英作文のピアレビュー ― コメントを「書く側」にも学びがある進め方
友だちの英作文を読んでコメントする。実は、コメントを「もらう」より「書く」側の方が自分の作文が伸びたという研究があります。チェックリストと「ほめる→質問→提案」の型を使えば、40人の教室でも20分ほどで進められます。
- ⏱ 時間
- 15-20分
- 🧰 準備
- 少し
- 👥 形態
- ペア/グループ
- 🎯 技能
- ライティング・リーディング
- 📶 CEFR
- A2-B2

- 読み手の目で友だちの作文を読み、内容と構成についての具体的なコメントを書く。
- コメントを書く過程で、自分の作文を見直す目を育てる。
- もらったコメントを取り入れて書き直すところまでを、1つの流れにする。
ピアレビューってなに?
ひとことで言うと、友だちの英作文を決まった観点で読んでコメントし、書いた人がそのコメントを参考に書き直す活動です。
料理の味見を友だちにしてもらうようなものです。「おいしい!」だけでは次にどうすればいいかわかりません。「ここはもう少し塩があるといいかも」と具体的に言ってもらえると直せます。そして、味をどうするかを最後に決めるのは作った本人です。具体的なコメントと、どれを使うかを書いた人が自分で決めることが大事です。
似た活動とのちがい
| 先生の添削 | ピアレビュー | 協働ライティング | |
|---|---|---|---|
| だれが読む・書く | 先生が読む | 友だちが読む | 2人以上で1つの文章をいっしょに書く |
| 主に見るところ | 文法・語彙も含めて全体 | 内容・構成(チェックリストにそって) | 内容・構成・表現を相談しながら、いっしょに決める |
| 書き直し | 先生の指摘をもとに | コメントをよく考えて、使うかどうかを本人が決める | 書きながら相談して直す(できた文章は全員のもの) |
やり方を3ステップで
- 読む:友だちの作文を2回読む(1回目は楽しんで、2回目はチェックリストを見ながら)。
- コメントする:「ほめる → 質問 → 提案」の順に書く。
- 書き直す:コメントを考えて書き直し、使ったコメント・使わなかったコメントとその理由を Writer's note に書く。
授業の流れ(分ごと)
| 時間 | 先生 | 生徒 |
|---|---|---|
| 0:00〜5:00 | 昨年度の作品(名前を消したもの)でコメントの書き方を実演 | モデルを見る |
| 5:00〜10:00 | 作文を交換させる。「1回目は楽しんで、2回目はチェックリスト」 | 2回読む・チェック |
| 10:00〜15:00 | 机の間を回り、"Good job" だけのコメントには「どこが良かった?」と理由を足すよう声をかける | 「ほめる→質問→提案」を書く |
| 15:00〜18:00 | 返して話す時間 | 書いた人がコメントについて質問 |
| 18:00〜20:00 | 書き直しの宿題と Writer's note(使ったコメント・使わなかったコメントとその理由)の書き方を説明 | 予定を確認 |

- チェックリストを配る(観点は3〜5つ)。 例:①主張が最初にあるか ②理由が2つあるか ③例が具体的か ④つなぎの言葉があるか。文法は「気になる所に下線1か所まで」。
- 先生がモデルを見せる(5分)。 昨年度の作品(名前を消したもの)や先生の作文を投影し、「ほめる→質問→提案」のコメントを実際に書いて見せます。悪い例("Good!" だけ)も見せると違いがわかります。
- 作文を交換して読む(5分)。 1回目は内容を楽しんで、2回目はチェックリストを見ながら読みます。
- コメントを書く(5分)。 型は「ほめる → 質問 → 提案」。"I like your example about ~." "What do you mean by ~?" "Maybe you can add ~."
- 返して、話す(3分)。 書いた人がコメントについて質問できる時間をとります。
- 書き直す(宿題)。 コメントをよく考えて、役に立つものを取り入れます。取り入れなかったコメントがあれば、その理由も書きます(友だちのコメントがいつも正しいとは限らないので、「どれを使うか自分で決める」ことも大事な学習です)。ワークシートの「Writer's note」に1〜2行書いて提出させます。
意見文のお題(中2〜高校)
- Which is better, summer or winter?
- Should junior high school students have smartphones?
- Is it better to study alone or with friends?
- Should our school have a longer summer vacation?
- Which is better for a school trip, Kyoto or Okinawa?
- Should students clean their classrooms?
コメントの型(ほめる) 7. Your opinion is clear from the first sentence. 8. I like your example about ~. It's easy to imagine.
コメントの型(質問) 9. What do you mean by ~? 10. Can you tell me more about ~?
コメントの型(提案) 11. Maybe you can add one more reason. 12. How about using "For example" here? 13. Your last sentence could repeat your opinion.
- 小学校:作文の交換はせず、友だちの自己紹介カードを読んで、"Good!" のシールと「いいなと思った所」に線を引く程度にとどめます。
- 中学:観点は2つ(伝えたいことがわかる? 理由がある?)にしぼり、コメントは日本語でもOKに。英語のコメント例文を黒板に貼っておくと、少しずつ英語が増えます。
- 高校:意見文の構成(主張・理由・具体例・結論)にそったルーブリックで。慣れたら1つの作文を2人が読む「2人レビュー」にします。
- 大人数クラス:40人分の作文を先生1人で詳しく読むのは大変です。ピアレビューで内容面のコメントを生徒にまかせ、先生は書き直し後の作品に集中する分業ができます。
- 苦手な生徒が多いクラス:チェックリストを「Yes / Not yet」に○をつけるだけにし、コメントは例文から選んで書き写す形にします。
- オンライン・タブレット:共有文書のコメント機能で。だれがどのコメントを書いたかが残るので、コメントの質も評価しやすくなります。
- 思考・判断・表現:書き直し後の英作文で、単元で決めた目的・読み手・場面に合わせて、内容・構成がよくなっているか。コメント(日本語も可)の具体さや Writer's note は、観点別評価そのものではなく、指導に生かす形成的な資料にします。
- 知識・技能:書き直し後の作文の語彙・文法の正確さ(先生が見る)。
- 主体的に学習に取り組む態度:コメントや自分の見直しをもとに、どのコメントを使うかを考えて判断し、作文をよくしようとしているか。1回の Writer's note だけで決めず、下書き・書き直し・ふり返りなど複数の記録を並べて、粘り強く取り組み、自分の書き方を調整しようとしているかを見ます。
| 見るところ | A | B | C |
|---|---|---|---|
| コメントの質(形成的に見る) | 3つの型で、場所を示して具体的に書けている | 型はそろっているが一部あいまい | "Good!" だけ |
| 書き直し後の作文(内容・構成) | 目的・読み手に合わせて、主張・理由・具体例が筋道立ててよく伝わる | 主張と理由はおおむね伝わるが、一部の理由や例があいまい | 主張や理由が伝わりにくく、支援が必要 |
「書き直し後の作文」は、初稿からどれだけ変わったかではなく、書き直した作文が単元の目標にどこまで届いたかで見ます。初稿の段階で目標に届いていれば、大きく直していなくてもAになり得ます。どのコメントを使ったか・使わなかったかは、Writer's note で形成的に(指導に生かすために)見ます。
- 「Good!」だけのコメントになったら → チェックリストと型、そして先生のモデルを見せます。最初の1回は練習の時間をとりましょう。
- 文法の間違い探しになっていたら → 生徒どうしの文法の指摘は正確さに限界があります。観点は内容・構成中心にし、文法は先生が見ます。
- きついコメントで気まずくなったら → 「ほめる」から始める型を守らせ、提案は "Maybe..." "How about...?" の形で書くと決めます。
- 英語が苦手な生徒が「自分にはコメントできない」と言ったら → 内容についての質問なら日本語でもよいことにし、研究でも習熟度の低いレベルの学習者がコメントを書くことで伸びたと伝えます 1。
- 書き直しをしない生徒がいたら → コメントを読んで書き直すところまでが1セットです。Writer's note(使ったコメント・使わなかったコメントとその理由)の提出を必須にします。
第二言語ライティングのピア・フィードバックについて26研究をまとめたメタ分析では、全体としてプラスの効果(d = .73)がありました。先生のフィードバックや自分での見直しとの差ははっきりしませんでしたが、比べた研究が少ないので結論は保留とされています。効果は、書く時間が長いとき・取り組み期間が長いときに大きく、文法や語彙よりも内容に効きやすいことも報告されています 2。
英語の集中プログラム(9クラス・91人)で、学習者を「コメントを書くだけの側」と「コメントをもらうだけの側」に分けた実験では、学期の終わりに作文がより伸びたのは、コメントを書く側でした。比べたのはこの2つの条件だけで、ふつうの相互レビューや先生の添削と比べたわけではありません 1。
10年分の研究を整理した総説では、ピア・フィードバックを生かすには、やり方の訓練が重要であること、学習者の受けとめ方や文化的な背景も影響することが論点として挙げられています 3。
「英語が苦手な生徒にコメントさせても意味がない」と思われがちですが、上の実験では、コメントを書く側の中で、習熟度の低いレベルの学習者の方が自分の作文の伸びが大きくなっていました 1。対象は日本の中高生ではないので、そのまま当てはまるとは限りませんが、苦手な生徒にもコメントを書く役をまかせる理由になります。
❓ よくある質問
Q. 英語が苦手な生徒にピアレビューをさせても意味がありますか?
意味はあると考えられます。英語の集中プログラムの91人を、コメントを書くだけの側ともらうだけの側に分けた実験では、学期末に作文がより伸びたのはコメントを書く側で、とくに習熟度の低いレベルの学習者で伸びが大きかったと報告されています 1。内容についての質問なら日本語でもよい、とします。
Q. 生徒どうしで文法の間違いを直させてもいいですか?
生徒どうしの文法の指摘は正確さに限界があるので、観点は内容・構成を中心にし、文法は先生が見ます。チェックリストでも、文法は「気になる所に下線1か所まで」にしておきます。
Q. コメントが「Good!」だけになってしまいます。
「ほめる → 質問 → 提案」の型を示し、名前を消した昨年度の作品などで、先生がコメントを実際に書いて見せます。"Good!" だけの悪い例も見せると違いがわかります。提案は "Maybe..." "How about...?" の形で書くと決めると、きつい言い方も防げます。
Q. ピアレビューの効果は研究でどのくらいですか?
第二言語ライティングのピア・フィードバック26研究をまとめたメタ分析では、全体としてプラスの効果(d = .73)があり、文法や語彙より内容に効きやすいと報告されています。先生のフィードバックとの差ははっきりせず、結論は保留です 2。
Q. 40人のクラスでもできますか?
できます。40人分の作文を先生1人で詳しく読むのは大変なので、内容面のコメントはピアレビューで生徒にまかせ、先生は書き直し後の作品に集中する、という分業ができます。
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📑 出典(3件)
本文の上付き数字に対応。✔ は DOI / ISBN / 公式ページを書誌データベースと機械照合した印です。
- Lundstrom, K., & Baker, W. (2009). To give is better than to receive: The benefits of peer review to the reviewer's own writing. Journal of Second Language Writing, 18(1), 30-43. doi:10.1016/j.jslw.2008.06.002 ✔ DOI照合済91人の実験。他人の作文にコメントする「与える側」の方が、もらう側より自分の作文が伸びた
- Vuogan, A., & Li, S. (2023). Examining the effectiveness of peer feedback in second language writing: A meta-analysis. TESOL Quarterly, 57(4), 1115-1138. doi:10.1002/tesq.3178 ✔ DOI照合済第二言語ライティングのピア・フィードバックのメタ分析(26研究)。全体で d = .73。内容面に特に効く
- Yu, S., & Lee, I. (2016). Peer feedback in second language writing (2005-2014). Language Teaching, 49(4), 461-493. doi:10.1017/S0261444816000161 ✔ DOI照合済第二言語ライティングのピア・フィードバック研究10年分の総説。訓練・与える側の利益・文化的課題などを整理
最終更新 2026-10-18 ・ 原田英語 まちがいのご指摘はこちら





