共同編集ライティング ― 1つのオンライン文書を班で同時に書き、コメントし合って仕上げる
1人1台端末で、班の4人が1つの文書を同時に開き、担当の段落を書いて、互いにコメントと直しを入れる。紙ではできなかった「全員が同時に書いて、同時に直す」が、英作文の時間を変えます。
- ⏱ 時間
- 30-50分
- 🧰 準備
- しっかり
- 👥 形態
- 班(3〜4人)
- 🎯 技能
- ライティング・リーディング・やり取り
- 📶 CEFR
- A2-B2

- 班で1つの文章の構成を話し合い、分担して書き、互いの文章に提案・修正を入れて仕上げる。
- 友だちの英文を読んで、内容と表現の両方についてコメントする力をつける。
- 1人1台端末の共同編集機能を、英作文の「書く・読む・直す」をつなぐ道具として使う。
紙の英作文では、班で1つの文章を書こうとすると、1人がペンを持ち、ほかの3人は見ているだけになりがちです。共同編集できるオンライン文書なら、4人が同時に自分の段落を書き、同時に友だちの段落を読んでコメントできます。変更履歴を見れば、だれがどの文を書き、どこを直したかも残ります。「班で書くと、得意な人だけが書く」という心配を、仕組みで減らせるのが最大の利点です。
共同編集ライティングってなに?
ひとことで言うと、班の3〜4人が1つのオンライン文書を同時に開き、構成を決めて担当の段落を書き、コメント機能で互いに提案・修正し合って1つの文章に仕上げる活動です。
合唱のようなものです。パートごとに練習しますが、最後は全員の声が1つの曲になります。そのためには、お互いの声を聞いて合わせ直すことが必要です。自分の担当を書くだけでなく、仲間の段落を読んでコメントし、全体がつながるように直すのが大事なところです。
紙での班作文とのちがい
| 紙での班作文 | 共同編集ライティング | |
|---|---|---|
| 書く人 | ペンを持つ1人(ほかは見ているだけになりがち) | 全員が同時に、自分の担当段落を書く |
| 直し方 | 消しゴムや口での相談 | コメントや提案モードで、理由つきで直す |
| 記録 | 残りにくい | 本文の変更履歴とコメントの履歴が残り、だれが何を書いたか確かめやすい |
やり方を3ステップで
- 設計する:ワークシートで文章全体の構成(導入と全体の主張・理由と例・まとめ)と担当を決める。
- 同時に書く:共有した文書に、それぞれが担当の段落を書く。
- コメントして仕上げる:友だちの段落にコメントし、もらったコメントに返信して書き直す。
授業の流れ(分ごと)
| 時間 | 活動 | 先生の動き |
|---|---|---|
| 0:00〜5:00 | お題・ルール・役割の説明 | 文書のひな形(見出しつき)を配信 |
| 5:00〜12:00 | 班で構成を決める(紙の設計図) | 全体の主張(Introduction で言うこと)が決まったか確認 |
| 12:00〜25:00 | 各自が担当の段落を書く(同時に) | 画面を巡回、書けない生徒を支援 |
| 25:00〜35:00 | コメントタイム(他の人の段落に2つ以上) | コメントの型の使い方を見て回る |
| 35:00〜43:00 | コメントへの返信と書き直し | 「消さずに提案」を確認 |
| 43:00〜48:00 | 班で全体を通して読み、つなぎを整える | 段落のつながりを確認させる |
| 48:00〜50:00 | 提出・振り返り | 変更履歴が残っているか確認 |

- ひな形を用意:先生が文書を作り、見出し(Introduction / Body 1 / Body 2 / Conclusion)と、各見出しの下に担当者名を書く欄をつけておく。班ごとにコピーを配信し、編集権限は班のメンバーと先生だけにする。
- 構成を決める(7分):ワークシートの設計図に、各段落の言いたいこと(英語の1文か、日本語のメモ)と担当者・確認者を書く。全体の主張(Introduction で言うこと)は班で決める。Body の段落は、それぞれ最初の1文(主題文)でその段落の言いたいことを言ってから、理由や例(支持文)を続ける。
- 同時に書く(13分):各自が自分の担当の見出しの下に書く。他の人の段落は消さない・直接書きかえないのがルール。
- コメントタイム(10分):他のメンバーの段落を読み、コメント機能で2つ以上コメントする(良い点1つ+提案1つ以上)。直したい箇所は「提案モード」で書きこむ。
- 返信と書き直し(8分):自分の段落についたコメントにすべて返信し(Thanks! I changed it. / I think … is better because …)、採用する提案を反映する。
- 通し読み(5分):班で全体を声に出して読み、段落のつなぎ(First, Second, Finally)や時制をそろえる。下書きは担当を決めて書くが、内容と表現の最終決定と推敲は班全員で行う。
- 提出:文書を提出状態にする。先生は、本文の書きこみを変更履歴で、コメントと返信をコメントの履歴(解決済みのコメントもふくむ)で確認できる。コメントは削除できてしまうので、「コメントは消さずに『解決』にする」を最初のルールにしておく。Google ドキュメント以外の文書ツールを使うときは、同じように確かめられるかを事前に試しておく。
お題(中3〜高校、4段落にしやすいもの)
- Our town: a guide for visitors(町紹介:観光客向け)
- Our school: three things we are proud of
- Should our school allow smartphones in class?(意見文)
- A plan for a perfect school trip
- How to stay healthy as a student
- A letter to our ALT about Japanese culture
- The story of our class festival(行事の記録)
- A review of a book or movie the group likes
- Ideas to reduce plastic waste at school
- Our dream café: menu and concept
- A new school rule we want, and why
- Introducing a Japanese food to the world
コメントの型:I like this part: "…" / This sentence is a little unclear. Do you mean …? / How about adding an example? / Maybe "First" is better here. / Check the tense. / Can we connect these with "because"? / Great idea! Let's keep it.
返信の型:Thanks! I changed it. / Good idea. I added … / I think … is better because … / Can you check it again?
- 小学校:共同編集のスライドに1人1枚、「My favorite …」の1文と絵を入れて、クラスの絵本を作る。コメントはスタンプで。
- 中学:まずペア(2人で1段落)から始める。中2なら「町の紹介」、中3なら意見文。コメントは日本語でも可にし、慣れたら英語に。
- 高校:意見文の各段落を別の人が書き、反論の段落を別の班が書きこむ「班をまたいだ共同編集」に。最終版を個人で書き直して提出させると、個人の評価にもつながる。
- 大人数クラス:班の数が多くても、先生は画面を切りかえて巡回できる。コメントの数・返信の数を見れば、どの班が止まっているかすぐわかる。
- 苦手な生徒が多いクラス:各段落の書き出し(First, our town has …)をひな形に入れておく。担当を「1文だけ書く」から始め、コメントは型から選ぶ。
- 紙でやる場合:模造紙を4つに区切って担当を書き、付箋でコメントし合うと、端末がなくても同じ流れでできる。
共同編集のよいところは、本文の変更履歴とコメントの履歴が残ることです。班の成果物だけでなく、一人ひとりの書きこみ・コメント・返信を見て評価できます。
| 観点 | 見るところ | A(十分満足) | B(おおむね満足) | C への手立て |
|---|---|---|---|---|
| 知識・技能 | 担当段落の英文の正確さ | 語彙・表現・文法を適切かつ正確に使って、意味の伝わる英文を書いている(仕上がった英文で判断する) | 誤りはあるが、意味の伝わる英文を書いている | 書き出しの型を使わせる |
| 思考・判断・表現 | 段落のまとまり・全体の構成とつながり、コメントの質 | 読み手と目的を意識して、まとまりのある段落を全体の構成に合わせて書き、具体的な提案をコメントできる | 担当部分を話題に沿って書き、良い点をコメントできる | コメントの型を選ばせる |
| 主体的に学習に取り組む態度 | 協働の過程 | もらったコメントを検討し、採用する・しない理由を返信で示しながら、自分の英文をよりよくするために書き直しを重ねている | コメントを参考に自分の英文を見直し、直そうとしている | 先生がコメントで声をかけ、直す点を1つ一緒に選ぶ |
「すべてのコメントに返信する」は活動のルールで、返信の数そのものは評価にしません。「主体的に学習に取り組む態度」は、粘り強い取組の中で自分の学習を調整しようとしているかを含めて見る観点です 1。提案を採用しないことも、理由があれば立派な判断です。
班の成果物の評価と、個人の評価(担当段落・コメント・返信)を分けて記録すると、「班のおかげで点がとれた」「班のせいで点が下がった」という不公平を減らせます。
- 他の人の文を勝手に消す・書きかえる→ 最初に「消さない、直すときは提案モードかコメントで」とルールを決める。消されても変更履歴から戻せることを教えておく。
- 得意な生徒が全部書いてしまう→ 見出しの下に担当者名を書かせ、下書きは自分の担当を書くルールにする(ほかの人の段落はコメントや提案モードで関わる)。そのうえで、最後の推敲は班全員で行う。
- コメントが「Good!」だけ→ 本文を引用して良い点を言う型、提案の型を使わせる。コメントの数(2つ以上)を最低ラインにする。
- 翻訳サイトや生成AIで書いた文を貼りつける→ 「自分のことばで書く」ことをルールにし、学校の生成AIの方針に合わせて、使ってよい場面(つづりの確認など)を明示する。授業中に書く時間をとる。変更履歴で一度に大量の文が加わっていれば確認のきっかけにはなるが、それだけで翻訳サイトや生成AIを使ったとは判断できない(別の場所で自分で書いた文の貼りつけや音声入力もありうる)。気になるときは、設計図(ワークシート)と照らし、本人に内容を説明してもらって確かめる。
- ネットワークや端末のトラブル→ 紙の設計図を先に作っておけば、端末が止まっても書く内容は残る。ひな形を事前に配信しておく。
- アカウント・共有範囲の心配→ 学校が用意したアカウントだけで行い、共有は班のメンバーと先生だけに限定する。個人情報(住所・電話番号など)は書かないルールを示す。
2人以上で1つの文章を書く協働ライティングの研究を整理した総説では、協働で書く活動は、うまく設計し見守れば言語学習の場になりうること、ただし課題の種類や習熟度、学習者どうしの関係によって学びの機会が変わることが示されています。この総説は、Wiki などオンラインでの協働ライティングを新しい方向としてとり上げています 2。協働ライティングの研究33本をまとめたメタ分析では、協働で書いた文章は1人で書いた文章より正確(g = 0.73)でした 3。ただし、ここで扱われたのは、相談しながら1つの文章を共同で作る活動が中心で、このページのように段落を分担して下書きする形と同じではありません。そのため、最後の推敲は班全員で行うようにしています。
オンライン文書での共同執筆を記録から分析した研究があります。アメリカの大学院に進む前の研修プログラムに参加したフルブライト奨学生(留学生)38人が、3〜4人の班で研究報告を共同編集で書きました。そのうち無作為に選んだ3班(9人)の文書の記録を詳しく分析したところ、文法の形よりも意味・内容の書き直しの方が多く、行われた文法の直しは、誤った直しより正しい直しの方が多いものでした。参加の頻度には個人差がありました 4。共同編集では内容の話し合いが中心になりやすい一方、参加の差が出やすいということです。担当を決め、コメントと返信の数を最低ラインとして示すのは、この差を小さくするための工夫です。なお、オンラインの共同編集を調べたこの研究は大学院に進む留学生が対象で、中高生の共同編集についての研究はまだ少ない点に注意が必要です。
❓ よくある質問
Q. 共同編集で英作文を書くとき、どんなルールが必要ですか?
いちばん大事なのは、他の人の段落を「消さない・直接書きかえない」ことです。直したいときは提案モードかコメントを使います。見出しの下に担当者名を書かせ、自分の担当以外は書かないルールにすると、得意な生徒が全部書いてしまうのも防げます。
Q. コメントが「Good!」だけになるときは?
本文を引用して良い点を言う型と、提案の型を使わせます。他のメンバーの段落に、良い点1つ+提案1つ以上の2つ以上のコメントを最低ラインにします。自分の段落についたコメントには、すべて返信させます。
Q. 翻訳サイトや生成AIの文を貼りつけてしまったら?
「自分のことばで書く」ことをルールにし、学校の生成AIの方針に合わせて、使ってよい場面(つづりの確認など)を明示します。授業中に書く時間をとります。変更履歴で一度に大量の文が加わっていれば確認のきっかけにはなりますが、それだけでAIを使ったとは判断できません。気になるときは、設計図と照らし、本人に内容を説明してもらって確かめます。
Q. 班で共同編集して書くと、どんな学びがありますか?
協働ライティングのメタ分析では、協働で書いた文章は1人で書いた文章より正確でした 3。共同編集の記録を分析した研究では、意味・内容の書き直しが多い一方、参加の頻度に個人差がありました 4。担当とコメント数の最低ラインは、この差を小さくする工夫です。
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📑 出典(4件)
本文の上付き数字に対応。✔ は DOI / ISBN / 公式ページを書誌データベースと機械照合した印です。
- 文部科学省 (2019). 小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について(通知) 公式ページ ✔ リンク確認済観点別学習状況の評価を「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3観点に整理した文科省の通知(2019年)
- Storch, N. (2011). Collaborative writing in L2 contexts: Processes, outcomes, and future directions. Annual Review of Applied Linguistics, 31, 275-288. doi:10.1017/S0267190511000079 ✔ DOI照合済第二言語の協働ライティング(いっしょに1つの文章を書く)の研究を、教室と Wiki などのオンラインの両方から整理した総説
- Elabdali, R. (2021). Are two heads really better than one? A meta-analysis of the L2 learning benefits of collaborative writing. Journal of Second Language Writing, 52, 100788. doi:10.1016/j.jslw.2020.100788 ✔ DOI照合済協働ライティングのメタ分析(33研究)。ペアで書いた文章は1人で書いた文章より正確(g = 0.73)
- Kessler, G., Bikowski, D., & Boggs, J. (2012). Collaborative writing among second language learners in academic web-based projects. Language Learning & Technology, 16(1), 91-109. doi:10.64152/10125/44276 ✔ DOI照合済留学生38人が Google Docs で共同執筆した課題のうち、無作為に選んだ3班・9人の記録を詳しく分析。文法より意味・内容の書き直しが多く、直された文法はおおむね正確だった
最終更新 2026-10-18 ・ 原田英語 まちがいのご指摘はこちら






