協同学習・ペア/グループワークの科学 ― 「ただ組ませる」から「学び合う」に変える条件
ペアワークやグループワークは、組ませただけでは学びになりません。協同学習の研究が示す「効くグループ」の条件と、日本の大学生を対象とした研究で成果が報告された「教え合い方を教える」方法を紹介します。
エビデンスの強さ:教科を問わない協同学習のメタ分析では、学力へのプラスの効果がおおむね一貫している(態度への効果は小さい)。外国語学習に限った研究は数が少なめで、効果はグループの組み方や活動の設計に左右される。

協同学習ってなに?
ひとことで言うと、協同学習(cooperative learning)は、「みんなが成功しないと自分も成功しない」しくみと「一人ひとりの学習や理解を個別に確かめる」しくみを中心に、助け合うやり取り・協力のスキル・グループのふり返りまで意図して組みこんだ、グループでの学び方です。
「4人班で話し合って」と言っても、1人が全部やって、残り3人はおしゃべり……という経験はありませんか。協同学習は、そうならないように、グループの活動に「しくみ」を組みこみます。その土台は、社会的相互依存理論です。人が協力するか、競争するか、ばらばらに学ぶかは、目標の結びつき方で決まる、という考え方で、これにもとづいて1,200以上の研究が行われてきました 1。
協同学習は「リレー」です。綱引きのように全員で引っぱるだけだと、力を抜いている人がいてもわかりません。リレーでは、一人ひとりが自分の区間を走らないとゴールできないし、バトンの渡し方(協力のしかた)も練習します。大事なのは、グループワークを綱引きからリレーに変えることです。
協同学習の5つの要素
協同学習の研究で知られる David Johnson 氏と Roger Johnson 氏の兄弟の整理でよく知られるのは、次のような要素です 1。
| 要素 | ひとことで | 英語の授業では |
|---|---|---|
| 肯定的相互依存(positive interdependence) | みんなが成功しないと自分も成功しない | 1人ずつ違う情報を持つ(ジグソー) |
| 個人の責任 | 一人ひとりの理解や取り組みを、個別に確かめる | 全員が自分で要約を書く、退出カード、個別の質問(ランダム指名は準備をうながすしかけですが、個別の確認の代わりにはなりません) |
| 促進的なやり取り | おたがいの学習を進める助け合い | 説明する、助ける、感想や助言を伝える、考えを問い直す |
| 社会的スキル | 協力のしかたを学ぶ | あいづち、意見の言い方を教える |
| グループのふり返り | 協力のしかたを見直す | 活動後に「よかった点」を話し合う |
ふつうのグループ活動とのちがい
| ふつうのグループ活動 | 協同学習 | |
|---|---|---|
| 指示 | 「班で話し合って」 | ゴール・役割・一人ひとりの分担を決めて始める |
| だれがやるか | できる子に集まりがち | 全員が自分しか知らない情報や分担を持つ |
| 最後 | 班の代表が発表 | ランダムに指名された1人でも説明できるようにする |
やり方を3ステップで
- 全員が必要な課題をつくる:1人ずつ違う情報を持たせるなど、全員の情報や成果がそろわないと終わらない課題にする。必要なら、参加を支える役割も決める。
- 教え合う:自分の分担をグループに説明し、協力のことばを使って質問し合う。
- 一人ひとりの理解を確かめる:全員が自分で要約を書く、退出カードを書くなどで個別に確かめる。ランダムに指名された1人が説明するのも準備をうながすしかけになる。最後に、ふり返りで協力のしかたを見直す。
研究ではどうなってる?
- 1995年以降の実際の教室で行われた協同学習の研究65本を採択し、効果量を計算できた研究を統合したメタ分析では、協同学習は学力に中程度のプラスの効果(ES = .54)があり、態度への効果は統計的にはプラスでも小さいもの(ES = .15)でした。学力への効果の大きさは教科・年齢・文化によって違いました(態度などは研究数が少なく、この分析は学力についてだけ行われています)2。
- 協同学習のメタ分析15本をさらにまとめた二次メタ分析では、学習成果への効果は中程度(ES = 0.71)で、協同学習の技法の種類などによって効果が変わりました 3。
- 第二言語のペア・グループでの協働ライティングの研究(33研究)をまとめたメタ分析では、共同で書いた文章は1人で書いた文章より正確でした(g = 0.73)。その後に1人で書いた文章のルーブリック得点も、協働で書く条件を経験した群のほうが、1人で書く条件の群より高くなりました(g = 0.94。同じ人の前後の伸びではなく、群どうしの差です) 4。
- 大人のESL学習者のペアワークを1学期追った研究では、ペアの関わり方は4つの型に分かれ、お互いの発言に深く関わり合う型――対等に協力し合う「協働型」と、得意な側が相手を引き込みながら助ける「熟達者/初心者型」――のペアで、学びにつながるやり取りが起きやすいことがわかりました 5。
- 日本の大学の英語クラス(167人)の研究では、訂正の訓練なしで、同じ構造化されたペア活動をしたクラスが対照クラスを上回ったのは流暢さの指標だけでしたが、お互いの誤りの直し方を教わった2クラスは、正確さと流暢さの両方で伸びが見られました 6。
日本の大学生の研究で、「訂正の訓練なしで同じペア活動をした」グループと「直し方を教わった」グループの差は、正確さにはっきり出ました 6。この研究は、単に組ませるだけでなく、ペアでの具体的な関わり方を体系的に教えることが成果を左右しうることを示唆しています(大学の既存の4クラスを各条件に割り当てた準実験で、1学期かけて直し方を教えたものなので、中学・高校にそのまま当てはまるとは限りません)。また、ペアの関わり方によって学びの量が変わるという研究も 5、「誰と組ませ、どう関わらせるか」の大切さを示しています。
協同学習の研究は長い歴史があり、アメリカの全国調査では、小学校の先生の79%、中学校の先生の62%が何らかの形で協同学習を継続的に使っていると報告されたこともあります 7。広く使われているからこそ、「なんとなくのグループ活動」と「しくみのある協同学習」の違いを意識することが大切です。
明日の授業でこうする
- 情報を分ける:全員が同じプリントではなく、1人ずつ違う部分を持たせる(ジグソー)。
- 役割をつける:司会・質問をうながす係・時間係・全員が話したかの確認係など、だれかの学習を代わりにやってしまわない役割にする。毎回交代。発表は役割にせず、全員が自分で要点をメモして説明の準備をする。
- 最後は1人で:グループで話し合ったあと、ランダムに指名された1人が説明する。誰が当たっても説明できるよう、教え合いをうながしやすくなります。
- 協力のことばを教える:Can you say that again? / I agree because … / What do you think? を掲示。
- 直し方を教える:大学生の研究では、相手に自分で直させる方法(プロンプト)か、正しい形を示す方法(リキャスト)を教えました 6。授業で応用するなら、たとえば「間違いに気づいたら "Do you mean …?" と聞いてみよう」と、ペアでの直し方を練習します(この表現は研究で使われたものそのものではありません)。
本文を3つの段落に分け、班の中でA・B・Cの担当を決めます。各自には担当の段落だけを印刷したプリントを配り、教科書は閉じておきます。①同じ担当どうし(A同士など)で集まり、段落の内容を確認し、説明の練習をする(エキスパート・グループ)。②もとの班に戻り、自分の段落を英語(難しければ日本語まじり)で説明する。③班で本文全体の順番を並べかえ、要点を3文でまとめる。④最後に、先生がランダムに選んだ1人が要点を発表。全員が「自分しか知らない情報」を持つので、ただ乗りが起きにくくなります。
スピーキング活動の前に、先生とALTが「直し合い」の見本を見せます。A: "I go to Osaka last week." B: "Last week? You … go?" A: "Oh, I went to Osaka."(正しい形は言わずに、自分で直させる=プロンプト)。もう1つは、B: "Oh, you went to Osaka last week?"(正しい形で言い直してあげる=リキャスト)。この2つの直し方の型を練習してから、ペアで活動します(これらは授業用の例です)。直し合う対象は、生徒が既に習ってよく理解している文法にしぼります。大学生を対象にした研究では、1学期にわたって見本と練習をくり返し、直し方を教えたクラスで正確さも伸びました 6。中学・高校で、短時間の練習で同じ効果が出るかはまだ確かめられていないので、見本と練習を続けながら生徒の様子を見ていきましょう。
- 「話し合って」だけ:ゴールと役割がないと、話し合いは雑談になったり、できる子が1人で話して終わったりしがちです。
- メンバーの組み方を考えない:同じメンバーで固定していると、「いつも同じ子が仕切る」「いつも話さない子がいる」といった形が決まってしまうことがあります。ときどき観察しましょう。短い交流活動ではよく組み替え、学期を通して支え合う「ベースグループ」のように継続的な支援が目的なら固定する、など目的に応じて使い分けます 1。
- できる子に教えさせっぱなし:1人だけが説明し続けると、ほかの生徒の参加や考える機会が減ることがあります。説明・質問・要約の役を交代させます。
- ペアで話させるだけで、形への注意をまったく入れない:ペア活動だけでは、形への注意は自然には起きにくいことがあります(訂正の訓練なしで同じペア活動をした群が対照群を上回ったのは、流暢さだけでした)6。ねらいに応じて、今日の目標に関わる誤りにしぼった、おだやかな直し合い方も練習させましょう。
❓ よくある質問
Q. 協同学習とは何ですか? ただのグループ活動とは違うのですか?
グループの活動に、みんなが成功しないと自分も成功しないしくみと、一人ひとりの責任を組みこんだ学び方です。土台は社会的相互依存理論で、これにもとづいて多くの研究が行われてきました 1。「話し合って」と言うだけのグループ活動とは区別されます。
Q. 協同学習の5つの要素とは何ですか?
協同学習の研究で知られる David Johnson 氏と Roger Johnson 氏の兄弟の整理でよく知られるのは、肯定的相互依存(positive interdependence。みんなが成功しないと自分も成功しない)、個人の責任(一人ひとりの理解を個別に確かめる)、おたがいの学習を進める促進的なやり取り、社会的スキル、グループのふり返りの5つです 1。英語の授業なら、1人ずつ違う情報を持たせ、全員が自分で要約を書いて理解を確かめる、などの形になります。
Q. 協同学習には効果がありますか?
実際の教室の研究65本を採択し、効果量を計算できた研究を統合したメタ分析では、学力に中程度のプラスの効果(ES = .54)があり、態度への効果は小さいもの(ES = .15)でした。学力への効果の大きさは教科・年齢・文化によって違いました 2。第二言語の協働ライティングのメタ分析では、共同で書いた文章は1人で書いた文章より正確でした 4。
Q. ペアワークで正確さも伸ばすにはどうすればいいですか?
日本の大学の英語クラス167人の研究では、訂正の訓練なしで同じペア活動をしたクラスが対照クラスを上回ったのは流暢さだけでしたが、お互いの誤りの直し方を教わったクラスは正確さと流暢さの両方で伸びが見られました 6。授業では、たとえば時間の語をくり返して聞き自分で直させる、「Do you mean …?」と聞く、といった直し方の型を、先生が見本を見せて練習させます(研究で使われた表現そのものではなく、授業用の例です)。
Q. グループ活動での「ただ乗り」を防ぐにはどうすればいいですか?
1人ずつ違う情報を持たせるジグソー、司会・時間係・全員が話したかの確認係などの交代制の役割、話し合いのあとにランダムに指名した1人が説明するしかけを入れます。誰が当たっても説明できるよう、教え合いをうながしやすくなります。協力のことばも掲示して教えます。
🎓 もう一歩深く(大学院レベル)
🎓院生モード協同学習の効果のメカニズム
協同学習の研究で知られる教育研究者の Robert E. Slavin 氏は、協同学習の学力への効果を説明する主な視点として、動機づけ(グループの目標と個人の責任)、社会的結束、認知発達、認知的精緻化などを整理しました 7。2人の Johnson 氏は、社会的相互依存理論から教師の役割(公式な協同学習、非公式な協同学習、ベースグループ)を導いています 1。
第二言語習得の観点では、ペア・グループでのやり取りは、インプット・アウトプット・意味交渉の機会を増やすだけでなく、社会文化理論の言う協働的な足場かけの場にもなります。応用言語学者の Neomy Storch 氏のペアワークの分析は、旧ソ連の心理学者レフ・ヴィゴツキー(Lev S. Vygotsky)の理論にもとづき、相互性(mutuality)の高い型、すなわち対等性も高い「協働型」と、対等性は低いが相互性の高い「熟達者/初心者型」で学びが起きやすいことを示しました 5(関連:社会文化理論)。
🎓院生モード学習者どうしの訂正と、測定の問題
第二言語習得研究者の Masatoshi Sato 氏と Roy Lyster 氏は、学習者に訂正の与え方(プロンプトまたはリキャスト)を教える介入を行い、訂正群では正確さと流暢さ(発話速度)が、相互作用のみの群は流暢さの指標でのみ対照群を上回ったと報告しました。ただし、大学の既存の4クラスを1クラスずつ各条件に割り当てた準実験で(介入は1学期)、クラスの違いと条件の違いを完全には切り分けられません。対象も大学生で、中学・高校への一般化には注意が必要です。彼らは、学習者が相手の発話をモニターする経験が、自分の発話のモニターを鋭くすると、スキル習得理論と発話産出のモデルで解釈しています 6。
協働ライティングのメタ分析は、協働で書かれたテキストの正確さには中程度の効果を示した一方、そのほかの指標については研究の蓄積不足とばらつきのため結論を出せないとしています 4。また、教科横断のメタ分析でも効果は教科・年齢・文化で変わり 2、日本の中学・高校の英語の授業での協同学習の効果を統制して測った研究は多くありません。
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📑 出典(7件)
本文の上付き数字に対応。✔ は DOI / ISBN / 公式ページを書誌データベースと機械照合した印です。
- Johnson, D. W., & Johnson, R. T. (2009). An educational psychology success story: Social interdependence theory and cooperative learning. Educational Researcher, 38(5), 365-379. doi:10.3102/0013189X09339057 ✔ DOI照合済協同学習の土台となる「社会的相互依存理論」と、1,200以上の研究の流れをまとめた論文
- Kyndt, E., Raes, E., Lismont, B., Timmers, F., Cascallar, E., & Dochy, F. (2013). A meta-analysis of the effects of face-to-face cooperative learning. Do recent studies falsify or verify earlier findings?. Educational Research Review, 10, 133-149. doi:10.1016/j.edurev.2013.02.002 ✔ DOI照合済協同学習の効果を教科をまたいでまとめたメタ分析(65本)。学力と態度にプラス
- Güngör, F., Altunbaşak, İ., Aydın, A. T., Kaya, M., & Erdem, C. (2026). A second-order meta-analysis on the effects of cooperative learning on students' academic achievement, higher-order thinking, and affective behaviors. Current Psychology, 45(6), 552. doi:10.1007/s12144-025-08943-0 ✔ DOI照合済協同学習のメタ分析15本をまとめた二次メタ分析。学習成果への効果は中程度(ES = 0.71)
- Elabdali, R. (2021). Are two heads really better than one? A meta-analysis of the L2 learning benefits of collaborative writing. Journal of Second Language Writing, 52, 100788. doi:10.1016/j.jslw.2020.100788 ✔ DOI照合済協働ライティングのメタ分析(33研究)。ペアで書いた文章は1人で書いた文章より正確(g = 0.73)
- Storch, N. (2002). Patterns of interaction in ESL pair work. Language Learning, 52(1), 119-158. doi:10.1111/1467-9922.00179 ✔ DOI照合済ペアワークのやり取りを4つの型に分け、協力的なペアほど学びが起こりやすいと示した研究
- Sato, M., & Lyster, R. (2012). Peer interaction and corrective feedback for accuracy and fluency development: Monitoring, practice, and proceduralization. Studies in Second Language Acquisition, 34(4), 591-626. doi:10.1017/S0272263112000356 ✔ DOI照合済日本の大学生に、ペアで互いに訂正し合う方法を教えた実験
- Slavin, R. E. (1996). Research on cooperative learning and achievement: What we know, what we need to know. Contemporary Educational Psychology, 21(1), 43-69. doi:10.1006/ceps.1996.0004 ✔ DOI照合済協同学習と学力の研究を総括し、効果のしくみ(グループの目標と個人の責任など)を論じた論文
最終更新 2026-10-18 ・ 原田英語 まちがいのご指摘はこちら








