クラスの「よくある間違い」で間違い探しゲーム ― 直すだけでなく理由を言う
生徒の作文から集めた「よくある間違い」を匿名で8文。チームで○か×かを判断し、×なら直して、理由を説明できたら得点。ゲームの形で、文法のルールを自分の言葉で確かめます。
- ⏱ 時間
- 10-15分
- 🧰 準備
- 少し
- 👥 形態
- グループ(3〜4人)
- 🎯 技能
- 文法・ゲーム・ライティング・復習
- 📶 CEFR
- A2-B2

- クラス全体に多い文法の誤りに、ゲームの中で目を向けさせる。
- 誤りを直すだけでなく、なぜ間違いなのかをルールとして言葉にする。
- 自分の作文を見直すときの「チェックの目」を育てる。
間違い探しゲームってなに?
ひとことで言うと、生徒の作文によく出る誤りの文を正しい文と混ぜて見せ、チームで「○か×か」を決め、×なら直して、なぜまちがいなのかを説明できたら得点、というゲームです。
文は、クラスの作文や小テストから集めた「よくある誤り」を、だれのものかわからないように書き直して使います。ポイントは、直し方だけでなく理由を言わせることです。「can のあとは原形」「look forward to のあとは -ing」のように、ルールを自分の言葉で確かめ、作文を見直すときのチェックの目を育てることをねらいます。
サッカーの試合のビデオを見て、「今のはオフサイド?」をチームで判定するようなものです。「反則だ」と言うだけでなく、「なぜなら、ボールが出た瞬間に〜だったから」とルールで説明できると、自分がプレーするときにも気をつけられます。判定(○×)→直す→理由の3点セットが大事です。
似た活動とのちがい
| 間違い探しゲーム | 間違いオークション | ピアレビュー | |
|---|---|---|---|
| 扱う文 | よくある誤りを集めた文(正しい文も混ぜる) | 正しい文とまちがった文を混ぜた文 | 友だちの作文そのもの |
| すること | ○×判定・訂正・理由の説明 | 正しいと思う文を「競り落とす」 | 読んでコメントを書く |
| 得点 | 理由が言えたらボーナス | 正しい文を買えたかどうか | 得点はなし |
やり方を3ステップで
- 判定する:チームで8文を読み、○か×かを決める(まちがいは5つ、と数を伝える)。
- 直して理由を書く:×の文を正しく直し、ルールを短く書く。
- 確かめて使う:答え合わせでルールを板書し、そのルールで自分のことを1文書く。数週間後に似た問題をもう一度出す。
授業の流れ(分ごと)
| 時間 | 先生 | 生徒 |
|---|---|---|
| 0:00〜1:00 | ルール説明(8文中まちがいは5つ・理由が言えたらボーナス) | 3〜4人のチームになる |
| 1:00〜6:00 | 机の間を回りながら、答えは言わずに "Why do you think so?" と理由を聞く | ○×判定・訂正・理由・賭け点 |
| 6:00〜11:00 | 1文ずつチームを指名し、理由を言わせる。得点を板書 | 答えと理由を発表 |
| 11:00〜13:00 | ルールを3つに整理して板書 | ノートに書き写す |
| 13:00〜15:00 | 「このルールで自分の文を1つ」 | 自分のことを1文書く |

- 作文や小テストから、よくある誤りを集める。 名前がわからないように書き直し、正しい文と混ぜて8文にします(誤りは5文くらい)。最初はワークシートの8文をそのまま使えます。
- チームをつくる。 3〜4人。机を寄せ、ワークシートは1人1枚、記入はチームで相談してから行います。
- チームで判定(5分)。 各文が○か×かを決め、×なら正しく直し、理由を短く書きます(「主語が3人称単数だから doesn't」)。
- 自信度を賭ける(任意)。 各文に「1〜3点」を賭け、当たればその点を獲得、はずれたら失点。自信のなさが話し合いを生みます。
- 答え合わせ(5分)。 1文ずつチームに理由を言わせます。直し方だけ正しくても、理由が言えたらボーナス1点。
- ルールを全体で確認する。 先生が板書で短く整理します(例:「can のあとは原形」「look forward to ~ing」)。
- すぐ使う(2分)。 扱ったルールを使って、自分のことを1文書きます("I'm interested in ~.")。
- 数週間後にもう一度。 同じ種類の誤りを、文を変えて再出題します。
- × I'm boring in math class. → I'm bored(退屈している)
- × I very like dogs. → I like dogs very much.
- × My hobby is play tennis. → My hobby is playing tennis.
- × I was born in 2010 year. → I was born in 2010.
- × Please teach me your phone number. → Please tell me ~.
- × I enjoyed to talk with him. → I enjoyed talking ~.
- × I have a pen. A pen is red. → The pen is red.
- × Yesterday I go to the park. → went
- × There is many books. → There are many books.
- △ I think he will not come. → I don't think he will come.(文法の誤りではないが、英語ではこちらが自然)
- × She is more taller than me. → She is taller than me.
- × I listened music. → I listened to music.
- ○ I have never been to Okinawa.(正しい文も混ぜる)
- ○ What sports do you like?
- 小学校:文法の誤り探しは行わず、"I like dog." / "I like dogs." のような2つの文を聞いて「どっちが自然かな?」を楽しむ程度に。
- 中学:三単現、be動詞と一般動詞の混同、複数形など、定期テスト前の誤りベスト5で。理由は日本語でかまいません。
- 高校:英作文の添削で多かった誤り(時制の一致、冠詞、語法)で。理由を英語で説明させると、文法について英語で話す練習になります。
- 大人数クラス:判定は全チーム同時に、答えはミニホワイトボードや指の本数で一斉に示させます。理由の発表は数チームだけ指名します。
- 苦手な生徒が多いクラス:まちがいのある場所に下線を引いておき、「どう直す?」だけを考えさせます。理由は選択肢(原形・-ing・複数形…)から選ぶ形に。
- オンライン・タブレット:問題文をスライドで1文ずつ出し、○×は投票機能、直した文と理由はチャットで送らせます。
- 知識・技能:誤りを正しく直せるか、なぜ誤りなのかをルールにもとづいて説明できるか(ワークシートの理由欄)。数週間後の再出題や小テストで定着を確かめます。
- 思考・判断・表現:場面のない誤文を直すことは主に知識・技能です。この観点を見るなら、手順7のあとに「目的や読み手を決めて自分のことを書く」課題を別に設け、伝えたい内容に合う表現を選んで書けているかを見ます。
- 主体的に学習に取り組む態度:自分がよくする誤りのチェック項目を選び、作文の見直し方をふり返って次の作文で調整しようとしているか(粘り強さと、やり方の調整)。1回の訂正の結果ではなく、何回かの作文とふり返りで見ます。
| 観点 | A | B | C |
|---|---|---|---|
| 訂正 | 誤りの文をすべて正しく直せる | 半分以上直せる | ほとんど直せない |
| 理由の説明 | ルールの言葉で説明できる | 一部説明できる | 説明できない |
- だれの間違いかわかってしまいそうなら → 文を少し変え、複数の生徒に共通する誤りだけを使います。
- 正しい文まで「どこかおかしい」と直し始めたら → 「まちがいは5つ」と数を伝えておき、正しい文があることを意識させます。
- ネイティブでも意見が分かれる語法でもめたら → その文は使わず、ルールで説明できる誤りにしぼります。
- ゲームで盛り上がっただけで終わりそうなら → 答え合わせとルールの確認、自分で使う手順だけは必ず残します。
- 賭けで負けたチームがやる気をなくしたら → 最終問題は賭け点2倍にする、理由のボーナスを大きくする、などで、最後まで逆転できる可能性を残します。
誤りへの対応として、正しく言い直すだけ(リキャスト)と、ルールを説明する(メタ言語的説明)を比べた実験では、過去形 -ed について、ルールを説明された学習者の方が、後のテストで有利でした 1。また、ルールを示したり、文法の形に意識的に注意を向けさせたりする明示的な指導は、単純な文法項目でも複雑な文法項目でも、暗示的な指導より効果が大きかったというメタ分析もあります 2。
一方で、冠詞 a / an の誤りに対し、正解を書きこむ添削とルールの説明を比べた実験では、ルールの説明は直後のテストと直後に書いた作文では効果があったものの、2週間後に書いた作文では効果が残っていませんでした。正解を書きこむだけの添削には効果が見られませんでした 3。
ルールが「わかった」だけでは、すぐ薄れることがあります 3。だからこそ手順7で「自分の文で使う」ことと、数週間後にもう一度同じ誤りの問題を出すことが大切です。なお、2つの個別の実験は、研究者側がルールの説明(メタ言語的な情報)を与えた効果を調べたもので、生徒が自分で理由を考えて説明する活動を直接調べたものではありません。メタ分析の「明示的な指導」には、ルールの提示に限らず、形に注意を向けさせたり学習者にルールを見つけさせたりする指導も含まれますが、この活動そのものを調べたものではありません。この活動への根拠は間接的です。「直し方」だけでなく自分で理由を考えさせるのは、ルールに目を向けさせるための、この活動の設計上のねらいです。
❓ よくある質問
Q. 誤文訂正ゲームの問題は、どう作ればいいですか?
作文や小テストから、クラスによくある誤りを集めます。名前がわからないように書き直し、正しい文と混ぜて8文にします(誤りは5文くらい)。複数の生徒に共通する誤りだけを使い、ネイティブでも意見が分かれる語法は避けます。
Q. 直すだけでなく、理由まで言わせるのはなぜですか?
過去形 -ed の誤りについて、ルールを説明された学習者の方が、正しく言い直されただけの学習者より後のテストで有利だった実験があります 1。ただしこの研究は、ルールの説明を先生側が与えた場合の結果です。この活動では、直し方だけ正しくても理由が言えたらボーナス1点、として、生徒自身がルールに目を向けるようにしています。
Q. ゲームで盛り上がっただけで終わりそうです。
ルールの説明が、2週間後に書いた作文では効果が残っていなかったという研究もあります 3。答え合わせとルールの確認のあと、そのルールで自分のことを1文書かせ、数週間後に同じ種類の誤りを文を変えて再出題します。
Q. 正しい文まで「おかしい」と直し始めます。
「まちがいは5つ」と数を伝えておき、正しい文が混ざっていることを意識させます。苦手な生徒が多いクラスでは、まちがいのある場所に下線を引いておき、「どう直す?」だけを考えさせます。
Q. 賭け点のルールは必要ですか?
任意ですが、各文に1〜3点を賭けると、自信のなさが話し合いを生みます。負けたチームがやる気をなくさないよう、最終問題は賭け点2倍にする、理由のボーナスを大きくする、などで逆転の目を残します。
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📑 出典(3件)
本文の上付き数字に対応。✔ は DOI / ISBN / 公式ページを書誌データベースと機械照合した印です。
- Ellis, R., Loewen, S., & Erlam, R. (2006). Implicit and explicit corrective feedback and the acquisition of L2 grammar. Studies in Second Language Acquisition, 28(2), 339-368. doi:10.1017/S0272263106060141 ✔ DOI照合済過去形 -ed の誤りに、言い直し(リキャスト)とルールの説明(メタ言語的説明)を比べた実験。説明の方が有利
- Spada, N., & Tomita, Y. (2010). Interactions between type of instruction and type of language feature: A meta-analysis. Language Learning, 60(2), 263-308. doi:10.1111/j.1467-9922.2010.00562.x ✔ DOI照合済明示的/暗示的指導と、文法項目の難しさ(単純/複雑)の関係を調べたメタ分析(41研究)
- Shintani, N., & Ellis, R. (2013). The comparative effect of direct written corrective feedback and metalinguistic explanation on learners' explicit and implicit knowledge of the English indefinite article. Journal of Second Language Writing, 22(3), 286-306. doi:10.1016/j.jslw.2013.03.011 ✔ DOI照合済冠詞 a/an の誤りに、正解を書きこむ添削とルールの説明を比べた実験。説明は直後に効いたが2週間後には残らなかった
最終更新 2026-10-18 ・ 原田英語 まちがいのご指摘はこちら





