「2日目のカレーはおいしい」に決定的な研究はなし。確かなのは、鍋のまま常温で冷ますと菌が増えやすいこと

読む前に予想してみよう!
カレーは一度しっかり加熱すれば、鍋ごと一晩常温に置いても菌は増えない
ウエルシュ菌は熱に強い「芽胞」で生き残り、ゆっくり冷める間に一気に増えることがある。
- 対象
- 米国の食中毒報告・牛ひき肉の実験
- 規模
- 289件の集団発生+実験室研究
- 研究の種類
- 疫学調査+実験研究
- 確かさ
- ★★★☆☆
2日目のカレーがおいしい理由は諸説あるが決定的な研究は少ない。一方、鍋のまま常温で冷ますと熱に強いウエルシュ菌が増えるリスクは確か。
ひとことで言うと2日目カレーを楽しむなら、「すぐ冷やして冷蔵庫」が絶対ルール!
「カレーは2日目がおいしい」。日本の家庭では、ほぼ"常識"のように語られていますよね。
では、これは科学的に証明されているのでしょうか? 調べてみると、「おいしくなる」ことを示すしっかりした研究は、思ったより少ないことが分かりました。
そのかわり、はっきり分かっていることがあります。それは、常温で一晩置いたカレーの鍋の中で、ある菌が増えやすいという事実です。
01「おいしくなる」理由として考えられること
2日目のカレーがおいしく感じる理由としては、次のような説明がよく挙げられます。
- 具材(じゃがいも・肉・野菜)にルーの味がしみこむ
- じゃがいもなどから溶け出したでんぷんでとろみが増し、口当たりがまろやかになる
- スパイスのとがった香りが落ち着き、全体がなじむ
どれも「ありそう」な話です。でも、同じカレーを1日目と2日目に、どちらか分からないようにして食べ比べた信頼できる研究は、ほとんど見当たりません。「2日目はおいしい」という期待そのものが、味の感じ方を後押ししている可能性もあります。
つまり判定はビミョー。おいしく感じる人がいるのは確かでも、理由はまだ"有力な説"の段階です。
02鍋の中で起きている、もうひとつの変化
一方、はっきりしているのがウエルシュ菌の話です。
つまり、ぐつぐつ煮込んでも芽胞は生き残ります。そして鍋のままゆっくり冷めていく数時間が、菌にとって絶好の増える時間になってしまうのです。加熱すると料理の中の酸素が追い出されるので、大鍋の底のほうは特に酸素が少なく、菌に好都合な条件がそろいます。

しかも、食中毒を起こす菌は、増えてもにおいや見た目が変わらないことがあります。「におわないから大丈夫」とは言えないのです。
03冷ますスピードで、菌の数は大きく変わる
アメリカ農務省などの研究(1994年)では、牛ひき肉にウエルシュ菌の芽胞を混ぜて加熱しました。そのあと、54℃から7℃まで冷ますのにかける時間を変えて、菌の増え方を調べました。15時間以内に冷やした場合、菌はほとんど増えませんでした。ところが18時間かけて冷ました場合は、菌の数が数万倍に増えていました。
また、アメリカで1998〜2010年に報告されたウエルシュ菌の集団食中毒は289件、患者は約1万5000人。原因食品を1種類に絞れた集団発生(全体の約半数)では、9割以上が牛肉・豚肉や鶏肉の料理でした。
04まとめ
「2日目のカレーはおいしい」は、ありそうだけど科学的な決定打はまだ少ない話でした。一方、鍋ごと常温で冷ますと菌が増えやすいことは、はっきり分かっています。
2日目カレーを楽しむコツは、小分け・急冷・しっかり再加熱。おいしさと安全、両方を手に入れましょう。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn Japan, it is almost common sense that curry tastes better on the second day.
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Many people in Japan say curry tastes better on the second day. But there are not many good studies about this. One thing is clear, however. A kind of bacteria can grow in a big pot of curry. It can live even after boiling.
If the pot cools slowly at room temperature, the bacteria grow fast. So put leftover curry in small boxes, cool it quickly, and keep it in the fridge.
72 words ・ CEFR A2
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日本では、カレーは2日目のほうがおいしいと言う人がたくさんいます。しかし、これについての良い研究はあまり多くありません。けれども、はっきりしていることが1つあります。カレーの大きな鍋の中で、ある種類の菌が増えることがあるのです。その菌は、煮立てた後でも生きていることができます。
鍋が室温でゆっくり冷めると、菌は速く増えます。だから、残ったカレーは小さな容器に入れ、すばやく冷まして、冷蔵庫で保存しましょう。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main message of the passage?
おいしさの研究は少ないが、菌が増えるので残りはすばやく冷まして冷蔵すべき、というのが主なメッセージなので D。
Q2. When do the bacteria grow fast?
If the pot cools slowly at room temperature, the bacteria grow fast. とあるので C。
Q3. In this passage, "leftover" curry is curry that ...
leftover は「食べ残り・残り物」。食事の後に残ったカレーのことなので B。
In Japan, it is almost common sense that curry tastes better on the second day. People often say that the flavor soaks into the vegetables, the sauce becomes thicker, and the spices become milder. However, there are very few reliable studies in which people compared first-day and second-day curry without knowing which was which. What is clear is a safety risk.
A bacterium called Clostridium perfringens can form spores that survive boiling. When a large pot of curry cools slowly, the bacteria can multiply quickly, especially at around 43 to 45°C. Food with these bacteria may still look and smell normal. So many cooks divide leftovers into shallow containers, cool them quickly, and reheat them until they are steaming hot.
120 words ・ CEFR B1
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日本では、カレーは2日目のほうがおいしいというのは、ほとんど常識です。味が野菜にしみこむ、ソースにとろみが増す、スパイスがまろやかになる、とよく言われます。しかし、どちらがどちらか知らされずに1日目と2日目のカレーを食べ比べた信頼できる研究は、ほとんどありません。はっきりしているのは、安全上のリスクです。ウエルシュ菌という細菌は、煮立てても生き残る芽胞を作ることがあります。
大鍋のカレーがゆっくり冷めると、この菌は特に43〜45℃前後で急速に増えることがあります。この菌がいる食べ物でも、見た目やにおいはふつうのままのことがあります。そこで、残り物を浅い容器に分けてすばやく冷まし、湯気が立つまでしっかり再加熱する人も多いのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is missing from research on second-day curry?
there are very few reliable studies in which people compared ... without knowing which was which とあるので B。
Q2. Why can Clostridium perfringens survive boiling?
can form spores that survive boiling とあるので D。
Q3. Why does the writer mention that the food "may still look and smell normal"?
菌が増えても見た目やにおいでは分からない=感覚では安全を判断できない、という警告なので C。
In many Japanese homes, curry is said to taste better on the second day. The usual explanations sound reasonable: flavors soak into the ingredients, starch from the potatoes thickens the sauce, and harsh spice notes mellow. But there is little rigorous evidence. Few, if any, blinded taste tests have compared the same curry on its first and second days, and the expectation of improvement may itself influence perception.
By contrast, the microbiological risk is well documented. Clostridium perfringens, a bacterium common in soil and in animal intestines, can form spores that survive one to six hours of boiling. It thrives in low-oxygen conditions between 12 and 50 degrees Celsius, just like the bottom of a large, slowly cooling pot. In a 1994 US experiment, ground beef mixed with spores was cooked and then cooled.
The bacteria barely grew when cooling took 15 hours or less, but when it took 18 hours, their numbers rose tens of thousands of times. Between 1998 and 2010, the US recorded 289 outbreaks involving about 15,000 patients. Contaminated food may look and smell normal, so the safest approach is to divide leftovers into shallow containers, chill them quickly and reheat them thoroughly.
197 words ・ CEFR B2
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日本の多くの家庭では、カレーは2日目のほうがおいしいと言われています。よくある説明はもっともらしく聞こえます。味が具材にしみこむ、じゃがいものでんぷんがソースにとろみをつける、スパイスのとがった香りがまろやかになる、といったものです。しかし、厳密な証拠はほとんどありません。
同じカレーを1日目と2日目で比べた盲検の味覚テストは、あったとしてもごくわずかで、おいしくなるという期待そのものが感じ方に影響しているかもしれません。対照的に、微生物によるリスクは十分に記録されています。土や動物の腸によくいる細菌であるウエルシュ菌は、1〜6時間の煮沸にも耐える芽胞を作ることがあります。この菌は12〜50℃の酸素の少ない条件でよく増えますが、それはまさに、ゆっくり冷めていく大鍋の底のような環境です。1994年のアメリカの実験では、芽胞を混ぜた牛ひき肉を加熱してから冷ましました。
冷ます時間が15時間以内なら菌はほとんど増えませんでしたが、18時間かかると菌の数は数万倍に増えました。1998年から2010年の間に、アメリカでは約1万5000人の患者を出した集団発生が289件記録されました。汚染された食べ物でも見た目やにおいがふつうのことがあるので、最も安全な方法は、残り物を浅い容器に分け、すばやく冷やし、しっかり再加熱することです。
4択リーディングクイズ
Q1. How does the passage contrast the two topics it discusses?
there is little rigorous evidence(おいしさ)と By contrast, the microbiological risk is well documented(菌のリスク)を対比しているので C。
Q2. What did the 1994 experiment show?
15時間以内ではほとんど増えず、18時間では数万倍に増えた、とあるので A。
Q3. Why does the writer mention that "the expectation of improvement may itself influence perception"?
「おいしくなるはず」という期待が感じ方を変えている可能性、つまり盲検でないと判断できない理由を示しているので D。
重要単語
- leftoverB1名詞残り物We ate the leftover curry the next day.
ふつう複数形 leftovers で使う。left(残された)+over。 - sporeC1名詞芽胞、胞子Some bacteria survive boiling as spores.
カビやシダの「胞子」も spore。熱や乾燥に強い休眠状態のイメージ。 - food poisoningB1名詞(句)食中毒Food poisoning often happens in summer.
get food poisoning「食中毒になる」。poison(毒)から。 - refrigerateB2動詞冷蔵するRefrigerate the soup after it cools.
refrigerator(冷蔵庫)の動詞形。口語では fridge が一般的。 - reheatB1動詞温め直すReheat the curry until it is steaming hot.
re-(再び)+heat。reheat thoroughly「しっかり温め直す」が衛生の定番表現。 - bacteriumB2名詞細菌(単数形)This bacterium grows well without oxygen.
複数形は bacteria。bacteria を単数扱いする誤りが入試の正誤問題で狙われる。 - multiplyB2動詞増殖する、増えるBacteria multiply quickly in warm food.
「掛け算する」の意味でも使う。菌が増える文脈では grow / multiply が定番。
公式・一次情報をチェック
- 細菌による食中毒(厚生労働省)mhlw.go.jp
このネタ、誰かに教えたくなった?
「2日目のカレーはおいしい」、調べてみたら科学的な決定打は意外と少なかった。それより確かなのは、鍋ごと常温で一晩置くと、100℃で煮ても生き残る芽胞をつくるウエルシュ菌が増えやすいこと。作り置きは小分けにして急冷が鉄則。
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出典・参考文献(3件)タップで表示
- 食品安全委員会 ファクトシート:ウエルシュ菌食中毒fsc.go.jp
- Grass et al. (2013) Epidemiology of foodborne disease outbreaks caused by Clostridium perfringens, United States, 1998-2010, Foodborne Pathogens and Diseasedoi.org
- Juneja et al. (1994) Influence of Cooling Rate on Outgrowth of Clostridium perfringens Spores in Cooked Ground Beef, Journal of Food Protectiondoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。











