消しゴムを取り合うキーワードゲーム ― 小学校で「聞く」を集中させる定番
ペアの真ん中に消しゴム1つ。先生の英語をくり返し、キーワードが聞こえたらサッと取る。子どもが英語の音に耳をすます定番ゲームです。単元の絵カードがあれば、ほかの準備はいりません。
- ⏱ 時間
- 5-10分
- 🧰 準備
- 少し
- 👥 形態
- ペア(全体)
- 🎯 技能
- 小学校・ゲーム・リスニング・語彙
- 📶 CEFR
- Pre-A1-A1

- 単元の単語の音を、楽しみながら何度も聞かせ、まねして言わせる。
- 「聞きのがさない」集中を引き出し、単語の音をほかの語と聞き分けて、まねして言う。音と意味(絵)の結びつきは、ゲームのあとに「先生が言った単語の絵を指す」短い確認で確かめる。
- プリントを使わず(単元の絵カードと消しゴムだけで)、授業の最初や最後の5分で全員を英語に向かわせる。
キーワードゲームってなに?
ひとことで言うと、先生の言う英単語をペアでまねして言い、あらかじめ決めた「キーワード」が聞こえたときだけ、まねせずに真ん中の消しゴムを取るゲームです。
電車の中で、自分の降りる駅のアナウンスを待っている人です。いくつもの駅名が流れる中で、自分の駅の名前だけに耳をすませます。このゲームで大事なのは、実は「待っている間」。キーワードが出るまでに、たくさんの単語を聞いてまねして言うことが、活動の中心です。
英語かるたとのちがい
| 英語かるた | キーワードゲーム | |
|---|---|---|
| 取るもの | 聞いた語の絵札 | 真ん中の消しゴム1つ |
| 聞いたら | 札を探して取る | ふだんはまねして言い、キーワードのときだけ取る |
| 準備 | 1組ごとに絵札が必要 | 消しゴムと、黒板に貼る絵カード1セット(教科書の絵や板書でも代用できる) |
やり方を3ステップで
- 準備:ペアで向かい合い、真ん中に消しゴムを1つ。単語を全員で練習し、キーワードを1つ決める。
- まねする:先生が単語を1つずつ言い、子どもは手を頭にのせたまま、まねして言う。
- 取る:キーワードが聞こえたら、まねせずに消しゴムを取る。キーワードやペアを替えてくり返す。
授業の流れ(分ごと)
| 時間 | 先生 | 子ども |
|---|---|---|
| 0:00〜1:00 | ペアで向かい合わせ、消しゴムを真ん中に置かせる | 机を向かい合わせる |
| 1:00〜2:30 | 絵カードを見せながら単語を2回ずつ言う | くり返して言う |
| 2:30〜3:00 | キーワードを決め、黒板のカードに丸 | キーワードを確認 |
| 3:00〜5:00 | 1回戦:単語を1つずつ言う。3〜6語じらしてキーワード | くり返す/キーワードで取る |
| 5:00〜8:00 | 2〜3回戦:キーワードやペアを替える。文の中にキーワード | 同上 |
| 8:00〜10:00 | 最後に全部の単語を全員で言い、先生が言った単語の絵を指させて確かめる | 言う・黒板の絵を指す |

- ペアで向かい合い、真ん中に消しゴムを1つ置く。 両手は頭の上か、ひざの上。机をつけられない教室では、2人の机の間にいすを1つ置いてその上に。
- 単語を全員で練習する。 絵カードを黒板に貼り、単元の単語を先生→子どもの順で2回ずつ。6〜8語くらいが目安です(はじめは2〜3語からでもよい)。
- キーワードを決める。 例:"apple"。黒板の apple のカードに丸をつけます。
- 先生が単語を1つずつ言い、子どもはくり返す。 "banana" → "banana"、"melon" → "melon"…。くり返すときは手を頭に戻します。
- キーワードが聞こえたら、くり返さずに消しゴムを取る。 先に取った人が1ポイント。同時なら じゃんけん。
- 3〜4回戦。 キーワードを変えたり、ペアを替えたり(前後の席と交代)します。
- ひっかけと文。 慣れたら、キーワードとよく似た音の別の語を混ぜるひっかけ(キーワードが three なら tree、right なら light。似た音の語では取らない)や、"I like apples." のように文の中にキーワードを入れて見つける発展に進みます。文の中で使うときは、apple と apples を同じキーワードとして扱う(どちらでも取ってよい)と先に決めておきます。
- 最後に全部の単語を全員で言い、意味を確かめる。 先生が "Where is the melon?" のように単語を言い、子どもは黒板の絵を指します(速さは競わず、全員が指すまで待つ)。ゲーム中は音を聞き分けてまねするだけなので、意味(絵)と結びついているかは、この確認で見ます。勝ち負けでなく「何回聞いて言ったか」をほめて終わります。
単元別キーワードセット(6〜8語)
- 果物:apple, banana, grapes, melon, peach, orange, strawberry
- 動物:dog, cat, rabbit, lion, panda, monkey, elephant
- 色:red, blue, yellow, green, pink, black, white
- 曜日:Monday, Tuesday, Wednesday, Thursday, Friday
- 教科:English, math, science, music, P.E., Japanese
- 町の施設:park, station, library, hospital, school, zoo
- 動作:run, jump, swim, dance, sing, cook
音が似ていてひっかけに使える組み合わせ 8. three / tree(/θ/–/t/)/ 9. right / light(/r/–/l/)/ 10. sea / she(/s/–/ʃ/)/ 11. sink / think(/s/–/θ/)
文の中にキーワードを入れる例 12. I like apples. / 13. Do you have a pencil? / 14. I want to go to the zoo. / 15. I can swim.
- 小学校:最初は2〜3語から。慣れたらひっかけや文の中のキーワードに進みます。高学年は、子どもが先生役になって単語を言う番を作ります。
- 中学:単語の代わりに文で。「規則動詞の過去形が入った文が聞こえたら取る」のように文法の形をキーワードにすると、音への気づきの練習になります。過去形の語尾は /t/・/d/・/ɪd/ と音が変わるので、まずは聞き取りやすい /ɪd/(wanted, needed, visited)の語だけで始め、1回に1つの型にしぼります。
- 高校(参考):導入の帯活動として、似た音の語(right / light, three / tree)でキーワードにすると、発音の聞き分け練習にもなります。
- 大人数クラス:ペア全員が同時にできるので、40人程度でも全員が参加しやすい活動です。ただし机の間がせまい・接触が苦手な子がいるなどのときは、物を取り合わない反応(手をたたく・カードを上げる)に替えます。取り合う場合は「取るのは片手だけ」とルールを決めます。
- 苦手な子が多いクラス:キーワードを言う前に先生が一瞬止まる、キーワードのカードを指さしてから言う、など手がかりを増やします。
- オンライン・タブレット:消しゴムの代わりに、キーワードが聞こえたら手を挙げる・画面に向かって手のひらを見せる、にします。
ゲームの勝ち負けや、取る速さは評価しません(速さは聞き取りの力だけでなく、体の動きの速さや相手との関係にも左右されるため)。ここで見るのは授業中の形成的な評価(様子を見て次の指導に生かすもの)で、評価の記録に使うときは、別の場面で確かめます。
- 知識・技能:単語を聞いて、絵と結びつけられているか。記録に残すなら、ゲームのあとに「先生が言った単語の絵を指す」「3枚の絵から選ぶ」など、速さを競わない形で確かめます。
- 主体的に学習に取り組む態度:聞き取れなかったあとに、先生の口元や絵カードを手がかりにして聞き直そうとしているか、次の回で聞き方を変えようとしているか(声の大きさや、その場の集中のようすだけでは評価しない。ここでの様子は次の指導に生かし、記録に残すのは、目的のある聞く・伝え合う活動の中で何回かにわたって見たときにする)。
| 見る点 | よくできている | できている | もう少し |
|---|---|---|---|
| 音と意味(ゲーム後の絵を指す確認で見る。十分に待つ) | 言われた単語の絵を、どの語でも正しく指せる | 多くの語で絵を指せる | 絵カードを見ても迷う語が多い |
| まねして言う | 単語をまねして言える(声の大きさは問わない) | 一部の語をまねして言える | まだ言うのがむずかしい(聞くことに集中する段階) |
- キーワードばかり意識して、くり返さなくなったら → いったん止めて全員で言い直します。「くり返せた人が取っていい」とルールにしても。
- すぐにキーワードを言ってしまい、聞く量が少なかったら → 3〜6語くらいじらしてから言います。
- 勝ち負けで雰囲気が悪くなったら → ペアをこまめに替え、ポイントは数えなくても楽しめます。
- 取り合いが激しくて危ないと感じたら → 消しゴムの代わりに「キーワードで手をたたく」「先に頭に手をのせる」に変えます。
- いつも同じ子が勝って、もう一人があきらめたら → ペアを反応の速さが近い子どうしに替える、消しゴムをやめて各自がカードを上げる、2人で正解の回数を合わせて数える協力型にする、などに替えます。
キーワードゲームそのものの効果を調べた研究は見当たらないので、ここでは近い考え方の研究を紹介します。このゲームの中心は、単語の音を聞いて反応することです(ただし研究の活動とちがい、まねして言う段階も含みます)。日本の6〜8歳の子ども36人を対象にした実験では、言葉を言うことを求めない「聞いて動く」インプット型の指導と、言うことを求める産出型の指導を比べたところ、どちらも単語を覚えるのに効果があり、インプット型の方が豊かなやり取りの機会が見られました(一部の子どもが自分から話し出したり意味を確かめたりしましたが、意味の確かめ合いの多くは少数の子に集中していました)。参加者は英語教室で学ぶ子どもたちでした。ただし36人の小規模な研究です 1。
英語を初めて学ぶ6歳の子ども15人が「聞いて動く(listen-and-do)」タスクをくり返した研究でも、単語を言うことを求めない活動だったのに、単語を言えるようにもなり(子どもは自分から積極的に話していました)、複数形の -s の理解も伸びました 2。
ポイント:「言わないと覚えない」と思いがちですが、小規模な研究ながら、低年齢の初学者でも、まずたくさん聞いて体で反応する活動で、言える語彙が育つ可能性が示されています。ただしこれは物を選ぶ「聞いて動く」タスクの研究で、早取りゲームを調べたものではありません 2。ゲームの勝ち負けより、「何度も聞いた」ことが財産です。
❓ よくある質問
Q. キーワードゲームの基本のやり方は?
ペアで向かい合い、真ん中に消しゴムを1つ置きます。単元の単語6〜8語を練習してからキーワードを決め、先生が言う単語をくり返します。キーワードが聞こえたら、くり返さずに消しゴムを取ります。同時ならじゃんけんです。
Q. キーワードはすぐに言ってもいいですか?
すぐに言うと聞く量が少なくなるので、3〜6語くらいじらしてから言います。慣れたら、キーワードとよく似た音の別の語(three に対する tree など)を混ぜるひっかけや、"I like apples." のように文の中からキーワードを見つける発展に進みます(apple と apples を同じキーワードとして扱うかは先に決めておきます)。
Q. 取り合いが激しくて危ないときは?
消しゴムの代わりに「キーワードで手をたたく」「先に頭に手をのせる」に変えます。いつも同じ子が勝つなら、ペアを替える、各自がカードを上げる形にする、2人の正解回数を合わせて数える協力型にする、などに替えます。ペアをこまめに替え、ポイントは数えなくても楽しめます。
Q. 言わせなくても、単語は覚えられますか?
日本の6〜8歳の子どもの実験では、言うことを求めない「聞いて動く」指導でも単語を覚える効果がありました 1。6歳の子どもの研究では、単語を言うことを求めない聞いて動くタスクをくり返すうちに、単語を言えるようにもなりました 2。どちらも小規模な研究です。
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📑 出典(2件)
本文の上付き数字に対応。✔ は DOI / ISBN / 公式ページを書誌データベースと機械照合した印です。
- Shintani, N. (2011). A comparative study of the effects of input-based and production-based instruction on vocabulary acquisition by young EFL learners. Language Teaching Research, 15(2), 137-158. doi:10.1177/1362168810388692 ✔ DOI照合済日本の6〜8歳36人。聞いて動くインプット型と言わせる産出型の語彙指導を比べ、どちらも効果。インプット型の方がやり取りが豊か
- Shintani, N. (2012). Input-based tasks and the acquisition of vocabulary and grammar: A process-product study. Language Teaching Research, 16(2), 253-279. doi:10.1177/1362168811431378 ✔ DOI照合済6歳の初学者15人。聞いて動く(listen-and-do)タスクで、言わせなくても語彙と複数形 -s の理解が伸び、自然なやり取りも生まれた
最終更新 2026-10-18 ・ 原田英語 まちがいのご指摘はこちら





