聞いて「昨日?毎日?」を判断する文法タスク ― 構造化インプットのつくり方
文法を言わせる前に、形に注意しないと意味がとれない文を聞かせる。「昨日のこと」と「ふだんの毎日のこと」の文を混ぜて、"I walked to school." はどっちの話?――語尾の -ed を手がかりに判断させる活動です。
- ⏱ 時間
- 10分
- 🧰 準備
- 少し
- 👥 形態
- 全体→ペア
- 🎯 技能
- 文法・リスニング
- 📶 CEFR
- A1-B1

- 文法の形(-ed、-s など)に注意しないと意味がとれない状況をつくり、形と意味を結びつける。
- 言う練習の前に、理解の段階で文法を処理する経験を積む。
- 「自分にあてはまる?」の判断で、文法を自分のことにつなげる。
構造化インプットってなに?
ひとことで言うと、文法の形(-ed など)に注意しないと意味を正しく判断できないように組み立てた英文を聞かせ(または読ませ)、選んだり判断したりして答えさせる練習です。
ふだんの英文には yesterday のような「ヒントになる語」がたくさんあるので、生徒は -ed を聞かなくても「過去の話だ」とわかってしまいます。構造化インプットでは、そうしたヒントをわざと外し、形に注意して処理しないと意味が取れないように英文を組み立てます。生徒はまだ言わなくてよく、聞いて「どっちの意味?」を判断するだけです。このように正解のある活動のほか、内容について自分の意見や当てはまるかどうかを答える活動もあります(このページの Part B は、Part A のあとに意味を自分のことにつなげる活動です)。
信号の色だけで「進む・止まる」を判断する練習のようなものです。ふだんの道路では、周りの車の動きを見れば、信号を見なくても何となく進めてしまいます。そこで周りの車をなくし、信号の色(=文法の形)だけを見ないと判断できない状況にすると、色に注意する習慣がつきます。大事なのは「周りのヒントを消すこと」です。
似た練習とのちがい
| ふつうのリスニング | 口頭ドリル(言わせる練習) | 構造化インプット | |
|---|---|---|---|
| 生徒がすること | 内容を聞き取る | 文型をまねて言う・作る | 聞いて意味を判断する(言わない) |
| 文法の形への注意 | ヒントの語があれば聞きのがしやすい | 形は作るが、意味を考えなくても言えることがある | 形に注意しないと答えられない |
| ねらい | 内容の理解 | 形を言えるようにする | 形と意味を結びつける |
やり方を3ステップで
- 作る:ねらいの形だけが手がかりになる文を10文前後用意する(yesterday などのヒントの語は外す)。
- 聞いて判断する:先生が1文ずつ読み、生徒は絵やカードで「どっちの意味か」を答える。毎回すぐに正解を示す。
- 自分のことにつなげて、言う活動へ:「自分にあてはまる?」で判断させ、次の時間に言う・書く活動に進む。
授業の流れ(分ごと)
| 時間 | 先生 | 生徒 |
|---|---|---|
| 0:00〜1:00 | 「昨日のことの文と、ふだんの毎日のことの文を混ぜるよ」と場面を示し、「-ed の音が聞こえたら過去のこと」と短く説明。walk / walked を言い分ける | 聞いてまねる |
| 1:00〜5:00 | Part A:8文を1文ずつ読み、カードを挙げさせ、すぐ正解を示す | Yesterday / Every day のカードを挙げる・記入 |
| 5:00〜8:00 | Part B:5文を読む | 自分に○×、ペアで比べる |
| 8:00〜10:00 | Part C の書き方を示す(次の時間の言う活動につなげる) | 自分のことを2文書く |

- 文法項目と「ヒントになる語」を決める。 例:過去形 -ed。yesterday などの時を表す語は文から外します。-ed の音を聞かないと答えられないようにするためです。
- 10文前後用意する。 "I walked to school." / "I walk to school." / "We played tennis." / "We play tennis." …(ワークシートの解答欄に読み上げ文の例があります)。
- カードを作らせる。 ノートの切れ端に「Y(Yesterday)」「E(Every day)」と書かせ、両手に持たせます。
- 場面とルールを短く説明する(1分)。 「これから『昨日したこと』と『ふだん毎日すること』の文を混ぜて読みます」と、昨日のカレンダーと毎日の時計の絵を黒板に貼ります。そのうえで「-ed の音が聞こえたら過去のこと(ここでは昨日の話)」。過去形そのものは「昨日」に限らず過去のことを表す、と一言そえます。
- 聞いて判断(4分)。 先生が1文ずつ読み、生徒はカードを挙げます。すぐに正解を示し、ワークシートに○をつけさせます。
- 自分のことで判断(3分)。 ワークシート Part B の5文(I watched TV. など)を、生徒が「自分の文」として読み、昨夜の自分にあてはまれば○、ちがえば×をつけます(先生は1文ずつ読み上げて、全員のペースをそろえます)。ペアで答えを比べます("Did you watch TV?" "Yes!" と自然なやり取りが生まれます)。Part B は -ed の聞き分けの練習ではありません。last night が先に示されているので、-ed に注意しなくても答えられます。Part A で形と意味を結んだあと、その意味を自分のことにつなげる活動です。
- 次の時間に言う活動へ。 Part C で書いた文を使って、ペアで "What did you do last night?" のやり取りに進みます。
過去形 -ed(Yesterday / Every day)
I walked to school. / I walk to school.
We played soccer. / We play soccer.
She cleaned her room.(主語が she のときは cleans と比べる)
They watched a movie. / They watch a movie.
My father washed the car. / My father washes the car.
I visited my grandmother. / I visit my grandmother. (この活動では、どの文も「昨日のこと」か「ふだん毎日のこと」のどちらかを言っている、という約束で聞かせます。過去形は昨日に限らず過去のことを、現在形は習慣のほか今の状態や一般的なことも表す、とあとで補足します)
受け身(する側?される側?:絵を2枚用意) 7. The cat chased the dog. / The cat was chased by the dog. 8. Ken helped Mary. / Ken was helped by Mary.
現在完了(継続・結果)と過去形(高校) 9. I lived in Kyoto for three years. / I have lived in Kyoto for three years. 10. She has lost her key.(今も鍵がないことが話題として大事だ、と受け取られやすい)/ She lost her key.(過去の出来事として述べる。今どうかは文だけではわからない) (9の現在完了は、ふつう「今まで住み続けている」と受け取られやすい、という傾向です。文法の形だけで機械的に決まるわけではないので、どちらの意味かを決める状況の絵や一言を添えます。現在完了には継続のほか、経験・完了・結果の使い方もあります)
仮定法(現実的にありうる条件?現実から遠い条件?:高校) 11. If I have time, I will go.(時間ができるかもしれない)/ If I had time, I would go.(時間がある可能性は低い、または今は時間がないと考えている) 12. If it rains tomorrow, I will stay home. / If I were a bird, I would fly to you. (どちらの意味かを決める状況の絵や一言を添える。I wish ~ の文は条件文とは別の活動で扱う)
- 小学校:文法の説明はせず、"I like..." / "I don't like..." を聞いて、好き・きらいの絵カードを挙げる程度の「聞いて判断」にとどめます。
- 中学:受け身(「する側?される側?」の絵を選ぶ)などにも応用できます。三単現の -s は、主語を聞けば答えがわかってしまうことが多く、-s に注意しないと解けない課題を作るのが難しいので、別の工夫が必要です。
- 高校:仮定法(「現実的にありうる条件?現実から遠い条件?」)、現在完了の継続用法と過去形(「今まで続いている話?もう終わった話?」状況の絵を添えて)など、意味の判断が難しい項目で。
- 大人数クラス:カードを挙げる、指で1か2を示すなど、全員が同時に答えられる方法を使います。誤答の多かった文はもう一度聞かせます。
- 苦手な生徒が多いクラス:練習の最初の数文は文字も黒板に書いて見せ、-ed に色をつけます。そのあと、文字なしの新しい文で聞いて判断できるか確かめます(文字を見て答えたものは、聞き取れた証拠にはなりません)。
- オンライン・タブレット:投票機能やチャットの「Y / E」で同時に答えさせます。音声は先生のマイクで読み上げます。
構造化インプットは理解の練習です。評価は、理解の確認と、その後の産出の活動に分けて考えます。
- 知識・技能:Part A の正答から、形と意味を結びつけられているかを確認(成績には入れず、つまずきの把握に使う)。
- 知識・技能(つづき):Part C で、過去のことを過去形で正しく書けているか。
- 思考・判断・表現:この活動の中心ではありません。見るなら、次の時間に「欠席した友だちに、昨日の授業や行事で何をしたかを伝える」のように目的・相手・場面を決め、必要な出来事を選んで順序立てて伝えられるかを見ます。
- 主体的に学習に取り組む態度:この活動1回では評定に使いません。聞き直しを求める、まちがえた理由をふり返って聞き方を変える、など粘り強さとやり方の調整を、単元の中のいくつかの場面で見ます。
下の表は、この活動の中での形成的な確認(次の指導に生かす)の目安です。
| 見るところ | A | B | C |
|---|---|---|---|
| 聞いて判断(Part A) | ほぼすべて正しく判断できる | 半分以上判断できる | 判断がばらばら |
| 書く(Part C) | 過去形を正しく使い、自分のことを書ける | 誤りはあるが過去のことを書こうとしている | 書けない |
- ヒントになる語が文に残っていたら → yesterday や every day が入っていると、形を聞かなくても答えられます。読み上げ文を作るときに必ず外します。
- -ed の音(/t/ /d/ /ɪd/)が聞き取れない生徒が多かったら → walked / played / wanted の3つを先生がゆっくり言い分けてから始めます。
- 正解をすぐ示していなかったら → 誤解を早めに直せるよう、判断のあとに正解を確かめさせます。
- 理解だけで終わっていたら → 理解できても言えるとは限りません。次の時間に言う活動を必ず入れましょう。
- 当てずっぽうでカードを挙げる生徒がいたら → 「もう一回聞きたい人?」と聞き直しの機会を作り、2回目で判断させます。
学習者は、意味がわかる手がかりがあれば、文法の形を聞き流しがちです。たとえば yesterday があれば、-ed を聞かなくても「過去だ」とわかってしまいます。第二言語習得研究者の Bill VanPatten 氏らが提唱した処理指導(processing instruction)は、文法の形についての説明と、学習者のそうした聞き方(処理のくせ)を変えるように作ったインプットの練習を組み合わせる指導で、その中心になる活動が、形に注意しないと意味がとれないように作った構造化インプットです(このページの活動は、その例です)。この方式を最初に試した実験では、説明+産出(文を作る)練習をした従来型のグループは産出のテストだけが伸びたのに対し、処理指導のグループは理解と産出の両方が伸びました 1。
ただし、その後の研究をまとめたメタ分析(42実験)では、処理指導は理解の力を伸ばすには産出練習より有利でしたが、産出の力では産出練習と同じくらいでした。両方のグループに同じ説明を与えた比較では、産出の力については産出練習の方が上回っていました。また、処理指導は大人の方が中高生より効果が大きかったとも報告されています 2。理解中心と産出中心の文法指導を比べた別のメタ分析でも、理解中心の指導の当初の優位は、主に処理指導によるものでした 3。
つまり「聞かせるだけで十分」でも「言わせないと意味がない」でもありません。このページでは、まず聞いて形と意味を結び、そのあと言う、という順番で両方を入れることを提案しています。ただし、上のメタ分析は「聞く→言う」の順番そのものがよいかを調べたものではないので、これは研究をふまえた実践上の一案です 2。
❓ よくある質問
Q. 構造化インプットは、どう作ればいいですか?
文法項目を決めたら、yesterday などのヒントになる語を文から外し、形だけが手がかりになる文を10文前後用意します(I walked to school. / I walk to school.)。「昨日のこと」と「ふだんの毎日のこと」の文を混ぜると場面を示してから読み、生徒は聞いて Y(Yesterday)か E(Every day)のカードを挙げ、先生はすぐに正解を示します。
Q. 構造化インプットと処理指導は、どう関係していますか?
処理指導(processing instruction)は、文法の形の説明と、学習者の聞き方のくせを変えるように作ったインプット練習を組み合わせる指導で、その中心の活動が構造化インプットです。この方式を最初に試した実験では、説明+産出練習の従来型のグループは産出のテストだけが伸びたのに対し、処理指導のグループは理解と産出の両方が伸びました 1。
Q. 聞かせるだけで、言えるようになりますか?
42実験のメタ分析では、処理指導は理解の力を伸ばすには産出練習より有利でしたが、産出の力では同じくらいでした。同じ説明を両方に与えた比較では、産出は産出練習の方が上でした 2。理解できても言えるとは限らないので、次の時間に What did you do last night? のような言う活動を必ず入れます。
Q. 生徒が当てずっぽうでカードを挙げます。
「もう一回聞きたい人?」と聞き直しの機会を作り、2回目で判断させます。-ed の音が聞き取れない生徒が多いときは、walked / played / wanted の3つを先生がゆっくり言い分けてから始めます。
Q. 過去形以外の文法にも使えますか?
使えます。中学では受け身(する側?される側?)、高校では仮定法(現実的にありうる条件?現実から遠い条件?)や、現在完了の継続用法と過去形(今まで続いている話?もう終わった話?状況の絵を添えて)などに応用できます。
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📑 出典(3件)
本文の上付き数字に対応。✔ は DOI / ISBN / 公式ページを書誌データベースと機械照合した印です。
- VanPatten, B., & Cadierno, T. (1993). Explicit instruction and input processing. Studies in Second Language Acquisition, 15(2), 225-243. doi:10.1017/S0272263100011979 ✔ DOI照合済インプットの処理のしかたを練習させる「処理指導(PI)」を従来の文法指導と比べた実験
- Shintani, N. (2015). The effectiveness of processing instruction and production-based instruction on L2 grammar acquisition: A meta-analysis. Applied Linguistics, 36(3), 306-325. doi:10.1093/applin/amu067 ✔ DOI照合済処理指導(インプット処理)と産出練習のメタ分析(42実験)。理解テストは処理指導が有利、産出テストは同等
- Shintani, N., Li, S., & Ellis, R. (2013). Comprehension-based versus production-based grammar instruction: A meta-analysis of comparative studies. Language Learning, 63(2), 296-329. doi:10.1111/lang.12001 ✔ DOI照合済理解中心と産出中心の文法指導を直接比べた研究のメタ分析(35研究)。どちらも大きな効果
最終更新 2026-10-18 ・ 原田英語 まちがいのご指摘はこちら





