担任の先生だからこそできること
英語が得意でないと、「子どもに悪い影響を与えないか」と心配になるかもしれません。でも、小学校の英語の授業で大切なのは、先生が流暢に話すことだけではありません。
担任の先生には、次のような強みがあります。
- 子ども一人ひとりをよく知っている:誰が恥ずかしがり屋か、誰が何に興味があるかを知っているので、話題選びやペア決めがうまくいきます。
- 他教科とつなげられる:理科で学んだ動物、社会で学んだ国など、ほかの授業の内容を英語の話題に使えます。
- 「学び手のモデル」になれる:先生が間違えながらも英語を使おうとする姿は、「間違えても大丈夫」というメッセージになります。
ポイント:先生の役割は「英語の見本」ではなく「英語を使おうとする姿の見本」。発音の見本は音声教材やALTに任せましょう。
完璧を目指さない役割分担
英語が苦手な先生ほど、「全部自分でやらなければ」と抱え込みがちです。次のように役割を分けると、ぐっと気持ちがラクになります。
音声教材に任せること
- 単語や表現の正しい発音
- 歌やチャンツ
- 会話のモデル(デジタル教材の動画や音声)
ALTや専科の先生に任せること(いる場合)
- ネイティブ・スピーカーとしての自然な英語
- 自分の国の文化の紹介
- 子どもの発話への英語での反応
担任の先生がすること
- 授業の流れと時間の管理
- 子どもの様子を見て、活動を調整する
- ほめる、励ます、困っている子を助ける
- 振り返りで子どもの気づきを引き出す
こうして見ると、担任の先生の仕事の多くは、ほかの教科と同じ「授業を進める力」だとわかります。
毎回使える10の教室英語
英語が苦手な先生は、まずこの10個だけを繰り返し使いましょう。毎回同じ表現を使うことで、先生も子どもも自然に慣れていきます。
- Hello, everyone! (こんにちは、みなさん)
- How are you? (元気ですか)
- Let's start. (始めましょう)
- Listen. (聞いてね)
- Repeat after me. (まねして言ってね)
- Make pairs. (ペアになって)
- Good job! (よくできたね)
- Nice try! (いいチャレンジだね)
- One more time. (もう一回)
- See you! (またね)
黒板の横にこの10個を貼っておき、使ったらチェックする、というのも効果的です。1か月たって慣れたら、Are you ready? や Any volunteers? など、少しずつ増やしていきましょう。
ポイント:教室英語は、文法的に完璧である必要はありません。ジェスチャーと笑顔をつければ、子どもにはしっかり伝わります。
15分でできる授業準備の手順
忙しい担任の先生が、1時間の英語の授業を15分で準備するための手順です。
- 指導書の「本時のめあて」を読む(2分):今日、子どもが何をできるようになればいいかを確認します。
- 使う表現を声に出して3回言う(3分):デジタル教材の音声を聞いて、まねします。
- Small Talk の話題を1つ決める(3分):自分の好きなものなど、単元の表現を使った短い話を準備します。例:I like cats. I have a cat. Her name is Mike. Do you like cats?
- 活動の順番を決める(5分):指導書の活動例から2つ選び、時間を決めます。
- 振り返りの問いを決める(2分):「今日言えるようになった英語は?」など。
英語の授業準備で大切なのは、全部の英語を覚えることではなく、今日使う表現に慣れておくことです。Small Talk の原稿はメモに書いて手元に置いておいて構いません。
授業中に困ったときの切り抜け方
授業中、英語で困る場面はどうしても出てきます。よくある場面と、その切り抜け方を紹介します。
子どもに英語で質問されて、わからないとき
- Good question! Let's check together. と言って、辞書アプリやALTに一緒に確認します。わからないことを一緒に調べる姿は、立派なモデルです。
自分の発音が合っているか不安なとき
- Let's listen to the CD. と言って、音声教材を使います。「先生も一緒に聞いてみよう」という姿勢で大丈夫です。
英語だけで説明が伝わらないとき
- 日本語で短く説明して構いません。大切なのは、子どもが活動のやり方を理解することです。ただし、説明の前にまず英語で1回やって見せる(デモンストレーション)と、英語で伝わる経験が増えます。
子どもが英語を言えずに固まったとき
- 最初の音だけヒントを出す(I li... → I like...)
- 選択肢を出す(Apples or bananas?)
- 先生と一緒に言う(Let's say it together.)
先生自身の英語を少しずつ伸ばす1週間メニュー
授業を続けながら、先生自身も無理なく英語に慣れていくための、1日5分のメニュー例です。
- 月:次の授業で使う表現を音声で聞き、5回まねする
- 火:Small Talk の原稿を声に出して読む(スマホで録音してもOK)
- 水:子ども向けの英語の歌を1曲聞く
- 木:教室英語を1つ増やして、授業で使ってみる
- 金:その週に使った英語を振り返り、言えなかった表現をメモする
同じ学年の先生と、Small Talk の話題を共有するのもおすすめです。1人で抱え込まず、学年や学校全体でアイデアを出し合うと、準備の負担が減ります。
Small Talk の原稿例:英語が苦手でも話せる3パターン
Small Talk は、英語が苦手な先生がいちばん身構える活動かもしれません。でも、決まった「型」に当てはめれば、短い原稿で十分に話せます。
パターン1:好きなもの
- I like ramen. I eat ramen every Sunday. It's delicious. Do you like ramen?
パターン2:昨日したこと(6年向け)
- I went to the library yesterday. I read a book about animals. It was interesting. What did you do yesterday?
パターン3:クイズ形式
- I have a pet. It's small. It's white. It likes carrots. What is it? — It's a rabbit!
どのパターンも、「自分のこと(2〜3文)+子どもへの質問(1文)」という形です。写真や絵を1枚用意して見せながら話すと、英語が短くても子どもは内容を理解できます。
ポイント:原稿は見ながら話してOK。子どもは先生の英語の上手さより、「先生の話」そのものに興味をもっています。
よくある失敗と今日からの一歩
- 英語を避けて日本語だけの授業になる:教室英語10個だけでも、英語の雰囲気は大きく変わります。
- 完璧な準備をしようとして疲れてしまう:準備は15分と決め、あとは子どもの反応に任せましょう。
- 間違いを恐れて声が小さくなる:先生が堂々と間違える姿が、子どもの安心感につながります。
英語が苦手な先生の授業には、「先生も一緒に学んでいる」という温かさがあります。まずは次の授業で、10の教室英語の中から3つを選び、必ず使ってみてください。



