チェーンストーリー(リレー作文)― 1人1文ずつ書いて回し、班で1つの物語を完成させる
1行目だけ決まった紙を班で回し、前の人の文を読んでから1文ずつ足していく。思いがけない展開に笑いながら、過去形・接続詞・時を表す語を何度も使う、書く活動の入り口です。
- ⏱ 時間
- 15-20分
- 🧰 準備
- 少し
- 👥 形態
- 班(4人)
- 🎯 技能
- ライティング・リーディング・文法・ゲーム
- 📶 CEFR
- A2-B1

- 前の人の文を読んで内容をつかみ、話がつながるように1文を書き足す。
- 物語に必要な過去形・つなぎ言葉(Then, Suddenly, Finally など)を何度も使う。
- 最後に班で読み直して、まちがいを一緒に直す(協働での推敲)。
「英語で物語を書きなさい」と言われると、多くの中学生は手が止まります。でも「前の人の続きを1文だけ」なら書けます。チェーンストーリーは、4人で1枚の紙を回して物語を作る活動です。1人の書く量は少なくても、自分の番が来るたびに、それまでに仲間が書いた文を全部読んでから続きを書きます。2周目には、1周目より長くなった物語をもう一度読むことになります。思わぬ展開に笑い声が上がり、書くことへの苦手意識がやわらぎます。
チェーンストーリーってなに?
ひとことで言うと、書き出しの1文だけが決まった紙を班で回し、前の人の文を読んでから1人1文ずつ書き足して、1つの物語を完成させるリレー作文です。最後に班で読み直して直します。
駅伝のようなものです。1人が走るのは1区間だけですが、前の走者からたすき(前の文)を受け取らないと走り出せません。前の文をよく読んで、話をつなげるのが大事なところです。ゴールのあとは、全員で記録(できた文章)を見直します。
1人で書く物語作文とのちがい
| 1人で書く物語作文 | チェーンストーリー | |
|---|---|---|
| 1人が書く量 | 全部 | 1回1文(2周なら2文) |
| 読む量 | 自分の文だけ | 自分の番が来るたびに、それまでの仲間の文を読む(2周なら2回) |
| 直し方 | 先生の添削を待つ | 班で声に出して読み直し、相談して直す |
やり方を3ステップで
- 確かめる:書き出しの1文とつなぎ言葉(Then, Suddenly, Finally など)、ルールを確認する。
- 回して書く:先生の合図で紙を回し、前の文を全部読んでから1文(1分)書き足す。8回目に書く人が物語を終わらせる。
- 直して発表:班で読み直して過去形・つづり・つながりを直し、2〜3班が読み上げる。
授業の流れ(分ごと)
| 時間 | 活動 | 先生の動き |
|---|---|---|
| 0:00〜3:00 | 書き出しの提示・つなぎ言葉の確認・ルール説明 | 先生が2文ほど続けて見本を見せる |
| 3:00〜11:00 | リレー(1文1分×2周=8文) | 合図で紙を回させる |
| 11:00〜15:00 | 班で読み直し、まちがいを直す | 過去形・つなぎ言葉の観点を示す |
| 15:00〜18:00 | 2〜3班が読み上げ発表 | 面白い展開・良い表現をほめる |
| 18:00〜20:00 | チェックリスト・振り返り | ワークシートを回収 |

- 班と紙:4人班。各班にワークシートを1枚(班が4つの物語を同時に作るなら、1人1枚ずつ配り、4枚を同時に回す)。
- 書き出しの提示:「Last Saturday, Ken found an old map in his grandfather's room.」など、続きが気になる1文を先生が与える。
- ルール:①前の人の文を全部読んでから書く ②1回に1文 ③物語の出来事は過去形で(会話文の中などは現在形でもよい) ④最後の8回目に書く人は物語を終わらせる(紙を左に回すので、最初に書く人の右どなりの人が8回目になる) ⑤前の人の文は消さない。
- リレー(1文1分):先生の「Pass!」の合図で紙を左に回す。書けない人は、つなぎ言葉の一覧から1つ選んで書き出すだけでもよい(After that, … )。困ったら絵文字ダイスで展開のヒントを出す。
- 読み直し(4分):完成した物語を班で声に出して読み、チェックリストで確認する。過去形・つづり・話のつながりを、班で相談して直す(直すのは赤ペンで。だれの文でも直してよい)。
- 発表(3分):2〜3班が読み上げる。聞く側は「いちばん驚いた文」を1つ選ぶ。
- 回収と活用:ワークシートを回収し、先生は「班で直した後の文」を見る。良い作品は掲示したり、次の時間の読み物にしたりする。
書き出しのお題(物語)
- Last Saturday, Ken found an old map in his grandfather's room.
- When I opened my bag, there was a small cat inside.
- One morning, our English teacher came to school in a robot costume.
- The phone rang at midnight, but nobody was there.
- Yuki missed the last bus home.
- A strange box arrived at my house with no name on it.
- On the school trip, our group got lost in Kyoto.
- My little brother said, "I can talk to birds."
書き出しのお題(高校向け・少し複雑に) 9. If I had known what was in the letter, I would never have opened it. 10. The day the internet stopped working, everything changed. 11. It was the first snow in fifty years in our town. 12. Nobody believed Mai when she said she had seen it.
展開のヒント(詰まったとき用) 13. 新しい人物が登場する(A tall man appeared.) 14. 天気が急に変わる(Suddenly, it started to rain.) 15. 何かがなくなる・見つかる(He couldn't find his phone.)
文法をしぼる版:過去進行形(was ~ing)を必ず1回/接続詞 when と because を1回ずつ/会話文("…," she said.)を1回、など。
- 小学校:文字ではなく、4コマの絵を1コマずつ描き足していく「リレー絵物語」。最後に先生が英語の1文ずつを添える。
- 中学:書き出しを教科書の物語の続きにすると、本文の復習にもなる。中1は「I like …」の自己紹介リレー(前の人の情報を三人称で書いてから自分のことを書く)でもできる。
- 高校:1文ごとに使う文法を指定する(2番目は関係代名詞、3番目は分詞構文…)。完成後に別の班の物語を読んで、続きの1段落を個人で書く。
- 大人数クラス:4人×10班で同時にできる。発表は全班ではなく、掲示して読み合う形(ギャラリーウォーク)に。
- 苦手な生徒が多いクラス:1人1文ではなく「ペアで1文」にする。つなぎ言葉と動詞の過去形の一覧を配る。
- オンライン・タブレット:共同編集の文書に1行ずつ書き足す。名前の色を変えると、だれが書いたか分かり、先生があとから一人ひとりの文を見られる。
リレー作文は、書く活動の導入・練習の段階で使います。成績のための評価は、この活動のあとに個人で書く物語・日記で行い、リレーでは「指導に生かす評価」として、過去形とつなぎ言葉の使い方を見ます。下の表も、次の指導に生かすための観察の目安で、この1回の活動だけで観点の評価を決めることはしません(「主体的に学習に取り組む態度」は、粘り強い取組の中で自分の学習を調整しようとしているかを含めて見る観点です 1)。
| 観点 | 見るところ | A(十分満足) | B(おおむね満足) | C への手立て |
|---|---|---|---|---|
| 知識・技能 | 過去形・つなぎ言葉の正確さ | 正確な過去形とつなぎ言葉で1文を書ける | 意味が伝わる1文を書ける | 動詞の過去形一覧を見ながら書く |
| 思考・判断・表現 | 前の文とのつながり(読み手に伝わる物語にする) | 前の文を受けて、話を広げる・まとめる文が書ける | 話の流れに合う文が書ける | 「前の文の主語は?」と確認してから書く |
| 主体的に学習に取り組む態度 | 班での読み直し | 直す必要のある点を自分で見つけ、班で相談したり一覧表を確かめたりして、表現をよりよくしようとしている | チェックリストで自分の文を振り返り、必要な直しをしようとしている | チェックリストの1項目を担当させ、一緒に確かめる |
- 前の文を読まずに勝手な文を書く→「前の人の文の単語を1つ使う」ルールを足す。発表で話がつながっているかを聞く。
- ふざけた展開・人を傷つける内容になる→ 実在の人物(クラスメート・先生)は出さない、と最初に約束する。
- 1分で書けない生徒がいて渋滞する→ 時間を1分半にする。書けないときは「つなぎ言葉+主語」(例:Then, Ken ...)まで書いて次の人に渡してよい(次の人がその文を続ける)。
- まちがいを直す時間がない→ リレーを1周(4文)で止めて、読み直しの時間を必ず確保する。この時間が学びの中心。
- 過去形と現在形が混ざる→ 読み直しのとき「動詞に下線を引く」作業をさせると、自分たちで気づきやすい。
第二言語の協働ライティング(2人以上で相談しながら1つの文章を書く)の研究33本をまとめたメタ分析では、協働で書いた文章は1人で書いた文章よりも正確で、その差は中くらい(g = 0.73)でした。また、協働ライティングを経験したあとに個人で書いた文章の評価点も、1人で書く練習だけをした場合より高くなっていました(g = 0.94) 2。ただし、複雑さや流暢さなどについては研究の数が少なく、結果がそろっていないとされています。このメタ分析は、相談しながら1つの文章を書き上げる協働ライティング全体の結果で、1人ずつ順番に書くリレー作文や、最後の読み直しの時間だけの効果を調べたものではありません。チェーンストーリーでは、完成した文章について班で相談して直す時間をとることで、協働ライティングに近い場面をつくろうとしています(研究から考えた工夫です)。
物語の書き出しやお題の選び方も参考になります。絵を見て物語を語るタスクの研究では、出来事の順番が決まっていて、並べ替えると話が成り立たなくなる物語のほうが、順番を入れ替えても成り立つ物語より正確に話せました。また、主な出来事と同時に、背景で別の出来事が進んでいる物語では、そうでない物語より複雑な文が使われました 3。ただしこれは絵を見て口で語る活動の研究で、1文の書き出しだけで始めるリレー作文に同じ結果が当てはまるかは、確かめられていません。書き出しを選ぶときの参考程度にとどめてください。
❓ よくある質問
Q. チェーンストーリー(リレー作文)のルールは?
①前の人の文を全部読んでから書く ②1回に1文 ③物語の出来事は過去形で ④最後の人(8番目)は物語を終わらせる ⑤前の人の文は消さない、の5つです。4人班で1枚の紙を回し、先生の「Pass!」の合図で1文1分ずつ書きます。
Q. 1分で書けない生徒がいて渋滞するときは?
時間を1分半にします。書けないときは「つなぎ言葉+主語」(例:Then, Ken ...)まで書いて次の人に渡してよく、次の人がその文を続けます。つなぎ言葉の一覧(After that, … など)から1つ選んで書き出すだけでもかまいません。
Q. 書いた物語のまちがいはどう直しますか?
リレーのあと、完成した物語を班で声に出して読み、チェックリストで過去形・つづり・話のつながりを確かめて、班で相談して赤ペンで直します。この読み直しが学びの中心なので、時間が足りなければリレーを1周(4文)で止めてでも確保します。
Q. 班で書くと、1人で書くより効果がありますか?
相談しながら1つの文章を書く協働ライティングの研究をまとめたメタ分析では、協働で書いた文章は1人で書いた文章より正確で、そのあと個人で書いた文章の評価点も高くなっていました 2。ただし、複雑さや流暢さについては研究が少なく、結果がそろっていません。また、1人ずつ順番に書くリレー作文そのものを調べた研究ではないので、最後に班で相談して直す時間をとって、協働の場面をつくります。
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📑 出典(3件)
本文の上付き数字に対応。✔ は DOI / ISBN / 公式ページを書誌データベースと機械照合した印です。
- 文部科学省 (2019). 小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について(通知) 公式ページ ✔ リンク確認済観点別学習状況の評価を「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3観点に整理した文科省の通知(2019年)
- Elabdali, R. (2021). Are two heads really better than one? A meta-analysis of the L2 learning benefits of collaborative writing. Journal of Second Language Writing, 52, 100788. doi:10.1016/j.jslw.2020.100788 ✔ DOI照合済協働ライティングのメタ分析(33研究)。ペアで書いた文章は1人で書いた文章より正確(g = 0.73)
- Tavakoli, P., & Foster, P. (2008). Task design and second language performance: The effect of narrative type on learner output. Language Learning, 58(2), 439-473. doi:10.1111/j.1467-9922.2008.00446.x ✔ DOI照合済絵の話を語るタスクで、話の筋がはっきりしているほど正確さが上がり、背景の出来事があるほど複雑な文が出ることを示した研究
最終更新 2026-10-18 ・ 原田英語 まちがいのご指摘はこちら






