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脳と心理ホント

脳は“場所ごと”に老け方が違った。AIが約1.5万人のMRIで描いた「脳年齢マップ」

脳は“場所ごと”に老け方が違った。AIが約1.5万人のMRIで描いた「脳年齢マップ」

読む前に予想してみよう!

脳は、どの場所もほぼ同じスピードで老化していく

研究カード(どんな研究?)
対象
認知機能が正常な成人+軽度認知障害・アルツハイマー病の人
規模
学習用14,748人+検証用約2,000人
研究の種類
AI(深層学習)によるMRI解析・横断研究
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

約1.5万人の脳MRIをAIに学ばせ、脳の場所ごとの「年齢」を地図にした研究。前頭葉と側頭葉が、頭頂葉や後頭葉より老けて見えた。

ひとことで言うと脳は全部いっしょに年をとるんじゃなくて、場所ごとに老け方が違うらしい!

もくじ
  1. 脳に「場所ごとの年齢」をつけてみた
  2. 老けて見えたのは「おでこの奥」と「耳の上」
  3. 補足:大学の発表では「左右の差」にもふれていた
  4. どんでん返し:「右脳から老ける」説は、実は昔からの論争
  5. まとめ

「脳年齢」と聞くと、脳全体にひとつの年齢がついているイメージがありませんか?

でも実は、脳は場所によって老け方が違うらしいのです。アメリカの南カリフォルニア大学(USC)のチームが、AIに約1万5000人分の脳のMRI画像を学ばせました。そして、脳の小さな区画ごとに「何歳くらいに見えるか」を地図にしたのです。

すると、おでこの奥の前頭葉と、耳の上あたりの側頭葉が老けて見えました。頭のてっぺん寄りや、後ろ側の場所と比べての話です。軽度認知障害やアルツハイマー病の人では、この“老け”がさらに強く出ていました。

01脳に「場所ごとの年齢」をつけてみた

これまでの「脳年齢」研究は、MRI画像から脳全体でひとつの年齢を推定するのが一般的でした。実際の年齢より脳年齢が高ければ「脳が老けている」と考えるわけです。

ただ、ひとつの数字にまとめると、「どこが」老けているのかが見えなくなります。そこで今回のチームは、MRI画像を細かい立方体(ボクセル)に分けて見るAIを作りました。それぞれの場所に、年齢をつけるAIです。

02老けて見えたのは「おでこの奥」と「耳の上」

健康な大人の脳では、前頭葉と側頭葉が老けて見えました。頭のてっぺん寄りの頭頂葉や、後ろ側の後頭葉と比べての話です。

前頭葉は、計画を立てたり判断したりする場所です。側頭葉は、記憶や言葉に関わります。

この結果は、昔からの研究ともおおむね合っています。2005年には、健康な大人の脳の大きさを5年間追いかけた研究がありました。大きく縮んだのは、海馬や、高度な情報処理を担う「連合野」の皮質です。一方、後頭葉にある一次視覚野(目からの情報を最初に受け取る場所)は、ほとんど縮みませんでした。

病気の人では、さらに差が出ました。健康な人より軽度認知障害の人、軽度認知障害の人よりアルツハイマー病の人で、前頭葉と側頭葉の「老け」が強くなっていたのです。アルツハイマー病で早くから変化が出るとされる場所は、軽度認知障害の段階でも、健康な人よりはっきり年上に見えました(統計的に意味のある差)。

もう1つ分かったことがあります。ある場所が、同じ年齢の標準より老けて見えるかどうか。そのズレが、その場所が担う働きのテスト成績とも関係していたのです。AIの地図は、ただの絵ではなく、頭の働きと結びついているというわけです。

脳を小さな区画に分けて年齢をつけると、場所ごとに「老け方」が違って見えた
脳を小さな区画に分けて年齢をつけると、場所ごとに「老け方」が違って見えた

03補足:大学の発表では「左右の差」にもふれていた

論文の要旨には書かれていない話もあります。南カリフォルニア大学の発表(USC Today)によると、健康な大人では、右半球(脳の右半分)がわずかに老けて見える傾向がありました。左半球と比べての話です。これは右利きでも左利きでも同じだったそうです。

ただし、この左右差がどのくらいの大きさなのかは、要旨にも大学の発表にも数字が出ていません。どんな条件で確かめたのかも書かれていません(論文本文の数字は、この記事では確かめられていません)。「右脳から先に老ける」と言い切れる話ではない、と考えておくのが安全です。

04どんでん返し:「右脳から老ける」説は、実は昔からの論争

実は「右半球のほうが早く衰える」という考え(右半球老化説)は、昔から心理学で議論されてきました。

2002年には、デューク大学のチームがそれまでの証拠をまとめています。それによると、右半球老化説を支持する結果はまちまちでした。

脳画像の証拠とよく合ったのは、別の説明です。高齢になると、頭を使うときの前頭葉の活動が、左右どちらかに偏らなくなるというもの(HAROLDモデル)。ただしこの総説は、2つの説は両立しうるとも書いています。前頭前野にはHAROLDモデルが、ほかの場所には右半球老化説が当てはまるのかもしれない、というのです。

2021年には、ノルウェーなどのチームが、いくつもの調査グループの大人を何年も追いかけた結果を報告しました。注目したのは、高度な働きを担う領域のうち、20歳ごろに左右差がはっきりしていた場所です。そこでは、もともと厚かった側の大脳皮質が速く薄くなり、左右差が失われていきました。年をとると起きるのは、「右が先に衰える」ことより、「左右の違いが小さくなっていく」ことのほうなのかもしれません。

大学の発表にある「右がわずかに年上」という話が、こうした流れとどうつながるのか。答えはまだ出ていません。

05まとめ

脳は「まるごと一緒に」年をとるわけではなく、前頭葉と側頭葉が、頭頂葉や後頭葉より老けて見える。AIが描いた脳年齢マップは、そんな凸凹を見せてくれました。

将来は「どこが老けているか」を見ることで、認知症のサインを早く見つけられるかもしれません。あなたの脳のどこが一番“若い”のか、ちょっと気になりませんか?

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerMost brain-age studies give the whole brain one number. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Most brain-age studies give the whole brain one number. A team at the University of Southern California wanted a more detailed map. They trained an AI on MRI scans from 14,748 adults with normal thinking skills, aged 19 to 100.

The model estimated an age for each tiny cube of the brain. In healthy adults, the frontal and temporal lobes looked older than the areas at the top and back of the head. These areas help us plan and remember.

The team then tested the model on people with mild thinking problems or Alzheimer's disease. In those groups, the front and side areas looked even older. According to the university, the right half of the brain looked slightly older than the left, whether people were right-handed or left-handed.

128 words ・ CEFR B1

和訳を見る

脳年齢の研究の多くは、脳全体にひとつの数字をつけます。南カリフォルニア大学のチームは、もっと細かい地図を作りたいと考えました。彼らは、考える力が正常な19〜100歳の大人14,748人のMRI画像でAIモデルを訓練しました。

モデルは脳の小さな立方体ひとつひとつの年齢を推定しました。健康な大人では、前頭葉と側頭葉が、頭のてっぺんや後ろ側の領域より老けて見えました。これらの領域は、計画を立てたり記憶したりするのを助けています。

チームは次に、考える力の軽い問題やアルツハイマー病がある人でモデルを試しました。それらのグループでは、前と横の領域がさらに老けて見えました。大学によると、脳の右半分も左半分よりわずかに老けて見え、それは右利きでも左利きでも同じでした。

4択リーディングクイズ

Q1. What did the research team want to make?

Q2. Which areas looked older in healthy adults?

Q3. What can we infer about the left-right difference?

重要単語

  • hemisphereB2
    名詞(脳・地球の)半球The left hemisphere helps us use language. hemi-(半分)+sphere(球)。the Northern Hemisphere(北半球)のように地理でも使う。
  • frontal lobeC1
    名詞(句)前頭葉The frontal lobe helps us plan and make decisions. front(前)の形容詞 frontal + lobe(葉)。temporal lobe(側頭葉)、occipital lobe(後頭葉)とセットで覚える。
  • estimateB1
    動詞・名詞推定する、見積もる/推定値The model can estimate a person's age from a scan. 動詞は /éstəmeɪt/、名詞は /éstəmət/ と発音が変わる。underestimate(過小評価する)も頻出。
  • cognitiveB2
    形容詞認知の(考える・覚える働きの)Sleep affects our cognitive skills. cognitive impairment(認知機能の低下)、cognitive science(認知科学)。心理・脳科学の長文の超頻出語。
  • asymmetryC1
    名詞左右非対称、不均衡There is a small asymmetry between the two sides of the brain. a-(否定)+symmetry(対称)。形容詞は asymmetric(非対称の)。
  • dementiaB2
    名詞認知症Alzheimer's disease is the most common cause of dementia. de-(離れて)+ment(心)。アルツハイマー病は認知症の原因のひとつ、という関係を押さえる。
  • regardless ofB2
    熟語~に関係なくThe pattern appeared regardless of handedness. regardless of age / gender などの形で頻出。irregardless は誤用とされるので注意。
脳は全体が同じペースで老けるわけじゃないらしい。AIに約1.5万人のMRIを学ばせ「場所ごとの脳年齢」を地図にしたら、おでこの奥の前頭葉と耳の上の側頭葉が、頭の上や後ろ側より老けて見えた。軽度認知障害やアルツハイマー病の人では、その“老け”がさらに強かった。

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出典・参考文献(7件)タップで表示
  1. Chaudhari et al. (2026) Deep learning maps local brain aging in relation to cognition across human adulthood, PNASdoi.org
  2. Cole & Franke (2017) Predicting Age Using Neuroimaging: Innovative Brain Ageing Biomarkers, Trends in Neurosciencesdoi.org
  3. Raz et al. (2005) Regional brain changes in aging healthy adults: general trends, individual differences and modifiers, Cerebral Cortexdoi.org
  4. Nielsen et al. (2013) An evaluation of the left-brain vs. right-brain hypothesis with resting state functional connectivity magnetic resonance imaging, PLoS ONEdoi.org
  5. Dolcos, Rice & Cabeza (2002) Hemispheric asymmetry and aging: right hemisphere decline or asymmetry reduction, Neuroscience & Biobehavioral Reviewsdoi.org
  6. Roe et al. (2021) Asymmetric thinning of the cerebral cortex across the adult lifespan is accelerated in Alzheimer's disease, Nature Communicationsdoi.org
  7. Butler et al. (2021) Pitfalls in brain age analyses, Human Brain Mappingdoi.org