても効果はありませんでした。ガムは私たちを少し目覚めさせるかもしれませんが、魔法の勉強道具ではありません。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main idea of the passage?
結果はまちまちで、少し目覚めさせる程度で魔法の道具ではない、とまとめているので A。
Q2. What did the German study find?
helped people keep their attention for a long time, but it made quick reactions worse とあるので C。
Q3. What can we infer from the American study?
テスト前の5分は効果があり、テスト中ずっと噛むと効果がなかったので、タイミングや時間で結果が変わると推測できる。正解は B。
The image of baseball players chewing gum has encouraged a popular belief that chewing sharpens the mind, and researchers have tested it repeatedly, with confusingly mixed results. A 2002 British study reported that gum chewers performed better on some memory tests, such as recalling words, but later attempts frequently failed to replicate this.
A German experiment comparing no chewing, mock chewing, flavorless gum and mint gum found no memory benefit; chewing improved sustained attention but actually impaired quick reactions and task switching. An American study offered a possible explanation for the inconsistency. Chewing for about five minutes before testing improved performance on some tasks, but the benefit faded within 15 to 20 minutes, and chewing throughout the test brought no gain.
The researchers suggested that chewing produces a brief rise in arousal, while continuous chewing may compete for attention. A 2015 paper reporting four studies found higher alertness among gum chewers and a smaller drop in alertness over a working day. Even these effects are small, and differences in flavor, expectations and study design make comparisons difficult. Gum may help as a wake-up aid, but it will not make anyone cleverer.
191 words ・ CEFR B2
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野球選手がガムを噛む姿から、噛むと頭が冴えるという通説が広まり、研究者たちは何度もそれを検証してきましたが、結果は混乱するほどまちまちです。2002年のイギリスの研究は、ガムを噛んだ人が単語の想起など一部の記憶テストで成績が良かったと報告しましたが、その後の試みではこれを再現できないことがよくありました。
噛まない、噛むまねだけ、味のないガム、ミントガムを比べたドイツの実験では、記憶への効果は見られませんでした。噛むことで持続的注意は向上しましたが、とっさの反応や課題の切り替えはむしろ悪くなりました。アメリカの研究は、この不一致を説明する手がかりを示しました。テストの前に5分ほど噛むと一部の課題の成績が上がりましたが、その効果は15〜20分以内に薄れ、テスト中ずっと噛み続けても効果はありませんでした。
研究者たちは、噛むことで覚醒が一時的に高まる一方、噛み続けることが注意の奪い合いを起こすのかもしれないと述べました。4つの研究を報告した2015年の論文は、ガムを噛んだ人は覚醒度が高く、一日の仕事中の覚醒度の低下も小さかったと述べました。これらの効果でさえ小さく、味、期待、研究デザインの違いが比較を難しくしています。ガムは眠気覚ましには役立つかもしれませんが、誰かを賢くするものではないのです。
4択リーディングクイズ
Q1. Which statement best summarizes the passage?
記憶への効果は再現されず、覚醒度などへの効果も小さい、という内容なので D。
Q2. According to the American study, what happened when people chewed throughout the test?
chewing throughout the test brought no gain とあるので A。
Q3. What does "replicate" mean in the passage?
later attempts frequently failed to replicate this は「後の試みで同じ結果を再び得られなかった」の意味なので C。
重要単語
- alertnessB2名詞覚醒度、注意がはっきりした状態Coffee can increase alertness in the morning.
alert(油断のない)+-ness。stay alert「注意を怠らない」もよく使う。 - chewB1動詞噛むHe chews gum before a big game.
chewing gum はそのまま「チューインガム」。chew over ~ は「~をじっくり考える」。 - replicateC1動詞(実験結果を)再現するOther scientists failed to replicate the result.
名詞 replication(追試・再現)。「再現性の危機」は心理学の重要テーマで入試にも出る。 - sustained attentionC1名詞(句)持続的注意Sustained attention is needed for long, boring tasks.
sustain は「持続させる」。sustainable(持続可能な)と同じ語源。 - arousalC1名詞覚醒、興奮の度合いA short walk can raise your arousal level.
arouse(呼び起こす)の名詞形。心理学では「脳や体の目覚め具合」を指す。 - monotonousC1形容詞単調なLong, monotonous tasks make people sleepy.
mono(1つの)+tone(音)=「同じ調子が続く」。monologue, monopoly と同じ mono。
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「ガムを噛むと集中力が上がる」、研究をたどると、目が覚める感じや注意力が少し上がる効果はありそう。でも記憶力アップは再現されないことも多く、効果が20分ほどで消えたという実験も。過信は禁物らしい。
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出典・参考文献(4件)タップで表示
- Wilkinson, Scholey & Wesnes (2002) Chewing gum selectively improves aspects of memory in healthy volunteers, Appetitedoi.org
- Tucha et al. (2004) Chewing gum differentially affects aspects of attention in healthy subjects, Appetitedoi.org
- Onyper et al. (2011) Cognitive advantages of chewing gum. Now you see them, now you don't, Appetitedoi.org
- Allen & Smith (2015) Chewing gum: cognitive performance, mood, well-being, and associated physiology, BioMed Research Internationaldoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。











