Simon Says(サイモン・セッズ)― 体で覚えるTPRの定番を授業に
「Simon says, touch your nose!」 Simon says がついたときだけ動く、つかないときは動かない。昔からある遊びを英語の授業で使うと、TPRと共通する「英語の指示に体で反応する」活動が5分でできます。
- ⏱ 時間
- 5分
- 🧰 準備
- なし
- 👥 形態
- 全体
- 🎯 技能
- 小学校・ゲーム・リスニング・帯活動
- 📶 CEFR
- Pre-A1-A1

- 英語の指示を聞いて、意味がわかったことを体の動きで示す。
- 体の部位・動詞・前置詞などを、動作と結びつけて覚える。
- 授業の最初に体を動かして、英語モードに切りかえる。
Simon Says ってなに?
ひとことで言うと、先生の英語の指示に、"Simon says" がついたときだけ体で反応し、ついていないときは動かない、という指示ゲームです。
"Simon says, touch your nose." なら鼻をさわる。"Touch your nose." だけなら動かない。英語圏で昔から遊ばれている遊びですが、英語の授業で使うと、TPR(Total Physical Response:全身反応教授法)と共通する、聞いた指示に体で反応する活動になります(Simon Says には、ひっかけを聞き分けて動きを止めるゲームの要素もあります)。言葉で答えなくても、動きを見れば「わかったかどうか」が先生にも本人にも見えます。
「だるまさんがころんだ」の"ことば版"です。鬼の言葉をよく聞いていないと、つい動いてしまう。ここで大事なのはひっかけの部分ではなく、指示の中身を聞き取って体で表すことです。ひっかけは、英語をよく聞かせるためのスパイスです。
似た活動とのちがい
| Simon Says | ジェスチャー当てクイズ | キーワードゲーム | |
|---|---|---|---|
| だれが動く? | 聞いた全員が指示どおりに動く | 1人が動作をして、ほかの人が英語で当てる | 聞いてキーワードのときに消しゴムを取る |
| 英語の役わり | 指示を聞いて理解する | 動作を見て英語で言う | 決まった語を聞き分ける |
| 主に使う語 | 体の部位・動詞・前置詞・命令文 | 動作の動詞 | 単元の単語 |
やり方を3ステップで
- 見せる:使う指示(Touch your head. / Jump.)を動作つきで2回ずつ見せ、まねさせる。
- 聞いて動く:本番は言葉だけで指示し、"Simon says" がついたときだけ動く。ときどきひっかけを入れる。
- 交代する:最後は子どもが Simon 役になり、指示を出す側も体験する。
授業の流れ(分ごと)
| 時間 | 先生 | 子ども |
|---|---|---|
| 0:00〜0:30 | 全員をその場に立たせる(机は動かさない) | 起立 |
| 0:30〜1:30 | 使う指示を動作つきで2回ずつ見せる | まねして動く・言う |
| 1:30〜2:00 | ルール説明(Simon says がついたら動く) | 確認 |
| 2:00〜4:00 | 本番:言葉だけで指示。ひっかけを入れる | 聞いて動く/動かない |
| 4:00〜5:00 | 子どもが Simon 役になって1〜2人 | 指示を言う・聞いて動く |

- 全員起立。 はじめは先生(または ALT)が "Simon" 役です。机は動かさず、自分の席の位置でできる動作にします。ジャンプや回転は、授業の前に安全な間隔をとれている場合だけ入れます。
- 練習ラウンド。 "Touch your nose." "Clap your hands." など、使う指示を動作つきで2回ずつ見せて、まねさせます。子どもにも指示を一緒に言わせます。
- ルール説明。 "Simon says ~" がついたらその動作をする。ついていなかったら動かない。日本語で一度確認してもかまいません。
- 本番。 先生は動作を見せずに言葉だけで指示します。まちがえた人は指を1本上げて「まちがえた」と合図し、すぐ下ろしてそのまま続ける(広さが十分で安全なら「1回転して復帰」でもよい)。
- ひっかけを入れる。 "Simon says, touch your head." のあと、すぐに "Touch your nose." など。テンポを少しずつ上げます。
- 最後に、子どもが Simon 役。 言う側に回ると、指示文を自分で言う練習になります。黒板に指示文の一覧を貼っておくと、何を言えばいいか迷わずにすみます。
体の部位(小学校中学年〜)
- Touch your head / shoulders / knees / toes.
- Point to your eyes / ears / mouth / nose.
動作 3. Jump. / 4. Turn around. / 5. Clap your hands. / 6. Stamp your feet. / 7. Raise your right hand. / 8. Sit down. / Stand up.
色・物(Touch something ~.) 9. Touch something red. / 10. Touch something soft. / 11. Show me your pencil.
中学:前置詞 12. Put your pen on your desk. / 13. Put your eraser under your notebook. / 14. Put your hands on your head. / 15. Hold your book above your head.
高校:条件つき 16. If you have a red pencil, raise your hand. / 17. If you came by bike today, stand up. / 18. If you like summer better than winter, clap twice.
- 小学校:体の部位(head, shoulders)→動作(jump, sit down)→色や物(Touch something red.)と、単元に合わせて語を替えます。座らせずに「まちがえたら指を1本上げて続ける」にすると全員が最後まで参加できます。
- 中学:前置詞(Put your pen on / under / in your desk.)や命令文の導入に。動作を通して、前置詞や命令文の意味を理解しやすくなります。否定の命令文(Don't ~)は、従っても「何もしない」ので理解したかが動作に表れず、このゲームには向きません。動作の途中で Stop. / Don't clap. と止める別の練習で扱います。
- 高校:ウォームアップとして、"Simon says, if you are wearing something blue, clap twice." のように条件つきにすると、聞く情報が増えて難しくなります。
- 大人数クラス:座席のまま、上半身の動作だけでできる指示にしぼります。まちがえた子が座って抜ける方式より「まちがえたら1点減点」の方が、全員が最後まで聞いて動き続けられます。
- 苦手な子が多いクラス:本番でも最初の数回は動作つきで指示し、少しずつ言葉だけに移します。指示の数は4〜5種類に。
- オンライン・タブレット:カメラの前でできる動作(Touch your ear. Show me something blue.)に。画面に映る範囲でできる指示を選びます。
小学校3・4年の外国語活動では評定を行いません。指導要録の「外国語活動の記録」には、観点を踏まえて、身に付いた力を文章で端的に記述します。下は観点ごとの見どころの例です。
- 知識・技能(聞くこと):既習の指示を聞いて、意味に合う動作ができているか。
- 知識・技能(話す):Simon 役で、指示をはっきり言えているか。
- 思考・判断・表現:Simon 役で、相手が理解して動けるように、既習の語句や命令の表現を選び、速さ・声の大きさ・言い方を工夫して伝えているか(安全な指示を選ぶことは、評価ではなく活動上の約束として扱います)。
- 主体的に学習に取り組む態度:聞き取れなかった指示をふり返り、語や動作を確かめながら、次は正しく反応しようとしているか。5分の帯活動1回だけでは評価の材料にせず、何回かの様子とふり返りをあわせて見ます。
| 見る点 | よくできている | できている | もう少し |
|---|---|---|---|
| 聞いて動く | 言葉だけで正しく反応できる | 一部の語や、言い直しがあれば反応できる | 動作のお手本が必要 |
| Simon 役 | はっきり指示を言える | 一覧を見ながら言える | 言えない |
周りをまねて動けても、聞き取れた証拠にはなりません。聞く力を確かめたいときは、少人数や1人ずつで指示を出す、着席したまま目を閉じて指さすなど安全な動作に限った指示にする、複数の絵から選ばせる、などで見ます。ひっかけにかかるかどうかには、英語力だけでなく「つい動いてしまう」反射やゲーム慣れも影響するので、参考程度にします。
- 先生が動作もいっしょに見せてしまっていたら → 本番では言葉だけで。動作を見せると、英語を十分に聞かず、動作をまねするだけでも正しく動けてしまいます。
- 脱落した子が見ているだけになったら → 座った子を「審判」にしたり、指を1本上げてすぐ復活できるルールにしたりします。
- いつも同じ指示になっていたら → 単元の語に合わせて指示を入れ替えないと、学習につながりません。例の一覧から毎回2〜3個入れ替えます。
- 盛り上がりすぎて危ないと感じたら → ジャンプや回転をやめ、上半身だけの動作にします。
- Simon 役をやりたがらない子が多かったら → ペアで Simon 役をする、指示文カードを読み上げるだけでよい、とハードルを下げます。
Simon Says は昔からある遊びですが、英語の授業で使うと、TPR(Total Physical Response:全身反応教授法)と共通する「聞いた指示に体で反応する」活動になります。TPRを提唱したアメリカの心理学者 James J. Asher 氏は、日本語やロシア語を使った大人・子どもの5つの小さな予備研究をまとめました。そこでは、覚えたかを確かめるテストで、英語に訳して書かせるより、指示に体で反応させた方が成績がよいという結果がくり返し出ました。ただし、テストでの答え方を同じにすると、練習中に自分で動いた子と見ていただけの子に差がなかった研究や、動作で答えるのと英語で口頭で答えるのとで差がなかった研究もあり、Asher 氏自身も「練習中に動くこと」の効果ははっきりしないと書いています 1。
その後の記憶研究でも、語をジェスチャーといっしょに覚えると、ジェスチャーなしより記憶に残りやすいことが報告されています。実験用に作った外国語ふうの言語の文を6日間学んだ実験では、ジェスチャーつきで覚えた語の方がよく覚えられていて、新しい文を作るときにも使われやすくなっていました 2。こうした研究をまとめた総説では、ジェスチャーが語の記憶を助けるという結果が複数の行動研究で見られるとされています 3。
TPRは「小さい子ども向けのお遊び」と思われがちですが、Asher 氏の初期研究には大人の学習者も含まれていました 1。中学・高校の文法導入でも、動作で意味がわかる場面なら十分に使えます。
❓ よくある質問
Q. Simon Says のルールを教えてください。
先生が Simon 役になり、英語で指示を出します。"Simon says ~" がついた指示のときだけその動作をし、ついていなければ動きません。まちがえた人は指を1本上げてそのまま続けるなど、全員が最後まで参加できるルールにします。最後は子どもが Simon 役になります。
Q. 先生も、動作をいっしょに見せたほうがいいですか?
練習ラウンドでは動作つきで2回ずつ見せますが、本番では言葉だけで指示します。動作を見せると、英語を十分に聞かず、動作をまねするだけでも正しく動けてしまうからです。苦手な子が多いクラスでは、最初の数回だけ動作つきにして、少しずつ言葉だけに移します。
Q. Simon Says は、中学生にも使えますか?
使えます。前置詞(Put your pen on / under / in your desk.)や、命令文・否定の命令文(Don't ~)の導入に向いています。高校のウォームアップなら、"Simon says, if you are wearing something blue, clap twice." のように条件つきにすると難しくなります。
Q. 体を動かして覚えると、効果がありますか?
TPRを提唱したアメリカの心理学者 James J. Asher 氏の初期の予備研究では、覚えたかを確かめるテストで、訳を書かせるより体で反応させた方が成績がよいという結果が出ました。ただし練習中に動くこと自体の効果ははっきりしていません 1。ジェスチャーといっしょに覚えた語の方が記憶に残りやすかったという実験もあります 2。
Q. 40人の教室で、立って動くのが難しいです。
座席のまま、上半身の動作だけでできる指示にしぼります。脱落制より「まちがえたら1点減点」の方が、全員の練習量を保てます。盛り上がりすぎて危ないと感じたら、ジャンプや回転をやめます。
🎁 玉手箱で使えるツール
原田英語の「英語の先生の玉手箱」の無料ツール。登録なしで授業にそのまま使えます。
📑 出典(3件)
本文の上付き数字に対応。✔ は DOI / ISBN / 公式ページを書誌データベースと機械照合した印です。
- Asher, J. J. (1966). The learning strategy of the total physical response: A review. The Modern Language Journal, 50(2), 79-84. doi:10.2307/323182 ✔ DOI照合済TPR(全身反応)の初期のパイロット研究5つのまとめ。命令を聞いて体で反応すると聞く力の習得が進むと報告
- Macedonia, M., & Knösche, T. R. (2011). Body in mind: How gestures empower foreign language learning. Mind, Brain, and Education, 5(4), 196-211. doi:10.1111/j.1751-228X.2011.01129.x ✔ DOI照合済ジェスチャーをつけて覚えた外国語の語は、つけなかった語よりよく覚えていて、新しい文でも使われやすかった
- Macedonia, M. (2014). Bringing back the body into the mind: Gestures enhance word learning in foreign language. Frontiers in Psychology, 5, 1467. doi:10.3389/fpsyg.2014.01467 ✔ DOI照合済ジェスチャーが外国語の語の記憶を助けるという行動研究の総説
最終更新 2026-10-18 ・ 原田英語 まちがいのご指摘はこちら





