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録音した自分の声が「変」に聞こえるのはなぜ? 頭の骨を伝わる“もう一つの声”が消えていた

録音した自分の声が「変」に聞こえるのはなぜ? 頭の骨を伝わる“もう一つの声”が消えていた

読む前に予想してみよう!

他人が聞いているあなたの声に近いのは、自分で話しているときの声より「録音した声」のほうだ

研究カード(どんな研究?)
対象
健康な成人
規模
20人(音響測定)/80人(評価実験)
研究の種類
実験研究
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

ふだん聞く自分の声は「空気を伝わる音」と「頭の骨を伝わる音」のミックス。録音には空気の音しか入らないので、高く薄く聞こえる。

ひとことで言うといつもの声には「骨のスピーカー」の音がまざってる。録音には入ってないんだ!

もくじ
  1. 声は2つのルートで耳に届いている
  2. 骨ルートはどれくらい効いている?
  3. 違和感の正体は「なじみ」のズレ
  4. どんでん返し:知らずに聞くと、自分の声が好き
  5. まとめ

動画やボイスメモで自分の声を聞いて、「え、私ってこんな声なの…?」とゾワッとした経験はありませんか。

答えを先に言うと、ふだん自分に聞こえている声には、頭の骨を伝わってくる「もう一つの声」が混ざっているからです。録音にはその成分が入らないので、聞き慣れた声より高く、薄っぺらく聞こえます。

そして少し残念なお知らせ。まわりの人が聞いているのは、録音のほうの声です。

01声は2つのルートで耳に届いている

声を出すと、のどで生まれた振動は2つのルートで耳の奥(内耳)に届きます。

1つめは、口から出た音が空気を伝わり、耳の穴から入るルート。これを気導(きどう)といいます。他人に聞こえるのも、マイクが拾うのも、この音です。

2つめは、のどや口の振動が頭の骨や体の組織を直接伝わって内耳に届くルート。こちらが骨伝導です。骨伝導は体の中を伝わるぶん音の響きが変わり、自分に聞こえる声は、実際より太く、低く感じられやすいとされます。

つまり、自分にとっての「いつもの声」は、他人が一度も聞いたことのない、本人専用のミックス音声なのです。

自分の声は「空気ルート」と「骨ルート」の2本立てで届いている
自分の声は「空気ルート」と「骨ルート」の2本立てで届いている

02骨ルートはどれくらい効いている?

骨ルートは「おまけ」どころか、帯域によっては主役級。録音で骨ルートがごっそり消えれば、別人のように聞こえても不思議はありません。

03違和感の正体は「なじみ」のズレ

音の違いだけでなく、心理的な要素もあります。

1960年代、アメリカの心理学者ホルツマン(Holzman)さんらは、録音された自分の声を聞いたときの反応を調べ、居心地の悪さや身構えるような反応が起きやすいことを報告しました。何十年も聞き続けてきた「頭の中の声」と、外から聞こえる声が食い違う。このズレが「これは自分じゃない」という違和感を生むと考えられています。

日本では、東京大学の木村さんと四本(よつもと)さんが2018年、録音した声にフィルターをかけて「自分の声らしさ」を再現できるかを調べました。結果は、どのフィルターが一番「自分の声」に近いかは人によって大きく違うというもの。万人向けの補正方法はなさそうです。

04どんでん返し:知らずに聞くと、自分の声が好き

ここで面白い研究を一つ。

アメリカのヒューズ(Hughes)さんらは2013年、男女80人にいろいろな人の録音音声を聞かせ、声の魅力を評価してもらいました。じつは中に本人の声も混ぜてあったのですが、参加者には知らせていません。

すると参加者は、自分の声を、他の人が評価したよりも高く、また他人の声よりも高く評価していました。研究者たちは、これを自分をひいき目に見る「自己高揚」の一種ではないかと考えています。

「自分の声だ」と身構えると嫌になるのに、知らずに聞くとむしろ好き。違和感の正体は、声そのものより「なじみとのズレ」なのかもしれません。

05まとめ

録音した声が変に聞こえるのは、ふだんの声から頭の骨を伝わる成分が抜けているから。そして、なじんだ声とのズレに心がざわつくからです。

でも、まわりの人はずっと「録音のほうの声」であなたを知っています。違和感は自分だけのもの。次に録音を聞くときは、「これがみんなの知っている私の声か」と、少しだけ優しく聞いてあげてください。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerMany people dislike hearing their own voice on a recording. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Many people dislike hearing their own voice on a recording. The main reason is physical. When we speak, sound reaches the inner ear through the air and through the bones and tissues of the head, which is called bone conduction. Bone conduction changes the sound as it passes through the body, so the voice we hear while speaking often seems deeper.

A microphone picks up only the sound in the air, and that is also what other people hear. There is also a psychological side. Psychologists in the 1960s reported that people often feel uncomfortable when they hear their recorded voice, probably because it does not match the familiar voice in their heads. In a 2013 study of 80 people, participants rated their own voice as more attractive when they did not realize it was theirs.

136 words ・ CEFR B1

和訳を見る

多くの人は、録音で自分の声を聞くのが好きではありません。主な理由は物理的なものです。話すとき、音は空気を通って、そして頭の骨や組織を通って内耳に届きます。後者は骨伝導と呼ばれます。骨伝導では音が体を通るうちに変化するので、話しているときに聞こえる声はより低く感じられることが多いのです。

マイクが拾うのは空気中の音だけで、それはほかの人が聞いている音でもあります。心理的な面もあります。1960年代の心理学者たちは、人は録音された自分の声を聞くと居心地の悪さを感じやすいと報告しました。おそらく、頭の中のなじみのある声と一致しないからでしょう。2013年の80人を対象にした研究では、参加者は自分の声だと気づいていないとき、自分の声をより魅力的だと評価しました。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the main idea of the passage?

Q2. According to the passage, what do other people hear when you speak?

Q3. What can we infer from the 2013 study?

重要単語

  • bone conductionC1
    名詞(句)骨伝導Bone conduction lets you hear sound through your skull. conduct(伝える・導く)+-ion。conduct heat「熱を伝える」のように物理でも使う。骨伝導イヤホンは bone conduction headphones。
  • air conductionC1
    名詞(句)気導(空気を伝わって届く音)A microphone picks up only air conduction. bone conduction とセットで覚える。聴力検査でも「気導」「骨導」を分けて測る。
  • pitchB1
    名詞音の高さMy voice sounds higher in pitch on the recording. high / low pitch で「高い/低い音」。野球の「投げる」や「売り込み(sales pitch)」の意味も入試頻出。
  • familiarB1
    形容詞聞き慣れた、なじみのあるThe voice in my head is more familiar to me. A is familiar to B「AはBにとってなじみがある」/B is familiar with A「BはAをよく知っている」の主語の違いは超頻出。
  • self-enhancementC1
    名詞自分を実際よりよく見る傾向(自己高揚)Self-enhancement may make us like our own voice. enhance(高める)+-ment。心理学の論文で bias とよく並ぶ。
  • discomfortB2
    名詞不快感、居心地の悪さMany people feel discomfort when they hear their recorded voice. dis-(否定)+comfort(快適さ)。feel discomfort の形で使う。
録音した自分の声がゾワッとするのは、ふだん聞いている声に「頭の骨を伝わる音」が混ざっているから。他人が聞いているのは録音のほう。でも実験では、自分の声と知らずに聞くと他人の声より高く評価していたらしい。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Reinfeldt et al. (2010) Hearing one's own voice during phoneme vocalization—Transmission by air and bone conduction, The Journal of the Acoustical Society of Americadoi.org
  2. Holzman & Rousey (1966) The voice as a percept, Journal of Personality and Social Psychologydoi.org
  3. Hughes & Harrison (2013) I Like My Voice Better: Self-Enhancement Bias in Perceptions of Voice Attractiveness, Perceptiondoi.org
  4. Kimura & Yotsumoto (2018) Auditory traits of "own voice", PLOS ONEdoi.org