ティームティーチングの目的をそろえる
ティームティーチング(TT)は、日本人の英語教師(JTE)とALTが一緒に授業を行う形態です。学習指導要領でも、ネイティブ・スピーカーや英語が堪能な地域の人材などの協力を得て、指導体制の充実を図ることが示されています。
ALTと一緒に授業をするときに、まずそろえたいのが目的です。ALTがいるからこそできることは、次のようなものです。
- 生徒が本当に英語を使わないと伝わらない相手とやり取りする
- 自然なスピードの英語や、多様な英語に触れる
- ALTの出身地の文化や生活について知る
- 2人の先生の会話を、生きたモデルとして見る
逆に、ALTが教科書本文を読むだけ、単語の発音をするだけ、という使い方では、ALTがいる意味が十分に活かされません。
ポイント:「ALTがいないとできない活動は何か」を考えることが、良いTTの出発点です。
5分でできる打ち合わせの型
毎回じっくり打ち合わせをする時間はなかなか取れません。そこで、短い打ち合わせシートを用意しておくと便利です。英語で書いたシートを前日に渡すか、共有フォルダに置いておきます。
打ち合わせシートの項目例です。
- Today's goal:Students can ask and answer questions about their weekend.
- Target language:What did you do last weekend? / I went to...
- Your role:Demonstration with me (2 min), interview test (15 min)
- Materials:Worksheet A/B, timer
- Flow:Greeting → Small talk → Demo → Pair work → Interview
当日の打ち合わせでは、このシートを見ながら、次の3点だけ確認します。
- What is the goal today?
- What will you do, and what will I do?
- Is there anything you want to add?
最後の質問が大切です。ALTから、出身地の写真を見せたい、ゲームのアイデアがある、といった提案が出てくることもよくあります。ALTを「授業をいっしょに作る仲間」として迎えると、TTの質が上がります。
JTEとALTの役割分担の例
役割分担は、授業の場面ごとに決めておくとスムーズです。
- JTEの主な役割:授業全体の進行、生徒の実態の把握、日本語での補足、評価の記録
- ALTの主な役割:自然な英語のモデル、会話の相手、文化の紹介、生徒の英語への反応
ポイントは、どちらかが主、どちらかが補助と固定しないことです。場面ごとに主役を交代すると、生徒は2人の先生の英語でのやり取りを自然に見ることができます。
ALTの強みを活かす授業例
1. デモンストレーション会話
新しい表現を導入するとき、JTEとALTが実際に会話をして見せます。
- JTE: What did you do last weekend?
- ALT: I went hiking in the mountains. It was beautiful! How about you?
- JTE: I watched a movie at home.
生徒は、場面の中で表現の意味を理解できます。台本を丸暗記するのではなく、要点だけ決めて自然に話すのがコツです。
2. ALTへのインタビュー
生徒がグループで質問を考え、ALTにインタビューします。Ask me anything about my country! 答えは生徒がメモし、最後に「ALTについて分かったこと」を英語でまとめます。
3. インタビューテスト
ALTが1人ずつ(またはペアで)生徒と短い会話をします。台本どおりでない質問が来るので、即興でやり取りする力を見ることができます。
4. 文化紹介
ALTの出身地の学校生活や行事について、写真を使って紹介してもらいます。生徒は日本との違いを比べ、I was surprised that... の形で感想を書きます。
ワンポイント:ALTの「素の英語」を活かす
デモ会話では、ALTが言い間違えたり、言い直したりする自然な姿も、生徒にとって貴重なモデルになります。Um... Let me think. / What I mean is... のような「考えながら話す表現」を、ALTが実際に使う場面を見せることで、生徒も完璧でなくていいと安心できます。
40人クラスでの工夫
40人のクラスで2人の先生がいることは、大きなチャンスです。
- 2つのグループに分ける:クラスを半分に分け、JTEとALTがそれぞれのグループを担当する時間を作ると、生徒がALTと話す機会が倍になります
- 机間指導を分担する:教室の前半分をJTE、後ろ半分をALTが回ると、多くの生徒に声をかけられます
- ALTとの会話ステーション:ペア活動中に、ALTが教室の一角で数人ずつと話す「ステーション」を作ります。全員が1回はALTと話せるよう、名簿で確認します
- ALTの話す英語を調整してもらう:生徒のレベルに合わせて、ゆっくり、はっきり話してもらうよう事前にお願いしておきます。Could you speak a little slower, and use simple words?
生徒が恥ずかしがってALTに話しかけられない場合は、質問を1つ書いたカードを持たせ、「このカードの質問を必ず1つする」というミッションにすると、最初の一歩が踏み出しやすくなります。
よくある失敗と注意点
ALTが授業の直前まで内容を知らない
短い打ち合わせシートを前日に共有しましょう。英語で書くのが大変なら、箇条書きで十分です。
ALTが教室の後ろで見ているだけ
すべての場面に役割がなくても構いませんが、机間指導や生徒への声かけなど、動ける役割を伝えておきましょう。
JTEが全部訳してしまう
ALTの英語をすぐに日本語に訳すと、生徒は英語を聞かなくなります。まずは生徒に推測させ、必要な場合だけ補足しましょう。
契約形態による注意
ALTの雇用や契約の形は、自治体や学校によってさまざまです。契約の形によっては、打ち合わせや授業中の役割の依頼の仕方に配慮が必要な場合もあります。具体的なルールは、学校や教育委員会に確認してください。
ALTへの感謝を伝える
授業後に一言、Thank you. The students really enjoyed talking with you. と伝えるだけで、次の授業への協力もしやすくなります。
次のTT授業までの準備リスト
- 「ALTがいないとできない活動」を1つ決める
- 打ち合わせシートのテンプレートを英語で作る
- 前日までにALTにシートを共有する
- 当日の打ち合わせで3つの質問(ゴール・役割・追加のアイデア)を確認する
- 授業後に、ALTと1分だけ振り返りをする:What went well today? What can we change next time?
ALTと一緒に授業を作る経験は、先生自身の英語や授業の幅を広げる機会にもなります。小さな打ち合わせから、良いチームを作っていきましょう。



