前回の単語を「思い出して確かめる」3分間の想起クイズ
教科書を見る前に、白紙に「前回の単語」を思い出して書くだけ。読み直すより、思い出す方が記憶に残ることがわかっています。
- ⏱ 時間
- 3-5分
- 🧰 準備
- 少し
- 👥 形態
- 個人→ペア
- 🎯 技能
- 語彙・復習・帯活動
- 📶 CEFR
- A1-B1

- 前回習った単語・フレーズを、何も見ずに思い出す練習を、毎時間の授業のはじめに3分ずつ続ける。
- 「覚えたつもり」を「本当に言える・書ける」に近づける。
- 思い出せなかった語を、生徒自身が「次に覚える語」として見つける。
想起クイズってなに?
ひとことで言うと、教科書を見る前に、前回の単語やフレーズを何も見ずに思い出して書き、そのあと教科書で答えを確かめる、3分ほどの活動です。
新しい町で道を覚えるとき、地図をずっと見ているより、いったん地図をしまって自分で歩いてみる方が道は身につきます。そして歩いたあとで地図を開き、まちがえた角を確かめます。思い出そうとすること自体が練習です。この活動では、まちがえたまま覚えないよう、そのあと答えも確かめます。
似た活動とのちがい
| 単語帳の読み直し | 採点する小テスト | 想起クイズ | |
|---|---|---|---|
| すること | 見て確かめる | 答えを書き、採点される | 何も見ずに思い出して書く |
| 点数 | なし | 成績に入ることが多い | 入れない |
| 終わったあと | — | 返却・解説 | すぐ答え合わせし、書けなかった語が「次に覚える語」になる |
やり方を3ステップで
- 思い出す:机の上を空にし、前回の単語やフレーズを2分間、思い出せるだけ英語で書く。
- 見せ合う:ペアで30秒見せ合い、相手が書けて自分が書けなかった語に印をつける。
- 確かめる:教科書の新出語の欄と照らし合わせ、思い出せなかった語に赤丸をつけて書き出し、書けた数を記録する。
授業の流れ(分ごと)
| 時間 | 先生 | 生徒 |
|---|---|---|
| 0:00〜0:30 | 教科書を閉じさせ、白紙かワークシートを出させる | 机の上を片づける |
| 0:30〜2:30 | お題を言い、タイマーをスタート。机の間を回り、手が止まった生徒にヒント(頭文字)を出す | 前回の単語・フレーズを思い出して書く |
| 2:30〜3:00 | 「ペアで見せ合おう」 | 相手が書けて自分が書けなかった語に印 |
| 3:00〜4:00 | 教科書の該当ページを開かせる | 教科書の新出語の欄で、書けなかった語に赤丸 |
| 4:00〜5:00 | 「書けた数」を挙手で聞き、全体で多く抜けていた語を2〜3個だけ確認 | 記録欄に数を書く |

- 机の上を空にする。 教科書・ワーク・単語帳は閉じて、見えない所へ。白紙(ノートの端でOK)かワークシートを出させます。机はふだんの配置のままで大丈夫です。
- お題を言う。「前回の Unit 3 で出てきた単語やフレーズを、思い出せるだけ英語で書こう」。板書は「Unit 3 / 2 min」だけ。日本語の意味を3〜5個板書して「これを英語で」にする版もあります(ワークシートの Step 2。印刷されている5語は例なので、前回の語に差し替えて使います)。
- 2分間、ひとりで書く。 先生は机の間を回り、手が止まっている生徒には頭文字だけ小声で伝えます("d...")。つづりに自信がなくても書いてよいことにします。
- ペアで30秒見せ合う。 相手が書けていて自分が書けなかった語に印をつけます。相手の答えを写すのはこのあと。
- 教科書を開いて答え合わせ(1分)。 教科書の新出語の欄と照らし合わせ、思い出せなかった語に赤で丸をつけて、ワークシートの Step 3 に書き出します。これが今日の「要注意リスト」です。
- 数を記録する。 書けた語の数をワークシートの記録欄に。比べる相手は「先週の自分」です(数を比べるのは、同じ形のお題のときだけにします)。
- 点数は集めない。 ワークシートは回収せず、ノートに貼らせます。先生は挙手で全体の様子だけつかみます。
お題(毎回変えられる)
- Write all the words from last lesson.
- Write five verbs from Unit 3.
- Write words about food (or school, sports, weather...).
- Write three phrases with "look" (look for, look at, look forward to).
- Write the past forms: go, see, eat, buy, take.
- Write three sentences about last lesson's story.
日本語→英語(中学向け・ワークシート Step 2 の差し替え用) 7. 決める → decide / 8. 人気のある → popular / 9. 〜を楽しみにする → look forward to / 10. 〜をあきらめる → give up / 11. 環境 → environment / 12. 経験 → experience
高校向け(内容の想起) 13. Write three key points of the last paragraph in English. 14. Write five words that describe the main character.
- 小学校:書かせずに、絵カードを見せて「言えるかな?」の口頭版に。全員で一斉に言うより、ペアで交互に言う方が一人ひとりが思い出します。
- 中学:日本語の意味を5つ板書 → 英語を書く「意味→英語」版(ワークシート Step 2)が定期テストにもつながります。
- 高校:単語だけでなく「前回の本文の要点を英語で3文」の内容版も。語彙と内容の両方を思い出させます。
- 大人数クラス:回収しない前提なので40人でもそのまま実施可。最後に挙手で「5個以上書けた人?」と聞くだけで全体の様子がつかめます。
- 苦手な生徒が多いクラス:最初はお題を「日本語→英語を3つ」にしぼり、頭文字つき(d____)で出します。書けた語が1つでもあればほめます。
- オンライン・タブレット:チャット欄やフォームに一斉送信(タイマー終了の合図で同時に送信)。他人の答えを見てから書けないようにします。
想起クイズは練習なので、点数は成績に入れないのが基本です。見るのは「伸び」と「取り組み方」です。
- 知識・技能:この活動では評価しません。単語の定着は、後日の小テストや定期テストで見ます。
- 記録の使い方:記録欄の数の推移や、書けなかった語を次回までに覚えてきたか(翌週の想起クイズで確認)は、生徒が自分の覚え方を調整するため、先生が次の指導を考えるための資料にします。書けた語数は記憶の結果なので、そのまま態度の評価にはしません。
- 主体的に学習に取り組む態度を正式に評価するときは、単元の目標に沿って、書けなかった語を分析して覚え方を変える、次に覚える語を自分で決めて続けて取り組む、といった粘り強さと調整の様子を、複数の場面で見ます。
| ふり返りの目安(生徒の自己チェック用) | よくできた | できた | もう少し |
|---|---|---|---|
| 次につなげる | 「次に覚える語」を自分で決め、覚え方を工夫している | 書けなかった語に丸をつけている | 答え合わせをしていない |
- 何も書けずに固まる生徒がいたら → 頭文字ヒントを出す、またはお題を「日本語→英語」に切り替えて、手がかりを増やします。
- 教科書をこっそり見る生徒が出たら → 回収しない・点数にしないことを最初に伝えます。「見たら練習にならない」理由(思い出すこと自体が練習)を一度説明します。
- 答え合わせを飛ばしてしまいそうになったら → まちがったつづりのまま残らないよう、最後の1分の確認だけは必ず残します。時間がないときは、ペアの見せ合いを省きます。
- 毎回同じ語ばかりになったら → 前回だけでなく、2〜3週間前の単元からも混ぜます。間隔をあけた小テスト の効果も重なります。
- 書けた数を競って雰囲気が悪くなったら → 比べるのは「先週の自分」と明言し、数の発表は挙手だけにします。
カギはテスト効果(testing effect)、つまり「思い出すこと自体が記憶を強くする」という現象です。文章を読んだ学生を、①何度も読み直すグループと②何も見ずに思い出して書くグループに分けた実験では、5分後のテストでは読み直しの方がよかったのに、2日後・1週間後には思い出したグループの方がずっと多く覚えていました。しかも、読み直したグループの方が「覚えた」という自信は高かったのです 1。
外国語の単語を覚える実験でも、一度言えるようになった単語をくり返しテストし続けると後の成績が大きく上がり、逆にくり返し読み直し続けても効果はありませんでした。学生たちは、自分がどれだけ覚えているかの予想がまったく当たっていませんでした 2。
練習テストの研究をまとめたメタ分析でも、練習テストは、集めた研究で比べられていた読み直しなどのテストをしない学習条件と比べて、平均して高い学習効果を示しました。ただし効果の大きさは、テストの形式や参加者などによって変わります 3。平均10歳ほどの子どもでも、思い出す練習は読み直しより記憶を助けました 4。
「スラスラ読めた=覚えた」は錯覚になりやすい、ということです。大事なのは、まず思い出そうと努力することです。この活動では、まちがいやつづりの誤りを残さないよう、そのあと正しい答えも確かめます。難しすぎて何も思い出せない状態が続くと効果は小さくなりやすいので、思い出せないときはヒント(頭文字・日本語の意味)を出し、答え合わせを必ずセットにします。
❓ よくある質問
Q. 想起練習(テスト効果)とは何ですか?
思い出すこと自体が記憶を強くする、という現象です。文章を読み直すグループと何も見ずに思い出して書くグループを比べた実験では、5分後は読み直しの方がよかったのに、2日後・1週間後には思い出したグループの方がずっと多く覚えていました 1。
Q. 想起クイズは、どう進めますか?
教科書を閉じて机の上を空にし、「前回の Unit 3 の単語やフレーズを、思い出せるだけ英語で」と言って2分間ひとりで書かせます。ペアで30秒見せ合い、教科書を開いて答え合わせ。思い出せなかった語に赤丸をつけ、書けた数を記録します。
Q. 想起クイズは採点しないのですか?
練習なので、点数は成績に入れないのが基本です。ワークシートは回収せず、ノートに貼らせます。回収しない・点数にしないことを最初に伝えると、教科書をこっそり見る理由もなくなります。単語の定着は、後日の小テストや定期テストで見ます。
Q. 何も書けずに固まる生徒がいます。
机の間を回って頭文字だけ小声で伝えるか、お題を「日本語の意味→英語」に切り替えて手がかりを増やします。苦手な生徒が多いクラスでは、最初は日本語→英語を3つにしぼり、頭文字つき(d____)で出します。
Q. 小学生でも、思い出す練習は効果がありますか?
平均10歳ほどの子どもでも、思い出す練習は読み直しより記憶を助けたという研究があります 4。小学校では書かせずに、絵カードを見せて言わせる口頭版にし、ペアで交互に言わせると一人ひとりが思い出します。
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📑 出典(4件)
本文の上付き数字に対応。✔ は DOI / ISBN / 公式ページを書誌データベースと機械照合した印です。
- Roediger, H. L., & Karpicke, J. D. (2006). Test-enhanced learning: Taking memory tests improves long-term retention. Psychological Science, 17(3), 249-255. doi:10.1111/j.1467-9280.2006.01693.x ✔ DOI照合済テストで思い出すことが、読み直すより長期の記憶に効く(テスト効果)ことを示した有名な実験
- Karpicke, J. D., & Roediger, H. L. (2008). The critical importance of retrieval for learning. Science, 319(5865), 966-968. doi:10.1126/science.1152408 ✔ DOI照合済外国語の単語ペアの学習で、覚えた後も思い出す練習を続けると長く残る。読み直しを続けても効果なし
- Adesope, O. O., Trevisan, D. A., & Sundararajan, N. (2017). Rethinking the use of tests: A meta-analysis of practice testing. Review of Educational Research, 87(3), 659-701. doi:10.3102/0034654316689306 ✔ DOI照合済小テストで思い出す練習(テスト効果)が読み直しより記憶に残ることを示した教育全般のメタ分析
- Karpicke, J. D., Blunt, J. R., & Smith, M. A. (2016). Retrieval-based learning: Positive effects of retrieval practice in elementary school children. Frontiers in Psychology, 7, 350. doi:10.3389/fpsyg.2016.00350 ✔ DOI照合済平均10歳の子ども88人でも、思い出す練習は読み直しより記憶を助けた。読解力や処理速度の差に関係なく効果
最終更新 2026-10-18 ・ 原田英語 まちがいのご指摘はこちら





