学習指導要領で確認できること
まず、公式の情報で確認できる事実を整理します(文部科学省が公開している学習指導要領の本文に基づきます)。
- 中学校の学習指導要領(平成29年告示)は、2021年4月から全面実施されています
- 高等学校の学習指導要領(平成30年告示)は、2022年4月から年次進行で実施されています
- 英語の目標は、聞くこと、読むこと、話すこと[やり取り]、話すこと[発表]、書くことの5つの領域で示されています。「話すこと」が[やり取り]と[発表]に分かれているため、4技能5領域と呼ばれます
- 高校では、これらの領域別の言語活動と、複数の領域を結び付けた統合的な言語活動を通して指導することが示されています
- 中学・高校ともに、授業を実際のコミュニケーションの場面とするため、授業は英語で行うことを基本とすること、その際は生徒の理解の程度に応じた英語を用いることが示されています
- 高校の科目は「英語コミュニケーションⅠ・Ⅱ・Ⅲ」と「論理・表現Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ」で構成されています
細かな目標や内容の表現は、必ず文部科学省のサイトで学習指導要領の本文と解説を確認してください。
ポイント:「統合的」とは、1つの活動の中で、聞いた・読んだ内容をもとに話す・書くなど、領域どうしをつなげることです。
[やり取り]と[発表]の違いを授業でどう分けるか
話すことが2つに分かれたことで、授業でも2種類の活動を意識する必要があります。
話すこと[やり取り]:相手の発言に応じて、その場で質問したり答えたりする。即興性が大切です。
- A: What do you usually do on Sundays?
- B: I usually play soccer. How about you?
- A: I often go shopping with my mom. Where do you play soccer?
話すこと[発表]:まとまった内容を、準備したうえで聞き手に伝える。構成や分かりやすさが大切です。
- Today I'm going to talk about my favorite place. It's the library near my house. There are two reasons...
授業では、帯活動で[やり取り]の即興練習を毎回少しずつ、単元の終わりに[発表]をまとめて行う、というように配置を分けると整理しやすくなります。[やり取り]では、相づち(Oh, really? / That's nice.)や聞き返し(Pardon? / What do you mean?)といった「会話をつなぐ表現」も一緒に指導しましょう。
統合的な言語活動の授業例(中学3年・4時間構成)
教科書の「世界の食文化」を扱った本文を想定した、4時間の単元の流れです。
1時間目:聞く・読む
ALTや先生が自分の国(または旅先)の料理について話す音声を聞き、メモを取る。そのあと教科書本文を読み、概要をつかむ。
2時間目:読む→話す[やり取り]
本文の内容について、ペアで質問を作って聞き合う。Which food do you want to try? Why? など、自分の意見を含む質問も入れる。
3時間目:書く
「海外から来た人に紹介したい日本の料理」を40〜60語で書く。本文や1時間目で聞いた表現を参考にする。
4時間目:話す[発表]→聞く
書いた原稿をもとに、4人グループで1分間の発表。聞き手は「食べてみたい料理」を1つ選び、理由を英語で伝える。
こうしてみると、インプット(聞く・読む)→アウトプット(話す・書く)→再びインプット(友達の発表を聞く)という流れができます。1時間ごとに違う技能を練習するのではなく、1つのテーマで技能をつなげるのがコツです。
40人クラスで統合的な活動を回す工夫
- テーマは単元で1つに絞る:あれもこれもやらず、1つの題材を4技能で使い回すと、生徒の負担が下がります
- 書く活動を話す活動の「準備」にする:いきなり発表させず、書いた原稿を持って話すことで、苦手な生徒も参加できます
- 聞き手にも課題を与える:Listen and choose one dish you want to try. のように、聞く目的を明確にします
- グループ発表で時間を短縮:40人の個人発表は時間がかかるので、4人グループ内での発表を基本にし、代表者だけ全体で発表します
- 1人1台端末の活用:発表を録画して提出させれば、授業時間内に全員を聞かなくても評価できます
指示の英語例です。
- Take notes while you listen. Key words only.
- Use your notes to tell your partner what you heard.
- Write about 50 words. You can use expressions from the textbook.
よくある失敗と、評価との関係
失敗1:技能をバラバラに練習して終わる
「今日はリスニング、明日はライティング」と切り分けると、活動がつながりません。前の時間の成果物を次の時間に使う設計にしましょう。
失敗2:[発表]ばかりで[やり取り]が少ない
発表は準備できるので授業で扱いやすい反面、即興のやり取りの機会が不足しがちです。毎時間の帯活動で、2〜3分のやり取りを入れるのがおすすめです。
失敗3:評価の場面が決まっていない
5領域すべてを毎時間評価するのは無理があります。単元のどこで、どの領域を、どの方法で評価するかを最初に決めておきましょう。例:3時間目の作文で「書くこと」、4時間目の発表で「話すこと[発表]」を記録する。
評価の観点(知識・技能、思考・判断・表現、主体的に学習に取り組む態度)の扱い方は、国立教育政策研究所が公表している参考資料なども確認すると、学校内で共通理解を作りやすくなります。
1時間の中で領域をつなぐ「ミニ統合」の型
単元全体での統合に加えて、1時間の授業の中でも領域をつなぐことができます。準備が少なく、毎時間使える型を3つ紹介します。
型1:Read → Retell(読んで、話して伝える)
本文を読んだあと、教科書を閉じて、ペアに内容を自分の言葉で伝えます。Close your textbook. Tell your partner what happened in the story. 読む→話す[発表]の短い統合です。
型2:Listen → Write(聞いて、書いてまとめる)
先生やALTの2分間の話を聞き、キーワードをメモしたあと、3文で要約を書きます。聞く→書くの統合です。
型3:Talk → Write(話して、書いて残す)
ペアで話した内容を、最後に「相手について」3文で書きます。My partner likes... He/She wants to... 話す[やり取り]→書くの統合で、相手の話を真剣に聞く動機にもなります。
どの型も10分程度で終わり、成果物がノートに残るので、評価の材料にもしやすいのが利点です。帯活動のメニューとしてローテーションすると、毎時間すべての領域に少しずつ触れられます。
ポイント:統合は大がかりなプロジェクトでなくてもかまいません。「前の活動の結果を、次の活動で使う」だけで統合になります。
今週から始めるチェックリスト
- 次の単元で、1つのテーマを4技能で使う流れになっているか確認する
- 帯活動に、2分間の即興の[やり取り]を入れる
- 単元の最後に、[発表]か「書くこと」のまとめの活動を置く
- どの時間に何を評価するかを、単元計画に書き込む
- 学習指導要領と解説の該当部分を、文部科学省のサイトで一度読み直す
5領域は「全部やらなければ」と思うと重く感じますが、1つのテーマをつなげるだけで、自然に全領域を行き来する授業になります。



