【悲報】「マルチタスクが得意」な人、実験するとほぼいなかった

読む前に予想してみよう!
マルチタスクをよくする人ほど、気が散るものを無視するのが上手い
スタンフォード大の研究では、ヘビーなメディア・マルチタスカーほど無関係な情報に気を取られやすかった。
- 対象
- 大学生など
- 規模
- 数十〜300人規模の実験、メタ分析あり
- 研究の種類
- 実験研究+追試・メタ分析
- 確かさ
- ★★★★☆
脳は2つの作業を同時にこなしているのではなく、高速で切り替えているだけ。切り替えのたびに時間とミスのコストが発生する。
ひとことで言うと脳は「ながら作業」が苦手。じつは高速で行ったり来たりしているだけ!
メールを返しながら会議に出て、合間にチャットもさばく。「自分、マルチタスク得意なんで」――そう言いたくなる気持ち、分かります。
でも認知心理学の実験室に連れていくと、話は変わります。脳は基本的に、2つの「考える作業」を本当の意味で同時にはこなせない。やっているのは、超高速の「切り替え」なんです。
そして切り替えには、毎回ちゃんと料金がかかっています。
01脳は「同時」じゃなく「切り替え」ている
歩きながら話す、のように体が覚えている動作は同時にできます。でも「メールの文面を考える」と「会議の発言を理解する」のように、どちらも注意が必要な作業になると、脳は片方ずつ順番に処理します。
このとき起きるのがタスク切り替えコスト。前の作業のルールを頭から下ろし、次の作業のルールを読み込み直す時間です。

02「ながら」常習者ほど気が散りやすい?
「でも、普段からマルチタスクしてる人は鍛えられてるのでは?」と思いますよね。スタンフォード大のチームが、まさにそれを調べました。
テレビ、ネット、メッセージなど複数のメディアを同時によく使う人(ヘビー・マルチタスカー)と、あまり使わない人を比べたところ、ヘビー派のほうが、無関係な情報を無視するのが苦手で、意外なことに課題の切り替えでも成績が振るわなかったのです(PNAS, 2009)。
ただし、この研究は1グループ20人前後と小規模でした。その後オランダの研究チームが行った追試とメタ分析では、「ヘビー派ほど気が散りやすい」傾向はあったとしても小さく、結果も研究ごとにばらつくことが分かっています(Attention, Perception, & Psychophysics, 2017)。
03本物の「スーパータスカー」は、ほんの一握り
とはいえ、例外はいます。米ユタ大のワトソンとストレイヤーは、200人に、本格的な運転シミュレーターでの運転と、耳で聞く記憶・計算課題を同時にやらせる実験で、同時にこなしても成績がまったく落ちない人を見つけ、「スーパータスカー」と名付けました(Psychonomic Bulletin & Review, 2010)。
ところがその割合は、参加者のわずか2.5%(200人中5人)。つまり「自分はマルチタスク得意」と思っている人の大半は、統計的にはその他大勢の側なんです。
しかも同じユタ大の別の研究では、ふだんよくマルチタスクをする人ほど、実際のマルチタスク能力(ワーキングメモリの課題成績)は低く、自分の能力を過大評価している傾向が見られました(PLoS ONE, 2013)。得意だからやるのではなく、一つのことに集中し続けるのが苦手だから、ついあれこれ手を出してしまう――という可能性もあるのです。
04切り替えコストを減らすコツ
脳の仕組みに逆らうより、味方につけましょう。
05まとめ
マルチタスクの正体は、高速で行ったり来たりする「シングルタスクの連続」でした。忙しいほど同時進行したくなりますが、実は「一つずつ片付ける」が最速ルートかもしれません。
この記事を読みながら、スマホの通知、何回見ました?
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerMany people think they are good at multitasking, but research suggests that the brain cannot truly perform…
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Many people say, "I am good at multitasking." But scientists say the brain cannot really do two thinking tasks at the same time. It switches quickly between them.
Each switch takes a little time and can cause mistakes. In one driving study, only 5 out of 200 people could do two tasks well at once. So it is better to do one thing at a time.
66 words ・ CEFR A2
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多くの人が「私はマルチタスクが得意だ」と言います。しかし科学者たちは、脳は考える作業を2つ同時に本当の意味でこなすことはできないと言います。脳はそれらの間をすばやく切り替えているのです。
切り替えるたびに少し時間がかかり、ミスの原因にもなります。ある運転の研究では、200人のうち2つの作業を同時にうまくこなせたのは5人だけでした。だから、一度に一つのことをするほうがよいのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
脳は2つの考える作業を同時にこなせず、切り替えているだけだという話なので B。
Q2. In the driving study, how many people could do two tasks well at once?
only 5 out of 200 people could do two tasks well at once とあるので D。
Q3. In this passage, "switches" means ...
switch は「切り替える」。一つの作業から別の作業へ移ることなので A。
Many people think they are good at multitasking, but research suggests that the brain cannot truly perform two demanding tasks at the same time. Instead, it switches rapidly between them. In a 2001 study, people became slower every time they switched between tasks, and the delay was greater when the rules were more complex.
Each switch may take only a moment, but hundreds of switches a day add up. In a 2010 driving simulator study, only 2.5% of 200 participants could drive and do a memory task at the same time without any drop in performance. Another study found that people who multitask often tend to overestimate their ability and actually perform worse on related tests.
116 words ・ CEFR B1
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多くの人は自分がマルチタスクが得意だと思っていますが、研究によると、脳は注意が必要な2つの作業を本当に同時に行うことはできません。そうではなく、それらの間をすばやく切り替えているのです。2001年の研究では、人は作業を切り替えるたびに遅くなり、ルールが複雑なほどその遅れは大きくなりました。
1回の切り替えは一瞬かもしれませんが、1日に何百回も切り替えれば積み重なります。2010年の運転シミュレーターの研究では、200人の参加者のうち、成績を一切落とさずに運転と記憶の課題を同時にこなせたのは2.5%だけでした。別の研究では、よくマルチタスクをする人ほど自分の能力を過大評価する傾向があり、関連するテストでは実際には成績が悪いことがわかりました。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main idea of the passage?
マルチタスクの正体は高速の切り替えで、そのたびにコストがかかるという内容なので C。
Q2. What happened in the 2001 study when the rules were more complex?
the delay was greater when the rules were more complex とあるので B。
Q3. What can we infer about people who say they are good at multitasking?
よくマルチタスクをする人ほど能力を過大評価し、実際の成績は悪いとあるので、自己評価が誤っている人が多いと推測できる。正解は D。
Answering emails during a meeting may feel efficient, but cognitive psychology suggests the brain rarely handles two attention-demanding tasks simultaneously. Instead, it switches between them, paying a task-switching cost each time it unloads one set of rules and loads another. A 2001 study showed that responses slowed with every switch and that the cost grew with rule complexity and switches to unfamiliar tasks. Do heavy media multitaskers get better with practice?
A 2009 Stanford study suggested the opposite: they were worse at ignoring irrelevant information and even at switching tasks. That study was small, however, and a 2017 replication and meta-analysis concluded that any such difference is small and inconsistent; it is also unclear whether multitasking causes distractibility or distractible people prefer multitasking. Genuine "supertaskers" do exist. In a 2010 driving simulator experiment, 5 of 200 participants, or 2.5%, showed no decline when combining driving with an auditory memory and math task.
Even so, a 2013 study found that frequent multitaskers tended to have weaker working memory and an inflated view of their own multitasking ability. Practical strategies, such as checking notifications in batches and grouping similar tasks, are likely to work better than trying to do everything at once.
200 words ・ CEFR B2
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会議中にメールに返信するのは効率的に感じられるかもしれませんが、認知心理学によれば、脳は注意を要する2つの作業を同時に処理することはほとんどありません。そうではなく、作業の間を切り替えており、一つのルールを下ろして別のルールを読み込むたびに、タスク切り替えのコストを払っているのです。2001年の研究は、切り替えのたびに反応が遅くなり、そのコストはルールが複雑なときや慣れない課題へ切り替えるときに大きくなることを示しました。メディアのヘビー・マルチタスカーは練習で上達するのでしょうか。2009年のスタンフォード大学の研究は逆を示唆しました。
彼らは無関係な情報を無視するのが苦手で、作業の切り替えさえ苦手だったのです。しかし、その研究は小規模で、2017年の追試とメタ分析は、そうした差があったとしても小さく一貫しないと結論づけました。また、マルチタスクのせいで気が散りやすくなるのか、気が散りやすい人がマルチタスクを好むのかもはっきりしていません。本物の「スーパータスカー」は実在します。2010年の運転シミュレーター実験では、200人の参加者のうち5人、つまり2.5%が、運転と耳で聞く記憶・計算の課題を組み合わせても成績が落ちませんでした。
それでも2013年の研究は、よくマルチタスクをする人ほどワーキングメモリが弱く、自分のマルチタスク能力を過大に見ている傾向があることを見いだしました。通知をまとめて確認したり、似た作業をまとめたりする実践的な方法のほうが、すべてを一度にやろうとするよりうまくいきそうです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
マルチタスクは切り替えでありコストがかかること、マルチタスカーやスーパータスカーの研究を述べているので A。
Q2. What did the 2017 replication and meta-analysis conclude?
any such difference is small and inconsistent とあるので C。因果の向きは不明とされているので D は誤り。
Q3. What does "an inflated view" of one's ability mean?
inflated は「膨らみすぎた」。自分の能力を実際より高く見ていることなので B。
重要単語
- multitaskingB2名詞複数の作業を同時に行うことMultitasking often makes us slower, not faster.
multi(多くの)+task(作業)。もとはコンピューター用語で、人間に転用された。 - task switchingC1名詞(句)タスクの切り替えTask switching takes extra time each time.
switch は「切り替える・スイッチ」。switch from A to B「AからBに切り替える」。 - distractionB2名詞気が散るもの、注意散漫Phones are a major source of distraction.
動詞 distract「気をそらす」。be distracted by ~「~に気を取られる」。 - inflatedC1形容詞膨らみすぎた、過大なMany people have an inflated view of their multitasking skills.
inflate(膨らませる)から。inflation(物価上昇)と同じ語源。 - simultaneouslyC1副詞同時にIt is hard to read and listen simultaneously.
形容詞 simultaneous。simultaneous interpretation「同時通訳」。at the same time の硬い言い方。 - efficientB2形容詞効率的なDoing one task at a time can be more efficient.
名詞 efficiency。effective(効果的な)との区別が入試で問われやすい。
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「私マルチタスク得意なんだよね」は、実験的にはかなり怪しい。脳は同時処理じゃなくて高速切り替えしてるだけで、切り替えるたびに時間を失っているらしい。
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- Rubinstein, Meyer & Evans (2001) Executive control of cognitive processes in task switching, Journal of Experimental Psychology: Human Perception and Performancedoi.org
- Ophir, Nass & Wagner (2009) Cognitive control in media multitaskers, PNASdoi.org
- Watson & Strayer (2010) Supertaskers: profiles in extraordinary multitasking ability, Psychonomic Bulletin & Reviewdoi.org
- Sanbonmatsu et al. (2013) Who multi-tasks and why? Multi-tasking ability, perceived multi-tasking ability, impulsivity, and sensation seeking, PLoS ONEdoi.org
- Wiradhany & Nieuwenstein (2017) Cognitive control in media multitaskers: two replication studies and a meta-analysis, Attention, Perception, & Psychophysicsdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。











