単語カードの正しい回し方 ― 「思い出してからめくる」「間をあけて回す」
単語カードは、使い方しだいで効き目が大きく変わります。表を見て、思い出してから、めくる。同じカードにすぐ戻らず、間をあけて回す(20枚なら1束で回すのが簡単)。研究で確かめられたコツを授業で教えます。
- ⏱ 時間
- 5-10分
- 🧰 準備
- 少し
- 👥 形態
- 個人→ペア
- 🎯 技能
- 語彙・復習
- 📶 CEFR
- A1-B2

- 単語カードの「効く使い方」を、授業の中で一度きちんと練習させる。
- 家庭学習の単語暗記を、「眺める」から「思い出す」に変える。
- 自分の記憶の「つもり」と実際のずれに、生徒自身が気づく。
単語カードの正しい回し方ってなに?
ひとことで言うと、単語カードを「答えを眺める道具」ではなく「思い出す練習の道具」として使うための、3つのルール(言ってからめくる・同じカードにすぐ戻らず間をあけて回す・1回言えても捨てない)です。
筋トレで、重りを「見ている」だけでは筋肉はつかず、実際に持ち上げてはじめて鍛えられるのと同じです。カードの答えを先に見て「あ、そうそう」と思うのは、重りを見ているだけの状態です。めくる前に、自分の頭から答えを引っぱり出す、この「持ち上げる」ひと手間が大事なところです。
よくある使い方とのちがい
| よくある使い方 | このページの回し方 | |
|---|---|---|
| めくるタイミング | すぐ裏を見て確かめる | 表を見て3秒考え、英語を言ってからめくる |
| 束の分け方 | 5枚ずつなど小さな束で何度も | 20枚なら1束で、上から順に回す |
| 言えたカード | 1回言えたらすぐ外す | 束の後ろに戻す。家での練習では、別々の周回で3回言えたらその日は卒業。後日また回す |
やり方を3ステップで
- 言ってからめくる:表(日本語や絵)を見て3秒ほど考え(3秒は授業で使いやすい目安)、英語を言ってから裏返す。
- 間をあけて回す:同じカードにすぐ戻らないように回す。20枚を1束にして、言えたカードは束の後ろへ戻すのが簡単な方法。
- 卒業と復習:家での練習で、別々の周回で3回言えたらその日の束から外し、次の日・数日後・次の週にもう一度回す。
授業の流れ(分ごと)
| 時間 | 先生 | 生徒 |
|---|---|---|
| 0:00〜2:00 | 3つのルールを板書し、1枚のカードで「言ってからめくる」を実演 | ルールを確認 |
| 2:00〜3:00 | 「間をあけて回す」の理由を説明(同じ語に戻るまで時間があくほうがよいから) | 20枚を1束にまとめる |
| 3:00〜5:00 | タイマー2分。机の間を回り、すぐめくる生徒に声をかける | ペアで一方が見せ、一方が答える |
| 5:00〜7:00 | 交代の合図 | 役割交代(同じく日本語→英語) |
| 7:00〜9:00 | 向きを変えて(英語→日本語)もう1回。日本語→英語の結果とは別に記録 | 言えなかったカードに印をつける |
| 9:00〜10:00 | 家庭学習の記録のつけ方を説明 | ワークシートに記録 |

- カードを作る(宿題でもOK)。 表は日本語か絵、裏は英語+短い例文。1枚に1語。作るのは家、授業では回す練習に時間を使います。
- ルール①「言ってからめくる」を実演する。 先生が1枚持ち、表を見せて3秒考え、英語を言ってから裏返す――を見せます。
- ルール②「間をあけて回す」。 大事なのは、同じカードにすぐ戻らず、次に出会うまでに時間をあけることです。20枚なら5枚ずつに分けて1束ずつ固めて回すのではなく、20枚を1束にして上から順に回すのが、その間隔をとる簡単な方法です(小さな束でも、ほかの束と交互に回すなどして間をあけられれば同じ考え方です)。
- ルール③「1回言えても捨てない」。 言えたカードは束の後ろへ。家での練習では、日本語→英語で別々の周回に3回続けて言えたら、その日の束から外して「卒業」の山へ移します。授業の10分では1人が日本語→英語で答えるのは1〜2周なので、授業中は卒業の判定はせず、回し方を体験することに使います。「3回」は回しやすい目安で、研究で決まった基準ではありません。卒業の山も捨てずに、次の日・数日後・次の週の束にもう一度混ぜます。
- ペアで2分ずつ。 一方がカードを見せ、もう一方が答えます。見せる側は、答える前にめくらないよう見張り役です。交代して2分。
- 向きを変える。 英語を自分で言える・書けるようにすることがねらいなので、ふだんは表(日本語や絵)を見て英語を言う「日本語→英語」で回します。最後の1回は、それとは別に、裏の英語を見て意味を言う「英語→日本語」で回し、意味がすぐわかるかを確かめます。
- 記録をつける。 ワークシートにペア練習と家の練習を記録。卒業カードの数が増えるのが見えると、続けやすくなります。
カードの作り方の例(表 → 裏)
- 決める → decide / I decided to join the club.
- 便利な → convenient / This app is very convenient.
- 〜に参加する → take part in / I took part in the event.
- 経験 → experience / It was a good experience.
- 説明する → explain / Can you explain it again?
- 減らす → reduce / We should reduce plastic bags.
- (絵:雨と傘)→ umbrella / Don't forget your umbrella.
- 〜を楽しみにする → look forward to / I'm looking forward to the trip.
ペア練習で使う声かけ 9. "Say it first!"(言ってから!) 10. "Three seconds."(3秒考えて) 11. "Graduated!"(卒業!) 12. "Back of the pack."(後ろへ)
- 小学校:先生が絵カードを1枚ずつ見せ、子どもが言ってから先生が文字の面を見せます。「言ってからめくる」の順番は同じです。
- 中学:教科書の新出語でカードを作り、毎回の授業のはじめの2分を、ペア練習の時間として続ける。
- 高校:単語集の語に、教科書や長文で出会った例文を裏に書かせ、答えを確かめたあとに例文で使い方も確認させます。文の中で思い出させたいときは、表を穴あきの例文(例:I'm looking ___ to the trip.)にし、裏に語句と完全な文を書きます。
- 大人数クラス:先生が電子黒板でカードを1枚ずつ表示し、全員が小声で言ってから答えを出す一斉版に。ペア練習は隣どうしで同時進行できます。
- 苦手な生徒が多いクラス:最初の束は10枚に。裏に頭文字だけ書いた「ヒント面」を用意し、どうしても出ないときだけ見せます。
- オンライン・タブレット:デジタルの単語カードアプリで、自分で答えを打ちこんでから確認する設定にします。
カード練習そのものは評価しません。家庭学習の習慣づくりとして、記録とその後の小テストの伸びを見ます。
- 知識・技能:単語の定着は、後日の小テストで見ます。
- 主体的に学習に取り組む態度:記録の有無や回数そのものではなく、小テストの結果やなかなか卒業できない語をもとに、カードの向き・回す間隔・練習のしかたをふり返り、次の学習方法を自分で変えようとしているかを見ます(この観点は、粘り強い取組の中で自分の学習を調整しようとしているかを含めて見るものです 1)。
下の表は、生徒が自分で使う点検表です(評定には使いません)。
| 自己点検 | よくできた | できた | もう少し |
|---|---|---|---|
| 練習の仕方 | ルール3つを守って回し、日本語→英語でも言える | 言ってからめくる、は守れた | すぐ裏を見た・眺めただけ |
| ふり返り | 苦手語を書き出し、次の練習のしかた(束に戻す時期など)を決めた | 苦手語を書き出した | 書き出していない |
- 裏をすぐ見る生徒がいたら → ペアの見張り役を決め、「3秒たってから」を合言葉にします。答えを見て「あ、そうそう」と思うのは、思い出す練習になっていません。
- 言えたカードをすぐ捨ててしまったら → 1回言えた語は、まだ不安定です。卒業は「別々の周回で3回続けて」と決め、卒業した語も後日の束にもう一度混ぜます。
- カード作りに時間をかけすぎていたら → きれいに作ることが目的になりがちです。作るのは宿題、授業は回す練習に。
- 小さな束に分けたがる生徒がいたら → 「同じ回数練習するなら、小さな束を1つずつ固めて回すと覚えた感じがするけれど、実は間をあけて回す方が残る」と、研究の話を一度紹介します。2分で1周しかできないときは、同じ束を翌日も回します。
- 家で続かなかったら → 1日5分・卒業カードの数だけ記録、と目標を小さくします。
単語カードを大きな1束で回すか、小さな4束に分けて1束ずつ固めて回すかを比べた実験(各カードを練習する回数は同じ)では、大きな束の方が効果的でした。束が大きいほど同じカードに戻るまでの間隔が長くなるからです。直前の詰めこみよりも、間をあけた学習の方が効果的でした。ところが、参加者の9割で間隔をあけた方が成績がよかったのに、最初の学習のあと、72%の参加者は「詰めこみの方が効いた」と答えていました 2。
外国語の単語を覚える実験では、一度言えた単語について、その後もテスト(思い出す練習)を続けた場合は後の成績が大きく上がりましたが、読み直しを続けるだけでは効果がありませんでした 3。言えるようになったあとも思い出す練習を続けることが大切です。
日本人学習者98人の実験では、1回の学習で5回や7回思い出した単語の方が、1回や3回より後のテストの成績が高くなりました。ただし、かかった時間あたりで見ると1回の方が効率がよかったので、「何回でも多いほどよい」とは言えません 4。「3回言えたら今日は卒業」は、その間をとった授業運営上の目安で、研究で決まった基準ではありません。卒業した語も、日をあけてまた思い出す機会をつくります。
この実験では、大きな束と小さな束のどちらが効いたかについて、学習した直後の感覚と、あとの成績が食い違う参加者が多くいました 2。「効いた感じ」だけでは、よい回し方を選べるとは限りません。だから、使い方は生徒まかせにせず授業で教える価値があります。
❓ よくある質問
Q. 単語カードの効果的な回し方は?
3つのルールで回します。①表を見て3秒考え、英語を言ってからめくる ②同じカードにすぐ戻らず、間をあけて回す(20枚なら1束で回すのが簡単) ③1回言えても捨てずに束の後ろへ戻し、家での練習では別々の周回で3回続けて言えたらその日の束から「卒業」(後日また回す)。ふだんは表(日本語や絵)を見て英語を言う向きで回します。
Q. 小さな束に分けた方が覚えやすいのでは?
各カードを同じ回数練習する条件で、大きな1束と小さな4束を比べた実験では、大きな束の方が効果的でした。同じカードに戻るまでの間隔が長くなるからです。ところが多くの参加者は「詰めこみの方が効いた」と感じていました 2。この実験では、効いた感じと実際の成績が食い違う参加者が多くいました。
Q. 一度言えた単語は、もう練習しなくていいですか?
外国語の単語の実験では、一度言えた単語もテスト(思い出す練習)を続けた場合は後の成績が大きく上がり、読み直しを続けるだけでは効果がありませんでした 3。1回言えた語はまだ不安定なので、卒業は「別々の周回で3回続けて」と決め、卒業した語も後日また回します。
Q. 1つの単語を何回思い出せばいいですか?
日本人学習者の実験では、5回や7回思い出した単語の方が1回や3回より後のテストの成績が高い一方、かかった時間あたりでは1回の方が効率的でした 4。「何回でも多いほどよい」とは言えず、「3回言えたら今日は卒業」はその間をとった授業運営上の目安です(研究で決まった基準ではありません)。
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📑 出典(4件)
本文の上付き数字に対応。✔ は DOI / ISBN / 公式ページを書誌データベースと機械照合した印です。
- 文部科学省 (2019). 小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について(通知) 公式ページ ✔ リンク確認済観点別学習状況の評価を「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3観点に整理した文科省の通知(2019年)
- Kornell, N. (2009). Optimising learning using flashcards: Spacing is more effective than cramming. Applied Cognitive Psychology, 23(9), 1297-1317. doi:10.1002/acp.1537 ✔ DOI照合済単語カードは小さな束に分けるより大きな1束で回す方が効果的。9割の人で間隔の効果があったのに、7割は逆だと思っていた
- Karpicke, J. D., & Roediger, H. L. (2008). The critical importance of retrieval for learning. Science, 319(5865), 966-968. doi:10.1126/science.1152408 ✔ DOI照合済外国語の単語ペアの学習で、覚えた後も思い出す練習を続けると長く残る。読み直しを続けても効果なし
- Nakata, T. (2017). Does repeated practice make perfect? The effects of within-session repeated retrieval on second language vocabulary learning. Studies in Second Language Acquisition, 39(4), 653-679. doi:10.1017/S0272263116000280 ✔ DOI照合済日本人学習者98人。1回の学習で5〜7回思い出すと1〜3回より成績が高い。ただし時間あたりの効率は1回が最大
最終更新 2026-10-18 ・ 原田英語 まちがいのご指摘はこちら





