CLIL ミニ単元 ― 「水」を英語で学ぶ3時間:理科・社会の内容と英語を一緒に
英語で「何か」を学ぶ。SDGs の「安全な水」をテーマに、理科(水の循環)と社会(世界の水事情)の内容を英語で読み、情報を整理し、考えを発表する3時間のミニ単元です。4つのC(内容・言語・思考・文化)で設計します。
- ⏱ 時間
- 50分×3コマ(計150分)
- 🧰 準備
- しっかり
- 👥 形態
- 個人→ペア→4人グループ
- 🎯 技能
- リーディング・スピーキング・ライティング・語彙
- 📶 CEFR
- A2-B1

- 水の循環と、世界で安全な水を使えない人々の問題について、英語で読んで理解し説明できる。
- 内容を説明するのに必要な語彙(evaporate, condense など)や、原因と結果を述べる表現を使う。
- 班で問題の原因を考え、解決策を提案し、根拠とともに英語で発表する。
CLIL ミニ単元ってなに?
ひとことで言うと、理科や社会の内容(ここでは水の循環と世界の水事情)を英語で読み、情報を整理し、考えを発表する、教科の内容と英語を一緒に学ぶ3時間の小さな単元です。CLIL は「内容言語統合型学習」のことです。
英語で行われる料理教室に参加するようなものです。目的は料理を学ぶことですが、レシピや先生の説明を英語で聞くうちに、英語も使うことになります。英語が「勉強する対象」であると同時に「何かを学ぶための道具」になるのが大事なところです。
ふつうの英語の授業・教科の授業とのちがい
| ふつうの英語の授業 | 理科・社会の授業 | CLIL ミニ単元 | |
|---|---|---|---|
| 主に学ぶもの | 英語の語彙・文法 | 教科の内容 | 内容と英語の両方 |
| 使う言語 | 英語 | 日本語 | 英語(難しいところは日本語の補足も) |
| めあて | 言語のめあて | 内容のめあて | 内容のめあてと言語のめあてを別々に立てる |
やり方を3ステップで
- 4つのCで設計する:内容(Content)・言語(Communication)・思考(Cognition)・文化(Culture)を1枚にまとめる。
- 読んで説明する:やさしい英文を読み、図にまとめ、key words を使ってペアや班で説明し合う。
- 提案して書く:班で解決策を考えて英語で発表し、最後に一番良いと思った提案と理由を80語で書く。
授業の流れ(分ごと)
1時間目:水の循環(理科の内容)
| 時間 | 先生 | 生徒 |
|---|---|---|
| 0:00〜8:00 | 「1日に何リットルの水を使う?」の推測クイズ | 予想・ペアで共有 |
| 8:00〜15:00 | 図と動作で key words を導入 | 図を見て、動作をつけて言う |
| 15:00〜30:00 | Text 1 を読む(図に動詞を書き入れながら) | 個人で読み、ペアで確認 |
| 30:00〜44:00 | ペアで水の循環を英語で説明し合う | 図を指しながら説明 |
| 44:00〜47:00 | 推測クイズの答え合わせ(資料の名前と年も見せる) | 予想と比べる |
| 47:00〜50:00 | 振り返り(4つのC) | チェック |
2時間目:世界の水事情(社会の内容)
| 時間 | 先生 | 生徒 |
|---|---|---|
| 0:00〜5:00 | 前時の復習(図を見て説明) | ペアで説明 |
| 5:00〜25:00 | ジグソー:先生が用意した3つの短い英文(水くみ・井戸・汚染)を分担して読む | エキスパート班で読み、Task 2 の表の自分の行を書く |
| 25:00〜40:00 | 元の班に戻って教え合う | 英語で説明し、Task 2 の残りの行を書く |
| 40:00〜50:00 | 「なぜ問題なのか」を原因と結果で整理 | 図に整理 |
3時間目:解決策の提案
| 時間 | 先生 | 生徒 |
|---|---|---|
| 0:00〜20:00 | 提案シートの説明・班で検討 | 問題・アイデア・理由・必要な物 |
| 20:00〜40:00 | 2つの班を組み合わせ、班ごとに2分の提案発表+質問1つ(2班で約6分)。組み合わせを変えてもう1回。最後に代表2班が全体で発表 | 発表・質疑 |
| 40:00〜50:00 | 個人で80語の意見文 | 自分が一番良いと思った提案と理由を書く |

- 4つのCで設計する:単元の前に、Content(水の循環・世界の水事情)、Communication(key words、原因と結果の表現)、Cognition(説明する→原因を考える→提案する)、Culture(ジグソーの3つの資料をもとに、地域によって水の手に入れやすさや解決策がちがう理由を比べる。1時間目のクイズで使った日本の資料と並べて見せてもよい。想像だけで「他の国の人の気持ち」を代弁させる活動にはしない)を1枚にまとめておく。このページでは、班での協働(ジグソー・提案づくり)を、4つのCを実現するための授業の形として加えている。
- 英文と資料を用意する:教科書の関連する本文、または先生が書いたやさしい英文(150〜200語)。AI で下書きした英文は、内容の正確さを理科・社会の教科書で必ず確かめる。可能なら理科・社会の先生に一度見てもらう。
- 2時間目のジグソー用の3つの英文(各150語程度)は、このページには載せていません。 先生が、教科書・資料集や国際機関の報告などをもとに書きます。どの英文も、具体的な国・地域を1つ決め、①地域と資料の年 ②問題 ③原因 ④影響 ⑤今行われている対策 の5つを入れると、ワークシートの Task 2 の表とそろいます。英文の最後に出典(資料名と年)を書いておきます。
- 1時間目の推測クイズの答えも先に用意します。「家庭で1人が1日に直接使う水(飲む・料理・風呂・トイレ・洗濯など)」と範囲を決め、自分の市町村の水道局などが出している数字を、資料の名前と年といっしょに見せます(食べ物や製品を作るのに使われる水は入れない、と最初に伝える)。用意できないときは、クイズと “Let's find out later.” を省きます。
- 英語の支えを用意する:key words は図・動作・写真で導入し、ワークシートに語群を載せる。説明の型(First, ... . Then, ... . Finally, ... .)や原因と結果の型(Because of ..., ... . / This causes ...)を板書しておく。
- 1時間目:Text 1 を読みながら、図の矢印に動詞(evaporate, condense, fall, flow)を書き入れる。図を見ながらペアで説明し合い、言えない語は語群で確認する。
- 2時間目:3つの英文をジグソーで分担。自分の担当を元の班に英語で説明する(説明が難しい部分は日本語の補足を認める)。原因と結果を図に整理する。
- 3時間目:班で解決策を1つ提案。現実の取り組み(井戸、雨水の利用、水をきれいにするフィルター、手洗いの教育など)を参考にしてよい。発表は2つの班を組み合わせて並行して行い、各班2分+聞き手から質問1つ。組み合わせを変えてもう1回行い、全体では代表2班だけが発表する(40人・10班で全班が全体発表すると、発表だけで20分を超えるため)。
- 書いてまとめる:最後に、一番良いと思った提案とその理由を80語で書く。内容(理解)と言語(表現)の両方を見る評価材料になる。
key words(意味をイラスト・動作で導入)
- evaporate(蒸発する)
- water vapor(水蒸気)
- condense(凝結する)
- precipitation(降水)
- fresh water / salt water
- well(井戸)
- pollution(汚染)
- sanitation(トイレやし尿の処理などの衛生環境・サービス)
原因と結果の表現 9. Because of +名詞, ... .(例:Because of water pollution, people may get sick. / 文を続けるなら Because the water is polluted, people may get sick.) 10. ... causes ... . 11. As a result, ... . 12. If ..., ... will ... .
提案の表現 13. We suggest that ... . 14. This idea will help ... because ... . 15. To do this, we need ... .
ジグソー用の短い英文のテーマ(先生が150語程度で用意)
- A: Children who walk to get water(水くみにかかる時間と、通学・学習の時間への影響。どの国・地域の、何年の資料かを示し、「影響することがある」など資料が裏づける強さで書く)
- B: How a new well changed a village(井戸ができて生活がどう変わったか。水質検査・修理・費用など、井戸を使い続けるための条件も入れ、「できて終わり」の話にしない)
- C: Water pollution and health(汚れた水と病気の関係。地域と資料の年を示す)
- 小学校:外国語の授業で、他教科で学んだことを使う例として、色・形・数(What color is the planet?)や地図(Where is Kenya?)で「英語で知る」体験を短く入れる程度に。
- 中学:3時間を2時間に縮め、提案は It is important to ... . の1文に。理科の「天気の変化」の単元の時期に合わせると、内容の理解が支えになる。
- 高校:英文を本物に近い資料(国際機関の短い報告の要約など)に替え、グラフの読み取りを加える。提案をインフォグラフィックにまとめて発表する形にもできる。
- 大人数クラス:ジグソーの専門家班を3種類×複数つくる。発表は班を2つ組み合わせた8人の中で行い、全体発表は代表2班だけにする。
- 苦手な生徒が多いクラス:英文に日本語の注を多めにつけ、説明は図を指しながら key words を言うだけでもよいことにする。内容理解を日本語で確かめる時間を短く入れてもかまいません。
CLIL では「内容」と「言語」を分けて見るのがポイントです。英語の誤りが多くても内容の理解ができていれば、その部分は認めます。
- 知識・技能:key words や原因と結果の表現を使って、水の循環や水の問題を説明できる。
- 思考・判断・表現:読んだ情報をもとに問題の原因を整理し、根拠のある解決策を提案している。
- 主体的に学習に取り組む態度:図や語群、仲間からの助言を使い、伝わらなかったところの説明のしかたを変えるなど、伝え方を見直しながら課題に取り組もうとしている。毎時間の振り返り(4つのC)から、次の時間に何をどう直すかを決めているかも見ます。この観点は、粘り強い取組の中で自分の学習を調整しようとしているかを含めて見るもので、1回の発表だけでなく単元を通した記録から判断します 1。
下の表は、80語の意見文と提案発表を見るための CLIL 用の補助ルーブリックです。英語の評価としては、「言語」はおもに知識・技能、「内容の理解」(読んだ情報から必要なことを選び、原因と結果を整理して説明する)と「提案」はおもに思考・判断・表現の資料として使います。水の循環などの理科・社会の内容そのものを、それらの教科の成績として評価する場合は、教科ごとに評価規準を別に決めます。
| 観点 | A | B | C |
|---|---|---|---|
| 内容の理解 | 水の循環と水の問題を、原因と結果の関係まで正しく説明できる | 主な内容を説明できるが、一部不正確 | 内容の誤りが多い |
| 言語 | key words と原因・結果の表現を適切に使っている | key words は使えるが、文がつながりにくい | key words がほとんど使えていない |
| 提案 | 問題・理由・必要なものがそろい、実現の見通しがある | 提案と理由はある | 提案が問題と結び付いていない |
- 英文が難しすぎて内容に入れない → 語彙レベルの確認ツールで難しい語を言いかえる。図や写真を多く使い、英文は短く。内容が難しいときほど言語はやさしく、が原則です。
- 英語の授業なのか理科の授業なのかわからなくなる → 単元の前に「内容のめあて」と「言語のめあて」を別々に板書する。評価も分けて見る。
- 内容に誤りがある英文を使ってしまう → 自作・AI 下書きの英文は、教科書で事実を確認する。専門的な内容は他教科の先生に一度見てもらう。
- ジグソーで説明が日本語ばかりになる → key words だけは英語で言う、というルールにする。全部を英語にこだわると、内容の理解が置き去りになりがちです。
- 提案が「お金を寄付する」ばかりになる → 「お金以外の解決策を1つ」という条件をつける。または「自分たちが日本でできること」を加える。
CLIL(内容言語統合型学習)は、教科の内容と外国語を同時に学ぶ考え方です。代表的な枠組みである「4つのC」は、内容(Content)・言語(Communication)・思考(Cognition)・文化(Culture)を統合して授業を設計するもので、言語だけ、内容だけに偏らない授業づくりの見取り図になります 2。高校の学習指導要領でも、言語活動で扱う題材は、国語科・地理歴史科・理科など他の教科等で学習した内容と関連付けるなどして、英語を用いて課題解決を図る力を育成する工夫をすることとされています 3。
研究では、中等教育の CLIL・英語による教科学習が英語力に与える効果をまとめたメタ分析(38研究・7,434人)で、通常の授業と比べて事後テストで d = 0.73、遅延事後テストで d = 1.01 という効果が報告され、著者らはこれを応用言語学の基準で「中程度の全体効果」と判断しています 4。ただし遅延事後テストの値は3つのサンプル(676人)だけにもとづき、2つの値は別のデータから出たものなので、「長く続けるほど効果が大きい」と比べることはできません。ただし同じ分析で、比べるグループの条件がそろっていることを確認した研究では、確認していない研究より効果が小さく、話す・書くといった産出の力への効果は、読む・聞くなどより小さくなっていました。語彙の効果は大きめでした 4。日本の中学校で体育の先生がバスケットボールを英語で教えた事例研究では、生徒が英語の表現とバスケットボールの用語・作戦の両方を理解できたと報告されています 5。
比べるグループと条件がそろっていることを確かめた研究のほうが、確かめていない研究より効果が小さかったことから、CLIL の大きな効果の一部は、「もともと英語の力や意欲の高い生徒が CLIL のクラスにいる」ことによる可能性があります 4。逆に言えば、通常のクラスで行う短いミニ単元に、メタ分析の数字ほどの効果を期待するのは禁物です。この単元のねらいは「英語で何かを学べた」という経験と、内容を説明するための語彙を増やすことに置き、話す・書く力は、図や型の支えを手厚くしながら少しずつ伸ばしましょう。
❓ よくある質問
Q. CLILのミニ単元はどう設計しますか?
単元の前に「4つのC」を1枚にまとめます。内容(水の循環・世界の水事情)、言語(key words・原因と結果の表現)、思考(説明する→原因を考える→提案する)、文化(資料をもとに、地域による水事情のちがいと理由を比べ、日本とも比べる)です。班での協働(ジグソー・提案づくり)は、これを実現する授業の形として加えます。4つのCは、言語だけ・内容だけに偏らない授業の見取り図になります 2。
Q. 英文が難しすぎて、生徒が内容に入れないときは?
難しい語をやさしく言いかえ、図や写真を多く使って英文を短くします。内容が難しいときほど言語はやさしく、が原則です。ジグソーで説明が難しい部分は日本語の補足を認め、key words だけは英語で言うルールにします。
Q. 英語の授業なのか理科の授業なのか、わからなくなりませんか?
単元の前に「内容のめあて」と「言語のめあて」を別々に板書し、評価も分けて見ます。最後に書く80語の意見文は、内容の理解と言語の表現の両方を見る評価材料になります。
Q. CLILは英語力に効果がありますか?
中等教育のCLILのメタ分析では、通常の授業と比べて中程度の効果(著者らの判定)が報告されましたが、条件のそろった研究では効果が小さく、話す・書く力への効果は読む・聞くより小さめでした 4。短いミニ単元に同じ効果は期待せず、英語で何かを学べた経験と語彙を増やすことをねらいます。
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原田英語の「英語の先生の玉手箱」の無料ツール。登録なしで授業にそのまま使えます。
📑 出典(5件)
本文の上付き数字に対応。✔ は DOI / ISBN / 公式ページを書誌データベースと機械照合した印です。
- 文部科学省 (2019). 小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について(通知) 公式ページ ✔ リンク確認済観点別学習状況の評価を「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3観点に整理した文科省の通知(2019年)
- Coyle, D. (2007). Content and language integrated learning: Towards a connected research agenda for CLIL pedagogies. International Journal of Bilingual Education and Bilingualism, 10(5), 543-562. doi:10.2167/beb459.0 ✔ DOI照合済CLILの「4つのC」の枠組みを示し、研究の方向を論じた論文
- 文部科学省 (2018). 高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 外国語編 英語編 公式ページ ✔ リンク確認済高校の科目構成(英語コミュニケーションⅠ〜Ⅲ・論理・表現Ⅰ〜Ⅲ)、「支援」の考え方、語数、授業は英語での趣旨を説明した公式の解説
- Lee, J. H., Lee, H., & Lo, Y. Y. (2023). Effects of EMI-CLIL on secondary-level students' English learning: A multilevel meta-analysis. Studies in Second Language Learning and Teaching, 13(2), 317-345. doi:10.14746/ssllt.38277 ✔ DOI照合済中等教育の CLIL・英語による教科指導が英語力に与える効果のメタ分析(38研究・7,434人)
- Ito, Y. (2019). The effectiveness of a CLIL basketball lesson: A case study of Japanese junior high school CLIL. English Language Teaching, 12(11), 42-52. doi:10.5539/elt.v12n11p42 ✔ DOI照合済日本の中学校で体育の先生がバスケットボールを英語で教えたCLIL授業の事例研究
最終更新 2026-10-18 ・ 原田英語 まちがいのご指摘はこちら





