原田英語の英語大全勉強法ぜんぶ入り
第11章|ライティングコラム2026-09-282026-10-09 更新

アカデミック・ライティング指導と添削のコツ|大学英語の実践法

大学のライティング授業で先生を悩ませるのは、「何度直しても同じ間違いが返ってくる」ことと「添削に週末がまるごと消える」ことではないでしょうか。この記事では、構成の指導から段階的な提出、コード添削、ピアレビューまでを組み合わせ、学生が自分で直せるようになり、先生の負担も減る仕組みづくりを紹介します。

01まず「構成」を教える:パラグラフの型

アカデミック・ライティングの土台は、パラグラフの構成です。文法より先に、1段落1主張という型を身につけさせると、その後の添削がぐっと楽になります。

基本の型は次の3つの要素です。

  • トピック・センテンス:段落で言いたいことを1文で示す
  • サポート:理由、具体例、データなどで支える
  • コンクルーディング・センテンス:段落の要点を締める(短い段落では省略も可)

モデル段落の例です。

Online classes can help university students manage their time more flexibly. For example, students who have part-time jobs can watch recorded lectures at night. They can also pause and replay difficult parts. However, this flexibility only works when students plan their week carefully.

この例を使って、「どれがトピック・センテンスか」「どの文が具体例か」を学生に色分けさせると、構成を意識する目が育ちます。

エッセイへの広げ方

段落が書けるようになったら、序論(背景と主張)・本論(段落2〜3つ)・結論(主張の再提示)の5段落程度のエッセイへ広げます。本論の各段落のトピック・センテンスをつなげると、エッセイの要旨になることを確認させると、構成の意味が伝わります。

ライティング力を伸ばす指導Cambridge University Press ELT|Developing Writing Skills

使い方:書く前・書いている途中・書いた後の流れを意識したライティング指導の動画です。パラグラフの型を教える回の準備に見て、モデル分析の活動を組み立てます。

02段階的提出で「最後に全部直す」をやめる

完成原稿を一度だけ提出させると、先生は構成・内容・文法のすべてを一度に直すことになり、学生はどこから直せばよいかわかりません。プロセス・ライティングの考え方で、提出を段階に分けましょう。

  1. アウトライン:主張と各段落のトピック・センテンスだけを提出
  2. 初稿:内容と構成へのコメントのみ(文法は直さない)
  3. 第2稿:ピアレビューを反映し、引用・根拠を補強
  4. 最終稿:文法・語法を中心にチェック

アウトラインの提出フォーマットの例です。

  • Thesis: Universities should offer more courses taught in English.
  • Body 1: It prepares students for international careers.
  • Body 2: It attracts students from other countries.
  • Counterargument: Some students may find it too difficult.

ポイント:段階ごとに「今回見るのはここだけ」と決めて伝えると、先生のコメント量も学生の混乱も減ります。

LMSで段階ごとに提出枠を作っておけば、提出状況の確認や、稿の比較も簡単です。

03コード添削:直さずに記号で示す

すべての誤りを先生が正しい英語に書き換えると、学生は「直された文を写す」だけになりがちです。そこで、誤りの種類を記号で示し、直すのは学生という方法が役立ちます。

コードの例です(クラスで共通の一覧表を配布します)。

  • VT:動詞の時制(verb tense)
  • SV:主語と動詞の一致(subject-verb agreement)
  • Art:冠詞
  • WW:語の選択(wrong word)
  • Frag:文として不完全(fragment)
  • ?:意味がわかりにくい

例えば、学生の文 Many student thinks online class is convenient. には、student と thinks の部分に SV、class に Art(または数の問題)を付けます。学生は一覧表を見ながら Many students think online classes are convenient. と自分で直します。

コメントは「1つほめて、1つ具体的に」

  • Your topic sentence is clear. Try adding one specific example in the second half.
  • Good use of data. Could you explain why this number is important?

ポイント:コードは最初から全種類を使わず、学期前半は3〜4種類に絞ると、学生も使いこなせます。

04学生が自分で直すための参照先と、自己チェックの道具

コード添削を機能させるには、学生がコードを見て調べに行ける参照先が必要です。

サイト特徴使い方
Purdue OWL大学が無料公開している英語の書き方の教科書コード一覧の各記号に、対応する解説ページを添えておく(冠詞、主語と動詞の一致など)
Excelsior OWL動画とクイズで学ぶ大学の作文ラボ段落構成やエッセイ構成の自習教材として、初稿の前に指定する
Academic Phrasebank論文・レポートの決まり文句を場面別に第2稿で引用・根拠を補強するときの表現の参照先にする
Write & Improve(Cambridge)英作文をCEFRレベルで判定する(要登録)提出前の自己チェックに使ってよいかを、AI方針とあわせてシラバスで示す
Virtual Writing Tutor英語学習者向けの英作文チェック最終稿の前に文法・つづりを自分で確認させる

コード一覧と参照先を結びつける手順

  1. まず使うコードを3〜4種類(VT・SV・Art・WW)に絞る
  2. 各コードの横に、Purdue OWL の該当ページへのリンクと、自作の誤りの例を1つ書く
  3. LMS に一覧を掲示し、初回はモデル作文でコードを見て直す練習を10分行う

自動チェックの道具を使ってよいかどうか、使った場合の申告方法は、授業の AI 方針と同じ形で明記しておきましょう。

英作文へのフィードバック術English with Cambridge|Tips for giving effective feedback to improve your learners’ writing skills

使い方:ライティング力を伸ばすフィードバックのヒントを短くまとめた動画です。コード添削と「1つほめて、1つ具体的に」のコメントを組み合わせる方針を決める前に見ます。

05ピアレビューを機能させる手順

ピアレビューは、「読み合ってください」だけでは「Good!」の一言で終わってしまいます。チェックリストと文型を与えることで、質の高いコメントが出てくるようになります。

進め方(約40分)

  1. 先生がモデル作文で、コメントの書き方を実演する(10分)
  2. ペアで原稿を交換し、チェックリストに沿って読む(15分)
  3. 文型を使ってコメントを書く(10分)
  4. 口頭で1〜2分、コメントを説明し合う(5分)

チェックリストの例です。

  • Can you find the thesis statement? Underline it.
  • Does each body paragraph have one main idea?
  • Is there at least one example or reason for each idea?

コメントの文型です。

  • I like the way you ...
  • I was a little confused by ...
  • It might be clearer if you ...

学生には、文法の誤りを探すより、内容と構成について質問することを求めましょう。英語力に差があるペアでも、「ここがわからなかった」という読み手の反応は十分に役立ちます。

ピア添削で書く力を伸ばすBritish Council | TeachingEnglish|Teaching tips: How to encourage peer editing & correction

使い方:学生同士で作文を読み合い訂正し合う進め方の紹介です。この節の40分の手順と比べ、モデルでの実演の部分に取り入れられる工夫を1つ選びます。

06大人数クラスで添削負担を減らす工夫

40人を超えるクラスで毎週全員の作文を細かく直すのは、現実的ではありません。負担を減らしつつ、学生の学びを落とさない工夫を組み合わせます。

  • 共通の誤りは全体フィードバックにまとめる:多くの学生に見られた誤りを匿名の例文で5つほど取り上げ、授業の冒頭で解説する
  • ルーブリックで評価する:構成・内容・言語・形式の4観点で段階評価し、コメントは各1文に絞る
  • ローテーション添削:毎回、全体の3分の1の学生だけ詳しく見る(他の学生はピアレビューと全体フィードバック)
  • コメントバンクを作る:よく書くコメントを保存しておき、LMSで貼り付けて一部を個別に調整する
  • 自己チェック表を提出させる:学生が冠詞・時制・複数形などを自分で確認してから提出する

ポイント:添削の量を減らしても、フィードバックの回数を減らす必要はありません。「全体→ペア→個別」の3層で、学生は何度もフィードバックを受け取れます。

生成AIによる文法チェックを認める場合は、使ってよい範囲と、使ったことを申告する方法をシラバスに明記しておくと、評価の説明もしやすくなります。

速く効果的なフィードバックEdutopia|6 Teacher-Approved Tips for Faster, More Effective Feedback

使い方:速くて効果的なフィードバックのコツを紹介する短い動画です。大人数クラスの工夫(全体フィードバック・コメントバンクなど)に足せるものを探します。

07半期の流れとよくある失敗

半期のモデル

  • 第1〜3回:パラグラフの型、モデル分析、1段落を書く
  • 第4〜6回:比較・原因と結果など段落の展開パターン
  • 第7〜8回:エッセイ構成、アウトライン提出
  • 第9〜11回:初稿、ピアレビュー、第2稿
  • 第12〜13回:引用とパラフレーズ、参考文献の書き方
  • 第14〜15回:最終稿、自己評価と振り返り

よくある失敗

  • 初稿から文法を全部直してしまう:学生は構成を見直さなくなります
  • コードを配っても、使い方を練習する時間を取らない
  • ピアレビューのチェックリストが抽象的で、コメントが「Good」だけになる
  • 返却したフィードバックを、学生が読んだかどうか確認しない
  • 最終稿の評価基準を、提出後に初めて示す

返却したら、「フィードバックを読んで直した点を2つ英語で書く」という小さな課題を付けるのがおすすめです。フィードバックが次の原稿に確実につながります。

まとまりのある文を書く5分活動British Council | TeachingEnglish|5-min activities to help students write cohesively

使い方:まとまりのある英文を書かせる5分程度の活動のウェビナーです。半期モデルの段落の展開パターンの回に、帯活動として入れられるものを選びます。

このコラムで使うサイト・アプリ

もっと見たい人へ

アカデミック・ライティングの7つの特徴EAPFoundation.com|What is Academic Writing? 7 Features of Academic Writing
引用で使う伝達動詞をまとめて学ぶEAPFoundation.com|Reporting Verbs in Academic Writing

今日やること

よくある質問

コード添削だと、学生が正しく直せないことはありませんか?

あります。そのため、学期の前半はコードの数を絞り、授業内で一緒に直す練習をします。自力で直せなかった箇所は次の稿で先生が正しい形を示す、という二段構えにすると安心です。

ピアレビューで英語力の低い学生がコメントできません。

文法の指摘ではなく、読み手としての反応(わかりやすかった所・わかりにくかった所)を求めれば、英語力に関係なく参加できます。コメント文型を配布しておくことも効果的です。

生成AIで書かれた作文への対応はどうすればよいですか?

まず、使ってよい範囲と申告方法をシラバスで明確にします。そのうえで、アウトラインや初稿を授業内で書かせる、稿ごとの変化を見るなど、プロセスを評価に含めると、書く力そのものを見やすくなります。

読了ボーナス

最後まで読んだあなたに、目から鱗をもう1枚

ホント?ウソ?10問チャレンジ目から鱗をぜんぶ見る

本編で読む(第11章 ライティング)

同じ章のコラム