記憶術の注意点|詰め込みの限界と「理解して覚える」ことの大切さ
記憶の宮殿、語呂合わせ、チャンク化、歌。この「記憶術」シリーズでは、いろいろな覚え方を紹介してきました。でも、記憶術は**万能の魔法ではありません**。使い方をまちがえると、かえって遠回りになることもあります。この記事では、記憶術の注意点と、**「理解して覚える」ことの大切さ**をまとめます。

01一夜漬けの詰め込みが続かない理由
テスト前夜に教科書を必死に詰め込んで、なんとか点数を取った。でも1週間後にはほとんど覚えていない……。こんな経験はありませんか?
学習法の分野では、短い時間に集中して詰め込むより、時間をあけて何度か復習するほうが長く記憶に残りやすいことが、よく知られています。いわゆる「間隔反復」の考え方です。
一夜漬けが長続きしにくいのは、次のような理由が考えられます。
- 復習の回数が少なく、思い出す練習が足りない
- 睡眠時間を削ることが多く、定着の時間が短くなる
- 「テストが終わったら忘れていい」という意識で覚えている
ポイント:一夜漬けは「その場をしのぐ」ことはできても、英語のように積み重ねが大切な科目では、後で必ず苦労します。
英語は、中学で習った単語や文法が高校、大学、社会人になっても使われ続ける科目です。だからこそ、長持ちする覚え方が大切なのです。
使い方:人がどう覚え、どう忘れるのかを扱う心理学シリーズの回です。この節の一夜漬けが続かない理由と照らし合わせ、自分の復習の予定を見直します。
使い方:間隔をあけた復習の考え方を図とともに説明する動画です。「忘れかけたころに復習する」理由を確かめ、翌日・数日後・1週間後の復習日を手帳に書きます。
02記憶術が向いているもの・向いていないもの
記憶術は、得意なことと苦手なことがはっきりしています。
向いているもの
- 順番やリストの暗記:50州、曜日、不規則動詞の3つの形など
- 意味と結びつけにくい単語:何度やっても覚えられない英単語
- スピーチや暗唱の流れ:段落の順番やキーワード
向いていないもの
- 文法のしくみ:なぜ現在完了を使うのか、関係代名詞がどう働くのか、といった理解が必要なもの
- 自然な言い回しや感覚:コロケーション(make a mistake など)や、場面に合った表現の選び方
- リスニング・スピーキングの力:たくさん聞いて、たくさん話す経験の中で伸びていくもの
ポイント:記憶術は「暗記しなければならないもの」を効率よく覚えるための道具です。理解や経験が必要なものまで、記憶術で片付けようとしないことが大切です。
迷ったときの判断基準
「これは記憶術を使うべき?」と迷ったら、次の質問を自分にしてみましょう。
- 理由を説明できる内容か? → 説明できるなら、まず理解を優先
- 決まった順番や組み合わせを覚えるだけか? → それなら記憶術が役立つ
- 何度やっても忘れるか? → 苦手なものにだけ記憶術を使う
この3つの質問を習慣にすると、勉強時間の使い方にメリハリがつきます。理解に時間をかけるべきところと、記憶術でさっと片付けるところを分けることで、全体の効率が上がります。
03「理解して覚える」とはどういうことか
理解して覚える、とは、なぜそうなるのかを自分の言葉で説明できる状態で覚えることです。
例1:不規則動詞
- 丸暗記:go-went-gone を呪文のように覚える
- 理解して覚える:過去形 went は「過去の一時点」、過去分詞 gone は「現在完了や受け身で使う形」だと理解したうえで、I went to Kyoto last year. と He has gone to Kyoto.(彼は京都に行ってしまって、今ここにいない)のちがいを例文で確認する
例2:前置詞
- 丸暗記:in the morning / on Monday / at 7 o'clock とセットで覚える
- 理解して覚える:at は「点」、on は「接触・特定の日」、in は「広がりのある期間や空間の中」というイメージをつかみ、ほかの表現にも応用する
理解して覚えた知識は、初めて見る問題にも応用できるのが大きな強みです。丸暗記した知識は、覚えた形のままでしか使えません。
使い方:人に説明するように学ぶファインマン・テクニックを例つきで紹介する動画です。この節の「自分の言葉で説明できる状態」を作る具体的なやり方として取り入れます。
04記憶術と理解を組み合わせる勉強の流れ
では、記憶術と理解をどう組み合わせればいいのでしょうか。おすすめの流れは次のとおりです。
- 理解する:まず意味やしくみを理解する。わからないところは先生や参考書で確認する
- 覚える:どうしても覚えにくい部分にだけ、記憶術(語呂・イメージ・歌など)を使う
- 思い出す:何も見ずに思い出す練習をする
- 使う:例文を作る、英作文や会話で使う
- 間隔をあけて復習する:翌日・数日後・1週間後などに、もう一度思い出す
ポイント:記憶術は2番目のステップで使う「補助の道具」です。1番の「理解」と、4番の「使う」を飛ばさないことが大切です。
この流れで勉強すると、覚えた知識が「使える知識」に変わっていきます。
例3:英単語
- 丸暗記:「important=重要な」と訳語だけを覚える
- 理解して覚える:im-(中へ)+ port(運ぶ)という語源に触れつつ、It is important to ~ の形や、an important meeting のような組み合わせを例文で確認する
使い方:脳の働きから学び方を考える「学び方を学ぶ」のTEDxトークです。この節の5段階の流れのうち、自分が飛ばしがちな段階を1つ見つけます。
05「理解→覚える→思い出す→使う→復習」の各段階で使う道具
この記事の勉強の流れは、段階ごとに使う道具を決めておくと実行しやすくなります。記憶術は2番目の段階だけに使い、ほかの段階は次の道具で支えましょう。
| 段階 | 使うサイト・道具 | 使い方 |
|---|---|---|
| 1:理解する | 英文法大全 | このサイトの文法解説。現在完了や前置詞のしくみを読み、自分の言葉で1行の説明を書く |
| 1:意味を確かめる | Longman Dictionary | やさしい英語で定義を書いている英英辞典。important のような語を引き、定義と例文から意味の中心をつかむ |
| 3・5:思い出す・復習 | 単語SRS | このサイトの単語カード(中学・入試・TOEICなど6つのデッキ)。忘れかけたころに出題されるので、間隔をあけた復習を自分で計画しなくてよい |
| 4:使う | 英語日記 | このサイトの3文英語日記ジム。お題つきで毎日3文書いて保存できる。5日目の英作文をここで書く |
6日目の「人に説明する」を1人でもできる手順(10分)
- 説明したい文法を1つ選び、ノートを閉じる
- 「この文法は何のために使うか」「例文を1つ」「まちがえやすい点を1つ」の3つを、声に出して説明する
- つっかえた所を英文法大全で読み直す
- もう一度、ノートを見ずに説明し、1回目よりつっかえずに言えたかを確かめる
説明できなかった所は、「覚えていない」のではなく「まだ理解があやふや」なサインです。その部分は記憶術ではなく、解説を読み直すことから始めましょう。
061週間の実践メニュー
今の勉強を「理解+記憶」の形に変えていく1週間メニューです。
- 1日目:今覚えようとしている範囲を、「理解が必要なもの」と「暗記するしかないもの」に分ける
- 2日目:「理解が必要なもの」を1つ選び、自分の言葉でノートに説明を書く
- 3日目:「暗記するしかないもの」のうち、苦手なものにだけ記憶術を使う
- 4日目:1〜3日目の内容を、何も見ずに思い出してみる
- 5日目:覚えた単語や文法を使って、英作文を5文書く
- 6日目:家族や友達に、覚えた文法を説明してみる(説明できるか確認)
- 7日目:1日目の内容をテスト。忘れていたものは、次の週にもう一度
6日目の「人に説明する」は、とても効果的な確認方法です。うまく説明できないところは、まだ理解があやふやなサインです。
使い方:語学学習で何も見ずに思い出して書き出す方法を実演する動画です。4日目の思い出しテストを、この動画のやり方で白紙に書き出す形にして行います。
07よくある失敗と対策
- 失敗1:記憶術の準備に時間をかけすぎる → 語呂合わせやイメージ作りに夢中になって、肝心の復習時間がなくなる。記憶術は「苦手なものだけ」に使いましょう。
- 失敗2:覚えたことに満足して使わない → 単語や文法は、使ってみて初めて本当に身につきます。例文作りや音読を必ずセットに。
- 失敗3:「記憶力がないから」とあきらめる → 忘れるのは誰にでも起こる自然なことです。忘れたら、もう一度思い出せばいいだけ。復習の回数が記憶をつくります。
- 失敗4:「短期間で劇的に覚えられる」という話を信じすぎる → 記憶術は便利ですが、努力なしで何でも覚えられる方法ではありません。地道な復習とセットで使いましょう。
忘れることを前提に、復習の予定を最初から組んでおくと、気持ちもぐっと楽になります。
使い方:反復しても覚えられない理由をテーマにした短い動画です。この節の失敗3(記憶力がないとあきらめる)の対策として、覚え方の見直しの材料にします。
08まとめ:記憶術は「上手に使う道具」
記憶術について、この記事のポイントをまとめます。
- 一夜漬けの詰め込みは長続きしにくい。間隔をあけた復習が基本
- 記憶術は順番・リスト・覚えにくい単語に強い
- 文法のしくみや自然な表現は、理解と経験で身につける
- 勉強の流れは「理解→覚える→思い出す→使う→復習」
記憶術は、上手に使えば暗記の負担をぐっと軽くしてくれる便利な道具です。でも、主役はあくまで理解と、くり返しの練習です。道具に振り回されず、道具を使いこなす意識で、英語の勉強を楽しんでいきましょう。
ポイント:「この単語、なぜこの意味なんだろう?」と一瞬考えるだけでも、丸暗記より記憶に残りやすくなります。
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よくある質問
記憶術を使うのはズルいことですか?
まったくズルくありません。記憶術は昔から使われてきた、覚えるための工夫の一つです。大切なのは、理解や練習の代わりにするのではなく、組み合わせて使うことです。
一夜漬けは絶対にダメですか?
どうしても時間がないときに、その場をしのぐ手段として使うことはあるでしょう。ただ、英語のように積み重ねが大切な科目では、一夜漬けで覚えたことは後で忘れやすいので、普段から間隔をあけて復習する習慣をつけるのがおすすめです。
理解しているかどうかは、どうやって確かめればいいですか?
何も見ずに自分の言葉で説明できるか、初めて見る例文にも応用できるかを確かめましょう。人に説明してみると、あやふやなところがはっきりわかります。
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