ALTの立場を知ることから始めよう
ALT(外国語指導助手)は、日本の学校で英語の授業を支える大切な仲間です。一方で、ALTの多くは次のような状況に置かれています。
- 日本語や日本の学校文化にまだ慣れていないことがある
- 複数の学校を掛け持ちしていて、職員室の情報が届きにくいことがある
- 職員会議や打ち合わせの内容が日本語だけで行われ、置いていかれやすい
- 契約や雇用の形態によって、勤務の条件がさまざまである
こうした状況を知っておくと、「なぜ伝わっていなかったのか」「なぜ不安そうなのか」が理解しやすくなります。
ポイント:ALTは「英語の先生の補助」だけでなく、「同じ学校で働く同僚」です。職員室での小さな気づかいが、授業での協力にもつながります。
毎日のあいさつと雑談の英語
関係づくりの基本は、毎日のあいさつと短い雑談です。完璧な英語である必要はありません。声をかけることが何より大切です。
朝・帰りのあいさつ
- Good morning! How was your weekend?
- See you tomorrow. Have a good evening.
- You look busy today. Hang in there!
気軽な雑談のきっかけ
- Did you try any Japanese food recently?
- Are you getting used to the cold weather here?
- The students really enjoyed your class today.
最後の例のように、授業での様子をほめる一言は特に効果的です。ALTは自分の授業が役に立っているかを気にしていることも多いので、具体的なフィードバックは大きな励みになります。
雑談のテーマは、天気、食べ物、週末の過ごし方、地域の行事などが無難です。個人的な事情や宗教・政治の話題は、相手から話さない限り深入りしないのがマナーです。
連絡・相談を分かりやすく伝える
職員室でのすれ違いの多くは、連絡の伝わり方から生まれます。次のポイントを意識しましょう。
1. 予定の変更は早めに、文字でも
行事や時間割の変更は、口頭だけでなくメモやチャットでも伝えます。
- The schedule has changed. Tomorrow's third period will be a school assembly, so we won't have class.
2. 「何をしてほしいか」をはっきり伝える
- Could you check this worksheet by Thursday?
- Could you prepare a short self-introduction for the first-year students?
日本語の会話では遠回しな表現が多くなりがちですが、英語では依頼内容と期限を明確にしたほうが親切です。
3. 職員会議の要点を共有する
ALTに関係のある内容は、会議後に要点を3行程度で伝えましょう。
- Just a quick update from the staff meeting: next week is exam week, so there will be no English classes on Wednesday and Thursday.
こうした共有が、ALTが「チームの一員だ」と感じられる大きなきっかけになります。
文化の違いに配慮する
日本の学校には、外国から来た人にとって分かりにくい習慣がたくさんあります。
- 朝の打ち合わせや職員会議の進め方
- 行事の準備や当日の役割分担
- 給食や清掃の時間の過ごし方
- 休暇の取り方や連絡の仕方
- 「空気を読む」ことが前提のコミュニケーション
こうした習慣は、理由とあわせて説明すると受け入れてもらいやすくなります。
- In Japanese schools, teachers usually clean the classrooms with the students. It's part of our education.
一方で、ALTの国の文化や考え方に関心を持つことも大切です。
- How are schools different in your country?
違いを知ることは、先生自身の学びにもなり、授業で生徒に伝える話題も増えます。
困ったとき・すれ違ったときの対処法
一緒に働いていれば、意見の違いや誤解が生まれることもあります。そんなときは、次のステップで対応しましょう。
- 事実を確認する:何が起きたのか、どこで行き違いがあったのかを落ち着いて整理する
- 相手の考えを聞く:Could you tell me what you think about this? と、まず相手の意見を聞く
- 自分の考えを伝える:I understand your point. In our school, we usually do it this way because...
- 一緒に解決策を考える:How about trying it this way next time?
感情的になりそうなときは、その場で結論を出さず、時間を置くのも一つの方法です。
また、ALTの勤務条件や契約に関わる問題は、担当の先生や管理職、派遣元などの窓口に相談するのが基本です。英語の先生が1人で判断しないようにしましょう。
ポイント:すれ違いは「どちらが正しいか」ではなく「どうすれば次にうまくいくか」を話す機会にしましょう。
ALTの着任直後にしておきたいこと
ALTが新しく着任したときは、関係づくりの一番大切なタイミングです。最初の1〜2週間で、次のようなことをしておくと安心です。
- 職員室の座席、ロッカー、印刷機、給湯室などの場所を案内する
- 学校の1日の流れ(始業時間、打ち合わせ、給食、清掃、放課後)を説明する
- 主な先生を紹介する(校長、教頭、学年主任、英語科の先生など)
- 困ったときに誰に聞けばよいかを伝える
簡単な学校案内メモを英語で作っておくと、毎年使い回せて便利です。
- Morning meeting starts at 8:15 in the staff room.
- Lunch is served in the classroom. Please eat with the students.
- If you have any questions, please ask me or Ms. Tanaka.
着任直後のALTは、新しい環境に緊張しています。最初に丁寧に案内してもらえた経験は、その後の信頼関係の土台になります。
よくある失敗と今日からできること
- 授業の打ち合わせのときだけ話しかける:用事があるときだけ話すと、関係が事務的になりがちです。
- 職員室の情報を伝え忘れる:「知っているだろう」と思い込まず、関係のあることは一言伝えましょう。
- 英語が苦手だからと避ける:短い英語でも、話しかけてくれることがうれしいものです。
- ALTに頼りすぎる:英文チェックなどをお願いするときは、量と期限に配慮しましょう。
- 日本語を話す機会を奪う:日本語を学びたいALTもいます。相手の希望を聞いて、日本語で話す時間があってもよいでしょう。
まずは明日の朝、ALTに Good morning! のあとにもう一言、How was your weekend? と声をかけてみましょう。その小さな一言が、1年間の協力関係の始まりになります。



