文法のルールを生徒が見つける「意識高揚タスク」― 説明する前に、考えさせる
先生がルールを説明する前に、例文のカードを配って「どんなきまりがある?」とグループで探させる。生徒は文法について英語や日本語で話し合い、自分の言葉でルールを書きます。
- ⏱ 時間
- 15-20分
- 🧰 準備
- しっかり
- 👥 形態
- グループ(3〜4人)
- 🎯 技能
- 文法・やり取り
- 📶 CEFR
- A2-B2

- 文法の形と意味の関係に、生徒が自分で気づく。
- 文法そのものを話題にして、グループで考えを言葉にする。
- 見つけたルールをすぐ自分の文で使い、説明を「聞く」だけの文法から抜け出す。
意識高揚タスクってなに?
ひとことで言うと、例文などの「文法のデータ」を生徒自身が分析して、ある文法の仕組みに気づき、理解する課題です。このページでは、先生がルールを説明する前に例文カードを配り、グループで「どんなきまりがある?」を探させて、自分たちの言葉でルールを書かせる形を紹介します。
英語では consciousness-raising task(コンシャスネス・レイジング・タスク)と言います。「意識高揚」はかたい訳語ですが、中身は「文法の形と意味のつながりに、生徒自身が気づくようにする」ということです。
推理ドラマの探偵です。証拠(例文)を並べて見比べ、「犯人はこのルールだ」と推理します。大事なのは、先生が答えを言う前に、生徒どうしで比べて推理する時間があること。そして最後に、先生が謎解き(整理)を必ずすることです。
ふつうの文法説明とのちがい
| ふつうの文法説明 | 意識高揚タスク | |
|---|---|---|
| 順番 | 先生がルールを説明 → 例文で練習 | 例文を比べる → 生徒がルールを書く → 先生が整理 → 練習 |
| 生徒がすること | 説明を聞いて、問題を解く | 話し合って、ルールを見つける |
| ルールのでき方 | 先生が示したルールを理解する | 例文を根拠に、生徒がルールを組み立てる |
どちらも「ルールに目を向けさせる指導(明示的な指導)」である点は同じです。ちがうのは、ルールを最初に言うのが先生か、生徒か、です。
やり方を3ステップで(タスク本体の2ステップ+そのあとの練習)
- 仕分ける:○の文と×の文が混ざったカードを、班で「自然」「不自然」に分ける。
- ルールを書く:「to と for はどう使い分ける?」を話し合い、日本語でよいので1〜2文にまとめる。先生が整理する。
- 使ってみる(タスクのあとの練習):新しい動詞の確認問題と、自分のことを書く1文で、見つけたルールを使う。気づいて理解するまでが意識高揚タスクで、ここからは使う練習です。
授業の流れ(分ごと)
| 時間 | 先生 | 生徒 |
|---|---|---|
| 0:00〜2:00 | 「今日は先生が説明しません。ルールを見つけるのはみんな」と宣言。ワークシート配布 | 3〜4人の班になる |
| 2:00〜9:00 | 机の間を回りながら、"Why is this one wrong?" と問いかける(答えは言わない) | ○×に仕分けて話し合う |
| 9:00〜12:00 | 「ルールを1〜2文で書こう」 | 班でルールを書く |
| 12:00〜16:00 | 2〜3班に発表させ、板書して整理。教科書の説明と照らす | 発表・自分たちのルールを修正 |
| 16:00〜20:00 | Step 3・4 を個人で | 確認問題と自分の文 |

- 文法項目を1つ選ぶ。 ルールが比較的はっきりしているものが向いています。例:give / buy の「人に物を」の2つの語順、比較級の形、There is / are。現在完了と過去形、a と the は文脈によって使い分けが変わるので、○×の仕分けではなく、文脈つきで意味や場面を比べる発展編として扱います。
- 例文カードを8〜12枚作る。 正しい文と、ルールに反する文を混ぜます(ワークシートの Step 1 の表をそのまま使えます)。カードにする場合は班ごとに1セット。
- 班の机を寄せ、役割を決める。 読み上げ係・記録係・発表係。役割を決めると、全員に出番ができます。
- グループで仕分け(7分)。 「○と×のちがいは?」「to と for はどう使い分ける?」を話し合います。先生は答えを言わず、"Look at No. 5 and No. 4." のように比べる文を指さすだけ。
- ルールを書く(3分)。 自分たちの言葉で1〜2文にまとめます。日本語でかまいません。
- 発表と確認(4分)。 いくつかのグループのルールを板書し、先生が整理して、教科書の説明と照らし合わせます。
- 使ってみる(4分)。 新しい動詞(send, cook, lend など)で確認問題をし、自分のことを1文書きます。
現在完了と過去形(中3)
- I have lived in Osaka for five years. I still live here.(今も住んでいる)
- I lived in Osaka for five years when I was a child.(子どものころの、終わった期間)
- × I have visited Kyoto last year.
- I visited Kyoto last year.
- Have you ever eaten natto? / Did you eat natto yesterday?
a と the(中1〜高校):「聞き手がどれを指すかわかるか」で比べる 6. I have a dog. The dog is very big.(初めて話題にするときは a、2回目からは the) 7. Please close the door.(初めて話題にしても、どのドアか聞き手にわかるので the) 8. Look at the moon. / I want a new bike.(聞き手にとって1つに決まるものは the、聞き手がどれか特定できない1つのものは a)
比較級(中2) 9. tall → taller / big → bigger / easy → easier 10. beautiful → more beautiful / × beautifuler
There is / are(中1) 11. There is a cat under the table. / There are two cats under the table. 12. × There is two cats under the table.
- 小学校:文法用語は使わず、"I have a dog."(犬1匹の絵)/ "I have two dogs."(犬2匹の絵)のように、絵と文を組み合わせたカードで「どの絵に合う?」をクイズ形式で考える程度にとどめます。
- 中学:比較級(-er / more)、三単現の -s、名詞の複数形など、規則が見えやすい項目から。ルールは日本語でまとめさせます。
- 高校:冠詞、時制、関係詞の制限・非制限用法など、説明だけではわかりにくい項目に。話し合いを英語でさせると、文法について英語で話す練習にもなります。
- 大人数クラス:同じカードセットを全グループに配り、1グループ1つだけルールを発表させます。他のグループは「同じ」「ちがう」を挙手で。
- 苦手な生徒が多いクラス:例文を6枚に減らし、「ちがいはどこ?」の部分にあらかじめ下線を引いておきます。ルールは選択肢から選ぶ形にしてもかまいません。
- オンライン・タブレット:共同編集のスライドにカードを並べ、グループごとにドラッグで仕分けさせます。
- 知識・技能:確認問題(Step 3)と、その後の小テストで、ルールを使えているか。Step 2 の「自分たちの言葉のルール」は、理解の途中経過を見る形成的な評価(様子を見て次の指導に生かすもの)に使います(日本語で説明する力そのものを評定にはしません)。
- 思考・判断・表現:この活動だけでは見きわめにくい観点です。評価するなら、Step 4 を「誕生日に家族に何をしたか、ALT の先生に伝える」のように相手・目的・場面のある課題にして、内容に合わせて to / for の文を選んで伝えられているかを見ます。
- 主体的に学習に取り組む態度:例文を根拠に確かめながら、粘り強くルールを直しているか。ふりかえりで「最初のルールのどこを、なぜ直したか」を書けているか(発言の回数や係の仕事だけで評定しない。単元の中の後の課題とあわせて観察して記録する)。
| 観点 | A | B | C |
|---|---|---|---|
| ルールの説明(形成的な評価) | 例文を根拠に、使い分けを正しく説明できる | 一部は説明できる | まだ説明できない(先生の整理で確認) |
| 使用(Step 3・4) | 新しい動詞でも正しく使え、自分の文も正しい | 確認問題はおおむね正解 | 誤りが多い |
- ルールが複雑すぎて混乱したまま終わりそうになったら → 例外の多い項目は避け、最初はルールがはっきりした項目で。途中で「ヒント:4と5を比べて」と比べる文を指定します。
- 一部の生徒だけが話して、ほかは見ているだけになったら → 読み上げ係・記録係・発表係の役割を決め、ワークシートは1人1枚にします。
- 生徒が見つけたルールがまちがっていたら → 頭ごなしに否定せず、「この文で確かめてみよう」と反例を示します。最後に先生が必ず整理します。
- 時間がかかりすぎたら → 例文を減らし、Step 4 は宿題にします。
- 見つけて終わりになっていたら → ルールがわかっても、使えるとは限りません。Step 3・4 や、その後の Find Someone Who などの使う活動につなげます。
意識高揚タスク(consciousness-raising task)の考え方を授業で試した初期の研究では、大学のEFLクラスで、文法の問題をグループで解く課題を行いました。限られた結果ながら、この課題によって学習者は文法について話し合うやり取りをし、難しい規則の知識を伸ばしたと報告されています。著者自身が「探索的な研究」と位置づけている点には注意が必要です 1。
続く研究では、語順を扱う3つの意識高揚タスクで、文法の知識が伸び、意味を確かめ合うやり取り(意味交渉)も生まれました。意識高揚タスクは、文法の指導をコミュニケーションの中に組みこむ方法の1つとして勧められています 2。
より広く見ると、第二言語の指導効果をまとめたメタ分析では、ルールに目を向けさせる明示的な指導は、暗示的な指導より平均して効果が大きいと報告されています。ただし同じ論文は、効果の大きさが測り方(文法テストか、自由な発話か)に左右されること、研究ごとの定義のちがいや追試の少なさから一般化には限界があることも指摘しています 3。このページの活動は、ルールを先に示さず、例文から生徒自身に見つけさせる形(帰納的な形)の明示的指導です。タスクで目指すのは形への気づきと理解(文法の知識を育てること 2)なので、使えるようになるには別に練習が要ります。だからこそ「見つけたら使う」段階(Step 3・4 とその後の活動)までをセットにします。
ポイント:文法の時間は「先生が説明して生徒が聞く」だけでなく、生徒が文法を話題にして話し合う時間にもなります 1。説明を聞く時間より、頭を使う時間が長くなるのがこの活動の強みです。
❓ よくある質問
Q. 意識高揚タスクとはどんな活動ですか?
文法のデータ(例文)を分析して、ある文法の仕組みに生徒自身が気づき、理解する課題の総称です。このページでは、その一つの形として、正しい文とルールに反する文を混ぜた例文を班で仕分け、「○と×のちがいは?」を話し合って、文法の形と意味の関係を生徒自身が見つける課題です。ルールは日本語で1〜2文にまとめます。ルールを生徒自身に見つけさせる形の明示的指導です。
Q. どんな文法項目が向いていますか?
ルールが比較的はっきりしているものが向いています。例:give / buy の「人に物を」の2つの語順、比較級の形、There is / are。現在完了と過去形、a と the は文脈によって変わるので、文脈つきで意味を比べる発展編として扱います。例文カードは8〜12枚用意し、正しい文とルールに反する文を混ぜます。
Q. 生徒が見つけたルールがまちがっていたら?
頭ごなしに否定せず、「この文で確かめてみよう」と反例を示します。最後に先生がいくつかの班のルールを板書して必ず整理し、教科書の説明と照らし合わせます。先生は仕分けの途中でも答えは言わず、比べる文を指さすだけにします。
Q. 意識高揚タスクに効果はありますか?
語順を扱う3つの意識高揚タスクの研究では、文法の知識が伸び、意味を確かめ合うやり取りも生まれました 2。ルールに目を向けさせる明示的な指導は暗示的な指導より平均して効果が大きいというメタ分析もあります。ただし主に文法テストで測った結果で、自由に話す・書く力への一般化には限界があると論文自身が述べています 3。ただし見つけて終わりにせず、使う活動につなげます。
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📑 出典(3件)
本文の上付き数字に対応。✔ は DOI / ISBN / 公式ページを書誌データベースと機械照合した印です。
- Fotos, S., & Ellis, R. (1991). Communicating about grammar: A task-based approach. TESOL Quarterly, 25(4), 605-628. doi:10.2307/3587079 ✔ DOI照合済文法のルールを生徒どうしで話し合って見つける「意識高揚タスク」を日本の大学で試した研究
- Fotos, S. S. (1994). Integrating grammar instruction and communicative language use through grammar consciousness-raising tasks. TESOL Quarterly, 28(2), 323-351. doi:10.2307/3587436 ✔ DOI照合済語順を扱う3つの意識高揚タスク。文法の理解が伸び、意味のやり取りも生まれた
- Norris, J. M., & Ortega, L. (2000). Effectiveness of L2 instruction: A research synthesis and quantitative meta-analysis. Language Learning, 50(3), 417-528. doi:10.1111/0023-8333.00136 ✔ DOI照合済第二言語の指導効果をまとめた最初の本格的メタ分析(49研究)。明示的な指導が暗示的な指導より効果的
最終更新 2026-10-18 ・ 原田英語 まちがいのご指摘はこちら





