生成AIで何ができるようになったか
生成AIは、英語の学習や授業準備に関わる多くの作業を手伝ってくれます。
- 英文の文法や表現のチェック
- 難易度を調整した英文の作成(例:易しい英語への書き換え)
- 例文や練習問題のたたき台づくり
- 会話練習の相手(テキストや音声で)
- 英文の要約や、内容についての質問づくり
生徒にとっても、「分からないことをすぐ聞ける」「何度でも練習できる」という点で、心強い学習の相棒になりえます。
一方で、生成AIには誤りを含む出力をすることがある、生徒の実態や授業の文脈までは分からない、といった限界もあります。便利さと限界の両方を知ったうえで使うことが大切です。
ポイント:生成AIは「先生の代わり」ではなく、「先生が使いこなす道具」。何を任せ、何を自分でするかを決めるのが、これからの先生の仕事です。
授業準備で先生が使う例
授業準備でAIを使うと、たたき台を作る時間を大きく減らせます。具体的な使い方の例を挙げます。
1. 難易度別の英文を作る
教科書のテーマに関連した短い英文を、易しいもの・標準・やや難しいものの3段階で作ってもらい、生徒の習熟度に応じて使い分けます。
2. 発問や練習問題の候補を出す
「このテーマについて、中学3年生向けに意見を問う質問を5つ」と頼み、候補の中から先生が選んで調整します。
3. モデル文を作る
スピーチやエッセイのモデル文を作ってもらい、生徒のレベルに合うよう先生が書き直します。
- 例:Many people say that smartphones are bad for students. However, I think they can be useful if we use them wisely.
4. ALTとの打ち合わせ資料の英訳
授業の流れを英語でまとめる際の下書きに使い、分かりにくい部分を確認します。
どの場合も、最終的に先生が確認・判断することが前提です。また、利用するサービスや入力してよい情報については、学校や自治体のルールを必ず確認してください。
使うときのプロンプト(指示文)の例
- 「中学2年生向け。語数60語程度。テーマは『週末の過ごし方』。過去形を多く含む英文を書いてください」
- 「次の英文に対して、内容理解を確認するT/F問題を5つ作ってください。答えも付けてください」
学年、語数、テーマ、使わせたい文法など、条件を具体的に伝えるほど、修正の手間が減ります。
生徒がAIを使うときの指導
生徒がAIを使う場面では、「使わせない」か「自由に使わせる」かの二択ではなく、どう使えば学びになるかを指導することが大切です。
学びにつながる使い方
- 自分で書いた英文を見てもらい、なぜ直されたのかを考える
- 分からない表現の使い方を質問し、例文を複数見る
- 会話の練習相手として使い、言えなかった表現を記録する
学びにつながりにくい使い方
- 課題の英文を最初からAIに書かせて提出する
- 直された文を、理由を考えずにそのまま写す
授業では、例えば次のような活動が考えられます。
- まず自分の力で英文を書く
- AIに見てもらい、指摘された点に下線を引く
- 指摘の理由を自分の言葉で説明する
- 最後にもう一度、自分で書き直す
このように、自分で考える過程を必ず残すことで、AIは学びを深める道具になります。なお、生徒が生成AIを使えるかどうかは、年齢制限や利用規約、学校の方針によって異なるので、事前に確認が必要です。
先生にしかできない5つの役割
AIがどれだけ便利になっても、英語の先生にしかできないことがあります。
- 目の前の生徒を知ること:どの生徒がどこでつまずいているか、今日は元気がないか。生徒の様子を見て授業を調整するのは先生の役割です。
- 学ぶ意味を伝えること:なぜ英語を学ぶのか、英語で何ができるようになるのか。先生自身の経験や言葉が、生徒の心を動かします。
- 人と人とのやり取りの場を作ること:教室で友達と英語で話し、笑い合い、分かり合う経験は、AIとの対話だけでは得にくいものです。
- 評価と判断:生徒の成長を見取り、次の目標を示すことは、先生の専門的な判断です。
- 使い方のお手本になること:先生自身がAIを上手に使い、限界も理解している姿を見せることが、生徒にとって一番の学びになります。
ポイント:AIが得意なのは「情報や英文を出すこと」。先生が得意なのは「人を見て、つなぎ、励ますこと」。役割分担を意識しましょう。
使うときの注意点
生成AIを授業や校務で使うときは、次の点に注意しましょう。
- 個人情報を入力しない:生徒の名前や成績、家庭の情報などは入力しない
- 出力を必ず確認する:文法の誤り、不自然な表現、事実と異なる内容が含まれることがある
- 著作物の扱いに注意する:教科書本文や他人の文章を入力・利用してよいかは、ルールを確認する
- 学校や自治体の方針に従う:使ってよいサービスや範囲は、所属先のガイドラインを確認する
- 評価の公平性に配慮する:AIの使用を認める課題と認めない課題を明確にし、生徒に事前に伝える
文部科学省も、学校での生成AIの利用に関するガイドラインを公表しています。最新の内容は公式サイトで確認しましょう。
よくある失敗
- AIで作った問題を確認せずに配る:選択肢に正解が2つある、解答が間違っている、といったミスが起こりえます。
- AIを禁止するだけで終わる:生徒は授業の外でAIに触れます。上手な使い方を教えるほうが、長い目で見て生徒のためになります。
- 課題の形が変わらない:「英文を書いて提出」だけの課題は、AIで簡単に済ませられてしまいます。授業中に書く、書いた内容について口頭で説明する、など課題の設計を工夫しましょう。
- 先生だけが使い方を知らない:生徒のほうが詳しいこともあります。先生自身がまず使ってみることが大切です。
- AIの出力をそのまま生徒の評価に使う:AIに採点の補助をさせる場合でも、最終的な評価は先生が根拠を持って行いましょう。
1週間で試すメニュー
- 月:AIで難易度別の英文を1本作り、自分で確認する
- 水:生徒に見せるモデル文を作り、クラスに合わせて書き直す
- 金:英語科の先生と、使ってみた感想と注意点を共有する
今日からできること
生成AIの時代だからこそ、英語の先生の役割は「英語を教える人」から「英語を使って学ぶ場をデザインする人」へと広がっています。
まずは、次の授業で使うモデル文を1つ、生成AIに作ってもらいましょう。そして、それを自分のクラスの生徒に合わせて書き直してみてください。どこを直したか、なぜ直したかを考えることが、AI時代の英語教師としての判断力を育てる第一歩になります。
同時に、生徒にAIの使い方をどう伝えるか、英語科の先生同士で一度話し合ってみることもおすすめです。共通のルールがあると、生徒も迷わず、安心して学べます。
小さく試し、気づいたことを共有する。その積み重ねが、学校全体の使い方をよくしていきます。



