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「脂肪の味」は6つ目の基本味になれるのか? 研究者が名付けた“オレオガスタス”の正体

「脂肪の味」は6つ目の基本味になれるのか? 研究者が名付けた“オレオガスタス”の正体

読む前に予想してみよう!

脂肪酸そのものの味は、とてもおいしい

研究カード(どんな研究?)
対象
成人の参加者・マウス
規模
数十人規模の官能評価+動物研究
研究の種類
実験研究・総説
確かさ
★★☆☆☆
3秒でわかる

脂肪酸には甘味や塩味とは別の独特の味があるとして「オレオガスタス」と名付けられた。ただ単体ではおいしくなく、6つ目の基本味かは議論中。

ひとことで言うと「あぶらの味」は、実は「おいしくない」独特の味だった!

もくじ
  1. 「基本味」になるための条件
  2. 舌には「脂肪酸センサー」の候補があった
  3. 脂肪酸の味は「ほかの味とちがう」
  4. ただし「おいしい味」ではなかった
  5. まとめ

唐揚げ、ポテトフライ、こってりラーメン。脂っこい料理って、どうしてこんなにおいしいのでしょうか。

「脂肪には独自の味があるのでは?」——そう考えた研究者たちは、甘味・塩味・酸味・苦味・うま味に続く「6つ目の基本味」の候補として、脂肪の味を調べてきました。

2015年、アメリカの研究チームはこの味に「オレオガスタス(oleogustus)」という名前までつけました。ところが、その正体は、意外にも「おいしくない味」だったのです。

01「基本味」になるための条件

ある味が基本味と認められるには、いくつかの条件があると考えられています。

  1. その味を引き起こす決まった物質がある
  2. 舌にその物質をキャッチする仕組みがある
  3. 神経を通って脳に信号が届く
  4. ほかの基本味とはちがう味として感じられる

うま味が国際的に基本味として広く認められるまでにも、何十年もかかりました。脂肪の味は、今まさにこの「審査」の途中にあります。

02舌には「脂肪酸センサー」の候補があった

脂肪(中性脂肪)は大きな分子で、そのままでは味の細胞に届きにくいと考えられています。注目されているのは、脂肪が分解されてできる脂肪酸です。

03脂肪酸の味は「ほかの味とちがう」

2015年、アメリカ・パデュー大学のランニングさんらは、参加者にいろいろな味の液体を味わってもらい、どれとどれが似ているかをグループ分けしてもらいました。

においなど、味以外の手がかりの影響をできるだけ減らす工夫をしたうえで比べた結果、中くらい〜長い鎖の脂肪酸は、甘味・酸味・塩味・苦味のどのグループとも別のまとまりとして分けられたのです。研究者たちはこれを、ラテン語の「油」と「味」を組み合わせてオレオガスタスと名付けました。

脂肪酸の味は、ほかの基本味とは別の「島」として分けられた
脂肪酸の味は、ほかの基本味とは別の「島」として分けられた

04ただし「おいしい味」ではなかった

ここで意外な事実。脂肪酸の味は、単体では不快な味と感じられることが多いのです。古くなった油の「イヤな味」にも、脂肪酸が関わっています。

では、なぜ脂っこい料理はおいしいのか。研究者たちは、脂肪の魅力は香り、なめらかな食感、満足感など、いくつもの要素が組み合わさったものだと考えています。脂肪酸の味は、少量だと料理の味に深みを与える一方、多すぎると「まずい」の警告になる——苦味と似たはたらきかもしれません。

05まとめ

「脂肪の味」は、ほかの基本味とは区別できる独特の味として研究され、オレオガスタスという名前までつきました。でも、それは単体ではおいしくない味で、6つ目の基本味として認められるかはまだ議論中です。

唐揚げのおいしさは、味・香り・食感のチームプレー。科学は、その中の小さな「脂肪の味」の正体を、今まさに追いかけているところなのです。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerScientists widely accept five basic tastes. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Scientists widely accept five basic tastes. These are sweet, salty, sour, bitter and umami. Some researchers believe fat could be the sixth.

Fat itself is a large molecule, but when it is broken down, it produces fatty acids, which may be detected by the tongue. In 2005, a French team found that mice without a protein called CD36 lost their preference for fatty food.

Then, in 2015, researchers at Purdue University asked people to sort different taste solutions into groups. Fatty acids formed a separate group from sweet, sour, salty and bitter, so the team named this taste "oleogustus." Surprisingly, it tasted unpleasant on its own. Fried food is delicious partly because of its smell and texture.

117 words ・ CEFR B1

和訳を見る

科学者たちは5つの基本味を広く認めています。それは甘味・塩味・酸味・苦味・うま味です。脂肪が6つ目になりうると考える研究者もいます。

脂肪そのものは大きな分子ですが、分解されると脂肪酸ができ、それが舌で感知されるのかもしれません。2005年、フランスのチームは、CD36というたんぱく質をもたないマウスは、脂っこいエサを好まなくなることを発見しました。

そして2015年、パデュー大学の研究者たちは、人々にいろいろな味の溶液をグループ分けしてもらいました。脂肪酸は甘味・酸味・塩味・苦味とは別のグループになったので、チームはこの味を「オレオガスタス」と名付けました。意外なことに、それは単独では不快な味でした。揚げ物がおいしいのは、香りや食感のおかげでもあるのです。

4択リーディングクイズ

Q1. What did the French team find in 2005?

Q2. How did the Purdue researchers study the taste of fat?

Q3. What can we infer from the last two sentences?

重要単語

  • fatty acidC1
    名詞(句)脂肪酸Fatty acids are released when fat is broken down. omega-3 fatty acids(オメガ3脂肪酸)のように栄養の話でよく出る。
  • basic tasteB2
    名詞(句)基本味There are five widely accepted basic tastes. primary taste とも言う。sweet / salty / sour / bitter / umami の5つ。
  • textureB1
    名詞食感Fat gives food a creamy texture. creamy / crunchy / chewy など食感の形容詞とセットで覚えると便利。
  • unpleasantB1
    形容詞不快なPure fatty acids have an unpleasant taste. un-(否定)+pleasant。反意語の接頭辞 un- は語彙問題の定番。
  • debateB2
    名詞議論The sixth taste is still under debate. under debate「議論中で」。動詞としても使い、debate whether ~「~かどうか議論する」。
  • coinC1
    動詞(新語を)作り出すThe researchers coined the term "oleogustus." 名詞は「硬貨」だが、動詞 coin a term / coin a word で「新語を作る」。難関大で狙われる多義語。
「脂肪の味」が6つ目の基本味かもしれない、という研究がある。脂肪酸だけを味わうと、甘い・しょっぱいとは別の独特の味があり、研究者は「オレオガスタス」と命名。でもその味単体は、むしろイヤな味らしい。

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出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Running, Craig & Mattes (2015) Oleogustus: The Unique Taste of Fat, Chemical Sensesdoi.org
  2. Keast & Costanzo (2015) Is fat the sixth taste primary? Evidence and implications, Flavourdoi.org
  3. Laugerette et al. (2005) CD36 involvement in orosensory detection of dietary lipids, spontaneous fat preference, and digestive secretions, Journal of Clinical Investigationdoi.org