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脳と心理ホント

【悲報】「マルチタスクが得意」な人、実験するとほぼいなかった

【悲報】「マルチタスクが得意」な人、実験するとほぼいなかった

読む前に予想してみよう!

マルチタスクをよくする人ほど、気が散るものを無視するのが上手い

研究カード(どんな研究?)
対象
大学生など
規模
数十〜300人規模の実験、メタ分析あり
研究の種類
実験研究+追試・メタ分析
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

頭を使う2つの作業を、脳は同時にこなしているのではなく、高速で切り替えているだけ。切り替えのたびに時間とミスのコストが発生する。

ひとことで言うと脳は「ながら作業」が苦手。実は高速で行ったり来たりしているだけ!

もくじ
  1. 脳は「同時」ではなく「切り替え」で動いている
  2. 「ながら」常習者ほど気が散りやすい?
  3. 本物の「スーパータスカー」は、ほんの一握り
  4. 切り替えコストを減らすコツ
  5. まとめ

メールを返しながら会議に出て、合間にチャットもさばく。「自分、マルチタスク得意なんで」――そう言いたくなる気持ち、分かります。

でも認知心理学の実験室に連れていくと、話は変わります。頭を使う作業を2つ、本当の意味で同時にこなすのは、脳には難しい。やっているのは、超高速の「切り替え」なんです。

そして切り替えには、毎回ちゃんとコスト(時間のロスやミス)がかかっています。

01脳は「同時」ではなく「切り替え」で動いている

歩きながら話す、のように体が覚えている動作なら同時にできます。でも、どちらも注意が必要な作業だと話は別です。たとえば「メールの文面を考える」と「会議の発言を理解する」。こういう2つの作業を、脳は片方ずつ順番に処理します。

このとき起きるのがタスク切り替えコストです。前の作業のやり方をいったん脇に置き、次の作業のやり方を思い出す。そのぶん時間がかかるのです。

列車は2本の線路を同時には走れない。行き先を変えるたび、レバーの切り替えが必要になる
列車は2本の線路を同時には走れない。行き先を変えるたび、レバーの切り替えが必要になる

02「ながら」常習者ほど気が散りやすい?

「でも、普段からマルチタスクしてる人は鍛えられてるのでは?」と思いますよね。スタンフォード大のチームが、まさにそれを調べました。

比べたのは、テレビ、ネット、メッセージなどを同時によく使う人(ヘビー・マルチタスカー)と、あまり使わない人です。するとヘビー派のほうが、関係のない情報を無視するのが苦手でした。しかも、ふだん切り替えに慣れているヘビー派なら得意そうな「課題の切り替え」のテストでも、成績が振るいませんでした(PNAS, 2009)。

ただし、この研究は1グループ20人前後と小規模でした。その後、オランダの研究チームが追試をし、ほかの研究結果もまとめて分析しました(Attention, Perception, & Psychophysics, 2017)。すると「ヘビー派ほど気が散りやすい」という差は、あったとしても小さく、研究ごとに結果もばらつくことが分かりました。

03本物の「スーパータスカー」は、ほんの一握り

とはいえ、例外はいます。米ユタ大のワトソンとストレイヤーは、200人に本格的な運転シミュレーターで運転してもらいました。同時に、耳で聞いて答える記憶と計算の課題もやってもらいました。すると、2つを同時にしても成績がまったく落ちない人がいたのです。2人はこの人たちを「スーパータスカー」と名付けました(Psychonomic Bulletin & Review, 2010)。

ところがその割合は、参加者のわずか2.5%(200人中5人)。「自分はマルチタスクが得意」と思っている人も、大半は、成績が落ちる側にいる可能性が高いのです。

同じユタ大の別の研究もあります(PLoS ONE, 2013)。ふだんよくマルチタスクをする人ほど、実際のマルチタスク能力(ワーキングメモリの課題成績)は低めでした。しかも、自分の能力を実際より高く見積もる傾向がありました。得意だからやるのではないのかもしれません。一つのことに集中し続けるのが苦手だから、ついあれこれ手を出してしまう。そんな可能性もあるのです。

04切り替えコストを減らすコツ

脳の仕組みに逆らうより、味方につけましょう。

05まとめ

マルチタスクの正体は、高速で行ったり来たりする「シングルタスクの連続」でした。忙しいほど同時進行したくなります。でも実は、「一つずつ片付ける」が最速ルートかもしれません。

この記事を読みながら、スマホの通知、何回見ました?

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerPeople often feel they are good at multitasking, but research suggests that the brain cannot truly perform… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

People often feel they are good at multitasking, but research suggests that the brain cannot truly perform two demanding tasks at the same time. Instead, it switches rapidly between them. In a 2001 study, people became slower every time they switched between tasks, and the delay was greater when the rules were more complex.

Each switch may take only a moment, but hundreds of switches a day add up. In a 2010 driving simulator study, only 2.5% of 200 participants could drive and do a memory task at the same time without any drop in performance. Another study found that people who multitask often tend to overestimate their ability and actually perform worse on related tests.

116 words ・ CEFR B1

和訳を見る

人はよく、自分はマルチタスクが得意だと感じますが、研究によると、脳は注意が必要な2つの作業を本当に同時に行うことはできません。そうではなく、それらの間をすばやく切り替えているのです。2001年の研究では、人は作業を切り替えるたびに遅くなり、ルールが複雑なほどその遅れは大きくなりました。

1回の切り替えは一瞬かもしれませんが、1日に何百回も切り替えれば積み重なります。2010年の運転シミュレーターの研究では、200人の参加者のうち、成績を一切落とさずに運転と記憶の課題を同時にこなせたのは2.5%だけでした。別の研究では、よくマルチタスクをする人ほど自分の能力を過大評価する傾向があり、関連するテストでは実際には成績が悪いことがわかりました。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the main idea of the passage?

Q2. What happened in the 2001 study when the rules were more complex?

Q3. What can we infer about people who say they are good at multitasking?

重要単語

  • multitaskingB2
    名詞複数の作業を同時に行うことMultitasking often makes us slower, not faster. multi(多くの)+task(作業)。もとはコンピューター用語で、人間に転用された。
  • task switchingC1
    名詞(句)タスクの切り替えTask switching takes extra time each time. switch は「切り替える・スイッチ」。switch from A to B「AからBに切り替える」。
  • distractionB2
    名詞気が散るもの、注意散漫Phones are a major source of distraction. 動詞 distract「気をそらす」。be distracted by ~「~に気を取られる」。
  • inflatedC1
    形容詞膨らみすぎた、過大なMany people have an inflated view of their multitasking skills. inflate(膨らませる)から。inflation(物価上昇)と同じ語源。
  • simultaneouslyC1
    副詞同時にIt is hard to read and listen simultaneously. 形容詞 simultaneous。simultaneous interpretation「同時通訳」。at the same time の硬い言い方。
  • efficientB2
    形容詞効率的なDoing one task at a time can be more efficient. 名詞 efficiency。effective(効果的な)との区別が入試で問われやすい。

動画でもっと知る

「私マルチタスク得意なんだよね」は、実験的にはかなり怪しい。頭を使う作業なら、脳は同時処理じゃなくて高速切り替えしてるだけで、切り替えるたびに時間を失っているらしい。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Rubinstein, Meyer & Evans (2001) Executive control of cognitive processes in task switching, Journal of Experimental Psychology: Human Perception and Performancedoi.org
  2. Ophir, Nass & Wagner (2009) Cognitive control in media multitaskers, PNASdoi.org
  3. Watson & Strayer (2010) Supertaskers: profiles in extraordinary multitasking ability, Psychonomic Bulletin & Reviewdoi.org
  4. Sanbonmatsu et al. (2013) Who multi-tasks and why? Multi-tasking ability, perceived multi-tasking ability, impulsivity, and sensation seeking, PLoS ONEdoi.org
  5. Wiradhany & Nieuwenstein (2017) Cognitive control in media multitaskers: two replication studies and a meta-analysis, Attention, Perception, & Psychophysicsdoi.org