リテリングと要約の指導 ― 教科書本文を「自分の言葉で語り直す」力を育てる
本文を読んだら、教科書を閉じて、キーワードだけを見て相手に伝え直す。リテリングは読む・話す・語彙を一度に使う統合型の活動ですが、やり方しだいで「本文の丸暗記大会」にもなります。研究と日本の実践からコツを整理します。
エビデンスの強さ:母語の研究では、リテリングや要約が理解と記憶を助けることが示されている。英語学習者でも、読解とリテリングを組み合わせた課題で語彙の伸びが報告されているが、日本の学習者で読解への効果が出なかった研究もあり、やり方しだい。

- リテリング=読んだ・聞いた内容を、自分の言葉で語り直すこと。 ここでは教科書を閉じ、キーワードを手がかりに行う形を紹介します。 読む・話す・語彙を一度に使う、統合型の活動です。
- 語り直しは理解や記憶を助けることがある。(日本の学習者では理解への効果が確認されなかった研究もあります。) 読んでリテリングする課題では、本文の情報を自分の知識と結びつけたり言い換えたりする度合いが高いほど、知らなかった語が伸びたという研究があります。
- 本文どおりの暗唱だけにしないこと。 流暢さの練習にはなっても、理解や語彙の深まりにはつながりにくいからです。 キーワードは少なめ、意見を1文足す、相手を替えて2〜3回くり返す。
リテリングってなに?
ひとことで言うと、リテリングは、読んだり聞いたりした内容を、自分の言葉で相手に伝え直す活動です。授業では本文を閉じ、キーワードや絵を手がかりに話すことが多くあります。
リテリング(retelling)は、読んだり聞いたりした内容を、自分の言葉で伝え直す活動です。本文を見ながら行う形もありますが、授業では本文を閉じ、キーワードや絵などの手がかりを頼りに行うことが多く、このページでもその形をすすめます。似た活動とのちがいは、下の表のとおりです。
学習指導要領では、中学校の「話すこと[発表]」の言語活動として、聞いたり読んだりした社会的な話題について、メモを活用しながら口頭で要約する活動が示されています。解説は、メモの取り方を指導すること、「口頭で要約して伝える」などの目的に応じたメモにすること、全員が同じ要点をまとめるだけでなく、興味に応じて焦点を選んだり英文を分担したりして、互いの英語を聞く必要性が生まれる活動にすることを求めています 1。高校でも、聞き取ったメモを基にペアやグループで内容を口頭で要約する活動が例示されています 2。
映画を見たあと、友だちに「どんな話だった?」と聞かれた場面を想像してください。セリフを丸暗記して言う人はいません。印象に残った場面を思い出し、自分の言葉で、相手に伝わる順番で話します。そして2人目、3人目に話すうちに、話はどんどんうまくなります。リテリングは、教科書の本文でこの「映画の話」をする練習です。
暗唱・要約とのちがい
| 活動 | 何をする? | 本文の言葉 | ねらい |
|---|---|---|---|
| 暗唱 | 本文をそのまま覚えて言う | そのまま | 表現の定着、音読の発展 |
| リテリング | 内容を自分の言葉で語り直す | 使ってよいが、言い換えも可 | 理解・語彙・流暢さ |
| 要約 | 要点をしぼってまとめ直す | 言い換え・圧縮が中心 | 要点をつかむ力、論理 |
やり方を3ステップで
- 読んで理解する:本文を読み、内容をつかむ(音読まで終えてから)。
- キーワードを見て語る:教科書を閉じ、少なめのキーワードや絵だけを見て、ペアの相手に内容を伝える。
- 相手を替えてもう一度:2回目は、本文の新しい語を別の文で使う、最後に自分の意見を1文足す、などの条件をつけて話す。
なぜ効くの? 研究ではどうなってる?
理解・記憶への効果
ところが、同じ研究者が日本の高専生に英語の説明文を読ませ、日本語でリテリングしてから問題に答えさせた研究では、読解を深める効果は確認されませんでした。著者は、再生された情報の量が少なかったことから、処理が浅く、内容を自分なりに組み立て直すところまで行っていなかった可能性を指摘しています 7。リテリングは「やれば効く」魔法ではなく、語り直しの中身が効果を左右する可能性があります。
語彙と話す力への効果
- 大人の ESL 学習者48人の実験では、文章を読んでリテリングした群では、知らなかった語の得点が伸びました(読むだけの条件はなく、リテリングの上乗せ効果は分けられません)。そして、本文の情報を自分の経験・知識と結びつける、言い換える、例や意見を加えるなどの生成的な処理の度合いが高いほど、知らなかった語の伸びが大きくなりました 8。
- 同じ内容をくり返し話すと、話す速さは最初の数回で大きく伸びます(日本人学習者32人の研究)9。リテリングを相手を替えて2〜3回くり返すのは、流暢さの練習にもなります。
- 一方、自分で選んだ話題について同じモノローグを3回くり返した研究では、1回目の語句をそのまま再使用する話し方が目立ちました 10。リテリングを直接調べた研究ではありませんが、くり返しのリテリングでも起こりうることです。くり返すたびに「言い換え」や「意見の追加」を求める工夫が必要です。
明日の授業でこうする
- 内容をつかむ:本文の読解・音読が終わった後に行います。わからない文があるとリテリングできないからです。
- キーワードを選ぶ(3分):1パートにつき4〜6語まで。先生が選んでも、生徒に選ばせてもかまいません。キーワードの代わりに、絵や図(グラフィック・オーガナイザー)でもかまいません。
- ひとりリハーサル(1分):教科書を閉じ、キーワードだけを見て小声でリテリング。
- ペアでリテリング(1分30秒×2人):聞き手は本文を見ながら、相手が言えた要点に✓、言えなかった要点に○を本文の上につけます。最後に、聞き手が質問を1つします。
- 相手を替えてもう一度:2回目は「本文の新しい語を1つ、本文とは違う文の中で使う」「最後に自分の意見を1文足す」を条件にします。
- 書いて要約(宿題可):話した内容を、3〜5文の要約に書きます(ライティング)。
段階のつけ方
| 段階 | 支え | 学年の目安 |
|---|---|---|
| 1 | 絵+キーワード多め、本文の文をそのまま使ってよい | 中1〜中2 |
| 2 | キーワード4〜6語、1文は言い換える | 中3〜高1 |
| 3 | キーワードなし(自分でメモ)、意見を加える | 高1〜高2 |
| 4 | 説明文・論説文を要点だけで要約し、賛否を述べる | 高2〜高3 |
中学2年:物語文のパートごとに、4コマの絵を黒板に貼ってリテリング。1回目は本文の文を使ってよい、2回目は「登場人物の気持ちを1文足す」。
高校1年(英語コミュニケーション):説明文の各段落を4人グループで分担し、自分の担当段落をメモだけでほかの3人にリテリング(ジグソー)。中学校の学習指導要領解説が重視する「互いの英語を聞く必要性」を、高校の活動に応用した例です 1。
高校2年:論説文を読んだ後、2分で要約→30秒で自分の意見。録音して提出させ、パフォーマンステストにつなげます。
リテリングで評価する
日本で開発された教室用の「ストーリー・リテリング・スピーキングテスト(SRST)」は、物語を2分で黙読し、内容の質問3つに答え、キーワード4つだけを見て2分でリテリングし(論文末の課題見本では2分30秒)、最後に自分の意見を加える形式です。日本の大学生48人のデータで評価尺度が検証され、「伝達の効率」「文法・語彙」「発音」の3観点の尺度が最も信頼性・妥当性が高かった一方、一般的な分析的ルーブリックの形式が最も使いやすいという結果でした 11。
ただし、リテリングは読解力のテストとしては万能ではありません。リテリングとほかの読解テストの関係をまとめたメタ分析(23研究、1〜12年生)では、相関は r = .46 の中程度で、リテリングだけで読解力を判断することには注意が必要とされています 12。
- 本文の丸暗記大会になる:キーワードが多すぎると、本文を思い出して言うだけになります。文字どおりの浅い再生では、理解を深める効果が出なかった研究もあります 7。キーワードは少なめに。
- 理解が不十分なまま始める:わからない文は語り直せません。読解・音読の後に行います。
- 言い換えを求めない:本文の情報を自分の知識と結びつけたり言い換えたりする生成的な処理が多い学習者ほど、知らなかった語が伸びていました 8。その応用として、2回目に「本文の新しい語を1つ、本文とは違う文の中で使う」などの条件をつけます(この条件そのものを検証した研究ではありません)。
- 毎回同じ形で飽きる:絵→キーワード→メモ→意見つき、と支えと条件を少しずつ変えます。
- リテリングの点数だけで読解力を判断する:リテリングと読解テストの関係は中程度です 12。
❓ よくある質問
Q. リテリングと暗唱・要約は、どう違いますか?
暗唱は本文をそのまま覚えて言う活動、リテリングは内容を自分の言葉で語り直す活動(授業では本文を閉じてキーワードなどを手がかりに行うことが多く、本文の言葉も使ってよい)、要約は要点をしぼってまとめ直す活動です。リテリングは、読む・話す・語彙を一度に使う統合型の活動です。
Q. リテリングには、どんな効果がありますか?
読んでリテリングする課題では知らなかった語の得点が伸び、本文の情報を自分の知識と結びつけたり言い換えたりする(生成的に処理する)度合いが高いほど、その伸びが大きくなりました(読むだけの条件との比較ではありません)8。同じ内容をくり返し話すと、話す速さも最初の数回で大きく伸びます 9。
Q. リテリングをすれば、読解は深まりますか?
いつも深まるとは限りません。日本の高専生が英語の説明文を読んで日本語でリテリングした研究では、読解を深める効果は確認されず、再生の量の少なさから処理が浅かった可能性が指摘されました 7。語り直しの中身が効果を左右する可能性があります。キーワードは少なめにし、意見を1文足すなどの工夫をします。
Q. キーワードは何語くらい示せばいいですか?
1パートにつき4〜6語までが目安です。キーワードが多すぎると、本文を思い出して言うだけの丸暗記大会になります。中1〜中2は絵とキーワード多めから始め、学年が上がるにつれて、自分のメモだけで話し、意見を加える段階へ進めます。
Q. リテリングで読解力を評価できますか?
読解力のテストとしては万能ではありません。リテリングとほかの読解テストの関係をまとめたメタ分析では、相関は r = .46 の中程度でした 12。リテリングの点数には理解・記憶・話す力が混ざって表れるので、評価したい力と基準をはっきりさせ、読解力は別の方法でも確かめるのが妥当です。
🎓 もう一歩深く(大学院レベル)
🎓院生モードリテリングは「何」を強めるのか ― テキストベースと状況モデル
読解研究では、文章の理解を、本文の命題をそのまま表したテキストベースと、内容を自分の知識と統合して組み立てた状況モデルに分けて考えます。日本の高専生を対象にした2つの研究は、この区別を使って、英文を読んだ後に日本語でリテリングする効果を調べました。説明文を読んで多肢選択問題で測った研究では、どちらのレベルにも効果は確認されず、情報の再生率の低さなどから、本文の文字どおりの情報を覚える浅い処理にとどまった可能性が示されました 7。一方、文の再認課題という別の測り方を工夫した研究では、テキストベースの記憶が強まり、状況モデルもより精密になりました 6。
この対比には、文章の種類や測り方のちがいが重なっているため、単純には比べられません。注目したいのは、どちらも日本語でのリテリングだった点です。母語で語り直したこの研究でも理解の促進は確認されず、再生の量の少なさから、処理が浅かった可能性が指摘されています 7。どちらも日本語でのリテリングを調べた研究なので、英語で語り直したときの理解への効果は、これらからは判断できません(使う言語による違いは今後の検証課題です)。指導上の一案としては、英語を組み立てる負担を考えて、理解をねらうなら日本語での語り直しや図での整理を先に、英語での語り直しは語彙・流暢さをねらう段階に、という使い分けも考えられます。母語の研究で、リテリングが理解と記憶を助けた結果 3 を、そのまま外国語に当てはめられないことにも注意が必要です。
🎓院生モード生成的な使用と、評価としてのリテリング
語彙習得の研究では、本文の語を、もとの文脈とは違う構造や意味の文脈の中で使う(別の文で使う、自分の知識と結びつけて使う)ことを生成的な使用と呼び、それが多いほど語が身につきやすいとされます。読んでリテリングする課題で、生成的な処理(自分の知識との結びつけ、言い換え、例や意見の追加など)の度合いが高いほど知らなかった語が伸びたという研究は、その代表的な実証です 8。同じモノローグをくり返すと1回目の語句をそのまま再使用する傾向(リテリングを直接調べたものではありません)10 は、流暢さには役立っても、生成的な使用の機会を減らすかもしれません。くり返しの回ごとに言い換えの条件を変えるのは、この2つの効果を両立させる工夫です。
評価としてのリテリングでは、評価尺度の形式によって、信頼性・妥当性が最も高い形式と、最も使いやすい形式が一致しなかったこと 11、そしてリテリングの点数が読解力とは中程度にしか関係しないこと 12 を踏まえると、リテリングの点数には内容の理解・記憶・話す力が混ざって表れると考えるのが妥当です。評価に使うときは、何を評価したいのか(内容の理解か、話す力か)と基準をはっきりさせ、読解力は別の方法でも確かめるようにしましょう。
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📑 出典(12件)
本文の上付き数字に対応。✔ は DOI / ISBN / 公式ページを書誌データベースと機械照合した印です。
- 文部科学省 (2017). 中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 外国語編 公式ページ ✔ リンク確認済中学校外国語の解説。「話すこと[やり取り]」の「即興で伝え合う」、書くことの段階的指導などを説明
- 文部科学省 (2018). 高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 外国語編 英語編 公式ページ ✔ リンク確認済高校英語の解説。「論理・表現」でのスピーチ・プレゼンテーション・ディベート・ディスカッションの定義と指導の留意点
- Gambrell, L. B., Pfeiffer, W. R., & Wilson, R. M. (1985). The effects of retelling upon reading comprehension and recall of text information. The Journal of Educational Research, 78(4), 216-220. doi:10.1080/00220671.1985.10885604 ✔ DOI照合済小学4年生93人(母語)。リテリングの練習をした群は、絵で表す群より理解と記憶が良かった
- Graham, S., & Hebert, M. (2011). Writing to read: A meta-analysis of the impact of writing and writing instruction on reading. Harvard Educational Review, 81(4), 710-744. doi:10.17763/haer.81.4.t2k0m13756113566 ✔ DOI照合済読んだ内容について書く(要約など)と読解が深まることを示したメタ分析(英語を母語とする児童生徒が中心)
- Graham, S., & Perin, D. (2007). A meta-analysis of writing instruction for adolescent students. Journal of Educational Psychology, 99(3), 445-476. doi:10.1037/0022-0663.99.3.445 ✔ DOI照合済4〜12年生の作文指導のメタ分析。文の結合(sentence combining)は 0.50、文法の単独指導は -0.32
- Ito, S. (2023). A two-step approach to measuring the effects of retelling on mental representations in Japanese EFL learners: An analysis using sentence recognition tasks. JLTA Journal, 26, 43-62. doi:10.20622/jltajournal.26.0_43 ✔ DOI照合済日本の高専生25人。日本語でのリテリングで、本文の記憶と、内容の全体像(状況モデル)の両方が強まった
- Ito, S. (2021). The effects of retelling on reading comprehension: Focusing on different levels of comprehension and non-textual information in retelling protocols. JLTA Journal, 24, 23-42. doi:10.20622/jltajournal.24.0_23 ✔ DOI照合済日本の高専生。英文を読んで日本語でリテリングしても読解が深まる効果は確認されず、本文の文字どおりの再生にとどまっていた
- Joe, A. (1998). What effects do text-based tasks promoting generation have on incidental vocabulary acquisition?. Applied Linguistics, 19(3), 357-377. doi:10.1093/applin/19.3.357 ✔ DOI照合済読んでリテリングすると、知らなかった語も身につきやすく、自分の言葉で言い換えるほど効果が大きかった
- Lambert, C., Kormos, J., & Minn, D. (2017). Task repetition and second language speech processing. Studies in Second Language Acquisition, 39(1), 167-196. doi:10.1017/S0272263116000085 ✔ DOI照合済日本人英語学習者32人が3種類の話すタスクを6回ずつくり返した研究。話す速さの伸びは最初の3回が最大で、5回目まで続いた
- Boers, F. (2014). A reappraisal of the 4/3/2 activity. RELC Journal, 45(3), 221-235. doi:10.1177/0033688214546964 ✔ DOI照合済同じ話を4分・3分・2分でくり返す 4/3/2 活動で、流暢さは伸びるが正確さは伸びにくいことを示した研究
- Hirai, A., & Koizumi, R. (2013). Validation of empirically derived rating scales for a story retelling speaking test. Language Assessment Quarterly, 10(4), 398-422. doi:10.1080/15434303.2013.824973 ✔ DOI照合済教室用のストーリー・リテリング・スピーキングテスト(SRST)の評価尺度を検証した日本の研究
- Cao, Y., & Kim, Y.-S. G. (2021). Is retell a valid measure of reading comprehension?. Educational Research Review, 32, 100375. doi:10.1016/j.edurev.2020.100375 ✔ DOI照合済リテリングと読解テストの関係のメタ分析(23研究)。相関は r = .46 で中程度。リテリングだけで読解力を測るのは注意
最終更新 2026-10-18 ・ 原田英語 まちがいのご指摘はこちら








