あいさつのルーティン ― 毎時間3〜5分の「Hello → How are you? → 今日の日付」を育てる
「How are you?」「I'm fine, thank you.」で毎回終わっていませんか。気持ちカードと日付・天気の決まった流れを毎時間くり返し、少しずつ言いかえる機会をつくって、決まり文句を「自分の言葉」に育てることを目指します。
- ⏱ 時間
- 3-5分
- 🧰 準備
- 少し
- 👥 形態
- 全体→ペア
- 🎯 技能
- 小学校・帯活動・やり取り・スピーキング
- 📶 CEFR
- Pre-A1-A1

- 授業の始まりを毎回同じ英語の流れにして、子どもが安心して英語の時間に入れるようにする。
- あいさつ・気持ちを伝える・聞き返すという基本のやり取りを、くり返しの中で自分のものにする。
- 決まった答え(I'm fine.)から、自分が伝えたい気持ちや、話してよい理由を言う方向へ少しずつ広げる(本当の気持ちでなくてもよく、パスもできる)。
あいさつのルーティンってなに?
ひとことで言うと、毎回の英語の授業の最初の3〜5分に、「あいさつ → 気持ち → 日付・天気」を、いつも同じ流れでやり取りする帯活動です。
部活の練習前の、決まった準備運動です。毎回同じ順番だから、だれも迷わずに体が動きます。大事なのは、順番は変えずに、中身を少しずつ変えていくこと(気持ちの語を増やす、Why? を足す)。同じことのくり返しで終わらせないのがコツです。
スモールトークとのちがい
| あいさつのルーティン | スモールトーク | |
|---|---|---|
| 流れ | 毎回ほぼ同じ(あいさつ・気持ち・日付・天気) | 話題が毎回かわる |
| 使う英語 | 決まった表現の一部を入れかえて使う | 自分のことを、もっと自由に話したり聞いたりする |
| 向いている時期 | 英語を始めたばかりのころから | 決まった表現に慣れてきたら(あいさつの次の段階として) |
やり方を3ステップで
- あいさつ:Hello, everyone! → Hello! を全員で。
- 気持ちを聞き合う:How are you? に気持ちカードを指しながら答え、How about you? と聞き返す。慣れたら Why? と理由も。
- 日付と天気:当番の子が What's the date today? と聞き、全員で It's ... . と答える。続けて当番が How's the weather today? と聞き、全員で答える。
授業の流れ(分ごと)
| 時間 | 先生 | 子ども |
|---|---|---|
| 0:00〜0:30 | Hello, everyone! とあいさつ(歌やチャンツでもよい) | Hello! と返す |
| 0:30〜1:30 | 気持ちカードを指しながら How are you? を数人に | 自分の気持ちを言う |
| 1:30〜2:30 | ペアで How are you? → How about you? | ペアで聞き合う・ワークシートに記録 |
| 2:30〜3:30 | What's the date today? How's the weather? | 日付・天気を全員で言う |
| 3:30〜4:30 | 1〜2人の答えを取り上げて全体に質問(Why?) | 理由を一言で言う/Me, too! で反応 |

- 掲示物を固定する:黒板の端(または電子黒板の1画面)に、気持ちカード8〜10枚・天気カード・日付の枠をいつも同じ場所に置く。場所が変わらないことがルーティンの命です。
- 第1段階(4月〜):先生の Hello! → 全員 Hello! → 先生が数人に How are you?。子どもは気持ちカードを指して答える。言えない子はカードを指すだけでOK。
- 第2段階(慣れてきたら):ペアで聞き合う。答えたら必ず How about you? と聞き返すルールを足す。
- 第3段階:先生が答えに Why? と聞く。I'm sleepy. → I went to bed late.(日本語まじりでも受け止め、先生が英語で言い直す)。
- 日付と天気:当番の子が What's the date today? と全体に聞き、全員で It's May 10th. と答える。続けて当番が How's the weather today? と聞き、全員で It's sunny. と答える。5・6年生は曜日・月のつづりを見ながら言う。
- 記録:ワークシートに毎回1行ずつ記録させると、気持ちの語が増えていく様子が子どもにも見える。外国語活動(3・4年)は聞くこと・話すことの活動なので 1、3・4年は気持ちを顔の絵でかき、天気に○をつけるだけにする。英語を書くのは5・6年で、音声で十分に慣れた語を、語群から選んで書き写す。
- 月に1回、新しい語を1つ足す:nervous, excited, full など。季節や行事(運動会前は nervous)に合わせると使いたくなります。
気持ちの語(カードにする10語) happy / good / great / fine / so-so / sleepy / hungry / tired / excited / nervous
理由の言い方(Why? と聞かれたら)
- I'm happy. ― It's Friday!
- I'm sleepy. ― I got up early.
- I'm hungry. ― I didn't eat breakfast.
- I'm tired. ― I had soccer practice.
- I'm excited. ― We have P.E. today.
- I'm nervous. ― I have a test.
- I'm hot. ― I ran to school.
- I'm great. ― My cat is cute!
反応の言い方 Me, too! / Really? / Nice! / Oh, no! / Good for you!
日付・天気の言い方 It's sunny / cloudy / rainy / snowy / windy. ― It's April 15th (fifteenth). ― It's Monday.
オリジナルのあいさつチャンツ(手拍子に合わせて) Hello, hello, how are you? / I'm happy, how about you? / Look outside! Is the sky blue? / Now it's English time!
- 小学校3・4年:歌やチャンツでスタートし、気持ちはカードを指すだけでもよい。日付は先生が言い、子どもはリピート。
- 小学校5・6年:Why? への答えまで。日付は当番が板書し、全員で読む(文字に慣れる)。週1回、当番が自分で考えた質問を1つ足す(What did you eat for breakfast?)。
- 中学:スモールトーク の入口として、How was your weekend? など過去のことを聞く質問に広げる。
- 大人数クラス:全員への質問は3人までにし、残りはペアで一斉に。先生は机の間を回りながら2〜3組の答えを聞いてメモし、全体に紹介する。
- 苦手な子が多いクラス:答えの選択肢カードを机上に配り、指さしで答えてもよいことにする。言えたら一言ほめる。
- タブレット:あいさつツールで天気・日付を画面に出す。記録をアンケート機能で取ると、クラスの「今日の気持ち」がグラフで見えて会話のきっかけになります。
帯活動なので、毎回の評価はしません。学期に数回、決めた子を観察して記録します。
- 知識・技能:3・4年(外国語活動)は、あいさつ・気持ち・日付・天気の基本的な表現に慣れ親しんでいる。5・6年(外国語)は、それらの表現を使ってやり取りする技能を身に付けている。
- 思考・判断・表現:友だちの今日のようすを知り、自分のようすを伝えるために、自分が伝えたい気持ちに合う語を選び、必要に応じて理由を一言添えている。相手の答えに合わせて反応している(言った気持ちが本当かどうかは評価しない)。
- 主体的に学習に取り組む態度:伝わらないときに、カードを指したり言い直したりして伝えようとしている。ふりかえりで決めた「次に使いたい語」を、次の時間に試している(ワークシートの記録で語が増えたかどうかは、知識・技能の形成的な評価(様子を見て次の指導に生かすもの)に使う)。
3・4年の外国語活動は、指導要録に評価の観点を記入したうえで、それらに照らして児童に身に付いた力や顕著な学習状況を文章で端的に記述します。下の表は、学年ではなく手順の段階ごとに「その段階の目標を達成した姿」を示した、毎時間の声かけに使う形成的な目安です(三つの観点の評価規準は上のように分けて設定します)。カードを指すなどの支えを使うこと自体を低く見ることはしません。3・4年に第3段階まで求める必要もありません。
| 段階 | その段階の目標を達成した姿(形成的) |
|---|---|
| 第1段階 | カードを指したり I'm hungry. などと言ったりして、自分の気持ちを伝えられる |
| 第2段階 | 自分の気持ちを言い、How about you? と聞き返せる |
| 第3段階 | 気持ちに理由を一言添えたり、相手の答えに Me, too! などで反応したりできる |
- 全員が I'm fine. しか言わない → I'm fine. を禁止にはせず、「今日は fine 以外で言える人?」と挑戦にする。気持ちカードの中に fine を入れないのも手。
- 毎回同じで子どもが飽きる → 流れは変えず、中身を変える。月に1語の新しい気持ち、当番が考える質問1つ、など「小さな変化」を足す。
- 時間が延びて本題に入れない → タイマーで5分以内と決める(慣れたら3分を目標に)。全体への質問は3人まで。
- 気持ちを人前で言うのがつらい子がいる → 本当の気持ちでなくてもよいこと、パスしてもよいこと、ワークシートの記録も空欄でよいことを伝える。sad や tired を言った子には、授業後にそっと声をかける。
- 日付の序数(3rd, 15th)でつまずく → 最初は先生が言ってリピートだけ。5・6年生でカレンダーを見ながら言えればよい。
学習指導要領の外国語活動(3・4年)の話すこと[やり取り]の目標には、基本的な表現を用いて挨拶・感謝・簡単な指示をしたり、それに応じたりすることが示されています。5・6年の外国語でも、初対面の人や知り合いと挨拶を交わす活動が言語活動の例にあり、言語の働きとして「挨拶をする」「相づちを打つ」「聞き直す」が挙げられています 1。毎時間のあいさつは、この目標を少しずつ積み上げる場です。
では、決まり文句を丸ごと覚えて言うことに意味はあるのでしょうか。英国の中等学校でフランス語を学び始めた11〜13歳の生徒16人を2年間追った研究では、3つの決まり文句に注目したところ、最初は丸覚えのかたまり(チャンク)として使っていた表現が、多くの子で時間とともに部品に分かれ、その部品が新しい文を作るのに使われていきました(全員が同じように進んだわけではありません)。研究者は、丸暗記と規則の習得は別々ではなく、互いに支え合っていると結論しています。ただしこれは子どもの発話を観察した研究で、くり返しの量を変えて効果を比べた実験ではありません 2。
ポイント:「I'm fine, thank you. しか言えないのは丸暗記のせいだ」と言われがちですが、丸暗記そのものだけが問題とは限りません。I'm + 気持ちの語、Why? への理由、How about you? の聞き返しと、かたまりの一部を毎回少しずつ入れ替えて使う場をつくることが、決まり文句を自分で文を作る力につなげる手立ての一つになると考えられます。ただし、この研究は日本の小学生の英語のあいさつを調べたものではありません。また今回調べた範囲では、あいさつのルーティンそのものの効果を比べた研究は見当たらず、ここで述べたのは関連する研究から考えた見通しです。
❓ よくある質問
Q. あいさつのルーティンは、どう段階を上げていきますか?
第1段階(4月〜)は、先生が数人に How are you? と聞き、子どもは気持ちカードを指して答えます(指すだけでもOK)。慣れたら第2段階でペアで聞き合い、答えたら How about you? と返します。第3段階では先生が Why? と聞き、理由を一言で言わせます。
Q. 全員が I'm fine. しか言わないときは?
I'm fine. を禁止にはせず、「今日は fine 以外で言える人?」と挑戦にします。気持ちカードの中に fine を入れないのも手です。月に1回、nervous, excited, full などの新しい語を1つ足すと、言える気持ちが増えていきます。
Q. 毎回同じで、子どもが飽きませんか?
流れは変えず、中身を変えます。月に1語の新しい気持ちの語、当番が考える質問を1つ、など小さな変化を足します。掲示物は黒板の端など、いつも同じ場所に置きます。場所が変わらないことがルーティンの命です。
Q. 決まり文句を丸ごと覚えることに意味はありますか?
英国の中等学校でフランス語を学び始めた11〜13歳の生徒を2年間追った研究では、最初は丸覚えのかたまりとして使っていた表現が、多くの子で時間とともに部品に分かれ、新しい文を作るのに使われていきました。ただし観察研究で、あいさつのルーティンの効果を直接調べたものではありません 2。I'm + 気持ちの語のように、部品を入れ替える場をつくることが大切です。
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📑 出典(2件)
本文の上付き数字に対応。✔ は DOI / ISBN / 公式ページを書誌データベースと機械照合した印です。
- 文部科学省 (2017). 小学校学習指導要領(平成29年告示) 公式ページ ✔ リンク確認済小学校の学習指導要領。外国語活動(3・4年)と外国語科(5・6年)の目標・内容を示している
- Myles, F., Hooper, J., & Mitchell, R. (1998). Rote or rule? Exploring the role of formulaic language in classroom foreign language learning. Language Learning, 48(3), 323-364. doi:10.1111/0023-8333.00045 ✔ DOI照合済教室でフランス語を学ぶ子ども16人を2年追跡。丸覚えのチャンクがほどけて、新しい文作りに使われていった
最終更新 2026-10-18 ・ 原田英語 まちがいのご指摘はこちら





