そして空所を含む文は、たいてい何かを引用したり、否定したり、比較したりする「枠」になっている。
枠の種類が違えば、根拠のある場所も違います。
空所の直後の1文を探しにいく読み方をしているかぎり、6問の半分にはたどり着けません。
11級 大問2とは何か──形式・語数・配点を60秒で把握する
1級の一次試験は、リーディング・ライティングテストが100分、リスニングテストが約38分。大問2はリーディングの中盤に置かれます。
リーディングは全35問。大問2の6問は約17%です。ただし所要時間あたりの得点効率で見ると、大問2は1級で最も割のいいパートになります。大問3が7問で31分かかるのに対し、大問2は6問で12分。ここを固めておくと、大問3とライティングに使える余裕が生まれます。
大問2の英文はこういう形をしている
直近の出題も、この形どおりでした。Aは16世紀イタリアの博物画家を扱った美術史、Bはアリによる菌類の栽培という進化生物学。どちらも3段落・各段落1空所で、6問すべてが句や節を選ぶ形式でした。
1級の一次はリーディング・ライティング・リスニングが各850点・合計2550点満点、合格基準スコアは2028。全体の約8割が必要です。大問2の6問は、手順を固めれば満点を狙える枠。ここを落とさない前提で全体の設計を組むのが現実的です。
2大問2で落とす人がやっている3つのこと
語彙も読解力も十分にあるのに、大問2だけ2問前後を落とす。そういう受験者の解き方には、はっきりした共通点があります。
落とし方① 空所の直後の1文を探しにいく
最も多い失敗です。空所を見つけたら次の文へ視線を落とし、そこに答えの手がかりを求める。ところが1級の空所を含む文は、たいてい何かを引用したり、否定したり、比較したりする「枠」になっています。
This is not to say, however, that … was ( ). In this respect, the ants ( ).
枠の種類が違えば、根拠のある場所も違います。直後の1文にあるとはかぎらず、前の段落にあることさえある。枠を見分けるのが第一歩です。
落とし方② 段落を読み終える前に決めてしまう
1級では段落の第1文そのものが空所になることがあります。英語の段落は第1文が結論で、以降がその裏づけ。つまりこの型は段落全体の要約を入れる問題です。読み進めながら決めようとすると、根拠が半分しか揃っていない状態で判断することになります。
落とし方③ 選択肢を内容だけで比べる
2択まで絞ったあと、両方を何度も読み返して決められない。これは比べる軸が違っています。1級の不正解は「内容が違う」ではなく「レベルが違う」ことで作られる。段落内の一事実を拾っただけのもの、逆に本文の射程を超えた一般論。見るべきは内容ではなく抽象度です。
この3点への対策が、そのまま本記事の構成です。枠の判別(セクション4)、否定枠の処理(セクション5)、トピックセンテンス型の扱い(セクション6)、抽象度による選択(セクション8)。この4つを手順に組み込めば、大問2は安定します。
3【最重要】1段落=1空所。ただし「読み切ってから解く」
1級の大問2も、構造は完全に固定されています。1本のパッセージは必ず3段落。空所は各段落にちょうど1つずつ。設問番号は段落順です。
処理の単位は「段落」。ただし読み切ってから戻る
段落単位で処理するのは動かせません。3段落ぶんを読んでから3問まとめて解くのは、記憶の負荷が大きすぎるからです。問題は、段落のどこまで読んでから空所に戻るか。
◯ 段落を最後まで読んでから、空所に戻る → どの枠でも対応できる
1級の1段落は約110語。読み切っても40秒前後で、失う時間より得られる精度のほうがはるかに大きい。
読み切るのは、あくまでその段落まで。先の段落まで進んでしまうと、どの情報がどの空所の根拠だったか区別がつかなくなります。「1段落を読み切る → 空所に戻って解く → 次の段落へ」。この単位を崩さないでください。
4空所を包む「文の枠」4種類
1級の大問2で最初にやるべきは、空所を含む文がどういう枠になっているかを見分けることです。枠が決まれば、根拠を探す場所が決まります。
実際の出題で確かめる
直近のAパッセージ(16世紀の博物画家を扱った美術史)は、3つの空所が④トピック枠 → ②否定・譲歩枠 → ①引用枠という並びでした。第1段落は「画家が◯◯した」という第1文が空所で、その後ろ全体が理由の説明。第2段落は「とはいえ、彼の作品のすべてが◯◯だったわけではない」という否定枠。第3段落は「彼の描写は◯◯だったと論じられてきた」という引用枠で、段落の残り全部がその論証になっていました。
枠を見分けずに「直後の1文」だけを探しにいくと、この3問はどれも根拠にたどり着けません。1級の大問2が難しいと感じる理由の大半は、ここにあります。
手を動かす対策:空所を見つけたら、まずそれを包む述語部分(say that / is not to say that / In this respect など)に丸をつける。2秒で終わり、以降の探索先が確定します。
5否定・譲歩の枠──前段落のキーワードがそのまま入る
4つの枠のうち、最も見落とされ、最も落としやすいのが②否定・譲歩枠です。ここだけは根拠が「後ろ」ではなく「前」にあります。
↓
この段落の冒頭|「とはいえ、すべてがX(空所)だったわけではない」
↓
続く文|Xに反する具体例を挙げて、修正していく
直近のAパッセージ第2段落が、まさにこれでした。第1段落で「科学革命の広がりの中で、この画家の絵は対象をありのままに捉えることを目指した」と述べられ、第2段落の冒頭が「とはいえ、彼の絵のすべてが(空所)だったわけではない」。続いて、有名な鳥の絵が白い余白に囲まれ、本来の生息環境が描かれていないという例が示されます。
空所に入るのは「写実に貫かれていた」という前段落のキーワードです。直後の「余白」の話から答えを作ろうとすると、色彩や技法に関する選択肢を選んでしまう。枠を見抜いていれば、直後を読む前に答えが決まります。
覚えておく合図:This is not to say that … / It is not that … / Far from … / That is not to suggest …。この形を見たら、視線を後ろではなく前段落へ向けてください。1級の大問2で、最も確実に1問を取りにいける場面です。
6トピックセンテンス型の空所──段落全体が根拠になる
段落の第1文に空所が置かれる型です。4つの枠のうち、最も根拠の範囲が広くなります。
なぜ難しいのか
英語の段落では、第1文が結論で、以降がその裏づけです。つまりトピック枠の空所は、段落全体の要約を入れる問題にほかなりません。読み進めながら解こうとすると、根拠が半分しか揃っていない状態で判断することになります。
空所が段落の第1文にあると気づいた瞬間に、そこは飛ばして段落を最後まで読む。
読み終えたら「この段落は結局、対象について何を言ったか」を一言でまとめ、それに最も近い選択肢を選ぶ。
直近のAパッセージ第1段落も、この型でした。「16世紀後半、この画家は宮廷の図案家として制作した挿絵を通じて(空所)」という第1文のあと、それ以前の博物画は寓意的・神話的な表現が中心だったこと、そしてこの画家の仕事がその描き方に転換をもたらしたことが続きます。段落全体を読んで初めて、「美術に本物らしさをもたらした」という要約が選べます。
トピック枠は大問4の要約対策とまったく同じ作業です。段落を読んで一言にまとめる。1級の大問2でこの型を練習することは、そのまま90〜110語の要約の訓練になります。
7解法6ステップ
ここまでの技術を、本番でそのまま使える手順に落とし込みます。
1選択肢を4つ眺め、共通する形を確認する(10秒)
2空所を包む枠を判定する(5秒)
3段落を最後まで読み切る(40秒)
4枠に応じた根拠から、日本語で仮の答えを作る(25秒)
54択と照合し、抽象度が合わないものを消す(20秒)
6代入して、段落の残り全部が説明として成立するか確かめる(20秒)
8選択肢は「抽象度」で選ぶ
1級の大問2で2択に絞ったあと、内容を何度読み比べても決まらないことがあります。そういうときは、比べる軸が違っています。見るべきは内容ではなく抽象度です。
ちょうどよい|段落全体をまとめた命題(「その描写は権力の表現でもあった」) ← 正解
低すぎる|段落内の一事実を拾っただけ(「白い余白が使われていた」)
2択に残ったときの判定質問
残りの半分しか使わないなら抽象度が低すぎ、残り全部でも足りないなら高すぎです。ちょうど使い切るものが正解になります。
9不正解選択肢7パターン
1級の不正解選択肢は、「枠を見ずに直後の1文だけを読んだ人」がどれを選ぶかを計算して作られています。
・枠の種類と役割が一致している
・本文と違う語で書かれている
・断定を避け、程度を限定しない
・否定枠に肯定内容が入っている
・術語がそのまま残っている
・本文を読まなくても選べてしまう
10実践ミニ演習──否定枠と帰結枠を実際に解く
1級の大問2の形式に合わせて書き下ろした練習用の英文です。まず4択の形を確認し、空所を包む枠を判定してから、段落を最後まで読んでください。
The eighteenth-century fashion for landscape gardening in Britain is often described as a retreat from artifice. Formal parterres and clipped hedges gave way to rolling lawns, serpentine lakes, and carefully placed groves that appeared to have grown of their own accord. In practice, however, the designers of these parks ( 1 ). Hills were flattened, streams were rerouted, and entire villages were relocated when they interrupted a desired view.
This is not to say, however, that contemporaries regarded the results as ( 2 ). Critics complained that the new parks looked much the same from one estate to the next, and that the appetite for smooth green expanses had erased the local character of the countryside. The style nevertheless spread across Europe, precisely because its apparent effortlessness could be read as a mark of the owner’s refinement.
2 reshaped the land more aggressively than their predecessors
3 avoided altering the appearance of nearby villages
4 depended heavily on plants imported from abroad
2 too costly for most landowners to maintain
3 inferior to the formal gardens they replaced
4 unsuitable for anything other than private use
( 1 ) の解説(帰結枠)
枠の判定から入ります。In practice, however, … は、直前で述べた通説を実態で覆す帰結枠。前半は「作為からの後退と言われる」「自然に生えたように見える」。空所にはその逆が入るはずです。そして直後に、丘を削り、川筋を変え、村ごと移転させたという記述が続く。仮の答えは「実際にはそれ以前より大規模に土地を改変していた」。
( 2 ) の解説(否定・譲歩枠)
This is not to say, however, that … ——セクション5で扱った否定・譲歩枠です。ここで視線を向けるのは後ろではなく前段落。前段落が繰り返し打ち出していた性質は「自然に生えたように見える」ことでした。したがって空所には、その性質を表す語が入り、「当時の人々がそう見なしていたわけではない」と部分的に取り消される構造になります。
裏づけは直後にあります。批評家たちは、どの邸宅も同じに見え、地方の個性が消し去られたと不満を述べた。——これは「自然に見える」という評価が共有されていなかったことの説明です。
2問を通して確認してほしいのは、どちらも「直後の1文」だけでは答えが出ないという点です。( 1 ) は3つの例を束ねる抽象度が必要で、( 2 ) は根拠が前段落にある。枠の判定を飛ばした人が落ちるように設計されている——これが1級の大問2の一貫した設計思想です。
11時間配分──12分の使い方と、筆記100分の設計図
1級の筆記は100分。読む語数は約2600語、書く語数は約320語。大問2は12分で処理し、余力を大問3とライティングに回すのが基本方針です。
筆記100分の全体設計
12分の内訳──1パッセージ6分
最後の25秒の通し読みを省かないでください。1級の3段落は「通説 → 修正 → 別の解釈」という一本の論証です。3つの答えを入れた状態で通すと、段落をまたいだ論の破綻がはっきり浮かびます。とくに否定枠を含む回では、ここで1問拾えることが珍しくありません。
本番の保険:1問に2分半以上かかっていると感じたら、いったんマークして次の段落へ。大問2は先へ進むほど論の全体像が見え、戻ったときに解きやすくなるという性質があります。粘るより進むほうが期待値が高い、数少ないパートです。
12満点を取るための勉強法・6週間ロードマップとQ&A
1日30〜45分、6週間で仕上がります。
第1週|枠の判定だけを練習する
過去問の大問2を1日1本。解かずに、6つの空所すべてについて枠の種類(引用・否定・帰結・トピック)だけを書き込みます。正解を見て答え合わせをするのは、枠の判定が合っていたかどうかだけ。1本10分で終わります。この判定が安定した時点で、正答率は確実に上がっています。
第2週|根拠の場所を毎回書き出す
1日1本、解いたあとに「根拠は段落の残り全部か、前段落か、直前の比較か」を記録します。
(23) トピック枠/根拠=第1段落全体の要約
(24) 否定枠/根拠=前段落のキーワード(写実性)
(25) 引用枠/根拠=第3段落の残り全部(余白=支配の表現という論証)
10本ぶんたまると、空所を見た瞬間に視線を向ける方向が反射で決まるようになります。1級の大問2で最も得点が動く工程です。
第3週|抽象度のものさしを作る
正解選択肢と、最も紛らわしかった不正解を並べて書き写し、「どちらが段落の残りをちょうど使い切るか」を1行で説明します。この作業を20問ぶんやると、セクション8の判定質問が自分の言葉として使えるようになります。
第4週|「なぜ×か」を7パターンで言語化する
1日1本、正解した問題も含めて4つの選択肢すべてに判定理由を書く。理由はセクション9の番号で構いません。とくに③(枠の取り違え)と①(抽象度が低すぎる)を見抜けるようになると、2択で外さなくなります。
第5週|段落を一言に要約する訓練
解いた英文の各段落に、日本語15字以内の見出しをつけます。トピック枠への対応力がつくと同時に、大問4(90〜110語の要約)の下準備がそのまま進みます。1級では、この2つは同じ訓練だと考えて構いません。
第6週|音読と、時間を測った実戦演習
並行して12分厳守の通し演習を1日1本。記録するのは正答数・所要時間・落とした問題の枠と不正解パターン番号の3項目だけです。5本たまれば弱点が数字で見えます。
Q. 1級の大問2に、接続表現を選ぶ問題は本当に出ないのですか?
Q. 大問2は6問中いくつ取れれば合格圏ですか?
Q. 大問3と同じく、選択肢は先に読まないほうがいいですか?
Q. 背景知識(美術史・生物学)は必要ですか?
Q. 2択で迷ったら、最後はどう決めますか?
まとめ
1級の大問2で外す原因は、語彙でも読解力でもありません。
空所を包む枠を見ずに、直後の1文を探しにいっていること。ここを変えれば結果が動きます。
空所を見つけたら、まずそれを包む述語部分に丸をつける。
これを10本続ければ、大問2にかかる時間と正答数の両方が変わります。
