3分間ブックトーク ― 「この本、読んでみたい」を生徒どうしで広げる
先生や友だちが「この本おもしろかったよ」と3分で紹介するだけ。多読がなかなか続かないクラスに、次の1冊を手に取るきっかけをつくります。
- ⏱ 時間
- 3-13分
- 🧰 準備
- 少し
- 👥 形態
- 全体・ペア
- 🎯 技能
- リーディング・スピーキング
- 📶 CEFR
- A1-B1

- 「何を読めばいいかわからない」をなくし、次に読む1冊を見つけやすくする。
- 本を「勉強の道具」ではなく「楽しみ」として見せ、読みたい気持ちを育てる。
- 生徒どうしの紹介では、短いスピーチと質問のやり取りの練習にもなる。
ブックトークってなに?
ひとことで言うと、読んだ英語の本を1冊、表紙を見せながら「どんな話か(結末は言わない)・いちばん好きな場面・どんな人におすすめか」の3つで短く紹介する活動です。
映画の予告編のようなものです。全部は見せず、いちばんおもしろい場面だけを見せて「続きは本編で」と終わります。結末を言わずに「読んでみたい」と思わせるのが大事なところです。
読書感想文とのちがい
| 読書感想文 | ブックトーク | |
|---|---|---|
| 目的 | 感想をまとめて提出する | 聞いた人が「読みたい」と思う |
| 結末 | 書いてもよい | 言わない |
| 長さ | 原稿用紙で何枚も | 先生は3分、生徒どうしは1分 |
| そのあと | 提出して終わりがち | 読みたいリストに書き、次の読書の時間に手に取る |
やり方を3ステップで
- 先生がやって見せる:多読の棚から生徒のレベルに合う本を1冊選び、3つの要素で3分紹介する。
- 生徒どうしで紹介:慣れたらメモを作り、4人班で1人1分ずつ紹介し、紹介ごとに班から質問を1つする。
- リストに書く:読みたくなった本を「読みたいリスト」に書き、次の読書の時間に手に取る。
授業の流れ(分ごと)
先生のブックトーク(最初の数回)
| 時間 | 先生 | 生徒 |
|---|---|---|
| 0:00〜0:30 | 表紙を見せて題名を言う | 表紙を見て予想する |
| 0:30〜1:30 | どんな話かを3文で(結末は言わない) | 聞く |
| 1:30〜2:30 | 好きな場面を1〜2文読み上げる | 聞く |
| 2:30〜3:00 | おすすめの相手と、棚の場所を言う | 読みたい人は「読みたいリスト」に書く |
生徒どうしのブックトーク(慣れてから・約13分)
| 時間 | 内容 |
|---|---|
| 0:00〜3:00 | ワークシートのメモを完成させる |
| 3:00〜10:00 | 4人班で1人1分ずつ紹介し、紹介ごとに班から質問を1つ(質問と答えで30秒ほど、交代を入れて1人約1分半)。4人で約7分 |
| 10:00〜12:00 | 班で「いちばん読みたくなった本」を1冊選んで黒板に書く |
| 12:00〜13:00 | 読みたいリストに記入・振り返り |

- 最初は先生がやる:多読の棚から、生徒のレベルに合う本を1冊持ってきて、表紙を見せる。
- 3つだけ話す(3分):①どんな話か(結末は言わない)②いちばん好きな場面を1〜2文だけ読み上げる ③どんな人におすすめか。
- 本を棚に戻すところまで見せる:「この棚のレベル2にあるよ」と場所を言うと、借りる生徒が出ます。紹介した本は黒板の端に「今週のおすすめ」として立てておきます。
- 慣れたら生徒の番:多読の記録で★3をつけた本を、ワークシートでメモしてから4人班で1分ずつ紹介。紹介ごとに、聞いた3人の中から1人が質問を1つする(質問する人は順番に交代)。
- 紹介された本を「読みたいリスト」に:ワークシート下の表に書いておき、次の読書タイムで手に取ります。
紹介の型(3文から)
- The title is ________.
- It's about ________.
- This book is for people who like ________.
「どんな話?」の言い方 4. It's about a boy who wants to be a soccer player. 5. It's about a family that moves to a new town. 6. It's about a cat that can talk. 7. It's a true story about a famous scientist.
聞く人の質問 8. Was it easy or difficult? 9. How many stars did you give it? 10. Who is your favorite character? 11. Is it funny or sad? 12. Can I borrow it next time?
先生用:おすすめの言い方 13. If you liked ________, you will like this book, too. 14. This is the first book in a series. There are five more!
- 小学校:先生が絵本の表紙と1場面を見せて、"What do you think happens next?" と予想させるだけで十分。日本語の反応も歓迎します。
- 中学:生徒の紹介は「題名+★の数+ひとこと」の3文から。言えたら拍手。2学期からは質問を1つ加えます。
- 高校:紹介のあと、聞いた側が1つ質問する(Did you like the ending? など)。やり取りの練習にもなります。
- 大人数クラス:全員の前ではなく、4人班の中で1人1分ずつ順番に紹介する。班の中で「いちばん読みたくなった本」を1冊選んで黒板に書く。
- 苦手な生徒が多いクラス:ワークシートの表を埋めれば、そのまま読み上げるだけで紹介になるようにする。1人30秒で型の3文を読み上げる形から始め、表紙を見せて題名と★だけ言うのでも合格に。班の前で話すのは、はじめは希望者からでよい。
- オンライン・タブレット:表紙の写真と30秒の音声紹介を共有ボードに投稿し、読みたい本に「いいね」をつける。
ブックトークの目的は読みたい気持ちを広げることなので、細かな採点より、続けられる雰囲気を大事にします。スピーキングの評価に使う場合は次を見ます。
- 知識・技能:It's about ... / This book is for people who ... などの表現を使って、内容を短く伝えられる。
- 思考・判断・表現:聞き手が読みたくなるように、結末を伏せる・好きな場面を選ぶなど、内容を工夫できる。
- 主体的に学習に取り組む態度:聞き手に「読んでみたい」と思ってもらうために、紹介する内容を整理したり、聞き手の反応や質問をもとに言い方を工夫し直したりしながら、知っている表現を使って伝えようとしている。外国語科のこの観点は、聞き手などに配慮しながら主体的に英語で伝え合おうとしている状況を、粘り強さと自分の学習を調整しようとする側面から見るものです 12。1回の紹介だけで決めず、何回かの紹介とふり返りから判断します。
多読そのものの様子(紹介を聞いて自分に合う本を選び、読書記録をふり返って次の本や読み方を選び直しているか)は、スピーキングの評価とは別に、多読活動全体の形成的な評価(次の指導に生かすための観察)として、読書記録で見ます。リストへの記入や本を手に取ったかといった1回の行動だけでは判断しません。
| 段階 | 目安 |
|---|---|
| A | 3つの要素(内容・好きな場面・おすすめの相手)を、結末を伏せて伝え、質問にも答えられる |
| B | 3つの要素のうち2つを伝えられる |
| C | 題名と★だけ言える |
- 結末まで話してしまう → 聞き手の「続きを知りたい」という気持ちを弱めてしまいます。「続きは本で」を合言葉にし、メモの段階で結末を書かせない。
- 難しい本を紹介する → 先生が好きな本でも、生徒のレベルより上なら逆効果。紹介する本はクラスの棚にあるやさしい本から選びます。
- 生徒が「紹介する本がない」 → まだ★3の本に出会えていないサイン。先生が2〜3冊を手渡し、その中から1冊読んでもらってから紹介させます。
- 紹介が日本語の感想ばかりになる → 型の3文(素材1〜3)だけは英語で、と決める。感想の補足は日本語でもよいとすると気軽になります。
- 毎回同じ生徒の本ばかり人気になる → 班の代表を毎回交代にし、「今週のおすすめ」に全員の本が一度は並ぶようにします。
多読のよく知られた「10の原則」には、生徒が読む本を自分で選ぶこと、そして先生自身が読む人のお手本になることが入っています 3。ブックトークは、先生が楽しそうに本の話をする姿を見せながら、生徒の本選びを手助けする、この2つをまとめて実現する方法です。
日本の女子高校生219人が1年間多読をした研究では、質問紙から取り出した6つの要因のうち、英語で読んだ総語数を統計的に予測したのは、英語で読むこと、日本語で読むことそのものを楽しむ内発的な動機づけの2つでした。ただし、2つを合わせても説明できたのは読んだ量のばらつきの約1割で、対象も特別な英語コースの女子生徒という限られた集団です。一方で、日本語の読書への意欲と英語の読書への意欲には、正の関係が見られませんでした。日本語の本が好きでも、英語の本が好きとは限らないということです 4。ただし、これは質問紙と読んだ量の関係を見た研究で、楽しむ気持ちが読む量を増やしたという因果まで示したものではありません。「先生に言われたから」ではなく「おもしろそうだから読む」という気持ちをつくるのが、ブックトークのねらいです。
また、多読の研究をまとめた最新のメタ分析では、学習者が選べる本の範囲を(たとえば読めるレベルに合わせて)しぼった多読プログラムの方が、しぼらないプログラムより効果が大きい傾向がありました 5。これは研究どうしを比べた分析で、ブックトークを調べたものではありません。それでも、棚に何百冊あると生徒は迷います。レベルに合う棚から「この3冊がおすすめ」と見せるブックトークは、自由に選ばせつつ迷わせないための、実践上の工夫として考えられます。
ブックトークを日本の教室で使った実践報告もあります。高等専門学校(高専)の多読の授業で、数年間ブックトーク(準備はできるだけせずに1人約3分話し、仲間の質問に答える)を続けた報告では、多読を何年も続けてきた上級の学生には、次の紹介のために授業外でも本を読み続けるきっかけになりました。一方、英語の力がまだ初級の3年生(TOEIC 450点未満)には、限られた時間で意味のある紹介をするのが難しく、聞き手も待ち時間の長さに不満を感じました。授業外の読書もあまり増えず、授業中の読書の時間もけずってしまったため、著者らは3年生の必修の活動からブックトークを外しています。ただしこれは学生の感想と著者の観察にもとづく報告で、著者自身も、確かめるには追加の研究が必要だとしています 6。
このページで、生徒どうしの紹介を「1人1分・メモあり・質問は1つ」にしているのは、この負担を下げるためです。初級の生徒が多いクラスでは、まず先生のブックトークを聞く側を中心にし、生徒の紹介は30秒で型の3文を読み上げる形や、希望者だけの形から始めます。
ブックトークそのものの効果を厳密にはかった研究は、ほとんどありません。ここで紹介したのは、多読研究と実践報告から導いた「なぜ効きそうか」の説明です。
❓ よくある質問
Q. 英語のブックトークでは何を話せばいいですか?
3つだけ話します。①どんな話か(結末は言わない)②いちばん好きな場面を1〜2文だけ読み上げる ③どんな人におすすめか。最後に「この棚のレベル2にあるよ」と本の場所を言うと、借りる生徒が出てきます。
Q. 生徒どうしのブックトークは、いつから始めますか?
最初の数回は先生がやって見せます。慣れたら、多読の記録で★3をつけた本をワークシートにメモしてから、4人班で1人1分ずつ紹介させます。紹介ごとに班から質問を1つし、班で「いちばん読みたくなった本」を選びます。
Q. 紹介する本はどう選べばいいですか?
クラスの棚にある、生徒のレベルに合うやさしい本から選びます。先生が好きな本でも、生徒のレベルより上なら逆効果です。棚に何百冊あっても生徒は選べないので、「この3冊がおすすめ」としぼって見せます。
Q. ブックトークは多読に効果がありますか?
ブックトークそのものの効果をはかった研究はほとんどありません。ただ、多読の「10の原則」には、生徒が読む本を自分で選ぶことと、先生が読む人のお手本になることが入っており 3、ブックトークはこの2つをまとめて実現する方法です。
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📑 出典(6件)
本文の上付き数字に対応。✔ は DOI / ISBN / 公式ページを書誌データベースと機械照合した印です。
- 文部科学省 (2019). 小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について(通知) 公式ページ ✔ リンク確認済観点別学習状況の評価を「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3観点に整理した文科省の通知(2019年)
- 国立教育政策研究所 教育課程研究センター (2020). 「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料 中学校 外国語 公式ページ ✔ リンク確認済中学校外国語の3観点の評価規準の作り方・単元の指導と評価の計画の事例を示した国研の参考資料
- Day, R. R., & Bamford, J. (2002). Top ten principles for teaching extensive reading. Reading in a Foreign Language, 14(2), 136-141. doi:10.64152/10125/66761 ✔ DOI照合済多読の「10の原則」を示した、多読指導でいちばん引用される短い論文
- Takase, A. (2007). Japanese high school students' motivation for extensive L2 reading. Reading in a Foreign Language, 19(1), 1-18. doi:10.64152/10125/66622 ✔ DOI照合済日本の高校生の多読への動機づけを調べた研究
- Sangers, N. L., van der Sande, L., Welie, C., Dobber, M., & van Steensel, R. (2025). Learning a language through reading: A meta-analysis of studies on the effects of extensive reading on second and foreign language learning. Educational Psychology Review, 37(4). doi:10.1007/s10648-025-10068-6 ✔ DOI照合済多読の効果を技能ごとに調べた最新のメタ分析。本選びの範囲を絞る・読んだ証拠を残すと効果が大きい
- Nishizawa, H., Yoshioka, T., & Ichikawa, Y. (2018). Book-talk: An activity to motivate learners to read autonomously in a foreign language. Journal of Language and Cultural Education, 6(1), 145-157. doi:10.2478/jolace-2018-0010 ✔ DOI照合済日本の高専の多読授業でのブックトーク実践報告。多読経験の長い上級生には授業外の読書を続けるきっかけになったが、初級の3年生には3分の即興の紹介が難しく、必修から外した(学生の感想と著者の観察にもとづく報告)
最終更新 2026-10-18 ・ 原田英語 まちがいのご指摘はこちら




