発問のはしご(Q&A リーディング)― 事実→推論→自分の考え、の3段で読みを深める
本文の内容理解を「本文に書いてあること」の確認だけで終わらせていませんか。書いてあること→書いていないけれど分かること→自分はどう思うか、と問いのはしごを1段ずつのぼると、同じ本文で読みが深まり、話す・書く活動にも自然につながります。
- ⏱ 時間
- 15-20分
- 🧰 準備
- 少し
- 👥 形態
- 個人→ペア→全体
- 🎯 技能
- リーディング・やり取り
- 📶 CEFR
- A2-B1

- 本文の表面的な事実確認から、情報をつなぐ・推し量る・評価する読みへと段階的に深める。
- 問いへの答えを「本文のどこが根拠か」とセットで言えるようにする。
- 最後の問いで、本文を自分の考えや経験と結びつけ、話す・書く活動へつなぐ。
発問のはしごってなに?
ひとことで言うと、同じ本文について「書いてあること」→「書いていないけれどわかること」→「自分はどう思うか」と、問いを1段ずつ深くしていく読み方です。
はしごを1段ずつのぼるようなものです。いきなり上の段には跳べません。そして上の段にのぼっても、足は下の段にかかっています。推論や自分の考えを答えるときも、根拠は本文(下の段)に置いておくことが大事です。
3つの段のちがい
| 段 | 問いの例 | 答えのありか |
|---|---|---|
| Step 1:書いてあること | What did Mika want to play? | 本文にそのまま書いてある |
| Step 2:つなぐ・推し量る | Why did the music sound strange without the drum? | 本文の情報をつなぐ、または本文と自分の知識を合わせて考える |
| Step 3:自分の考え | Do you think the teacher made a good choice? | 読み手の考え。ただし本文の内容を正しくふまえる(経験を話すときも本文と比べる) |
やり方を3ステップで
- Step 1:問いを先に見せてから本文を読ませ、答えと根拠の文を確かめる。
- Step 2:ペアで考え、「本文のどこを根拠にした?」を言葉にさせる。
- Step 3:意見と理由を1〜2文書いてから、ペア → 全体で伝え合う。
授業の流れ(分ごと)
| 時間 | 先生 | 生徒 |
|---|---|---|
| 0:00〜2:00 | Step 1 の問いを先に見せ、本文を配る | 問いを読んでから本文を黙読 |
| 2:00〜6:00 | 机の間を回り、根拠の文に線を引くよう声をかける | Step 1 に答え、根拠に下線 |
| 6:00〜8:00 | 全体で Step 1 を確認(指名は根拠もセットで) | 答えと根拠を言う |
| 8:00〜13:00 | Step 2 をペアで考えさせる | 本文の情報をつなぐ、または本文と自分の知識を合わせて答える |
| 13:00〜18:00 | Step 3 を個人→ペア→全体で共有 | 自分の考えと理由を書き、ペアで伝え合う |
| 18:00〜20:00 | 意見を2〜3人に紹介してもらい、振り返り | 振り返りのチェック |

- 問いを準備する:本文1つにつき、Step 1(書いてある事実)3問、Step 2(複数箇所をつなぐ・書いていないことを推し量る)2〜3問、Step 3(評価・自分の考え)1〜2問。
- Step 1 を先に配る:読む前に問いを見せ、答えを探しながら読ませる。答えの根拠になる文に下線を引かせる。
- Step 1 の確認:答えを言うときは「どこに書いてあった?」も必ず聞く。教科書なら行番号で言わせると速い。
- Step 2 はペアで:「本文のどこを根拠にした?」を言葉にさせる(複数の箇所が必要な問いでは「どことどこをつないだ?」と聞く)。答えが割れたら、根拠を比べて話し合う。
- Step 3 は書いてから話す:1〜2文で意見と理由を書く→ペアで伝え合う→全体で2〜3人。正解はないが「本文の内容を正しくふまえているか」を大事にする。自分の経験を話すときも、本文と比べさせる(How was it the same or different?)。本文を読まなくても答えられる経験談だけの問いは、読解の問いではなく、話す・書く活動への発展として別に扱う。
- 板書:黒板を3段に分け、はしごの絵の各段に Step 1〜3 の問いを書くと、生徒が今どの段の問いかを意識できます。
ワークシートの本文(Mika and the Big Drum)を使った問いの例。答えの根拠を本文で示せるかを必ず確認します。
Step 1:書いてあること(字義)
- When did Mika join the school band?
- How many trumpet players were there?
- What did the teacher give Mika?
- Who was the leader of the band?
Step 2:つなぐ・推し量る(再構成・推論・予測) 5. How long did Mika play the drum before the October concert?(4月と10月をつなぐ) 6. Why was Mika not happy at first? Give two reasons.(2つの文をまとめる) 7. Why did the music sound strange without the drum?(書いていない理由を推し量る) 8. How did Mika feel when Ken told her, "We need you"?(その後の行動から推し量る) 9. What will Mika do next April?(その後を予測する)
Step 3:自分の考え(評価・個人的な反応) 10. Do you think the teacher made a good choice? Why or why not? 11. Which character do you like the most? Why? 12. Have you had an experience like Mika's? How was it the same or different?
ほかの本文に応用できる問いの型
- Step 1:Who / When / Where / What did ... ?
- Step 2:Why do you think ... ? / How did ... feel? / What will happen next?
- Step 3:Do you agree with ... ? / What would you do if you were ... ?
- 小学校:絵本の読み聞かせのあと、"What color was the cat?"(事実)→ "Is the cat happy?"(推し量る)→ "Do you like this cat?"(自分の考え)を、Yes/No や指さしで答えられる形で。
- 中学:Step 1 は Yes/No・T/F 中心、Step 2 は日本語で答えてもよい、とすると苦手な生徒も参加できます。慣れたら英語で答える割合を増やします。
- 高校:論説文では Step 2 を「筆者が最も言いたいことは?」「この例は何のため?」に、Step 3 を「筆者の主張に賛成か」にすると、要約・意見文の準備になります。
- 大人数クラス:Step 3 の共有は4人班で1人ずつ順番に話し、班で「いちばん説得力のあった理由」を1つ選んで発表させます。全体の前で話すのは数人でも、班の中では40人全員が1回は自分の考えを言えます。
- 苦手な生徒が多いクラス:Step 1 を選択式にし、Step 2 は「本文のどの文が手がかり?」と文を選ばせるだけでもOK。答えより「根拠を探す」動きを育てます。
- オンライン・タブレット:Step 1 は自動採点のフォームで、Step 3 は共有ボードに意見を投稿。似た意見をグループ分けして次の授業で紹介します。
どの観点で記録するかは、問いの段階で自動的に決まるのではなく、単元の目標と、設定したコミュニケーションの目的・場面・状況で決めます。たとえば次のように規準を立てます。
- 知識・技能:本文の語句や文構造の理解をもとに、書いてある内容を正確に読み取れる(Step 1 の問いなど。小テストや定期テストの選択・記述問題で)。
- 思考・判断・表現:目的(例:「ミカの変化を友だちに紹介するために」)に応じて、必要な情報や要点をつかみ、本文の情報をつないで考えられる(Step 2・3 の問いなど)。Step 3 を話す・書く活動として評価するときは、話すこと・書くことの評価規準を別に立てます。
- 主体的に学習に取り組む態度:根拠を探し直す、ペアと考えを比べて自分の答えを見直す姿。ただし1回の活動や振り返りの記述だけで決めず、単元を通して、その後の答え方や読み方がどう変わったか(学習の調整)を続けて見ます。
下の表は、この時間の指導に生かすための観察の例です。記録に残す評価に使うときは、単元の目標・評価規準に位置づけて行います。
| 段階 | Step 2(推論) | Step 3(自分の考え) |
|---|---|---|
| A | 本文の根拠(必要なら複数の箇所)を示して、筋の通った答えを言える | 意見の理由が本文の内容を正しくふまえ(必要なら自分の経験と比べて)、くわしく説明されている |
| B | 根拠を1か所示して答えられる | 意見と理由が1つずつある |
| C | 根拠なしに答える/本文と合わない | 意見だけで理由がない |
定期テストでも、本文が初見の問題に Step 2 型の問いを1〜2問入れると、授業で育てた力をそのまま測れます。
- Step 2 で本文と関係ない想像を言う → 「どの文からそう思った?」と根拠の文を必ず指させる。根拠のない推測と、本文にもとづく推論を区別させます。
- Step 3 で「わかりません」「特にない」 → 「Yes / No を選ぶだけ」から始め、理由は日本語でもよいとする。意見の例を2つ示して選ばせるのも手です。
- Step 1 で T/F を当てずっぽうで答える → T/F や Yes/No は当て推量で半分当たる形式です。「根拠の行番号も書く」をルールにします。
- 時間が足りず Step 3 まで届かない → Step 1 は読む前に配って自学、授業では Step 2 から始める。Step 3 は次の授業のはじめの5分に回してもよい。
- できる生徒だけが答える → Step 2・3 は必ずペアで話してから全体へ。指名はペアの代表を交代で。
外国語の読解の問いを整理した論文では、理解のタイプを、書いてあることを取り出す字義的理解、離れた箇所の情報を組み合わせる再構成、書いていないことを知識と合わせて推し量る推論、先を読む予測、文章を判断する評価、気持ちで応える個人的な反応の6つに分けています。そして、問いの形(Yes/No、選択、T/F、wh- の問い、多肢選択)とあわせて使い分けることで、学習者が文章と対話する読み手になる、と提案しています。T/F や Yes/No の問いは当て推量で答えられてしまう弱点があるとも指摘しています 1。発問のはしごは、この6つを授業で使いやすい3段にまとめたものです。
読む前に問いを見せることにも裏づけがあります。ブラジルの大学生40人の実験では、本文の内容を1文で聞き、答えがありそうな問いを自分たちで考えてから読んだときの方が、何もせずに読んだときより多肢選択の理解テストの点が高くなりました(自由記述の問題では差がありませんでした)2。この研究の「読む前の問い」は学生が自分で作ったもので、先生が用意した問いを先に読む形とは違います。手順2で Step 1 を先に配るのは、読む目的をはっきりさせるための授業上の工夫で、この結果はその参考の1つです。
ただし、問いの分類は著者たち自身が「教え、教材を作ってきた経験にもとづく」と述べているもので 1、3段の順に問うことで読解力がどれだけ伸びるかを比べた研究は多くありません。事実確認の問いだけで終わらないよう、推論と自分の考えの問いを毎回1つは入れる、という使い方が現実的です。
❓ よくある質問
Q. 英語の読解の発問には、どんな種類がありますか?
外国語の読解の問いを整理した論文では、字義的理解・再構成・推論・予測・評価・個人的な反応の6つに分けています 1。発問のはしごは、これを「書いてある事実」「つなぐ・推し量る」「自分の考え」の3段にまとめたものです。
Q. 推論の発問で、本文と関係ない想像を言う生徒がいます。
「どの文からそう思った?」と根拠の文を必ず指させます。根拠のない推測と、本文にもとづく推論を区別させるのがねらいです。答えが割れたら、根拠を比べてペアで話し合わせます。
Q. T/F や Yes/No の問いだけではいけませんか?
T/F や Yes/No の問いは、当て推量で答えられてしまう弱点があると指摘されています 1。使うときは「根拠の行番号も書く」をルールにし、推論と自分の考えの問いを毎回1つは入れます。
Q. 発問は、本文を読む前に見せたほうがいいですか?
1段目(事実の問い)は先に見せるのがおすすめです。ブラジルの大学生40人の実験では、本文の内容を1文で聞いて自分たちで問いを考えてから読んだときの方が、何もせずに読んだときより多肢選択の理解テストの点が高くなりました 2。先生が用意した問いを先に読む形とは違い、日本の中高生で確かめた結果でもないので、読む目的をはっきりさせるための授業の工夫として使います。
Q. 時間が足りず、3段目の問いまで届きません。
Step 1 は読む前に配って自学にし、授業では Step 2 から始めます。Step 3(自分の考え)は、次の授業のはじめの5分に回してもかまいません。Step 2・3 は必ずペアで話してから全体へ、とすると、できる生徒だけが答える状態も防げます。
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📑 出典(2件)
本文の上付き数字に対応。✔ は DOI / ISBN / 公式ページを書誌データベースと機械照合した印です。
- Day, R. R., & Park, J.-S. (2005). Developing reading comprehension questions. Reading in a Foreign Language, 17(1), 60-73. doi:10.64152/10125/66599 ✔ DOI照合済読解の6つのタイプ(字義・再構成・推論・予測・評価・個人的反応)と5つの質問形式を整理した論文
- Taglieber, L. K., Johnson, L. L., & Yarbrough, D. B. (1988). Effects of prereading activities on EFL reading by Brazilian college students. TESOL Quarterly, 22(3), 455-472. doi:10.2307/3587289 ✔ DOI照合済ブラジルの大学生40人。絵で状況をつかむ・要約を聞いて自分たちで問いを作る・単語の事前指導の3つの読む前活動で、多肢選択の理解テストの点が高まった(自由記述は差なし)
最終更新 2026-10-18 ・ 原田英語 まちがいのご指摘はこちら





