脳と心理ビミョー

野球選手はなぜガムを噛む?「ガムで集中力アップ」を研究で確かめたら"ビミョー"だった

野球選手はなぜガムを噛む?「ガムで集中力アップ」を研究で確かめたら"ビミョー"だった

読む前に予想してみよう!

ガムを噛みながら勉強すると、記憶力が大きく上がることが確実に分かっている

研究カード(どんな研究?)
対象
健康な成人
規模
研究ごとに人数は異なる
研究の種類
実験研究・介入研究(結果が不一致)
確かさ
★★☆☆☆
3秒でわかる

ガムを噛むと目が覚めた感じや注意力が上がるという研究はある。ただし効果は小さく、記憶力アップは再現されないことも多い。過大評価は禁物。

ひとことで言うとガムで「目がさめる」効果はありそう。でも頭がよくなるわけじゃない!

もくじ
  1. 「記憶力が上がった!」から始まった
  2. 効果は「最初の20分」だけ?
  3. 「目が覚める」効果はありそう
  4. まとめ

野球の中継を見ていると、ベンチや打席でガムを噛んでいる選手をよく見かけます。テスト前に「ガムを噛むと集中できる」と聞いたことがある人もいるかもしれません。

噛むだけで頭が冴えるなら、こんなに手軽な方法はありません。実際、このテーマは意外とたくさん研究されてきました。ところがその結果は、「効く」と「効かない」が入り乱れる、なかなかのカオス状態だったのです。

01「記憶力が上がった!」から始まった

この研究は大きな話題になりました。ところがその後、別の研究チームが似た実験を行うと、同じ効果が出ないケースが相次ぎます。

たとえばドイツ・レーゲンスブルク大のトゥハらは、同じ人に「噛まない」「噛むまねだけ」「味のないガム」「ミント味のガム」の4条件を順番に試してもらいました(Appetite, 2004)。結果、記憶力の向上は見られず、注意力は「長く保つ力」だけ上がった一方、「とっさの反応」や「切り替え」はむしろ悪くなっていました。記憶への効果は、研究によって「出た」「出なかった」がバラバラだったのです。

02効果は「最初の20分」だけ?

そんな中、効果が出たり出なかったりする理由のヒントになる研究が現れました。

米セントローレンス大の研究チームは、ガムを噛むタイミングを変えて実験しました(Appetite, 2011)。すると、テストの直前に5分ほどガムを噛んだときは、いくつかの課題で成績が上がったのに、テスト中ずっと噛み続けたときは、効果が見られなかったのです。しかも、成績アップは最初の15〜20分ほどで消え、すべての種類の課題で上がったわけでもありませんでした。

研究者たちは、噛むことで一時的に覚醒度(目が覚めている度合い)が上がり、それがしばらく続くのでは、と考えました。逆に、テスト中も噛み続けると、「噛むこと」自体に注意の一部が取られてしまうのかもしれません。

ガムの「シャキッと効果」は、長くは続かないのかもしれない
ガムの「シャキッと効果」は、長くは続かないのかもしれない

03「目が覚める」効果はありそう

記憶への効果はビミョーでしたが、比較的よく報告されているのが「目が覚めた感じ」や注意力への効果です。

英国カーディフ大の研究者たちが行った4つの研究(実験2件、仕事中の介入研究2件。BioMed Research International, 2015)では、ガムを噛むと覚醒度(シャキッとした感じ)が高くなる、仕事中に噛むと覚醒度の低下がやわらぐ、といった結果が報告されています。

なぜ噛むと目が覚めるのか。噛む動作で脳への血流が増える、あごの筋肉からの刺激が脳を活性化する、などの説がありますが、まだはっきりとは分かっていません。

つまり「ガムを噛めば頭が良くなる」は言いすぎ。期待できそうなのは、あくまで眠気覚ましや、退屈な作業での集中キープくらい。しかも効果は小さめで、個人差もあります。

04まとめ

「ガムで集中力アップ」は、完全なウソではないけれど、魔法でもない、という“ビミョー”な答えでした。

試合中の野球選手がガムを噛むのも、集中力のためというより、リラックスや緊張ほぐしの「ルーティン」として役立っているのかもしれません。あなたにとってガムは、勉強の味方になりそうですか?

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerBaseball players often chew gum, and some students believe it helps them concentrate. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Baseball players often chew gum, and some students believe it helps them concentrate. Researchers have tested this idea many times, but the results are mixed. In 2002, a British study reported that people who chewed gum remembered words better.

However, later studies often failed to find the same effect on memory. In a German study, gum helped people keep their attention for a long time, but it made quick reactions worse. An American study found that chewing gum for about five minutes before a test improved some scores, but the benefit disappeared after 15 to 20 minutes. Chewing throughout the test did not help. Gum may wake us up a little, but it is not a magic study tool.

119 words ・ CEFR B1

和訳を見る

野球選手はよくガムを噛みますし、ガムが集中の助けになると信じている生徒もいます。研究者たちはこの考えを何度も検証してきましたが、結果はまちまちです。2002年、イギリスのある研究は、ガムを噛んだ人のほうが単語をよく覚えていたと報告しました。

しかし、その後の研究では、記憶に対する同じ効果が見つからないことがよくありました。ドイツの研究では、ガムは長い時間注意を保つ助けにはなりましたが、とっさの反応は悪くなりました。アメリカの研究では、テストの前に5分ほどガムを噛むといくつかの成績が上がりましたが、その効果は15〜20分後には消えました。テスト中ずっと噛み続けても効果はありませんでした。ガムは私たちを少し目覚めさせるかもしれませんが、魔法の勉強道具ではありません。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the main idea of the passage?

Q2. What did the German study find?

Q3. What can we infer from the American study?

重要単語

  • alertnessB2
    名詞覚醒度、注意がはっきりした状態Coffee can increase alertness in the morning. alert(油断のない)+-ness。stay alert「注意を怠らない」もよく使う。
  • chewB1
    動詞噛むHe chews gum before a big game. chewing gum はそのまま「チューインガム」。chew over ~ は「~をじっくり考える」。
  • replicateC1
    動詞(実験結果を)再現するOther scientists failed to replicate the result. 名詞 replication(追試・再現)。「再現性の危機」は心理学の重要テーマで入試にも出る。
  • sustained attentionC1
    名詞(句)持続的注意Sustained attention is needed for long, boring tasks. sustain は「持続させる」。sustainable(持続可能な)と同じ語源。
  • arousalC1
    名詞覚醒、興奮の度合いA short walk can raise your arousal level. arouse(呼び起こす)の名詞形。心理学では「脳や体の目覚め具合」を指す。
  • monotonousC1
    形容詞単調なLong, monotonous tasks make people sleepy. mono(1つの)+tone(音)=「同じ調子が続く」。monologue, monopoly と同じ mono。
「ガムを噛むと集中力が上がる」、研究をたどると、目が覚める感じや注意力が少し上がる効果はありそう。でも記憶力アップは再現されないことも多く、効果が20分ほどで消えたという実験も。過信は禁物らしい。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Wilkinson, Scholey & Wesnes (2002) Chewing gum selectively improves aspects of memory in healthy volunteers, Appetitedoi.org
  2. Tucha et al. (2004) Chewing gum differentially affects aspects of attention in healthy subjects, Appetitedoi.org
  3. Onyper et al. (2011) Cognitive advantages of chewing gum. Now you see them, now you don't, Appetitedoi.org
  4. Allen & Smith (2015) Chewing gum: cognitive performance, mood, well-being, and associated physiology, BioMed Research Internationaldoi.org