アカデミック・ライティング指導と添削のコツ|大学英語の実践法
大学のライティング授業で先生を悩ませるのは、「何度直しても同じ間違いが返ってくる」ことと「添削に週末がまるごと消える」ことではないでしょうか。この記事では、構成の指導から段階的な提出、コード添削、ピアレビューまでを組み合わせ、学生が自分で直せるようになり、先生の負担も減る仕組みづくりを紹介します。

01まず「構成」を教える:パラグラフの型
アカデミック・ライティングの土台は、パラグラフの構成です。文法より先に、1段落1主張という型を身につけさせると、その後の添削がぐっと楽になります。
基本の型は次の3つの要素です。
- トピック・センテンス:段落で言いたいことを1文で示す
- サポート:理由、具体例、データなどで支える
- コンクルーディング・センテンス:段落の要点を締める(短い段落では省略も可)
モデル段落の例です。
Online classes can help university students manage their time more flexibly. For example, students who have part-time jobs can watch recorded lectures at night. They can also pause and replay difficult parts. However, this flexibility only works when students plan their week carefully.
この例を使って、「どれがトピック・センテンスか」「どの文が具体例か」を学生に色分けさせると、構成を意識する目が育ちます。
エッセイへの広げ方
段落が書けるようになったら、序論(背景と主張)・本論(段落2〜3つ)・結論(主張の再提示)の5段落程度のエッセイへ広げます。本論の各段落のトピック・センテンスをつなげると、エッセイの要旨になることを確認させると、構成の意味が伝わります。
使い方:書く前・書いている途中・書いた後の流れを意識したライティング指導の動画です。パラグラフの型を教える回の準備に見て、モデル分析の活動を組み立てます。
02段階的提出で「最後に全部直す」をやめる
完成原稿を一度だけ提出させると、先生は構成・内容・文法のすべてを一度に直すことになり、学生はどこから直せばよいかわかりません。プロセス・ライティングの考え方で、提出を段階に分けましょう。
- アウトライン:主張と各段落のトピック・センテンスだけを提出
- 初稿:内容と構成へのコメントのみ(文法は直さない)
- 第2稿:ピアレビューを反映し、引用・根拠を補強
- 最終稿:文法・語法を中心にチェック
アウトラインの提出フォーマットの例です。
- Thesis: Universities should offer more courses taught in English.
- Body 1: It prepares students for international careers.
- Body 2: It attracts students from other countries.
- Counterargument: Some students may find it too difficult.
ポイント:段階ごとに「今回見るのはここだけ」と決めて伝えると、先生のコメント量も学生の混乱も減ります。
LMSで段階ごとに提出枠を作っておけば、提出状況の確認や、稿の比較も簡単です。
03コード添削:直さずに記号で示す
すべての誤りを先生が正しい英語に書き換えると、学生は「直された文を写す」だけになりがちです。そこで、誤りの種類を記号で示し、直すのは学生という方法が役立ちます。
コードの例です(クラスで共通の一覧表を配布します)。
- VT:動詞の時制(verb tense)
- SV:主語と動詞の一致(subject-verb agreement)
- Art:冠詞
- WW:語の選択(wrong word)
- Frag:文として不完全(fragment)
- ?:意味がわかりにくい
例えば、学生の文 Many student thinks online class is convenient. には、student と thinks の部分に SV、class に Art(または数の問題)を付けます。学生は一覧表を見ながら Many students think online classes are convenient. と自分で直します。
コメントは「1つほめて、1つ具体的に」
- Your topic sentence is clear. Try adding one specific example in the second half.
- Good use of data. Could you explain why this number is important?
ポイント:コードは最初から全種類を使わず、学期前半は3〜4種類に絞ると、学生も使いこなせます。
04学生が自分で直すための参照先と、自己チェックの道具
コード添削を機能させるには、学生がコードを見て調べに行ける参照先が必要です。
| サイト | 特徴 | 使い方 |
|---|---|---|
| Purdue OWL | 大学が無料公開している英語の書き方の教科書 | コード一覧の各記号に、対応する解説ページを添えておく(冠詞、主語と動詞の一致など) |
| Excelsior OWL | 動画とクイズで学ぶ大学の作文ラボ | 段落構成やエッセイ構成の自習教材として、初稿の前に指定する |
| Academic Phrasebank | 論文・レポートの決まり文句を場面別に | 第2稿で引用・根拠を補強するときの表現の参照先にする |
| Write & Improve(Cambridge) | 英作文をCEFRレベルで判定する(要登録) | 提出前の自己チェックに使ってよいかを、AI方針とあわせてシラバスで示す |
| Virtual Writing Tutor | 英語学習者向けの英作文チェック | 最終稿の前に文法・つづりを自分で確認させる |
コード一覧と参照先を結びつける手順
- まず使うコードを3〜4種類(VT・SV・Art・WW)に絞る
- 各コードの横に、Purdue OWL の該当ページへのリンクと、自作の誤りの例を1つ書く
- LMS に一覧を掲示し、初回はモデル作文でコードを見て直す練習を10分行う
自動チェックの道具を使ってよいかどうか、使った場合の申告方法は、授業の AI 方針と同じ形で明記しておきましょう。
使い方:ライティング力を伸ばすフィードバックのヒントを短くまとめた動画です。コード添削と「1つほめて、1つ具体的に」のコメントを組み合わせる方針を決める前に見ます。
05ピアレビューを機能させる手順
ピアレビューは、「読み合ってください」だけでは「Good!」の一言で終わってしまいます。チェックリストと文型を与えることで、質の高いコメントが出てくるようになります。
進め方(約40分)
- 先生がモデル作文で、コメントの書き方を実演する(10分)
- ペアで原稿を交換し、チェックリストに沿って読む(15分)
- 文型を使ってコメントを書く(10分)
- 口頭で1〜2分、コメントを説明し合う(5分)
チェックリストの例です。
- Can you find the thesis statement? Underline it.
- Does each body paragraph have one main idea?
- Is there at least one example or reason for each idea?
コメントの文型です。
- I like the way you ...
- I was a little confused by ...
- It might be clearer if you ...
学生には、文法の誤りを探すより、内容と構成について質問することを求めましょう。英語力に差があるペアでも、「ここがわからなかった」という読み手の反応は十分に役立ちます。
使い方:学生同士で作文を読み合い訂正し合う進め方の紹介です。この節の40分の手順と比べ、モデルでの実演の部分に取り入れられる工夫を1つ選びます。
06大人数クラスで添削負担を減らす工夫
40人を超えるクラスで毎週全員の作文を細かく直すのは、現実的ではありません。負担を減らしつつ、学生の学びを落とさない工夫を組み合わせます。
- 共通の誤りは全体フィードバックにまとめる:多くの学生に見られた誤りを匿名の例文で5つほど取り上げ、授業の冒頭で解説する
- ルーブリックで評価する:構成・内容・言語・形式の4観点で段階評価し、コメントは各1文に絞る
- ローテーション添削:毎回、全体の3分の1の学生だけ詳しく見る(他の学生はピアレビューと全体フィードバック)
- コメントバンクを作る:よく書くコメントを保存しておき、LMSで貼り付けて一部を個別に調整する
- 自己チェック表を提出させる:学生が冠詞・時制・複数形などを自分で確認してから提出する
ポイント:添削の量を減らしても、フィードバックの回数を減らす必要はありません。「全体→ペア→個別」の3層で、学生は何度もフィードバックを受け取れます。
生成AIによる文法チェックを認める場合は、使ってよい範囲と、使ったことを申告する方法をシラバスに明記しておくと、評価の説明もしやすくなります。
使い方:速くて効果的なフィードバックのコツを紹介する短い動画です。大人数クラスの工夫(全体フィードバック・コメントバンクなど)に足せるものを探します。
07半期の流れとよくある失敗
半期のモデル
- 第1〜3回:パラグラフの型、モデル分析、1段落を書く
- 第4〜6回:比較・原因と結果など段落の展開パターン
- 第7〜8回:エッセイ構成、アウトライン提出
- 第9〜11回:初稿、ピアレビュー、第2稿
- 第12〜13回:引用とパラフレーズ、参考文献の書き方
- 第14〜15回:最終稿、自己評価と振り返り
よくある失敗
- 初稿から文法を全部直してしまう:学生は構成を見直さなくなります
- コードを配っても、使い方を練習する時間を取らない
- ピアレビューのチェックリストが抽象的で、コメントが「Good」だけになる
- 返却したフィードバックを、学生が読んだかどうか確認しない
- 最終稿の評価基準を、提出後に初めて示す
返却したら、「フィードバックを読んで直した点を2つ英語で書く」という小さな課題を付けるのがおすすめです。フィードバックが次の原稿に確実につながります。
使い方:まとまりのある英文を書かせる5分程度の活動のウェビナーです。半期モデルの段落の展開パターンの回に、帯活動として入れられるものを選びます。
このコラムで使うサイト・アプリ
もっと見たい人へ
今日やること
よくある質問
コード添削だと、学生が正しく直せないことはありませんか?
あります。そのため、学期の前半はコードの数を絞り、授業内で一緒に直す練習をします。自力で直せなかった箇所は次の稿で先生が正しい形を示す、という二段構えにすると安心です。
ピアレビューで英語力の低い学生がコメントできません。
文法の指摘ではなく、読み手としての反応(わかりやすかった所・わかりにくかった所)を求めれば、英語力に関係なく参加できます。コメント文型を配布しておくことも効果的です。
生成AIで書かれた作文への対応はどうすればよいですか?
まず、使ってよい範囲と申告方法をシラバスで明確にします。そのうえで、アウトラインや初稿を授業内で書かせる、稿ごとの変化を見るなど、プロセスを評価に含めると、書く力そのものを見やすくなります。
読了ボーナス


