英語絵本の読み聞かせ ― 「くり返し読む」「ひとこと説明」「子どもを巻きこむ」
英語の絵本を読むとき、ただ最後まで読み通していませんか。同じ本を何度か読む、大事な語にひとこと説明を添える、子どもに問いかける。この3つを意識すると、読み聞かせを語彙の学びにつなげやすくなります。
- ⏱ 時間
- 10-15分
- 🧰 準備
- 少し
- 👥 形態
- 全体
- 🎯 技能
- 小学校・リスニング・語彙・リーディング
- 📶 CEFR
- Pre-A1-A2

- まとまった英語の物語を、絵の助けを借りて「わかった!」と感じながら聞く経験をさせる。
- 物語の中で何度も出てくる語や表現を、自然に覚えさせる。
- 同じ本を数回読むことで、聞くだけから「いっしょに言う」へ進める。
英語絵本の読み聞かせってなに?
ひとことで言うと、読み聞かせは、絵本の絵を見せながら先生が英語で物語を声に出して聞かせる活動です。このページでは、そこに「問いかけで子どもを巻きこむ」「同じ本を何回かに分けて読む」工夫を取り入れる方法を紹介します。
同じ歌を何回か聞いているうちに、サビの部分だけはいっしょに歌えるようになる、あの感じです。1回目は「なんとなくわかった」で十分です。くり返しの多い絵本なら、2回目、3回目と読むうちに "But he is still hungry!" のような部分を子どもが先に言えるようになります。1回で全部わからせようとせず、くり返し部分から参加させることが大事です。
似た活動とのちがい
| 読み聞かせ | 多読 | 教科書の音読 | |
|---|---|---|---|
| 読む人 | 先生 | 子ども自身 | 子ども(声に出す) |
| 子どもがすること | 聞く・絵を見る・問いに答える・いっしょに言う | 自分で選んだ本を読む | 文字を見て声に出す |
| 文字が読めること | 必要ない | 必要 | 必要 |
やり方を3ステップで
- 読む前:表紙を見せて "What can you see?" と聞き、話を予想させる。キーワードを2〜3語、絵カードで紹介する。
- 読みながら:わかりにくい語は、絵を指さしたり動作をしたりしてひとこと説明を添え、"What's next?" と問いかける。
- くり返す:同じ本を次の時間にも読み、くり返し部分で止まって子どもに続きを言わせる。
授業の流れ(分ごと)
| 時間 | 先生 | 子ども |
|---|---|---|
| 0:00〜2:00 | 表紙を見せて "What can you see?"。キーワード2〜3語を絵カードで紹介 | 絵を見て答える・予想する |
| 2:00〜7:00 | 通し読み。わかりにくい語は絵を指さす・動作でひとこと説明 | 聞く・絵を見る |
| 7:00〜9:00 | くり返し部分をもう一度読み、いっしょに言わせる | "But he is still hungry!" |
| 9:00〜12:00 | "Which part did you like?" 好きな場面を指させる | 指さす・単語で言う |
| 12:00〜15:00 | ワークシートに好きな場面の絵(5・6年は単語の書き写しも) | 絵をかく・書き写す |

- 本を選ぶ。 くり返しの多い絵本(同じ文型が何度も出てくるもの)を選びます。1回5分以内で読める長さが目安です。ワークシートのオリジナルのお話(Little Bear Is Hungry)を、先生が絵を描いた紙芝居にして使うこともできます。
- 読む前(2分):表紙を見せて "What can you see?" と問いかけ、話を予想させます。キーワード2〜3語を絵カードで紹介します。
- 1回目(通し読み):子どもを前に集めるか、書画カメラで絵を大きく映します。ゆっくり、表情と声色をつけて読みます。わかりにくい語は、絵を指さしたり動作をしたりしてひとこと説明を添えます。
- 2回目(同じ時間の後半か、次の時間):くり返し部分で止まり、子どもに続きを言わせます("But he is still...?")。
- 3回目(さらに次の時間):ページをめくる前に "What's next?" と予想させたり、登場人物のせりふを子どもに言わせたりします。
- ふり返り:キーワードの絵カードを見せて、物語のどこで出てきたかを思い出させます。ワークシートに好きな場面を描かせます。
- 発展(高学年):くり返し表現を使って、自分のページを1枚作る("I want a ___." を自分の好きな食べ物で)。
問いかけ(読む前・読みながら)
- What can you see on the cover?
- Who is this? / What animal is this?
- What color is it?
- How many apples? Let's count!
- What's next? Can you guess?
- Is he happy or sad?
ひとこと説明のしかた(絵・動作で) 7. hungry → お腹をさすって "I'm hungry." 8. full → お腹をふくらませて "I'm full." 9. tired → あくびをして "I'm tired." 10. big / small → 手で大きさを示す
読み終わったあとの問いかけ 11. Which part did you like? 12. What do you want when you're hungry? 13. What did Little Bear eat? (apple, banana, fish)
- 小学校:中学年(外国語活動)は、絵を手がかりに聞いて話のおおよそをつかみ、くり返し表現を声に出してまねしたり、問いかけに簡単に答えたりするところまで(文字を書く活動はしません)。高学年は、物語のくり返し表現を使って、自分のページを1枚作る活動につなげます。
- 中学:中1の導入期に、教科書の文型が何度も出てくる絵本を選ぶと、文法の自然なインプットになります。教科書本文の読み聞かせにも同じ手順が使えます。
- 高校:英語が苦手な生徒の多いクラスで、短い絵本を「やさしい英語をたくさん聞く」経験として。多読 の入り口にもなります。
- 大人数クラス:絵本を書画カメラで大きく映します。問いかけはペアで答えを言い合わせてから数人に聞くと、当てられなかった子も一度は答えを口にできます。
- 苦手な子が多いクラス:1回目は日本語で話のあらすじを1文だけ伝えてから読み始めます。くり返し部分は先生が先に言って、子どもはあとについて言うだけでOK。
- オンライン・タブレット:ページを画面共有し、くり返し部分は全員ミュートのまま各自で声に出して言う(数人ずつ順番にマイクをオンにして言ってもらうのも可)、または反応ボタンで答えさせます。オンライン会議では、全員が同時にマイクをオンにして話すと音声が途切れたり重なったりして聞き取りにくいためです。
1回15分の読み聞かせで3つの観点すべてを記録に残す必要はありません。下は、単元を通して子どもの様子を観察して記録するときの例です。
- 知識・技能:物語のくり返し表現や、キーワードの意味がわかっているか(絵カードを見て場面を思い出せるか)。
- 思考・判断・表現:好きな場面を選び、絵や物語の内容を手がかりに、知っている語や指さしで、どの場面か(できればなぜ好きか)を伝えているか。
- 主体的に学習に取り組む態度:わからない所があっても、絵や知っている語を手がかりに意味を考え、聞き方や伝え方を変えながら物語に関わろうとしているか(くり返し部分をいっしょに言うかどうかは、その様子を見る材料の1つ)。
| 見る点(指導に生かすための観察の例) | よくできている | できている | もう少し |
|---|---|---|---|
| 話の理解 | 食べた物を順番に言えたり並べたりでき、場面とキーワードを結びつけられる | 聞いたキーワードに合う場面の絵を選べる | 話の流れがわからない |
| いっしょに言う | くり返し部分を自分から言える | 先生のあとについて言える | 言わない |
- 1回で全部わからせようとしていたら → 1回目は「だいたいわかった」で十分。同じ本を何度か聞く中で、語を覚えていきます(下の「なぜ効く?」)。
- 日本語訳をはさみすぎていたら → 毎ページ訳すと、英語から意味を推測せず、日本語訳を待つようになる子が出ることがあります。説明は絵と動作を中心に。
- 難しすぎる本を選んでしまったら → 絵を見れば話がわかる本、くり返しの多い本に替えます。途中で止めて別の本にしてもかまいません。
- 後ろの子が絵を見られず集中が切れたら → 子どもを前に集める、書画カメラで映す、のどちらかに。
- 先生の読みが速くなってしまったら → くり返し部分の前で必ず一呼吸おき、子どもの声を待ちます。
教室で物語を読み聞かせた古典的な研究では、物語を聞くこと自体が子どもの語彙習得の大きな源になっていました。先生が語の意味を説明しても、しなくても、語彙の伸びが見られました 1。
くり返し読むことについては、3〜4歳の子ども(母語)に絵本を1対1で読んだ実験があります。同じ本を1回だけ聞くより3回聞く方が、新しい語をよく覚えていました。読みながら絵を指して語を言わせる問いかけを加えると、とくに自分で言える語が増えました 2。
英語を第二言語として学ぶ幼児80人を対象にした研究では、どちらのグループも同じ本を3週間で3回聞き、難しい語にていねいな説明(rich explanation)を添えたグループの方が、説明なしで聞いたグループより難しい語をよく覚えていました。もともとの英語の語彙力や、家庭で本を読む頻度も、覚える量に関係していました 3。この研究の「説明」は、絵を指すだけでなく、意味の説明や言いかえ、身ぶり、別の場面での使い方なども組み合わせたものでした。授業で絵や動作だけの短い説明を添えるのは、その一部を取り入れる工夫で、短い説明だけで同じ効果が出ることを直接確かめた研究ではありません。
子どもを話に巻きこむ「対話的な読み聞かせ」の研究をまとめたメタ分析(31研究・2,049人)では、話し言葉の力に中程度の効果がありました。一方で、研究者が自分で読んだ場合の効果が、ふだんの教室の先生が読む場合には同じように再現されなかったことも報告されています 4。
最後の点は大事です。研究で効果が出た方法でも、教室でそのまま同じ効果が出るとは限りません 4。また、ここで紹介した研究はどれも海外の子ども(多くは幼児)が対象で、日本の小学校の英語の授業で確かめたものではありません。くり返し読む・説明を添える・問いかける、という中身を意識して読むことが、効果に近づく道です。
❓ よくある質問
Q. 読み聞かせに使う英語の絵本は、どう選べばいいですか?
くり返しの多い絵本(同じ文型が何度も出てくるもの)で、1回5分以内で読める長さが目安です。絵を見れば話がわかる本を選び、難しすぎたら途中で止めて別の本に替えてもかまいません。
Q. 読み聞かせの途中で、日本語に訳したほうがいいですか?
毎ページ訳すと、英語から意味を推測せず、日本語訳を待つようになる子が出ることがあります。わかりにくい語は、絵を指さしたり動作をしたりして、ひとこと説明を添えます。苦手な子が多いクラスでは、読む前にあらすじを日本語で1文だけ伝えてから読み始める方法もあります。
Q. 同じ絵本を何回も読むのは意味がありますか?
あると考えられます。3〜4歳の子ども(母語)の実験では、同じ絵本を1回聞くより3回聞く方が新しい語をよく覚え、読みながら語を言わせる問いかけを加えると、自分で言える語がとくに増えました 2。日本の小学校の英語での研究ではありませんが、1回目は「だいたいわかった」で十分、と考えて何度か読みます。
Q. 英語の読み聞かせで語彙は増えますか?
教室で物語を読み聞かせた古典的な研究では、物語を聞くこと自体が語彙習得の大きな源になっていました 1。対話的な読み聞かせのメタ分析でも話し言葉の力に中程度の効果がありましたが、ふだんの教室の先生が読む場合には同じように再現されなかったことも報告されています 4。
Q. 中学校や高校でも英語の絵本は使えますか?
使えます。中1の導入期に教科書の文型が何度も出てくる絵本を選ぶと、文法の自然なインプットになります。高校では英語が苦手な生徒の多いクラスで「やさしい英語をたくさん聞く」経験として、多読の入り口にもなります。
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📑 出典(4件)
本文の上付き数字に対応。✔ は DOI / ISBN / 公式ページを書誌データベースと機械照合した印です。
- Elley, W. B. (1989). Vocabulary acquisition from listening to stories. Reading Research Quarterly, 24(2), 174-187. doi:10.2307/747863 ✔ DOI照合済教室での物語の読み聞かせが子どもの語彙習得の大きな源になることを示した古典的研究
- Sénéchal, M. (1997). The differential effect of storybook reading on preschoolers' acquisition of expressive and receptive vocabulary. Journal of Child Language, 24(1), 123-138. doi:10.1017/S0305000996003005 ✔ DOI照合済3〜4歳児(母語)に絵本を1対1で読んだ実験。1回読むより3回読む方が新しい語をよく覚え、読みながら語を言わせる問いかけは言える語彙(表出語彙)に特に効いた
- Collins, M. F. (2010). ELL preschoolers' English vocabulary acquisition from storybook reading. Early Childhood Research Quarterly, 25(1), 84-97. doi:10.1016/j.ecresq.2009.07.009 ✔ DOI照合済英語を第二言語とする幼児80人。読み聞かせで語の説明(rich explanation)を添えると難しい語をよく覚えた
- Mol, S. E., Bus, A. G., & de Jong, M. T. (2009). Interactive book reading in early education: A tool to stimulate print knowledge as well as oral language. Review of Educational Research, 79(2), 979-1007. doi:10.3102/0034654309332561 ✔ DOI照合済子どもを巻きこむ対話的な読み聞かせのメタ分析(31研究・2,049人)。話し言葉の力に中程度の効果
最終更新 2026-10-18 ・ 原田英語 まちがいのご指摘はこちら





