授業形態の整理:ハイブリッドとハイフレックス
「ハイブリッド授業」という言葉は、大学によって意味が少しずつ違って使われています。まずは形態を整理しておきましょう。
- ブレンド型:対面の授業と、オンデマンド教材などのオンライン学習を組み合わせる
- 同時双方向型のハイブリッド:同じ時間に、教室の学生とオンラインの学生が一緒に授業を受ける
- ハイフレックス(HyFlex)型:学生が、対面・同時オンライン・後からの録画視聴などの参加方法を選べる。Brian Beattyが提唱した考え方として知られています
この記事では主に、教室とオンラインの学生が同時に参加する授業を想定して説明します。
どの形態で授業を行うかは、大学の方針や教室の設備によって決まることも多いので、まずは所属大学の方針と、使える教室の設備を確認しましょう。
機材と教室の準備:音声が最優先
ハイブリッド授業で最も多いトラブルは、音声に関するものです。映像が多少粗くても授業は成り立ちますが、音声が聞こえないと英語の授業は成り立ちません。
準備のチェックリスト
- 教師の声:オンラインの学生に届くか(ピンマイクやスピーカーフォンの利用)
- 教室の学生の声:質問や発表の声がオンラインに届くか(マイクを回す、発言者が教師の近くで話すなど)
- オンラインの学生の声:教室のスピーカーで全員に聞こえるか
- 画面の共有:スライドが両方の学生に見えるか
- ハウリングの防止:教室内で複数の端末がオンライン会議に入る場合、マイクとスピーカーの設定に注意する
授業前のテスト
初回の授業の前に、実際の教室で、学生役の人にオンラインで参加してもらい、音声のテストをしておくと安心です。大学の情報系の支援部署や教育センターがサポートしている場合もあるので、相談してみましょう。
対面とオンラインの学生をつなぐ活動
ハイブリッド授業でペアやグループの活動を行う方法は、大きく分けて2つあります。
方法1:対面どうし・オンラインどうしで組む
- 教室の学生は教室内でペアになり、オンラインの学生はブレイクアウトルームでペアになる
- 運営がシンプルで、音声のトラブルが少ない
- 教師は、教室の巡回とブレイクアウトルームの訪問を交互に行う
方法2:対面とオンラインを混ぜて組む
- 教室の学生も自分の端末でオンライン会議に入り、イヤホンを使ってオンラインの学生と話す
- 両者の交流が生まれるが、教室内の音声の管理が難しくなる
最初は方法1から始め、慣れてきたら方法2を試すのが現実的です。
活動の指示は画面にも出す
口頭の指示だけでは、オンラインの学生が聞き逃すことがあります。指示は必ずスライドにも表示しましょう。
- In pairs: Ask your partner about their weekend. Use at least two follow-up questions. (3 minutes)
教室の座席の工夫
教室の学生には、できるだけ前方のマイクに近い席に座ってもらいましょう。発言するときは、教室の前に置いたマイクの近くまで来てもらうか、教師がマイクを持って近づくと、オンラインの学生にも声が届きやすくなります。
ハイブリッド型英語授業の90分の流れの例
ハイブリッド型の英語授業の流れの一例です。
- 接続確認(5分):オンラインの学生の音声と画面を確認する。チャットで一言あいさつをしてもらう
- ウォームアップ(10分):全員がチャットまたは紙に、今日の話題に関する答えを1文書く。いくつかを画面で共有する
- インプット(20分):短い英文を読む、または音声を聞く。教材はLMSで事前に配布しておく
- ペア活動(15分):対面どうし・オンラインどうしで内容について話し合う
- 全体共有(15分):対面とオンラインから交互に発表してもらう
- 書く活動(15分):共有フォームやLMSの課題に、今日の話題についての意見を書く
- まとめ(10分):次回の予告と課題の確認。オンラインの学生にも質問の機会を作る
運営のコツ
- オンラインの学生を先に指名する:オンラインの学生は発言のタイミングをつかみにくいため、意識して機会を作る
- チャットを見る係を決める:可能ならTA(ティーチング・アシスタント)や学生にチャットの確認を頼む
評価と出席の考え方
ハイブリッド授業では、参加の仕方が異なる学生を公平に評価することが課題になります。
評価の工夫
- 提出物を中心にする:LMSでの課題提出は、参加方法にかかわらず同じ条件で評価できる
- 発言の機会をそろえる:オンラインの学生の発言の機会が少なくならないよう、指名の記録をつける
- スピーキングの評価:録音の提出や、個別のオンライン面談など、参加方法に左右されにくい方法を選ぶ
出席の扱い
- 出席の確認方法(LMSでの出席登録、授業内の小課題の提出など)を、シラバスで事前に明示する
- 接続トラブルがあった場合の扱いを決めておく
ハイフレックス型で録画視聴による参加を認める場合は、録画を見た後に取り組む課題を用意し、学習を確認できるようにしましょう。どのような参加の形を認めるかは、所属大学の方針に従います。
1週間の準備サイクル
ハイブリッド授業は、対面だけの授業より準備に時間がかかります。次のように、1週間の中で準備を分散させると負担が軽くなります。
- 授業の5日前:授業の流れを決め、スライドに活動の指示を書き込む
- 授業の4日前:LMSに教材と事前課題を公開する
- 授業の2日前:ブレイクアウトルームの割り当てや、共有フォームを準備する
- 授業の前日:事前課題の提出状況を確認し、授業で扱う点をメモする
- 授業当日(開始15分前):教室の機材を立ち上げ、音声と画面の共有を確認する
- 授業の翌日:録画を公開する場合は公開し、授業の振り返りを3行でメモする
振り返りのメモの例
- うまくいったこと:オンラインの学生を先に指名したら、発言が増えた
- 課題:教室のマイクが遠く、質問の声が届かなかった
- 次回の改善:質問は教師が繰り返してから答える
よくある失敗と、その立て直し方
1. オンラインの学生を忘れてしまう
教室の学生とのやり取りに夢中になると、オンラインの学生が置き去りになります。一定の時間ごとにオンラインの学生に話しかけることを意識しましょう。
2. 教室の学生の声がオンラインに届かない
教室での質問や発表の声が、オンラインの学生に聞こえていないことがよくあります。教師が質問を繰り返してから答える習慣をつけると、確実に伝わります。
3. すべてを完璧にしようとする
機材のトラブルは必ず起こります。トラブルのときの代わりの手段(チャットでの質問、LMSでの課題提出など)を決めておけば、慌てずに対応できます。
まずは次の授業の前に、実際の教室で音声のテストを行い、オンラインの学生に教室の声が届くかを確かめてみてください。



