登場人物ホットシート ― 教科書の人物になりきって質問に答え、本文を「深く」読む
教科書の登場人物になりきった生徒が前の席(ホットシート)に座り、クラスからの質問に答える。本文に書いていない気持ちや理由を想像するので、本文を根拠に推論しながら読む練習になり、答えを知らない「本物の質問」が飛び交います。
- ⏱ 時間
- 15-20分
- 🧰 準備
- 少し
- 👥 形態
- 全体→班
- 🎯 技能
- リーディング・やり取り・スピーキング
- 📶 CEFR
- A2-B1

- 物語文の登場人物の気持ち・理由・その後を、本文の根拠と想像をもとに考える(推論の読み)。
- 答えをだれも知らない「本物の質問」を英語で作り、たずね合う。
- 役を借りることで、自分自身として話す負担を和らげることをねらう(全員の前に座るのが負担な生徒もいるので、立候補・2人で1役・班内版・パスも選べるようにする)。
教科書の内容理解の発問は、どうしても「本文に答えが書いてある質問」が中心になります。それも大切ですが、それだけだと生徒の答えは本文の文をそのまま読み上げるだけになりがちです。ホットシートでは、質問される側が登場人物そのものなので、「その時どう思ったの?」「なぜそうしたの?」という本文に書いていない質問が自然に生まれます。
登場人物ホットシートってなに?
ひとことで言うと、物語の登場人物になりきった生徒が前の椅子(ホットシート)に座り、クラスからの英語の質問に、その人物として答える読後活動です。
試合のあとのヒーローインタビューのようなものです。試合の結果は見ればわかりますが、「そのとき、どう思いましたか?」は本人に聞かないとわかりません。本文に書いていない気持ちや理由を、本文を根拠に想像して答えるのが大事なところです。
ふつうの内容理解の質問とのちがい
| ふつうの内容理解の質問 | ホットシート | |
|---|---|---|
| 質問の種類 | 答えが本文に書いてある | 本文の事実を確かめる質問もできるが、この活動では本文に直接書かれていない気持ち・理由・その後を、本文から推論する質問が中心 |
| 答える人 | 本文を見て答える生徒 | 人物になりきった生徒(本文を根拠に想像して) |
| 答えの確かめ方 | 本文と同じか | 本文と矛盾しないか・どこから考えたか |
やり方を3ステップで
- 質問を作る:本文を読み終えたあと、人物に聞きたい質問を作る(本文に答えがない質問を2つ以上)。
- ホットシートで聞く:人物役の生徒が前に座り、各班が質問する。答えのあと、質問した班は1回だけ追加質問できる。
- ふり返る:いちばん印象に残った答えと、それが本文のどこから考えられるかを書く。
授業の流れ(分ごと)
| 時間 | 活動 | 先生の動き |
|---|---|---|
| 0:00〜2:00 | 活動の説明と先生の実演 | 先生が人物役で座り、2〜3問に答えてみせる |
| 2:00〜7:00 | 個人で質問づくり(ワークシート) | 「答えが本文にない質問」に印をつけさせる |
| 7:00〜9:00 | 班で質問を出し合い、ベスト3を選ぶ | 机の間を回りながら、質問の英語を直す |
| 9:00〜17:00 | ホットシート(1人約2分×3人+交代) | 司会をし、追加質問をうながす |
| 17:00〜20:00 | 印象に残った答えを書く・共有 | 良い答えを板書し、本文の根拠と結びつける |

- 前提:物語文やエッセイなど、人物が登場する本文を読み終えた段階で行う(内容理解の確認は済ませておく)。
- 実演:先生が人物役になり、前の椅子(ホットシート)に座る。生徒に1〜2問質問させ、「I felt … because …」の形で答えてみせる。
- 質問づくり(5分):ワークシートに質問を5つ書く。うち2つ以上は「本文に答えがない質問」にする(気持ち・理由・その後)。
- 班で選ぶ(2分):班で質問を出し合い、聞きたい質問ベスト3を決める。だれが聞くかも決める。
- ホットシート(8分):役の生徒(立候補か、先生が指名した得意な生徒から始める)が前に座る。各班が順番に質問し、役の生徒は人物として答える。答えたあと、質問した班は1回だけ追加質問できる。1人の役で質問できるのは3〜4班なので、質問できなかった班は次の役で先に質問する。
- 交代:約2分で役を交代し、8分で3人ほどが座る。もっと多くの生徒に役を体験させたいときは、活動を25分ほどに延ばすか、班内版(アレンジ参照)にする。同じ人物を別の生徒が演じても、別の人物(相手役)でもよい。
- ふり返り:いちばん印象に残った答えとその理由をワークシートに書く。先生は「その答えは本文のどこから考えた?」と根拠をたずねる。
どんな物語にも使える質問(気持ち・理由・その後)
- How did you feel when (the event) happened?
- Why did you decide to …?
- What were you thinking at the end of the story?
- Were you scared / nervous / happy at that moment?
- Who is the most important person in your life? Why?
- If you could go back, would you do the same thing?
- What did you learn from this experience?
- What will you do next year?
- What do you want to say to (another character)?
- Is there anything you didn't tell anyone in the story?
- What was the hardest moment for you?
- If you met us in Japan, what would you tell us?
役になって答えるときの言い方:I felt … because … / At first I …, but later … / To be honest, … / I wanted to … / I'm going to …
向いている教材:主人公の気持ちが変化する物語、歴史上の人物の伝記、異文化体験のエッセイ、スピーチ文(話し手をホットシートに)。人物ではなく「物」(例:物語に出てくる手紙・犬)を座らせるのも盛り上がる。
- 小学校:絵本の登場人物で、先生が役になって座る。子どもは「Are you happy?」「Do you like …?」の Yes/No の質問をする。答えは表情とジェスチャーつきで。
- 中学:過去形・不定詞・感情の形容詞(I was surprised to …)を使う単元に合わせる。役は2人1組で座り、相談して答えてもよい(安心感が増す)。
- 高校:意見が分かれる人物(決断をした人物)を座らせ、「Do you think your decision was right?」のような評価の質問を入れる。反対の立場の人物を2人並べて座らせる「ダブルホットシート」も。
- 大人数クラス:全体1回のあと、班の中で1人ずつ順番にホットシートに座る「班内版」にすると、全員が答える側を体験できる。
- 苦手な生徒が多いクラス:答えの書き出しカードを見ながら答えてよいことにする。質問は班で考えて紙に書き、読み上げる形でもよい。
- オンライン・タブレット:役の生徒の答えを録音・共有し、ほかのクラスが聞いてコメントする。共有ボードに質問を集めておき、人気の質問から答える。
質問のワークシートと答えの様子から、本文の理解の深さ(推論)と、やり取りの力を見ます。定期テストで「〇〇の立場で、〜について2文で答えなさい」と出題すると、活動と評価がつながります。
| 観点 | 見るところ | A(十分満足) | B(おおむね満足) | C への手立て |
|---|---|---|---|---|
| 知識・技能 | 疑問文・答えの文の正確さ | 疑問詞を使い分け、正確に質問・回答できる | 意味の通じる質問・回答ができる | 質問の書き出しを選んで使わせる |
| 思考・判断・表現 | 本文の根拠をふまえた想像 | 本文の事実にもとづいて、理由つきで答えられる | 人物の気持ちを1文で言える | 「本文のどこから?」と一緒に探す |
| 主体的に学習に取り組む態度 | やり取りを続けようとする姿勢 | 相手の答えをふまえて質問や答え方を工夫し直しながら、人物として伝え合うことを続けようとしている(追加質問はその表れの1つ) | 型カードや仲間の助けを借りながらやり取りを続け、ふり返りで自分の質問・答え方の改善点を見つけて、次の場面で試そうとしている | 班の質問を読み上げる役から始め、次に言いたい1文を一緒に決める |
「主体的に学習に取り組む態度」は、粘り強い取組の中で自分の学習を調整しようとしているかを含めて見る観点です。1回の活動の行動だけで決めず、ふり返りの記述や単元の複数の場面から判断します 1。
- 本文に答えが書いてある質問ばかりになる→ ワークシートの「答えが本文にある? Yes/No」欄に印をつけさせ、No を2つ以上にする。先生が「その答え、教科書に書いてあるね」と気づかせる。
- 役の生徒が固まって答えられない→ 「I'm not sure, but maybe …」で答えてよいと伝える。2人1組で座らせる。最初は先生が役をやって見本を見せる。
- ふざけた質問・答えで脱線する→ 「本文と矛盾しないこと」をルールにし、答えのあとに「どこから考えた?」と根拠を聞く。
- 質問する生徒が決まってしまう→ 班で「だれが何番の質問をするか」を事前に決め、順番に交代する。全体版で全員が回りきらないときは、班内版で全員が1回は質問できるようにする。
- 答えが1語で終わる→ 「because を必ず入れる」ルールを足す。質問した班に追加質問を1回認める。
本文に書いていない気持ちや理由をたずね、質問した人も役の生徒の答えをあらかじめ知らない場合、その質問は、たずねる側が答えを知らない「本物の質問(参照質問・referential question)」に近い性質をもちます。成人のESL学習者24人と先生4人の小さな研究ですが、本物の質問を増やすよう訓練を受けた先生のクラスでは、そうでないクラスに比べて学習者の答えが長く、文の構造も複雑になったと報告されています 2。人物の気持ちや理由をたずねる質問は、このタイプになりえます(本文の事実を確かめる質問は、答えが決まっている「確認の質問」です)。ただしこれは先生が質問した1回の授業の研究で、生徒どうしのホットシートや、読みの深まりを調べたものではありません。ホットシートでも同じような長い答えが出ることを期待した、研究からの見通しです。
また、役になりきるなどの演劇的な手法(drama-based pedagogy)の効果をまとめたメタ分析では、47の準実験研究から、学力面にプラスの効果が見られ、とくに外部の専門家ではなく教室の先生や研究者が行った場合、5回を超える授業を含む場合、言語(英語圏の国語)や理科の授業に組みこんだ場合に効果が大きかったと報告されています 3。ただし、ここでの回数は演劇的な手法を使った授業全体の回数で、ホットシートを何回くり返すかを調べたものではありません。また、このメタ分析は英語を外国語として学ぶ教室の研究ではなく、因果を言うには研究デザインが弱いものが多いと著者自身が述べています。ホットシートは「1回やって終わり」にせず、物語文の単元のたびに取り入れる、という程度の参考にしてください。
❓ よくある質問
Q. ホットシートとはどんな活動ですか?
物語文の登場人物になりきった生徒が前の椅子(ホットシート)に座り、ほかの生徒の英語の質問に人物として答える活動です。「その時どう思ったの?」「なぜそうしたの?」のように、本文に答えが書いていない質問が自然に生まれ、本文を根拠に推論しながら読むことをうながします。
Q. ホットシートは単元のどこで行いますか?
物語文やエッセイなど人物が登場する本文を読み終え、内容理解の確認を済ませた段階で行います。1回やって終わりにせず、物語文の単元のたびに取り入れると、質問の作り方や答え方に慣れていきます。
Q. 役の生徒が答えられずに固まったら?
「I'm not sure, but maybe …」で答えてよいと伝えます。2人1組で座らせてもかまいません。最初は先生が人物役になり、"I felt … because …" の形で答える見本を見せます。
Q. 本文に答えが書いてある質問ばかりになるときは?
ワークシートの「答えが本文にある? Yes/No」欄に印をつけさせ、No を2つ以上にします。先生が「その答え、教科書に書いてあるね」と気づかせます。答えのあとに「どこから考えた?」と根拠を聞くと、ふざけた答えでの脱線も防げます。
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📑 出典(3件)
本文の上付き数字に対応。✔ は DOI / ISBN / 公式ページを書誌データベースと機械照合した印です。
- 文部科学省 (2019). 小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について(通知) 公式ページ ✔ リンク確認済観点別学習状況の評価を「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3観点に整理した文科省の通知(2019年)
- Brock, C. A. (1986). The effects of referential questions on ESL classroom discourse. TESOL Quarterly, 20(1), 47-59. doi:10.2307/3586388 ✔ DOI照合済答えを知らない「本物の質問(参照質問)」を増やすと、生徒の発話が長く複雑になることを示した研究
- Lee, B. K., Patall, E. A., Cawthon, S. W., & Steingut, R. R. (2015). The effect of drama-based pedagogy on PreK-16 outcomes: A meta-analysis of research from 1985 to 2012. Review of Educational Research, 85(1), 3-49. doi:10.3102/0034654314540477 ✔ DOI照合済演劇的な手法(役になりきる・ロールプレイなど)を使った授業の効果を、幼稚園〜大学の研究でまとめたメタ分析
最終更新 2026-10-18 ・ 原田英語 まちがいのご指摘はこちら






