
Tori no Ichi (Rooster Fair)
酉の市の由来と歴史(詳しく)
いつから?なぜ?名前の意味は? 酉の市の本当の話を、確かな資料でたどります。
1酉の市の由来:日本武尊の熊手と、村の収穫祭
酉の市の主役は、竹でできた「熊手(くまで)」です。落ち葉をかき集めるあの道具が、なぜお祭りの主役なのでしょう。
浅草の鷲(おおとり)神社には、こんな言い伝えがあります。昔、日本武尊(やまとたけるのみこと)が東国での戦いの帰りに神社に立ち寄って勝利を祈り、勝ったあとで、お礼として社の前の松に熊手をかけた。その日が11月の酉の日だった。神社はこの日を例祭の日と定め、これが酉の市の始まりだと伝えています。
一方で、歴史の研究では、もとは今の東京都足立区花畑にある大鷲神社(おおとりじんじゃ)の近くの農村で開かれた、収穫を祝うお祭りだったとされます。参拝した人は鶏(にわとり)を奉納し、祭りのあとで浅草寺の観音堂の前に放したそうです。「酉」と「鷲」、どちらも鳥にちなむお祭りなのです。
もとの呼び名は「酉の祭(とりのまち)」でした。祭りに市(いち)が立つようになって、「酉の市」と書かれるようになったと言われます。

2酉の市の楽しみ方:熊手を値切って、手締めで買う
浅草の鷲神社(おおとりじんじゃ)の酉の市は、午前0時の一番太鼓を合図に始まり、まる24時間続きます。境内と周りには熊手の店がおよそ150、屋台がおよそ750。毎年70万〜80万人が訪れるとされます。
熊手は、鷲の爪にたとえられ、「福をかき込む」縁起物です。竹の熊手に、おかめのお面、小判、米俵、鯛などがぎっしり飾られています。値段は1,000円ほどの小さなものから数十万円のものまで。最初は小さく買い、商売が大きくなるのに合わせて、毎年ひとまわり大きな熊手に買いかえるのがよいとされます。
買い方にも粋(いき)な作法があります。まず店の人と値段の交渉を楽しむ。昔は、値切った分をそのまま「ご祝儀」として店に置いていくのがかっこいい買い方でした。買う人は大名気分、店は得した気分。取り引きがまとまると、店の人とお客がいっしょに「シャシャシャン」と手締めをして、商売繁盛と家内安全を祈ります。
神社では、酉の市の日だけの「かっこめ」と呼ばれる小さな熊手のお守りも授けています。食べ物では、出世や子宝の縁起物とされる大きな芋「八つ頭(やつがしら)」や、山椒の入った餅菓子「切山椒(きりざんしょう)」が名物です。
🎁 シンボルと小物
福をかき集める熊手。おかめ・小判・米俵などで飾る。
ふっくらした笑顔の女性のお面。福を呼ぶ顔とされ、熊手の中心に飾られる。
熊手を買うと、店の人とお客がそろって手を打つ。
人の「頭」に立つ出世と、芽がたくさん出る子宝の縁起物。
3酉の市の歴史:広重の白い猫と、一葉の『たけくらべ』
江戸時代、酉の市は町の人々が楽しみにする年中行事になりました。神社によると、宝暦・明和のころ(18世紀半ば)には、もうたいへんなにぎわいだったそうです。
江戸の酉の市は、もともと3か所にありました。花畑の大鷲神社が「上酉(かみとり)」、千住の勝専寺が「中酉(なかとり)」、浅草の鷲神社が「下酉(しもとり)」。明治時代に勝専寺の市が閉じ、今は花畑と浅草が続いています。中でも浅草がいちばん有名になったのは、すぐ東どなりに遊郭の新吉原があり、人の行き来が多かったことも理由の1つとされます。
歌川広重の『名所江戸百景』には、1857年11月の「浅草田甫(あさくさたんぼ)酉の町詣(あさくさたんぼ とりのまちもうで)」という1枚があります。描かれているのは、窓辺にすわる1匹の白い猫。その向こうの田んぼ道を、熊手をかついだ人々の行列が鷲神社へ向かっています。お祭りそのものではなく、それを部屋の中からながめる猫を描いた、とても粋な絵です。
明治時代には、樋口一葉(ひぐちいちよう)が小説『たけくらべ』で、三の酉の夜のにぎわいを描きました。俳句の世界でも「酉の市」は冬の季語です。江戸の俳人・其角(きかく)は「春を待つ ことのはじめや 酉の市」と詠みました。11月に入って最初の市が立つと、江戸の人々は「さあ、年の瀬だ」と新年を待つ気分になったのです。
🕰️ 酉の市の年表
- 応永年間(15世紀はじめ)花又(今の足立区花畑)の鷲大明神で、近くの農民の収穫祭として始まったとされる。
- 1657年(明暦3年)江戸で明暦の大火。この年が三の酉の年だったことが、「三の酉は火事が多い」という言い伝えを強めたとされる。
- 18世紀半ば(宝暦・明和)浅草の酉の市がたいへんなにぎわいを見せる。
- 1857年11月歌川広重『名所江戸百景』に「浅草田甫酉の町詣」が描かれる。
- 明治時代樋口一葉『たけくらべ』に三の酉のにぎわいが登場。
- 2027年11月2日・14日・26日と、三の酉まである年。
4三の酉の年は火事が多い?よくある誤解とホント
誤解1:三の酉の年は、本当に火事が多い。
ホントは、はっきりした根拠はありません。鷲神社も「理由ははっきりしない」としたうえで、いくつかの説を紹介しています。空気が乾く寒い季節に火の用心を呼びかけたという説。夜遊びに出かける男性を家に引き止めるために広まったという説。そして、1657年の「明暦の大火」が三の酉の年に起きたことが、言い伝えを強めたとも言われます。今でも熊手に「火の用心」のシールを貼る習慣があります。
誤解2:一の酉に行かないとご利益が少ない。
ホントは、鷲神社によると、一の酉でも二の酉でも三の酉でも、ご利益は同じだと伝えられています。
誤解3:酉の市は全国どこにでもある。
ホントは、関東地方を中心としたお祭りです。関西で商売の神さまといえば、1月の「えびす」のお祭り(十日戎(とおかえびす))が有名です。
💡Fun Facts酉の市の豆知識 6連発
酉の日は12日ごとに来るので、11月に3回ある年があります。2027年は11月2日・14日・26日の「三の酉」の年です。
Rooster Days come every 12 days. In 2027, November has three of them.
浅草の鷲神社の酉の市は、午前0時の一番太鼓から24時間ぶっ通しで開かれます。
At Otori Shrine in Asakusa, the fair starts at midnight and lasts for 24 hours.
昔は、熊手を値切った分を「ご祝儀」として店に置いていくのが粋な買い方でした。
In old Tokyo, people asked for a lower price, then left the saved money as a gift.
広重の「浅草田甫酉の町詣」は、お祭りではなく、窓辺からそれをながめる白い猫を主役にした浮世絵です。
A famous 1857 print shows the fair from a window. The main character is a white cat.
鷲神社の「なでおかめ」は、さわる場所でご利益が違うとされます。鼻は金運、おでこは賢さ、右のほおは恋愛です。
At the shrine, people touch a big okame face. The nose is for money, and the forehead is for wisdom.
鷲神社によると、熊手の売れ筋は2万〜5万円ほど。毎年少しずつ大きくしていくのがよいとされます。
Many rakes cost 20,000 to 50,000 yen. People buy a bigger one every year.

