歌とチャンツの使い方 ― 「歌って終わり」にしない5ステップ
歌やチャンツは、英語のリズムと決まった表現を丸ごと覚えるのにうってつけ。ただし歌えるようになっても、その語を自分で使えるとは限りません。歌のあとに「使う」1ステップを足しましょう。
- ⏱ 時間
- 5-10分
- 🧰 準備
- 少し
- 👥 形態
- 全体→ペア
- 🎯 技能
- 小学校・リスニング・発音・語彙
- 📶 CEFR
- Pre-A1-A1

- 英語のリズム・音のつながりと、決まった表現をかたまりで覚える。
- 歌で覚えた表現を、友だちとのやり取りで実際に使う。
- 歌の一部を自分のことばに替えて、「自分のこと」として言う。
歌とチャンツってなに?
ひとことで言うと、メロディーのある「歌」や、手拍子などのリズムに乗せて決まった表現をくり返し言う「チャンツ」で、英語の音・リズムと表現をかたまりで覚える活動です。
チャンツ(chant)は、メロディーはなく、リズムに合わせて言葉を唱えるものです("What do you like? What do you like? I like apples.")。このページでは、歌って終わりにせず、歌の表現を友だちとのやり取りで使うところ、さらに歌詞の一部を自分のことばに入れかえるところまで進めます。
CM ソングのようなものです。何度も聞くうちに、フレーズが丸ごと口から出てくるようになります。でも、CM ソングを歌えても、その言葉を自分の会話で使えるとは限りません。だから、歌で覚えたかたまりを、自分のことを話す場面で使ってみる一歩が大事になります。
似た活動とのちがい
| 歌 | チャンツ | リズム・クラップ | |
|---|---|---|---|
| メロディー | ある | ない(リズムだけ) | ない(手拍子) |
| ねらいの中心 | 表現をかたまりで覚える・楽しむ | 決まった表現をリズムで言う | 強く読む語と弱く読む語のちがいをつかむ |
| このページでの使い方 | サビなど短い部分を使う | 表現を入れかえてクラスのチャンツを作る | 別の活動ページで扱う |
やり方を3ステップで
このページの5ステップ(聞く→まねる→歌う→使う→入れかえる)を、大きく3つにまとめると次のとおりです。
- 聞いて、まねる(手順1・2):絵や動作を見せながら聞かせ、1フレーズずつ手拍子つきでまねさせる。
- 言う・歌う(手順3):全員でジェスチャーつきで言う(歌う)。
- 使う・入れかえる(手順4・5):歌の表現でペアのやり取りをし、歌詞の一部を自分のことばに替えてクラスのチャンツにする。
授業の流れ(分ごと)
| 時間 | 先生 | 子ども |
|---|---|---|
| 0:00〜1:00 | 絵を見せながらチャンツ(歌)を通して聞かせる | 聞く |
| 1:00〜3:00 | 1フレーズずつ止めて、手拍子つきでくり返させる | まねして言う |
| 3:00〜4:00 | 全員でジェスチャーつきで言う(歌う) | 言う・動く |
| 4:00〜7:00 | "What do you like?" をペアで聞き合う | やり取り・ワークシートに記入 |
| 7:00〜10:00 | 自分の行を作らせ、何人かを入れてもう一度全員で | 自分の行を言う |

- 聞く(1回目):絵や動作を見せながら、歌(チャンツ)を通して聞かせます。歌詞はまだ見せません。
- まねる:1フレーズずつ止めて、先生のあとについて言います(歌わずにリズムだけでOK)。手拍子で強く読むところ(What do you like?)を示します。
- 歌う:全員で歌います。動作(ジェスチャー)をつけると覚えやすくなります。毎時間の最初の2分にくり返し入れてもよいでしょう。
- 使う:歌の表現でペアのやり取りをします。例:"What do you like?" "I like soccer." を、席の近い3〜4人と聞き合い、ワークシートに書きます。
- 入れかえる:歌の一部を自分のことばに替えて歌う("I like apples." → "I like music.")。何人かの行をつないで、クラスのチャンツを完成させます。
続けるために:次の時間のはじめに 完成したクラスのチャンツを、翌時間のはじめにもう一度全員で言います。
- Monday, Tuesday, Wednesday! Thursday, Friday, Saturday! Sunday comes, and then again — Monday, Tuesday, Wednesday!(そのあと "What day is it today?" "It's __." で、その日の曜日を答える)
- How's the weather? It's sunny, sunny! How's the weather? It's rainy, rainy!
- What do you want? I want a pencil. What do you want? I want a notebook.
- Can you swim? Yes, I can! Can you fly? No, I can't!
- Where is the cat? On the desk! Where is the dog? Under the chair!
- What time is it? It's seven. Wake up! What time is it? It's eight. Go to school!
- When is your birthday? My birthday is in May!
- What's this? It's a pen. What's that? It's a map.
- How are you? I'm happy! How are you? I'm sleepy!
- Do you like cats? Yes, I do! Do you like snakes? No, I don't!
中学:文法チャンツの例 11. go, went, gone / see, saw, seen / eat, ate, eaten 12. He plays, she plays, it plays — every day!
- 小学校:低・中学年は手順1〜3を中心に、高学年は4・5まで。チャンツは教科書の表現をそのままリズムに乗せたものが使いやすいです。
- 中学:文法の決まった形(三単現、過去形、疑問文)をチャンツにして、毎時間のはじめに数分くり返す。不規則動詞の変化を唱えるのも定番です。
- 高校:洋楽の歌詞から、仮定法や時制の文を探すリスニング活動に。歌は1曲まるごとでなく、サビの部分だけでも十分です。
- 大人数クラス:全員で歌うのは大人数ほど盛り上がります。手順4のやり取りは、隣どうし・前後のペアで全員同時に行えば、待つ時間が出ません。
- 苦手な子が多いクラス:手順2をたっぷり。リズムに乗れない子には、先生が1拍ずつ手拍子をそろえて、言う部分を短く区切ります。
- オンライン・タブレット:全員のマイクをオンにすると音がずれるので、歌う場面はミュートで各自歌い、手順4のやり取りはブレイクアウトルームで。
- 知識・技能:英語の強く読む所やリズムの特徴に気づき、慣れ親しんだ表現を使って言えているか(小学校3・4年の外国語活動では数値の評定はつけず、様子を文章で記述します)。
- 思考・判断・表現:チャンツの表現を使って、自分の好きなものを伝え、相手に聞けているか(ワークシートの「ともだちに聞こう」)。
- 主体的に学習に取り組む態度:友だちに自分の好きなものを知ってもらうために、語を選んだり言い直したりしながら伝え合おうとしているか。1回の参加の様子だけでなく、練習のあとの工夫やふりかえりなど、いくつかの場面で見ます。
| 見る点 | よくできている | できている | もう少し |
|---|---|---|---|
| リズム | 強く読む所をそろえて言える | リズムに合わせて言える | 言葉が出てこない |
| やり取り | 相手に応じて語を選び、聞いたり答えたりしてやり取りを続けられる | 問いかけと答えができる | 先生や友だちの助けで、問いかけか答えのどちらかができる |
- 歌うだけで1時間の大半を使っていたら → 歌だけで長い時間を使わず、毎時間のはじめに短くくり返す方法があります(5分前後が筆者の目安。目標や子どもの様子に合わせて調整します)。
- 歌詞の意味がわからないまま歌っていたら → 絵や動作で意味がわかる状態で歌わせましょう。
- 速すぎる歌で、口だけ動かしている子がいたら → ゆっくりのチャンツに切りかえ、1フレーズずつ区切ります。
- やり取りが「I like apples.」ばかりになったら → ことば集(ワークシートの語群)から1つ選ぶ、または絵カードを引いて答える形にします。
- 高学年が恥ずかしがって声が小さくなったら → 全員で歌うより、ペアで交互に1行ずつ言う形にすると声が出やすくなります。
大人60人が知らない言語(ハンガリー語)のフレーズを、①ふつうに話す、②リズムをつけて話す、③歌う、のどれかで聞いてくり返して覚えた実験では、歌ったグループが、フレーズを思い出して言うテストで最もよい成績でした 1。歌は、言い回しをそのままの形で記憶するのを助けるようです。
一方、スペインの5歳児25人に、歌を中心に絵や動作も使った30分の授業を3回行った研究では、絵を見て選ぶ理解の語彙は伸びましたが、自分で言える語彙の伸びは統計的に確かめられず、ほとんどの子で伸びませんでした 2。この研究には歌を使わない比べるグループがないので、「歌だから言えるようにならなかった」と言えるわけではありません。
つまり「歌える=使える」ではありません。歌は表現を丸ごと覚え、耳と口をならすのには強い味方ですが 1、著者らも、言える力のためには続けて口頭で練習する時間を足すことを提案しています 2。そこでこのページでは、手順4・5のように歌の表現を自分のこととして使う時間を入れることを提案しています(この手順の効果を調べた研究ではありません)。どちらの研究も規模は小さいので、「歌だけで英語力が伸びる」とは言えない点にも注意しましょう。
❓ よくある質問
Q. 英語の歌やチャンツは、授業でどう使えばいいですか?
絵や動作を見せながら通して聞かせ、1フレーズずつまねさせ、ジェスチャーつきで歌います。そのあと歌の表現でペアのやり取り(What do you like? / I like soccer.)をし、歌の一部を自分のことばに替えて、クラスのチャンツを作ります。
Q. 歌を歌えば、英語が話せるようになりますか?
「歌える=使える」ではありません。スペインの5歳児の研究では、歌を中心にした短い授業で理解の語彙は伸びましたが、言える語彙の有意な伸びは確認されませんでした(比べるグループのない研究です) 2。このページでは、歌の表現を自分のこととして使う時間を、歌のあとに入れることを提案しています。
Q. 英語の歌には、どんな効果がありますか?
大人60人が知らない言語のフレーズを覚えた実験では、歌って覚えたグループが、フレーズを思い出して言うテストで最もよい成績でした 1。歌は言い回しをそのままの形で記憶するのを助けるようです。ただし、規模の小さい研究です。
Q. 歌に、授業時間の大半を使ってしまいます。
歌だけで長い時間を使わず、短い帯活動としてくり返す方法があります。5分前後を目安に、授業の最初の2分に入れてもかまいません(時間は目標や子どもの様子で調整します)。速すぎる歌で口だけ動かしている子がいたら、ゆっくりのチャンツに切りかえます。
Q. 高学年が恥ずかしがって、声が出ません。
全員で歌うより、ペアで交互に1行ずつ言う形にすると声が出やすくなります。中学なら、三単現や過去形などの決まった形をチャンツにして、毎時間の帯活動にする使い方もあります。
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📑 出典(2件)
本文の上付き数字に対応。✔ は DOI / ISBN / 公式ページを書誌データベースと機械照合した印です。
- Ludke, K. M., Ferreira, F., & Overy, K. (2014). Singing can facilitate foreign language learning. Memory & Cognition, 42(1), 41-52. doi:10.3758/s13421-013-0342-5 ✔ DOI照合済大人60人がハンガリー語のフレーズを、話す・リズムで話す・歌う、のどれかで聞いてくり返す実験。歌った群が言い出すテストで最もよかった
- Coyle, Y., & Gómez Gracia, R. (2014). Using songs to enhance L2 vocabulary acquisition in preschool children. ELT Journal, 68(3), 276-285. doi:10.1093/elt/ccu015 ✔ DOI照合済スペインの5歳児25人。歌を使った3回の授業で、聞いてわかる語彙は伸びたが、言える語彙はほとんど伸びなかった
最終更新 2026-10-18 ・ 原田英語 まちがいのご指摘はこちら






