同じ単語を「間をあけて3回」出す小テスト ― 間隔効果を毎週の単語テストに
単語テストは「習った翌日に1回」で終わっていませんか。同じ語を、次の時間・1週間後・数週間後にもう一度。間をあけて思い出す機会を増やす、小さな仕組みです。
- ⏱ 時間
- 5分
- 🧰 準備
- 少し
- 👥 形態
- 個人
- 🎯 技能
- 語彙・復習
- 📶 CEFR
- A1-B2

- 単語テストを「1回きりの確認」から「忘れかけたころの思い出し練習」に変える。
- テスト直前の詰めこみ(一夜漬け)に頼らない語彙の残し方を、クラスの仕組みにする。
- まちがえた語を翌週にもう一度出す「戻り道」をつくる。
間隔小テストってなに?
ひとことで言うと、毎回の単語小テストに「今週の語」だけでなく「先週の語」「数週間前の語」も混ぜて、同じ語を間をあけて何度か出すしくみです。
同じ回数だけ練習するなら、続けて一気にやるより、間をあけてやる方が長く覚えていられる――これを間隔効果(spacing effect)といいます 1。ふつうの単語テストは「習った翌日に1回」で終わりがちですが、この方法では、同じ語を次の時間・1週間後・数週間後にもう一度出し、思い出す機会そのものも増やします。
植木の水やりのようなものです。1日にバケツ1杯をまとめてかけても、土にしみこまずに流れてしまいます。それより、日をあけて何度かに分けてやる方が根づきます。大事なのは「一度にたくさん」ではなく「間をあけて何度も」という点です。
似た活動とのちがい
思い出して答える練習(想起練習)という点では、どれも同じ仲間です。ちがいは、同じ語を「間をあけて何度か」出すかどうかです。間隔小テストは、想起練習を時間をあけてくり返す方法です。
| ふつうの単語テスト | 間隔小テスト | 想起クイズ(1回だけ行う例) | |
|---|---|---|---|
| 出す語 | 今週(前回)の語だけ | 今週の語+先週の語+数週間前の語 | 前回の語を白紙に思い出して書く |
| 同じ語が出る回数 | ふつう1回 | 間をあけて3回ほど | 授業のはじめに1回 |
| まちがえた語 | そのままになりやすい | 翌週のリストに戻して、また出す | その場で確かめる |
やり方を3ステップで
- 混ぜて出す:10問を「今週5問+先週3問+3〜4週間前2問」にする。
- 思い出して書く:日本語→英語を中心に3分で解き、その場で答え合わせ。
- 戻す:まちがえた語を書き出して練習し、まちがいの多かった語を翌週の出題リストに戻す。
授業の流れ(分ごと)
| 時間 | 先生 | 生徒 |
|---|---|---|
| 0:00〜0:30 | テスト用紙を配る(一人ずつ並びの違う版でも) | 名前を書く |
| 0:30〜3:30 | 「今週5問+前の語5問」とだけ伝え、タイマー3分 | 日本語→英語を書く |
| 3:30〜4:30 | 答えを読み上げる(または投影)。自己採点か、隣と交換して採点 | 採点 |
| 4:30〜5:00 | まちがいの多かった語を確認し、メモ(挙手は任意、または答案の回収で) | まちがえた語を下の欄に書き写す |
| 授業後 | まちがいの多かった語を翌週のリストに戻す | 家庭学習で練習 |

- 1回の小テストを10問にする。 内訳は「今週の語 5問+先週の語 3問+3〜4週間前の語 2問」。ワークシートは A・B・C の3つに分けてあります。
- 出題リストを3列で管理する。 Excel やノートに「初出の日」「2回目」「3回目」の列をつくり、出したら日付を入れます。先生の準備はこの表を見て10語選ぶだけ。
- 形式は「日本語→英語」中心に。 英語を自分で書けるようにすることが目標なので、書く・言う形式を多めにします(選択式も思い出す練習にはなりますが、手がかりが多い形式です)。授業で習った目標語を答える問題だと伝え、意味の合う別解は認めます(〜に参加する:take part in / participate in + 行事・活動、join + 団体・人)。短い例文の空所補充を混ぜるのも手です。
- 時間は3分。 テンポよく取り組み、出てこない語はいったん飛ばして、答え合わせのあとに覚え直します。
- その場で答え合わせ。 自己採点か、隣と交換して1分で採点。先生は答えを読み上げるか投影します。まちがいを人に見られたくない生徒もいるので、交換するかどうかは選べるようにします。
- まちがえた語を書き写させる。 ワークシート下の欄に書き、各自で練習します。クラスでまちがいの多かった語は、次の週にもう一度リストに戻します。
- 定期テスト前の「総まとめテスト」は、新しい語を出さない。 それまでに3回出した語だけで作ると、生徒は「くり返し出る=大事」と学びます。
中学向け:くり返し出したい基本語(例)
- 決める decide / 2. 説明する explain / 3. 経験 experience / 4. 便利な convenient / 5. 人気のある popular / 6. 参加する take part in(participate in)/ 7. 〜を楽しみにする look forward to / 8. 〜をあきらめる give up / 9. 環境 environment / 10. 交通 transportation
高校向け(例) 11. 減らす reduce / 12. 影響 influence / 13. 〜に頼る depend on / 14. 特に especially / 15. 解決する solve / 16. 必要な necessary
出題スケジュールの例(同じ語を3回) 17. 1回目:習った次の時間 → 2回目:1週間後 → 3回目:3〜4週間後 18. 定期テスト前:3回出した語だけの総まとめ
- 小学校:テストにせず、絵カードの「ぱっと見て言う」活動で、先月の単元の語を1〜2枚混ぜるだけでも同じ考え方です。
- 中学:教科書の新出語に加えて、前の学年の基本語を毎回1問だけ入れると、学年をまたいだ復習になります。
- 高校:単語集の範囲テストに「前回範囲から2割」を混ぜるだけで導入できます。
- 大人数クラス:採点は自己採点か生徒どうしで。先生は答案を回収するか匿名フォームで「まちがいの多かった語」を集め、翌週のリストに戻します。
- 苦手な生徒が多いクラス:B・C を「英語→日本語」にしてハードルを下げ、慣れてきたら日本語→英語に戻します。
- オンライン・タブレット:フォームの小テストで、問題をランダムに並べ、前に出した語の一覧から毎回数問を自動で混ぜます。
- 知識・技能:成績に入れる場合は、A(今週の語)の得点だけを使い、B・C は練習として扱う方法があります。B・C の点を入れるなら、事前に「前の語も出る」と予告しておきます。
- 主体的に学習に取り組む態度:書き写しや翌週の正答は、主に知識・技能と、次の指導に生かす評価(形成的な評価)の資料です。態度を見るなら、まちがえた原因をふり返り(つづり?意味?)、練習のしかたを自分で選び直しているか、といった調整のようすを、ふり返りの記述などいくつかの場面で見ます。
下の表は、生徒の自己チェックと先生の指導のための目安です。
| 見るところ | よくできている | できている | 手助けが必要 |
|---|---|---|---|
| 前の語(B・C)の想起 | ほぼ書ける | 半分くらい書ける | ほとんど書けない(間隔や形式を調整し、再学習の時間をとる) |
| まちがえた語への対応 | 原因を書き、練習方法を変えて翌週に正答 | 書き写して練習している | 何を練習するか先生と一緒に決める |
- 過去の語を出すと平均点が下がって生徒が落ちこんだら → 時間がたって思い出しにくくなるのは自然なことで、思い出そうとすること自体が練習になる、と説明します。点が極端に低いときは、間隔を短くする・形式をやさしくする・再学習の時間をとるなど調整します。成績には今週分だけ入れる方法もあります。
- 選択式ばかりになっていたら → 選択式も思い出す練習になりますが、手がかりが多いので、日本語から英語を自分で書く・言う練習にはなりにくいことがあります。英語を実際に書けることが目標なら、答え合わせつきの書く・言う形式も混ぜます(半分くらいが筆者の目安)。
- まちがえた語がそのまま放置されていたら → 翌週の出題リストに必ず戻します。リスト管理の表に「戻し」の印をつけるだけで十分です。
- 先生の準備が続かなくなったら → 10語のうち5語は前のテストの使い回しでよい、と割り切ります。ツールを使って、前に出した語の一覧から自動で混ぜるのも手です。
- 生徒が「前の語は範囲外」と不満を言ったら → 年度のはじめに「単語テストには前の語も出る」とルールを宣言しておきます。
同じ回数だけ練習するなら、続けて一気にやるより間をあけてやる方が長く覚えていられる――これが間隔効果(spacing effect)です。317の実験をまとめた大規模なメタ分析では、覚えておきたい期間が長いほど、練習と練習のあいだの最適な間隔も長くなることがわかりました 1。定期テストや入試まで覚えておきたいなら、翌日の確認1回だけで終えず、そのあとも間をあけて思い出す機会をつくる必要があります。
第二言語の学習に限ったメタ分析(48実験・3,411人)でも、間隔をあけた練習は中〜大の効果がありました。短い間隔は直後のテストでは長い間隔と同じくらい効きましたが、時間がたってからのテストでは長い間隔の方が上回りました。間隔を「少しずつ広げる」方式と「同じ間隔」方式は、統計的にはほぼ同じでした 2。
日本の大学生128人が英単語を学んだ実験でも、間隔を少しずつ広げる方式にはわずかな利点しかなく、むしろ間隔をあけるかどうかの方が大きな差を生みました 3。
このページの小テストは、間をあけるだけでなく、同じ語を出す回数(思い出す機会)も1回から3回に増やしています。ですから期待できる効果は、間隔・くり返しの回数・思い出す練習の組み合わせによるものです(上の研究の多くは、練習の回数をそろえて間隔だけを比べています)。また「3回」は導入の例で、最適な間隔は、覚えておきたい期間や学習の対象、練習の条件によって変わります 12。語ごとの出し方は、実際の正答のようすを見て調整します(筆者の提案)。細かい「1日後・3日後・7日後…」の完璧なスケジュールにこだわらず、まず間をあけてもう一度出し、正答のようすや定期テストまでの期間に合わせて、その後も出し続けましょう。
❓ よくある質問
Q. 間隔効果とは何ですか?
同じ回数だけ練習するなら、続けて一気にやるより、間をあけてやる方が長く覚えていられる、という現象です。317の実験をまとめたメタ分析では、覚えておきたい期間が長いほど、練習のあいだの最適な間隔も長くなることがわかりました 1。
Q. 間隔効果を生かした単語テストは、どう作りますか?
1回10問を「今週の語5問+先週の語3問+3〜4週間前の語2問」にします。出題リストに「初出の日」「2回目」「3回目」の列をつくり、出したら日付を入れるだけで管理できます。形式は、選ぶより思い出す「日本語→英語」中心にします。
Q. 間隔は「1日後・3日後・7日後」のように広げないといけませんか?
その必要はありません。第二言語のメタ分析では、間隔を少しずつ広げる方式と同じ間隔の方式は、統計的にはほぼ同じでした 2。日本の大学生128人の実験でも、差を生んだのは間隔をあけるかどうかの方でした 3。
Q. 前の語を出すと平均点が下がり、生徒が落ちこみます。
時間がたって思い出しにくくなるのは自然なことで、思い出そうとすること自体が練習になる、と説明します。点が極端に低いときは、間隔や形式を調整し、再学習の時間をとります。成績に入れる場合は今週の語の得点だけを使い、前の語は練習として扱う方法もあります。年度のはじめに「単語テストには前の語も出る」と宣言しておきます。
Q. 毎週の準備が大変で続きません。
10語のうち5語は前のテストの使い回しでよい、と割り切ります。採点は自己採点か生徒どうしで行い、先生はまちがいの多かった語を答案やフォームで集めてメモし、翌週のリストに戻すだけにします。
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📑 出典(3件)
本文の上付き数字に対応。✔ は DOI / ISBN / 公式ページを書誌データベースと機械照合した印です。
- Cepeda, N. J., Pashler, H., Vul, E., Wixted, J. T., & Rohrer, D. (2006). Distributed practice in verbal recall tasks: A review and quantitative synthesis. Psychological Bulletin, 132(3), 354-380. doi:10.1037/0033-2909.132.3.354 ✔ DOI照合済分散学習(間をあけた復習)の効果を心理学の317実験でまとめたメタ分析
- Kim, S. K., & Webb, S. (2022). The effects of spaced practice on second language learning: A meta-analysis. Language Learning, 72(1), 269-319. doi:10.1111/lang.12479 ✔ DOI照合済間をあけて練習する「分散学習」の第二言語での効果をまとめたメタ分析(48実験・3,411人)
- Nakata, T. (2015). Effects of expanding and equal spacing on second language vocabulary learning: Does gradually increasing spacing increase vocabulary learning?. Studies in Second Language Acquisition, 37(4), 677-711. doi:10.1017/S0272263114000825 ✔ DOI照合済日本の大学生128人の単語学習。間隔を少しずつ広げる方式がわずかに有利、間隔をあけること自体の効果は大きい
最終更新 2026-10-18 ・ 原田英語 まちがいのご指摘はこちら





