ICTを使う目的をはっきりさせる
ICTを英語の授業で使うとき、まず考えたいのは「ICTを使うことで何が良くなるか」です。道具を使うこと自体が目的になると、準備に時間がかかるわりに学びが深まらない、ということが起こりがちです。
英語の授業でICTが特に力を発揮するのは、次のような場面です。
- 発話量を増やす:全員が同時に録音できるので、40人でも一人ひとりが話せる
- 自分の英語を振り返る:録音・録画を聞き直して、自分で改善点を見つけられる
- 共有と協働:作文や発表資料をクラスで共有し、コメントし合える
- 個別の学習:レベルや進度に合わせた練習ができる
- 評価の効率化:授業時間外に、一人ひとりのパフォーマンスを確認できる
学習指導要領でも、視聴覚教材やコンピュータ、情報通信ネットワークなどを有効に活用し、生徒の興味・関心を高めることなどが示されています。
ポイント:「このICTで、生徒の英語を使う量や質は増えるか?」を判断の基準にしましょう。
1人1台端末の活用例
1. 録音でスピーキング練習
教科書本文の音読や、1分間スピーチを各自で録音し、提出します。
- Record your speech. You can try three times. Submit your best one.
自分の声を聞き直す習慣がつくと、発音やスピードを自分で調整できるようになります。
2. 共同編集でライティング
クラウドの共同編集機能を使い、グループで1つの文章を書きます。たとえば「修学旅行のおすすめプラン」をグループで英語で書き、ほかのグループがコメントを付けます。
- Read another group's plan and write one good point and one question.
3. アンケート機能でクイックチェック
授業の最後に、今日の表現を使った問題を3問出し、その場で正答率を確認します。つまずきが多い問題を、次の授業の最初に扱えます。
4. 写真を使った描写
生徒が自分の撮った写真(家の近くの景色、好きなものなど)を使って、英語で説明します。自分の写真なので、話したい気持ちが生まれます。人が写っている写真は使わない、などのルールも一緒に決めましょう。
生成AIを授業で使う前に確認すること
生成AIは便利な道具ですが、授業で使う前に確認しておくべきことがあります。
- 国や自治体・学校の方針:文部科学省は、初等中等教育段階での生成AIの利活用に関するガイドラインを公表しています。内容は更新されることがあるので、最新版を確認し、あわせて自治体や学校の方針を確認しましょう
- サービスの利用規約と年齢制限:生成AIのサービスには、利用できる年齢や保護者の同意などの条件が定められていることがあります。生徒に直接使わせる場合は、必ず規約を確認しましょう
- 個人情報を入力しない:生徒の名前、成績、作文など、個人が特定できる情報をAIに入力しないルールを徹底します
- 出力の正確さ:生成AIの出力には誤りが含まれることがあります。英文の自然さや文法の説明も、必ず人がチェックする前提で使いましょう
生徒に直接使わせるのが難しい場合は、先生が教材づくりの補助に使うところから始めるのも一つの方法です。
生成AIの授業での活用例
先生の教材づくりの補助として
- 教科書の題材に関連する、レベルに合わせた短い英文の下書きを作る
- 同じ内容で、やさしい版とむずかしい版の英文を作る
- 内容理解の質問やクイズの案を出す
いずれも、出てきた英文は先生が必ず確認し、修正して使います。
生徒の学習の補助として(方針や規約を確認したうえで)
- 会話の練習相手:レストランの店員役などをAIに頼み、英語でやり取りする
- 自分の作文の見直し:自分で書いた作文について、文法の誤りのヒントを求める(書き直すのは自分で行う)
- アイデア出し:意見文を書く前に、賛成・反対の理由の例を出してもらい、自分の考えと比べる
生徒への指示の例です。
- First, write your essay by yourself. Then, ask the AI for hints, not answers.
- Check the AI's answer. Is it really correct?
AIに「答えを出させる」のではなく、「考える材料にする」使い方を意識させることが大切です。
40人クラスでの工夫
- 使うアプリを絞る:アプリが多すぎると、操作の説明に時間がかかります。学期ごとに2〜3種類に絞りましょう
- 操作の説明は画面を映して1回だけ:先生の画面をスクリーンに映し、手順を見せます。手順はスライドに残しておきます
- トラブル対応のルールを決める:端末がつながらない生徒は、隣の人と一緒に作業する、紙のワークシートに切り替える、など代わりの方法を用意しておきます
- 録音する場所の工夫:40人が一斉に録音すると声が混ざるので、イヤホンマイクを使う、廊下や特別教室を使う、時間をずらす、などの工夫をします
- 評価は抽出で:提出された録音を毎回全員分聞くのは大変なので、毎回数人ずつ聞いてコメントし、単元末のテストで全員を評価する、などと分けましょう
授業例:AIの英文を「チェックする」活動(高校向け)
先生があらかじめ生成AIで作った英文(誤りや不自然な表現をあえて残したもの)を配り、グループで改善点を探します。Find three things you would change. Explain why. AIの出力をうのみにせず、自分の知識で吟味する姿勢を育てる活動になります。
よくある失敗と注意点
端末の操作に時間がかかり、英語を使う時間が減る
操作に慣れるまでは、同じアプリを同じ使い方で繰り返しましょう。慣れてしまえば、準備時間は大きく減ります。
AIが作った作文をそのまま提出する
課題を「AIに書かせても意味がない」形にする工夫が必要です。たとえば、自分の体験を書く、授業中に手書きで下書きを書く、書いた内容について口頭で質問する、などです。
画面ばかり見て、人と話さなくなる
端末は、人とのやり取りを減らすためではなく、増やすために使いましょう。録音したスピーチをペアで聞き合う、共同編集の内容について話し合う、など、対面のやり取りと組み合わせます。
個人情報の扱いが不十分
写真や録音、作文には個人情報が含まれることがあります。保存先や共有範囲、保存期間について、学校のルールを確認しましょう。
今週から始めるステップ
- 1日目:学校の端末で使える録音・共同編集のアプリを確認する
- 2日目:文部科学省の生成AIに関するガイドラインと、学校・自治体の方針を確認する
- 3日目:音読またはスピーチの録音提出を1回試す
- 4日目:先生の教材づくりに生成AIを使い、出力を自分でチェックしてみる
- 5日目:生徒の録音を数人分聞き、全体へのフィードバックに使う
ICTや生成AIは、上手に使えば、大人数のクラスでも一人ひとりが英語を使う時間を増やせる強い味方です。小さく試しながら、自分のクラスに合った使い方を見つけていきましょう。



