発問の3段階を押さえる
リーディングの発問は、大きく3つの段階に分けて考えると作りやすくなります。
- 事実発問(fact-finding):本文に答えが書いてある問い。「誰が」「いつ」「何をした」
- 推論発問(inferential):本文に直接は書いていないが、手がかりから考えられる問い。「なぜ」「どんな気持ち」
- 評価発問(evaluative / personal):本文をもとに、自分の考えや経験を述べる問い。「あなたならどうする」
事実発問だけでは、答えを本文から写す作業になります。一方、いきなり評価発問から始めると、内容を理解していない生徒が置いていかれます。事実→推論→評価の順に階段を上がるのが基本の設計です。
ポイント:1つの本文につき、事実発問3〜4個、推論発問2個、評価発問1個くらいが扱いやすい目安です。
自作本文で見る発問の例
ここでは、中学3年〜高校1年を想定した自作の短い本文で考えてみます。
本文(オリジナル)
Mika joined the school band in April. She wanted to play the trumpet, but the teacher gave her the drums. At first, she practiced alone after school every day. She did not talk much with the other members. In June, the band had a small concert at a hospital. When the music ended, an old man stood up and clapped for a long time. On the way home, Mika sent a message to her friend Aya: "I think I love the drums now."
事実発問
- "When did Mika join the band?"
- "What instrument did she want to play?"
- "Where did the band have a concert?"
推論発問
- "How did Mika feel when the teacher gave her the drums? Find a clue in the text."
- "Why did Mika say 'I love the drums now'? What changed her mind?"
評価発問
- "Have you ever started to like something you didn't choose? Tell your partner."
- "If you were Mika, would you ask the teacher to change your instrument? Why or why not?"
推論発問では、"Find a clue in the text."(本文に根拠を探そう) をセットにするのがコツです。根拠を示させることで、なんとなくの感想ではなく、本文に基づいた読みになります。
授業の流れと時間配分(50分)
本文1パートを扱う授業の例です。
- 0〜5分 導入:題名と挿絵から内容を予想する("What is this story about? Guess.")
- 5〜10分 新出語の確認:内容理解に必要な語だけ短く扱う
- 10〜15分 1回目の黙読+概要把握:「誰が出てくる? 何が起きた?」を1文で
- 15〜22分 事実発問:ペアで答えを探し、全体で確認
- 22〜32分 推論発問:ペア→4人で根拠を話し合い、何組かが発表
- 32〜40分 音読:意味が分かった状態で音読(気持ちを込める部分を意識させる)
- 40〜47分 評価発問:自分の意見をペアで話し、2〜3文でノートに書く
- 47〜50分 振り返り
事実発問のあとに推論発問、そのあとに音読を入れると、登場人物の気持ちを理解したうえで声に出せるため、音読の質も上がります。
高校の説明文・論説文での発問
物語文だけでなく、高校で多い説明文や論説文でも3段階の考え方は使えます。ただし、問いの焦点が「登場人物の気持ち」から「筆者の主張と根拠」に移ります。
- 事実発問:"What are the two examples the writer gives?"
- 推論発問:"Why does the writer mention the example of the small town first? What is its role?"
- 推論発問:"Does the writer think the plan will work? Which words show the writer's attitude?"
- 評価発問:"Do you agree with the writer? Give one reason from your own experience."
論説文では、段落ごとの役割(主張・例・反論・結論)を問う発問が特に効果的です。"What is the job of paragraph 3?" と聞くと、生徒は内容だけでなく文章の構造にも目を向けるようになります。
また、筆者の態度を表す語(fortunately, surprisingly, however など)に線を引かせる活動は、推論発問への足場としても使えます。
40人クラスでの発問の回し方
発問を全体に投げて、答えるのはいつも同じ生徒…という状況は避けたいところです。
考える時間を必ず取る
推論発問は、すぐに答えられない問いです。"Think for 30 seconds. Don't talk yet." と、一人で考える時間を最初に確保します。
Think-Pair-Share を型にする
- 一人で考える(30秒)
- ペアで話す(1分)
- 前後の4人で共有(1分)
- 教師が何組かを指名
この流れを毎回使うと、40人でも多くの生徒が自分の考えを口にできます。
答えを「根拠の行番号」で共有する
"Which line is your clue? Show me the line number with your fingers." のように、根拠の場所を指で示させると、全員の読みを一度に確認できます。
板書は「根拠」と「解釈」を分ける
黒板を左右に分け、左に本文の根拠、右に生徒の解釈を書くと、推論のプロセスが目に見えます。
発問づくりでよくある失敗
- 事実発問が本文の丸写しで答えられる:問いの語句と本文の語句がまったく同じだと、探すだけの作業になります。→問いの中で言い換えを使う(本文 "practiced alone" → 問い "Did Mika practice with other members?")。
- 推論発問の答えが一つに決まりすぎる:正解探しになり、話し合いが生まれません。→複数の解釈が成り立つ問いを選ぶ。
- 評価発問が本文と関係ない:「好きな音楽は?」だけでは本文を読んだ意味が薄くなります。→本文の状況と自分を結びつける問いにする。
- 発問が多すぎる:10問以上並ぶと、一つひとつが浅くなります。→中心となる推論発問を1つ決め、そこに時間をかける。
ポイント:発問づくりは「この本文で一番考えさせたい問いは何か」を先に決め、そこから逆算して事実発問を配置すると、ぶれにくくなります。
今週からできる発問づくりの練習
発問づくりは、慣れるほど早くなります。次の手順で1本文ずつ試してみてください。
- 本文を読み、「この話の中心はどこか」を1文で書く
- その中心に関わる推論発問を1つ作る
- 推論発問に答えるために必要な事実発問を3つ作る
- 本文と生徒の生活を結ぶ評価発問を1つ作る
- 同僚と発問を見せ合い、答えが割れそうかを確かめる
最初は1単元に1本文だけでも十分です。発問が変わると、生徒の読み方も少しずつ変わっていきます。



