先生と英語でやり取りする「対話ジャーナル」― 添削しない日記の続け方
生徒が英語で数行の日記を書き、先生は赤ペンで直すかわりに、英語でひとこと返事を書く。誤りの訂正より内容のやり取りを優先して、生徒が「伝えたいこと」を書きやすい場をつくります。
- ⏱ 時間
- 10分
- 🧰 準備
- なし
- 👥 形態
- 個人(先生と1対1)
- 🎯 技能
- ライティング・リーディング
- 📶 CEFR
- A1-B2

- 英語を「直されるために書く」のではなく、「読んでくれる人に伝えるために書く」経験を積む。
- 先生との個別のやり取りで、書く量と書く意欲を育てる。
- 先生の返事を「生きた英語の読み物」として読み、表現を自分のものにする。
対話ジャーナルってなに?
ひとことで言うと、生徒が英語で数行の日記を書き、先生は誤りを赤ペンで直すかわりに、内容への返事を英語でひとこと書く、先生と生徒の英語の交換日記です。
友だちとの文通のようなものです。届いた手紙の文法を直して送り返す人はいません。相手の話に「それで、どうなったの?」と返事を書きます。誤りの訂正より、内容のやり取りを続けるのが大事なところです。正しい形は、先生の返事の中でさりげなく使って見せます。
添削つきの英作文とのちがい
| 添削つきの英作文 | 対話ジャーナル | |
|---|---|---|
| 先生がすること | 誤りに赤ペンを入れる | 内容に返事を書く(正しい形は返事の中で使って見せる) |
| 書く目的 | 正しく書く | 読んでくれる人に伝える |
| 採点 | することが多い | 1文ずつ採点しない |
やり方を3ステップで
- 書く:生徒が英語で3文以上書く(お題は自由。困ったらお題リストから)。
- 返事を書く:先生が内容に1〜2文で返事を書く。生徒の誤りは、返事の中で正しい形を使って見せる。
- 読んで続ける:次の授業のはじめに返事を読み、質問に答え、覚えたい表現をメモする。
授業の流れ(分ごと)
| 時間 | 先生 | 生徒 |
|---|---|---|
| 0:00〜1:00 | 前回の返事を読む時間をとる | 先生の返事を読む |
| 1:00〜6:00 | 書く時間。手が止まった生徒に書き出しのヒントを指さす | 3文以上書く |
| 6:00〜7:00 | 「返事から覚えた表現をメモしよう」 | メモ欄に書く |
| 7:00〜10:00 | 回収(放課後に返事を書く:1人1〜2分) | 次の活動へ |
| 月1回 | 読み返しの時間 | 自分の英語の変化をふり返る |

- 専用ノートを1冊用意する。 左ページに生徒、右ページに先生の返事。ワークシートを綴じて使ってもかまいません。
- 書く時間を決める。 授業のはじめ5分、または週末の宿題に。量は「3文以上」など下限だけ決めます。
- お題は自由(困ったら例を出す)。 「今日あったこと」「最近はまっていること」「先生に聞きたいこと」。
- 先生は内容に返事を書く(1人1〜2分)。 誤りに赤ペンは入れません。共感・質問・自分の話をひとこと。
- 返事の中で正しい形をさりげなく見せる。 生徒が "I go to Kyoto last week." と書いたら、"Oh, you went to Kyoto! What did you see?" と返します。
- 返事を読む時間をとる。 次の授業の最初の1分は、先生の返事を読む時間に。返事の質問には次の日記で答えるよう促します。
- 月1回、生徒が自分のジャーナルを読み返す。 「先生の返事から覚えた表現」を3つ書き出させます。
生徒向けのお題(困ったとき)
- What did you do last weekend?
- What is your favorite thing right now?
- Tell me about your club activity.
- What made you happy this week?
- What do you want to do during the vacation?
- Do you have a question for me?
- What food do you want to eat now? Why?
- If you could meet anyone, who would you meet?
先生の返事の型 9. 共感:That's great! / That sounds fun! / I'm sorry to hear that. 10. 質問:What did you ~? / Why do you like ~? / How was ~? 11. 自分の話:I like ~ too. When I was a student, I ~. 12. 正しい形を見せる:You went to ~! / You are interested in ~!
- 小学校:日記は難しいので、"How are you?" に絵と単語で答えるカードに、先生がシールとひとことの英語(Nice! / Me too!)を返す形にします。
- 中学:1年生は「今日の天気・気分・したこと」の3文テンプレートから。2年生以降は自由に。先生の返事を読むことが、生きた英語のリーディングにもなります。
- 高校:時事や授業の感想など、意見を書くお題も混ぜます。月1回の読み返しで、自分の英語の変化を確かめさせます。
- 大人数クラス:40人×数クラスに毎週返事をするのは大変です。クラスを2〜3グループに分けて、返事は隔週にする、返事は1〜2文と決める、などで続けられる量にします。
- 苦手な生徒が多いクラス:書き出しのヒント(Starters)から1つ選んで、後半だけ自分で書く形に。1文でも書けたら返事を書きます。
- オンライン・タブレット:共有ドキュメントやチャット機能で。手書きより返事が速く書けますが、他の生徒からは見えない設定にします。
ジャーナルの中身は1文ずつ採点しないのが原則です。この活動の目的は、たくさん書くことと、率直なやり取りです。点数を気にして、まちがえない短い文だけで済ませることがないように、ジャーナルは形成的な資料(指導に生かす記録)として扱います(これは実践上の方針で、採点の有無を比べた研究にもとづくものではありません)。
- 主体的に学習に取り組む態度:先生の返事や月1回の読み返しをもとに、伝わり方をふり返り、次に使う表現や書き方を選び直そうとしているか(例:読み返しで「次は理由も書く」と目標を決め、実際に試している)。提出の回数や文の量は活動の記録にとどめ、それだけで評価しません(この観点は、粘り強い取組の中で自分の学習を調整しようとしているかを含めて見るものです 1)。
- 知識・技能:先生の返事から覚えた表現を、別の時間の作文課題などで、意味に合う形で使えているかを確かめます。
- 思考・判断・表現:別の時間の作文課題で評価します。
下の表は、ジャーナルを続けるための形成的な見取りの目安で、そのまま評定には使いません。
| 見取り | よく見られる | 見られる | 声かけが必要 |
|---|---|---|---|
| 続け方 | 読み返しで自分の目標を決め、次の日記で試している | おおむね提出し、返事の質問に答えている | 提出が途切れがち(お題リストを一緒に選ぶ) |
| 表現の取り入れ | 返事の表現を自分の文で使っている | メモはしている | メモしていない(返事の中の1つに線を引かせる) |
- 結局赤ペンで直してしまいそうになったら → この活動のねらいは、内容のやり取りと書く量です。直されることを気にして書く量が減らないよう、正しい形は返事の中でさりげなく見せます。
- 返事が長すぎて先生が続かなくなったら → 先生が疲れて途中でやめるのがいちばんの失敗です。返事は1〜2文で十分。隔週にしてもかまいません。
- 「書くことがない」と言う生徒がいたら → お題リストから選ばせる、先生への質問を書くだけでもOKにします。
- 個人的な内容が書かれて扱いに迷ったら → 最初に、書きたくないことは書かなくてよいこと、ノートはほかの生徒には見せないことを約束します。同時に、「あなたやだれかの安全にかかわる心配な内容があったときは、あなたを守るために、必要な先生(担任・養護教諭・スクールカウンセラーなど)と相談することがある」と伝えておきます。そうした内容は、一人で抱えず学校の方針にそって組織で対応します。
- 返事を読まずにしまう生徒がいたら → 授業のはじめに「返事を読む1分」をとり、質問に次回答えるよう促します。
台湾の技術系大学の1年生49人が1年間、先生と対話ジャーナルを続けた研究では、一般的なお題で書いたジャーナル(前期9回)でも、学術的なお題で書いたジャーナル(後期7回)でも、文の構造の複雑さ(構文的複雑さ)が時間とともに伸びました。語彙の複雑さが伸びたのは一般的なお題のジャーナルだけでした 2。ただし、全員がジャーナルを書いた研究で比べるグループがないため、伸びを対話ジャーナルだけの効果とは言い切れません。また、ジャーナルとは別の作文テストで力を測ったものでもありません。
中級の学習者84人を無作為に2グループに分け、一方が約6か月間、週3回ジャーナルを書いて先生が主に内容に返事をした研究では、ジャーナルを書いたグループの作文(描写文)全体の評価が高く、とくに内容・構成・語彙で差が出ました。一方、文法などの言葉の使い方(language use)と表記(つづり・句読点など)では、統計的に有意な差は見られませんでした 3。差がないことを確かめた研究ではありませんが、正確さへの効果は、この研究からは確認できなかったということです 3。正確さは別の時間(間違い探し や添削つきの書き直し)で扱う、という役割分担がおすすめです。
❓ よくある質問
Q. 対話ジャーナルでは、生徒の誤りを直さないのですか?
赤ペンは入れません。この活動のねらいは内容のやり取りと書く量なので、直されることを気にして書く量が減らないよう、正しい形は返事の中でさりげなく見せます。"I go to Kyoto last week." と書いてきたら、"Oh, you went to Kyoto! What did you see?" と返します。
Q. 先生の返事はどのくらい書けばいいですか?
1人1〜2分、1〜2文で十分です。共感・質問・自分の話をひとこと書きます。先生が疲れて途中でやめるのがいちばんの失敗なので、続かないときは隔週にしてもかまいません。
Q. 生徒にはどのくらい書かせますか?
授業のはじめ5分か週末の宿題にし、量は「3文以上」など下限だけ決めます。お題は自由で、困ったら「今日あったこと」「最近はまっていること」などの例を出します。先生への質問を書くだけでもOKにします。
Q. 対話ジャーナルで文法の正確さは伸びますか?
中級の学習者が約6か月ジャーナルを書き、先生が主に内容に返事をした研究では、内容・構成・語彙で差が出た一方、文法などの言葉の使い方と表記では、統計的に有意な差は見られませんでした 3。正確さは、間違い探しや添削つきの書き直しなど別の時間で扱うのがおすすめです。
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📑 出典(3件)
本文の上付き数字に対応。✔ は DOI / ISBN / 公式ページを書誌データベースと機械照合した印です。
- 文部科学省 (2019). 小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について(通知) 公式ページ ✔ リンク確認済観点別学習状況の評価を「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3観点に整理した文科省の通知(2019年)
- Reynolds, B. L., Bai, X., & Rusk, B. V. (2026). Enhancing general and academic L2 writing complexity through dialogue journal writing: The role of learners' motivational beliefs. TESOL Quarterly. doi:10.1002/tesq.70080 ✔ DOI照合済台湾の技術系大学の1年生49人が1年間対話ジャーナルを書き、ジャーナル本文の構文の複雑さが時間とともに伸びた(比べるグループなし)
- Dabbagh, A. (2017). The effect of dialogue journal writing on EFL learners' descriptive writing performance: A quantitative study. International Journal of Applied Linguistics and English Literature, 6(3), 71-80. doi:10.7575/aiac.ijalel.v.6n.3p.71 ✔ DOI照合済中級学習者84人。約6か月の対話ジャーナルで内容・構成・語彙は伸びたが、文法と表記は差がなかった
最終更新 2026-10-18 ・ 原田英語 まちがいのご指摘はこちら





