なぜ学校段階の変わり目でつまずくのか
生徒がつまずく原因は、英語の難しさだけではありません。学び方の変化が大きく影響しています。
小学校→中学校
- 聞く・話す中心の活動から、読む・書くの比重が増える
- 音声で慣れ親しんだ表現を、文字や文法として理解することが求められる
- 評価の方法が変わり、テストの点数を意識するようになる
中学校→高校
- 教科書の英文の量と語彙のレベルが大きく上がる
- 授業の進度が速くなり、予習・復習を前提とした授業が増える
- 自分の考えを論理的に表現することが、より求められる
どちらの段階でも、「前の学校でやってきたこと」と「新しい学校で求められること」の間にギャップがあります。このギャップを先生が意識して、橋をかけることが接続の指導です。
ポイント:接続の指導は「前の段階を否定する」ことではなく、「前の段階の学びを生かして次につなげる」ことです。
工夫1:前の学校段階で何をしてきたかを知る
接続の第一歩は、生徒がこれまで何を学んできたかを知ることです。
- 中学校の先生は、小学校の外国語活動・外国語科の教科書や学習指導要領を一度見ておく
- 高校の先生は、中学校の教科書で扱う文法事項や活動の種類を確認する
- 可能であれば、前の段階の授業を見学する
特に中学校の先生にとっては、小学校で生徒がどんな表現に音声で慣れ親しんでいるかを知っておくことが大切です。例えば、I like ~. や What do you want to be? といった表現を、生徒は小学校で繰り返し聞いたり話したりしてきています。中学校では、それをゼロから教え直すのではなく、「知っている表現」として出発点にできます。
- Do you remember this? You used it in elementary school.
こう声をかけるだけで、生徒は「小学校の英語が役に立った」と感じ、自信を持って新しい学習に向かえます。
工夫2:入学直後の授業で「できる」を実感させる
入学直後の1か月は、新しい環境への不安が大きい時期です。この時期の英語の授業では、難しいことより、できることを確認する活動を多めに入れましょう。
中学校1年生の例
- 小学校で慣れ親しんだ表現を使った自己紹介
- 聞いたことのある歌やチャンツを使った音読
- アルファベットや簡単な単語を書く練習を丁寧に
高校1年生の例
- 中学校の教科書レベルの英文を使った音読やリテリング
- 中学校で学んだ文法を使って、自分のことを話す・書く活動
- 高校の教科書の最初の課を、ていねいに段階を追って読む
最初から高いハードルを設定すると、「自分には無理だ」と感じる生徒が出てしまいます。最初の成功体験が、その後の学習意欲を大きく左右します。
工夫3:学び方そのものを教える
学校段階が上がると、授業の中だけでなく、家庭での学習の仕方も変わります。ところが、その方法を具体的に教えてもらえないまま、「予習してきなさい」と言われて戸惑う生徒は少なくありません。
入学直後に、次のようなことを授業の中で実際にやって見せましょう。
- 予習のやり方:本文を読み、分からない単語に印をつけ、意味を調べる手順を一緒にやる
- 音読の仕方:音声を聞く→まねる→見ないで言う、の段階を体験させる
- 単語の覚え方:見る・書く・声に出す・テストする、のサイクルを紹介する
- ノートの作り方:見本のノートを見せ、何を書くかを具体的に示す
例えば高校1年生なら、最初の2〜3週間は授業の中で予習の時間を取り、「こうやって予習すればいい」という体験をさせてから家庭学習に移すと、つまずきが減ります。
工夫4・5:評価の変化を伝え、学校間で情報を共有する
工夫4:評価の仕組みを早めに説明する
学校段階が変わると、評価の方法や定期テストの形式も変わります。最初の定期テストの前に、次のことを生徒に説明しておきましょう。
- どんな力をどんな方法で評価するのか(テスト、パフォーマンステスト、提出物など)
- 定期テストの形式(リスニングの有無、記述問題の割合など)
- テストに向けた勉強の仕方
評価の見通しがあると、生徒は安心して学習に取り組めます。
工夫5:学校間で情報を共有する
地域によっては、小中連携や中高連携の取り組みとして、授業の見学や合同の研修会が行われています。こうした機会があれば、積極的に参加しましょう。
- 前の学校段階の先生と、生徒がつまずきやすい点について話す
- 使っている教材や活動の例を共有する
- 同じ地域の生徒像についての認識をそろえる
公式な機会がなくても、近くの学校の英語の先生と話すだけで、接続の指導のヒントがたくさん見つかります。
情報を共有するときは、個々の生徒の情報の扱いに十分注意し、学校のルールに沿って行いましょう。
入学後1か月の授業プラン例
接続を意識した入学後1か月の流れを、中学1年生と高校1年生の例で示します。あくまで一例として、学校の年間計画に合わせて調整してください。
中学1年生(4月〜5月上旬)
- 1週目:小学校で慣れ親しんだ表現で自己紹介。先生も英語で自己紹介し、質問を受ける
- 2週目:アルファベットの大文字・小文字をていねいに書く練習と、音と文字の関係に気づく活動
- 3週目:小学校で使った表現(I like ~. / Do you ~?)を文として書いてみる
- 4週目:教科書の最初の単元に入り、「知っている表現」と「新しく学ぶこと」を区別して示す
高校1年生(4月〜5月上旬)
- 1週目:中学校の教科書レベルの英文でリテリングやスモールトーク
- 2週目:授業の中で予習の仕方を実演し、一緒に取り組む
- 3週目:高校の教科書の最初の課を、段落ごとに発問を工夫しながら読む
- 4週目:読んだ内容について、自分の考えを3文程度で書く・話す
どちらも共通しているのは、最初の1か月で「学び方」と「成功体験」の両方を手に入れさせることです。この時期にていねいに進めることで、その後の授業のスピードを上げることができます。
また、この時期に簡単なアンケートを取り、「英語は好きか」「どんな活動が楽しかったか」「どこが不安か」を聞いておくと、生徒一人ひとりの出発点が見えてきます。前の学校段階での経験は生徒によって大きく異なるので、こうした情報は授業づくりの貴重な材料になります。
よくある失敗と今日からできること
- 「小学校で何も学んでいない」と決めつける:生徒は音声面で多くの経験を積んでいます。その経験を生かす姿勢が大切です。
- 入学直後から全速力で進む:最初の数週間でていねいに学び方を教えると、その後の授業がスムーズになります。
- 中学校の復習ばかりで高校の学習に入らない:復習は、新しい学習と組み合わせて行うと効果的です。
- 「前の学校の先生の指導が悪い」と言う:生徒の前で前の段階を否定すると、生徒の自信を傷つけることがあります。
まずは、自分が担当する生徒が1つ前の学校段階で使っていた教科書を手に取って、最後の課だけでも読んでみましょう。生徒がどこまで学んできたのかが、具体的に見えてきます。



